「蜜の味」キム・ガンウ“実は、僕は反骨気質”

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チュ・ヨンジャクは現実性がない?むしろリアル

「蜜の味 テイスト オブ マネー」(以下「蜜の味 テイスト オブ マネー」)のチュ・ヨンジャクは、ある意味で現実味のない人物だ。俳優キム・ガンウに会って、この話から始めることにした。最初からハードな質問をしたのは、キム・ガンウの魅力を信じていたため。ハキハキとした口調で、他の記者からの質問に答えているのを見てそう思った。

イム・サンス監督は「観客と映画をつなげる媒体として、チュ・ヨンジャクを入れた」と話したが、上流階級の家に突然登場したこの青年が、多少異質に感じられるのも事実である。その家にいる理由もなく、家の中でただ模範的な行動をするためだ。イム・サンス監督の言う通り「蜜の味 テイスト オブ マネー」が「ハウスメイド」の拡張版であれば、チュ・ヨンジャクについてさらに説明が必要になると思った。

ダイレクトにチュ・ヨンジャクの役割について聞いた。「蜜の味 テイスト オブ マネー」で、ペク・グムオク(ユン・ヨジョン)を始めとする登場人物たちは、不正と権謀術策の塊だ。また、ユン会長(ペク・ユンシク)は、彼らの不正の尻拭いをして自身の欲望を満たす。ここでチュ・ヨンジャクは、彼らに歩調を合わせる単純な役割にとどまる可能性もあった。キム・ガンウはどう考えているのだろうか。

「台本からでは、この人が何を考えているのか分かりませんでした。能動的ではないキャラクターですから。映画では息が吹き込まれたと思います。実は心配でした。弁明のように聞こえるかもしれませんが、僕も監督に『ヨンジャクを完全に最低な人間にしてください』とも言いました。映画を見ると、チュ・ヨンジャクがテキーラにレモンを入れて飲みながら苦しみますが『どうして?焼酎飲んで苦しめばいいじゃないか』とも思いました。でもこんな風にも考えられます。そもそもチュ・ヨンジャクはイエール大学を出て、MBA(経営学修士)を取得した人だと……。いわゆる“上位1%”になれる人だけど、もっと強い人に会ったのです。上位1%が上位0.1%に会って困惑するのです。セリフにも出てきます。『強い。本当に強い』と。彼らの姿に戸惑って言葉を失ったのです」


「蜜の味 テイスト オブ マネー」は社会的なテキストというより個人的なテキスト

「蜜の味 テイスト オブ マネー」で特に緊張感があるのは、映画が指摘する様々な社会問題だ。財閥家の不正相続、雇用問題、芸能人の枕営業の問題などが直接、間接的に登場するが、このような部分により、映画を多様に解釈できる余地が生じる。これに対して、すでにイム・サンス監督は、賤民資本主義を直接的に批判する映画ではないと話している。

「僕もあえてそれをハッキリと出す必要はないと思います。記者さんもサラリーマンじゃないですか。サラリーマンとしてのチュ・ヨンジャクも同じです。入社して10年目のヨンジャクの最終的な夢は会長になることではないでしょうか。突っ走っていくのです。そんな過程で味わう侮辱感は無視できるものでしょう。しかし、想像を超える侮辱を受けて、ヨンジャクの憧れだったユン会長が壊れていく姿を見て、揺れるしかありませんでした。徹底的に個人の欲望について考えればいいと思います。映画にはもちろん資本主義の属性が出てきますが、基本的にはプライドの問題だと思います。僕はヨンジャクのプライドと欲望に重点を置きました」


プロとの仕事「だから『蜜の味 テイスト オブ マネー』は楽だった」

映画の話をしながら、包み隠さぬ彼の口調に、彼の性格を聞いたら、やはり反骨精神があるという。「OhmyStar」というメディアの性格に関する話をしながら自然と出てきた話題だった。彼の反骨精神も自身を客観的に見るための努力をしていたらそのようになったと話す。

「人が好きだと言っているものを一歩離れて考えようとし、偏ることがないように努力する」と話すキム・ガンウは「正解はないと思うけれど、俳優として演技する時もある一方に偏っていると、違う姿を演じにくい」とその理由を説明した。彼の反骨精神は、世界に対する抵抗よりは、自身の内面に対するものなのだった。

今回「蜜の味 テイスト オブ マネー」の撮影をしながらキム・ガンウは“カメラの味”をしみじみ感じたという。俳優同士で演技する時に感じられる快感があると付け加えた。

「ビビビッと電流が走る味を感じます。多くの方々から今回の映画が大変じゃなかったかと聞かれますが、少しも大変ではありませんでした。僕が下手に演じても、向こう側できれいに決めてくれますし、互いにやり取りする経験がとても良かったです。こういうのが映画を撮るたびに繰り返されると、どんなにいいでしょう。残念ながら毎回そういうわけにはいきません」

映画は17日に公開され「蜜の味 テイスト オブ マネー」は現在観客から評価を受けている。もちろん、今年のカンヌ国際映画祭での評価も注目される。映画に対する様々な反応が出ているが、印象に残った評価をした知人はいなかったか聞いた。

「こんなことを言われました。『これはイム・サンス監督のアベン○○○だ!』と。ただでさえ○○○ジャーズは嫌なのに(笑) (お金の味と同じ時期に上映されている映画)イム・サンス監督の作品が好きな方だったけど『蜜の味 テイスト オブ マネー』を見て、イム・サンス監督がこれまで作ってきたキャラクターのエキスを集めたように思ったそうです。僕が『ただでさえその映画は嫌なのに。やめなさい』と言いました(笑) 観客入りすぎですよ。韓国映画も観客が入らなければいけないのに……(笑)」

合意の元で、作品のタイトルは出さないことにした。英雄超大作の人気が根強いというが、「蜜の味 テイスト オブ マネー」の固有の味も観客が知ってくれるはずだという、彼の言葉に頷いた。

それはそうと、毎回情熱的に撮影に臨むキム・ガンウの自信を喚起させる方法が何か気になった。また「蜜の味 テイスト オブ マネー」でチュ・ヨンジャクの役柄にはまり込みすぎて、今も抜けだせないでいるのではないだろうか。

「僕は作品をしながらその役柄から抜け出せないタイプではありません。セリフもすぐ忘れます。そして旅行に行きます。趣味がないからでもありますが、何か他のことをやるエネルギーと余裕がありません。旅行はただ行けばいいですから。僕がずっと続けてやっているのは、演技と旅行です。去年の夏、知り合いの兄とタイに行ったのが一番最近の旅行ですね。慣れている所にだけいると、自分に気付きません。旅行に行くと自分を振り返る瞬間が訪れてきます。分からない所に放り出されると、自分を客観的に見ることができます。先程、自分自身を客観的に見ようとしていると言いましたが、旅行もそのひとつです。不案内な状況にいると『僕って怖がりだったんだな』とか『こんな面があったんだな』と気付くようになります」

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル