Vol.2 ― 放送終了「九家の書」名作ドラマが生まれた理由

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※この記事にはドラマ「九家の書」の結末に関する内容が含まれています。
写真=MBC「九家の書」スクリーンショット
またひとつ名作ドラマが幕を下ろした。3ヶ月間視聴者に涙と笑いを与えたMBC月火ドラマ「九家の書」(脚本:カン・ウンギョン、演出:シン・ウチョル) がその主人公である。

「九家の書」は半人半獣として生まれたチェ・ガンチが人間になるために繰り広げるスペクタクルで軽快な武侠(武術・任侠をテーマにした作品) 活劇だ。4月8日に韓国で第1話が放送され、今月25日に終了した。

「九家の書」はイ・スンギと“演技アイドル”miss A スジ、スター監督シン・ウチョルの共演で制作段階から注目を浴びた。「九家の書」はその期待を裏切ることなく、名作ドラマとなった。「九家の書」がどのようにして視聴者を魅了し、視聴率1位をキープし続けたのか、その理由をまとめてみた。


シン・ウチョル監督の演出力

「九家の書」は第1話から視聴者を夢中にさせた。「九家の書」の色彩や雰囲気は他の時代劇とは異なっていた。夢幻的かつ幻想的だった。特にCGが多かったが、不自然さや、おかしな感じはなかった。

また春という季節も「九家の書」の夢幻的な雰囲気作りに一役を買った。そのおかげでチェ・ガンチ(イ・スンギ) とパク・チョンジョ(イ・ユビ) の“桜キス”が可能であったし、木の下でガンチとタム・ヨウル(スジ) が出会うシーンも美しく描くことができた。

このような美しいシーンの陰にはシン・ウチョル監督の演出力があった。彼はシーン毎に念入りな演出をすることで有名だ。今回もそんな彼のこだわりが攻を奏したといえよう。


出演陣の名演技

「九家の書」のキャラクターは主演・助演を問わず生き生きとしていて、俳優たちの名演技がドラマを完成させた。

最高の相性をアピールしたイ・スンギとスジはこのドラマを通じて「イ・スンギとスジの再発見だ」という評価を受けた。イ・スンギはアクション演技も可能な俳優であることを証明し、素晴らしい感情表現で“歌手出身”というレッテルを確実に消した。ヨウル役のスジも同じだ。“国民の初恋”スジは最もホットな女優として位置づけられた。セリフのトーンが多少不自然だという評価を受けたが、感情表現は素晴らしかった。スジの涙の演技は視聴者の母性本能を刺激した。

ク・ウォルリョン役を演じたチェ・ジニョクはこのドラマを通じて最大の恩恵を享受した人物として浮上した。出演シーンは短かったものの、圧倒的な存在感をアピールした。チェ・ジニョクはロマンチックな神獣と暗い千年悪鬼を行き来しながら視聴者を虜にし、「ウォルリョンアリ(ウォルリョンに夢中)」という新しい造語まで誕生した。

悪役チョ・グァヌンも欠かせない。グァヌンというキャラクターは俳優イ・ソンジェに出会ってはじめて息をした。イ・ソンジェは他の俳優がグァヌン役を演じることが想像もできないくらい素晴らしい演技を見せてくれた。イ・スンシン役のユ・ドングンの演技もさすがだった。この他にユ・ヨンソク(パク・テソ役)、イ・ユビ(パク・チョンジョ役)、チョ・ジェユン(マ・ボンチュル役)、ジンギョン(ヨジュテック役)、イ・ドギョン (コンダル先生役)も繊細で安定した演技力で劇に活力を吹き込んだ。


「九家の書」が発信した癒しのメッセージ

「九家の書」のガンチはその存在だけで人々を癒してくれた。人家の前に捨てられた彼はユン氏(キム・ヒジョン)にいじめられながら育った。しかし彼は正義感を忘れず、まっすぐに成長した。

そんなガンチだが、自身が人間ではなく神獣であることに気付いた時は衝撃を受けた。テソやチョンジョをはじめとする周りの人々は神獣になった彼を見て逃げたが、ヨウルだけはガンチのそばにいて力をくれた。ヨウルに対する恋心に気付いたガンチは、人間になることを決心した。

その後、ガンチは「人間になりたいです。半分人間ではなく、ちゃんとした人間になりたいです」「ヨウル、君は僕にとって最も大切な人だ。君がいなければ僕も意味がない」などの名セリフを次々と述べた。ヨウルも「まだ起きてもいないことのためにあなたを失いたくない」と言いながらガンチに対する愛情をアピールし続けた。身分を越え、互いに頼れる存在になった二人の恋はお茶の間を癒してくれた。

しかし結局この二人は運命に逆らえなかった。ヨウルは命を失い、ガンチは“九家の書”を見つけることができなかった。422年が経った2013年、二人は再会した。ガンチは「僕が先に君に気付くから」という約束を守った。

現代で二人の恋が叶うというのは想像を越える結末であった。少し残念だったものの、シーズン2の可能性もうかがわせた。毎回興味深い展開を見せた「九家の書」は最後まで手に汗を握らせた。視聴者が夢中になったこと、それだけでも「九家の書」が名作ドラマであることを証明できる。

「九家の書」の後番組としては、16世紀末の東アジア最高レベルの科学と芸術の結合体である李氏朝鮮時代の陶磁器製作所「分院」を舞台に、朝鮮初の女性沙器匠である百婆仙(ペク・パソン)の炎のような芸術魂と愛を描いた「火の女神ジョンイ」が韓国で7月1日より放送される。

記者 : ソン・ヒョジョン