「君たちは包囲された!」&「弁護士の資格」ドラマを良くも悪くもする“ロマンスの活用”

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※この記事にはドラマのストーリーに関する内容が含まれています。
写真=SBS、MBC
SBS水木ドラマ「君たちは包囲された!」は、チャ・スンウォン、イ・スンギ、Araなど、話題性と興行力を持つ俳優が出演し、同時間帯1位をキープしたが、12%台で留まり視聴率を大幅に引き上げることには失敗した。同時間帯に放送中の「弁護士の資格」は、9%台の視聴率であまり高い記録ではないがマニア層を形成し好評を得ている。

実は俳優たちが持つ好感度と期待感で「君たちは包囲された!」が視聴率の面で遥かに有利な位置に立っているものの、ストーリーの完成度だけを考えると「弁護士の資格」が優れている。しかし、大衆的人気を得られない理由は、ドラマのストーリーが不親切だからだ。「弁護士の資格」に登場するキム・ソクジュ(キム・ミョンミン)弁護士は、事件を解決するために難しい法律用語を使い、人物同士の難しい利害関係を理解させなければならない。

気楽に座って説明を聞くよりは、事件に入り込みしっかり理解するために努力しないと、ときには事件の流れを逃してしまう。ストーリーや事件そのものは興味深いが、事件を解決して行く過程が余り親切でないため、マニア層は増えるものの、大衆的に人気を集めることは難しい。

それぞれのドラマのロマンス、没入を妨害するか助けるか

昔は悪辣な弁護士だったが、記憶喪失で変化を経験したキム・ソクジュが、今や法律事務所を出て絶対権力に立ち向かうことに伴い、ドラマの興味は増すだろう。人間関係はそれだけ複雑になると思われる。このすべてを理解して見る視聴者は喜びを感じるが、途中から入る視聴者たちがその感情の流れについて行けるかが鍵と言えよう。

そのため、このドラマが大衆性のために選択したのがロマンスだ。キム・ソクジュとイ・ジユン(パク・ミニョン)のロマンスがスパイスのように登場し、視聴者のニーズを満たす。しかし、問題は「弁護士の資格」でロマンスが上手く溶け込めてないことだ。イ・ジユンは同ドラマでキム・ソクジュの正義感を覚醒させ、正しい道を選択するよう助力する役割だ。しかし、イ・ジユンの正義感は、キャラクターの愛らしさを表現するよりは、我がままに近い。

写真=MBC
ただのインターンに過ぎないキャラクターが、大手法律事務所の最高の弁護士の1人であるキム・ソクジュの事件を牛耳ろうとし是非を問うことは、越権行為(自分の権限の範囲を超えた行い)にほかならないからだ。弁護士は、必ず正義の味方にならなければならない職業ではない。ドラマの台詞の中でも表現されたように、悪魔でも弁護しなければならないのが弁護士の仕事だ。

しかし、イ・ジユンはキム・ソクジュが記憶を失う前なら言及することも出来なかった話を、あまりにも当たり前のように、当然そうしなければならないように持ち出し、正義を強要する。いくら純粋でも、ロースクールに入り、勉強するだけした人物の行動にしては、あまりにも現実感がない。

ロマンスの問題点は、単純にイ・ジユンのキャラクターから来るものではない。もっと大きな問題は、焦点がロマンスに当てられれば当てられるほど、ストーリーが不明確になるところにある。キム・ソクジュが巨大権力を相手に戦って勝つ痛快さがドラマの基本コンセプトだが、そのような痛快さの中でロマンスは、むしろ没入を妨げる要素だ。キム・ソクジュの活躍に焦点を合わせた視聴者であれば、むしろロマンスが出るときはその没入度が落ちる印象を受けかねない。典型的でないストーリーの構造から見た時、典型的なロマンスはあまり望ましくないことだ。

写真=SBS
一方「君たちは包囲された!」のロマンスはドラマで最も楽しみな部分といえる。「君たちは包囲された!」はこれまで主人公に関するストーリーより、その周りのストーリーに重点を置いた。しかし、問題は“捜査物”とのジャンルにも関わらず、ドラマが見せる事件があまりにも粗末で典型的だったことだ。

例えば、食堂でいきなり拉致させるとんでもない事件に対する前後の状況説明もなければ、ガスが漏れる状況でも市民たちはむしろ現場に集まるシーンなどがそうだ。ストーカーに対する対処もあまりにも未熟だ。いくら新米とはいえ、試験に合格し訓練まで受けた刑事とは信じられないほど間抜けな彼らの行動は全く現実的ではない。

子供の頃のトラウマを持っているウン・デグ(イ・スンギ)の感情を感じる頃にいきなりコミカルな雰囲気が流れ、没入を妨害する。不自然なコメディは無理があって、とりとめのない話にしか感じられない。また、ところどころ登場するナレーションは、適切というより突然で違和感を感じさせる。IQ150のフォトグラフィックメモリー(映像記憶)を持つというウン・デグの能力は、単純に設定に過ぎず、如何なる天才性も見せてくれない。

このような状況でオ・スソン(Ara)とウン・デグのロマンスは、ドラマに活力を与える要素だ。その理由は、その時やっとドラマで主人公が活躍する時点が来るためだ。あまり面白くない事件の中で主人公に対する没入度が足りない時、オ・スソンとウン・デグが前面に出てストーリーをリードし、ドラマに入り込めるようにする。主人公たちをあまり活用できなかった今までのストーリーを補うためには、いっそロマンスを強化したほうがいいだろう。

このように、この2本のドラマはロマンスのジレンマに落ちている。一方はストーリーに集中するためにロマンスがない方が良いが、もう一方はキャラクターに集中するためにロマンスを強化したほうが良い。反対の性向を持つ2本のドラマがどのような結末を迎えるかに関心が集中する時点だ。

記者 : ウ・ドンギョン