Vol.1 ― ウォンビン 「一人でいるときは絵を描いたり写真を撮ったりする」

10asia |

※このインタビューは2010年の映画「アジョシ」上映当時のものです。

ウォンビン以外にもカッコいい俳優はいる。しかし、インタビューをしている途中、「人がこんなにもカッコいいことがあるのだろうか」と思わせる俳優は極めて少ない。それに、その中でも自分の外見が持つ魅力を作品の中に溶け込ませることができる俳優はなおさらだ。映画「アジョシ」でのウォンビンは、まさにそういう俳優のうちのひとりだ。ウォンビンが「アジョシ」で少女ソミ(キム・セロン)の隣人のおじさん“テシク”役で出演することはファンタジーのように見える。しかし、ウォンビンは自分の外見とスター性を「アジョシ」で活用する方法を分かっている。彼は作品の雰囲気を害さずに、自分の魅力が輝く瞬間を正確に掴んだ。この絶妙な視点は、デビューしてからこれまで、ウォンビンがゆっくり築いてきたキャリアが作り上げたものでもある。デビューからまぶしい外見で注目されたスターは、どうやって自分の外見を輝かせながらも“アジョシ”になれたのだろうか。落ち着いた声で、きちん、きちんと話すウォンビンに直接聞いてみよう。

―デビューの際、チェ・ミンスの映画「テロリスト 哀しき男に捧げる挽歌」を見て俳優になりたくなったと聞いた。「アジョシ」もある男のアクションが主となる映画だ。どんな気分だったか。

ウォンビン:「テロリスト 哀しき男に捧げる挽歌」は、そのとき自分にとって最高の作品だった。あの映画を観て俳優を夢見ていた。「アジョシ」をやっている間はすごく楽しい時間だった。初めて経験するジャンルだったし、子供と疎通する役だということがさらによかった。

「アクションをやって何かを学ぶ感じだった」

―楽しかっただろう(笑)

ウォンビン:楽しかった。多くの方々にアクションが多いと話したら、怪我はしないかと心配してくれたが、もともと汗をかいて動くことが好きだ。アクションをやりながら、まるで遊びをしているような感じだった。これまでこんなアクション映画は一度もやったことがなかったので、肉体的に辛くても、新たなことをやりながら何かを学ぶ感じだった。

―特に「アジョシ」はアクションのスタイルが大事な作品だった。テシクが髪を切る時に使う剃刀の刃のように短くて、簡潔で、鋭い。すごく実戦を念頭に置いたようだし。

ウォンビン:イ・ジョンボム監督が東南アジアの3つの武術、シラット、カリ、アーニスをひとつの形にして、映画に合わせて変化を与えた。チャ・テシクという人間は特殊要員だから、攻撃されたとき瞬時に敵を制圧できるように簡潔であるべきだったし、実戦武術であるべきだというところを大事に考えた。武術が形を整えるべきでもあったし。

―イ・ジョンボム監督はあなたのアクションについて何と言ったか。

ウォンビン:ただの一度もどうしてほしいと要求されたことがない。ただ、テシクの感情的な部分を話してくれて、アクションをするとき、テシクの憤りが表に出るようにしてほしいと言われた。ただカッコよく作り出されたアクションより、感情を注ぎ込んで表現してほしいと言った。

―そんな感情が際立つのが最後のアクションシーンだったと思う。テシクがすごく激しい感情におぼれるが、どのように感情を表に出そうとしたのか。

ウォンビン:その状況でテシクは助けるべき子供以外には生きる理由がなかった。既に世の中のすべてを失ったから。それで、むしろ冷静に落ち着いて行こうと思った。そういう状態の人間なら、激しく怒って戦うよりは、冷たく冷静に戦いながら相手をなるべく早く制圧しなければならないと思った。

―特殊要員を演じるには、そのぶん体格もそれに合わせる必要があったと思う。フルショットで撮られた部分で、身体全体がすごくがっしりしている感じもしたが。

ウォンビン:テシクは特殊要員だから、猫のようにすばやく動かなければならないと思った。それで、特殊要員はがっしりした歩き方や動きにするべきだと思って。大きい筋肉よりはスリムに、細かい筋肉を中心に体を作った。

―本当に歩いたり走ったりする時、直角になるように見えた(笑) テシクは海千山千の特殊要員だし、敵にはとても残酷だ。だが、子供ひとりのために命を懸ける。こういう人物をどう受け止めたか。

ウォンビン:それがただひとりの子供を助けるためだけとは考えていない。テシクにとってソミを助けることは、過去の傷から抜け出すためのことではなかったのだろうか。彼は今、家族なしに独りで生きている人物だし、家族への罪悪感があったと思う。それで、ソミを助けることで自分の過去から抜け出そうとする人物だと考えた。

「テシクとは、一人で暮らすところが似ている」

―それで質屋にひとりでいたのだろうか。今どき質屋を営むという設定がおもしろかった(笑)

ウォンビン:質屋は現実に遮られた寂しい空間でもあり、窓格子があって刑務所みたいな感じもする。ソミのセリフにもあるが、テシクがまるで刑務所にいるような気もする。ものすごい罪悪感を抱いて生きながら、自らを刑務所に閉じ込めたのではないか。

―テシクの、ほぼ表情の変化がないという設定はどうだったか。セリフもすごく制限的で。ほとんど目つきで感情を表現していたが。

ウォンビン:3年間外に出なかった人なら、口数が少なくなるしかなかったと思う。誰とも話さず、心の中にはすごい悲しみを抱いていたはずだし。そういう人物だから、表情の変化が多くないはずだと思った。

―少しの表情と目つきだけで感情を表現することは難しくはなかったか。

ウォンビン:難しかったが、かえって魅力的だった。表情を過剰に作ったり、大きく叫んだりすることより、じっと抑えながら、くだらない話をしないほうが胸の奥に隠した悲しみがもっとうまく伝わる気がした。それで、セリフを言う時も低いトーンではっきりと強く言った。数年間していなかった会話をようやくするようになった人物だから。

―あなたも人々にはあまり話しかけないというイメージが多い。そういう面でテシクと似ているところがあるのか。

ウォンビン:私がやったすべての役が自分と似ているところがあるし、テシクもそうだ。何か似ているとすれば……ひとりで暮らしているところ?(笑)

―ひとりで暮らす方が楽か?(笑)

ウォンビン:実は、必ずひとりで暮らしているわけではないが(笑) 人々がそう思っているようだ。

―ひとりでいるときは何をするのか。

ウォンビン:絵を描いたり、写真を撮ったりする。それは自分の時間で、一番気が楽になる。誰かと一緒に何かをすることも好きだが、ひとりで何かをする時間が必要だから。頭の中が複雑なとき絵を描くと気持ちが安定する。

記者 : カン・ニョンソク、翻訳 : ハン・アルム、写真 : イ・ジンヒョク、編集 : イ・ジヘ