“タイムスリップ”の時代は終わった…最近のドラマ界は“アイデンティティ”

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最近のドラマと映画を貫くコードは、アイデンティティ

ドラマには兆候、または傾向とも呼べる一定のルールが存在する。昨年の例を見てみよう。「屋根部屋のプリンス」「シンイ-信義-」「Dr.JIN」「イニョン王妃の男」、これらドラマで共通して見られるのは、“タイムスリップ”というコードだった。現代の主人公が時間を遡り昔の歴史の人物と出会うことにより歴史が変わるというドラマのコードが、韓国の昨年の主流傾向の一つだった。

しかし今年は、昨年豊かだった“タイムスリップ”という傾向が滅多に見られない。タイムスリップが抜けた場所には、ドラマのまた違うコードが位置づいているためだ。そのコードとは果たして何だろうか。

それは、自分でない、他の人物として生きなければならない、自分のアイデンティティを隠さなければならないというコードだ。「野王」のハリュ(クォン・サンウ)が代表的な例だ。刑務所から出所したハリュはチュ・ダヘ(スエ)に復讐しようとするが、ハリュというアイデンティティでは復讐がままならない。ハリュが出所するタイミングで彼の双子の兄チャ・ジェウン(クォン・サンウ)がチュ・ヤンホン(イ・ジェユン)に殺害される悲劇が発生し、ハリュは殺された兄の復讐のために、ハリュというアイデンティティを隠して双子の兄チャ・ジェウンに成りすます。

しかし、「野王」でアイデンティティを隠しているのはハリュ一人ではない。ペク・ドフン(東方神起 ユンホ)の姉のペク・ドギョン(キム・ソンリョン)も、実は姉ではなくペク・ドフンの実の母だったのだ。ドギョンは自分のアイデンティティを隠し、姉に成りすましペク・ドフンの保護者役をしてきた。

また、「いとしのソヨン」のユン・ソミ(チョ・ウンスク)は、社長カン・ギボム(チェ・ジョンウ)との一夜の浮気でカン・ソンジェ(CNBLUE イ・ジョンシン)を産むが、実の母だということを隠しカン・ギボムに息子を養子としてあずける。その上、ソンジェの姉や職員のふりをして息子をこっそり助けている。

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「お金の化身」に登場するポク・ジェイン(ファン・ジョンウム)は高度肥満状態だ。母のポク・ファスル(キム・スミ)のお金を無断で盗み逃げした彼女は、脂肪吸引手術を受け、美人に生まれ変わる。ドラマ版の「カンナさん大成功です!」とも言える。殺人の手がかりとなる証拠の万年筆を持っているポク・ジェインを探そうとイ・チャドン(カン・ジファン)は努力するが、彼女を探しだせる確率は低く見える。ポク・ジェインが以前の不細工ではなく、美人になったからだ。

「その冬、風が吹く」では、オ・ス(チョ・インソン)がオ・ヨン(ソン・ヘギョ)の兄を装って近づく。チン・ソラ(ソ・ヒョリム)のせいで負わされた借金78億ウォン(約6億7000万円)を帳消しにするために、オ・ヨンの実の兄が交通事故で急死するとオ・スはオ・ヨンの兄に成りすまして彼女に近づく。実の兄の腕には火傷の傷跡が残っていることを知り、わざと腕に火傷の痕を作るほどオ・スの意図的なアプローチは計画的だ。

注目すべき点は、この傾向がドラマに限ったものではないことだ。映画「新しき世界」のイ・ジャソン(イ・ジョンジェ)は、麗水(ヨス)華僑出身のヤクザチョン・チョン(ファン・ジョンミン)の右腕だ。しかし、イ・ジャソンはヤクザではない。彼の本当の正体は、警察が潜入させたスパイなのだ。

「インファナル・アフェア」は、警察組織内にヤクザのスパイが潜入するが、「新しき世界」ではヤクザ組織の中に警察のスパイが潜んでいる。イ・ジャソンはスパイを辞めたがっているが、彼の願望通りスパイ行為から抜け出すことは容易いことではない。

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自分でない別の姿で生きなければならないドラマと映画の主人公が多くなるのは、現実の中で自分でない別の姿を望む産物だとも分析できる。ポク・ジェイン不細工から美人になるように、復讐のために死んだ兄に成りすますように、借金を返済するために死んだ兄を装うように、今の自分でない別の誰かになったら特定の目標を達成しやすくなるのだ。

結局、自分でない自分になるということは、今の現実に満足できない、自分でない別の自分になるなら今より幸せになれるだろうという、またはより良い人生を生きることができるだろうという念願がファンタジーとして発現されたこととも分析できる。しかし見方を変えると、自分が自分の子を育てる育児においても、自分というアイデンティティを現してはならない非情な現実を反映しているとも言える。

記者 : パク・ジョンファン