「清潭洞アリス」真の愛と幸せの意味に気づいてほしい

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歌手PSY(サイ)をワールドスターにしたのは、「江南(カンナム)スタイル」という一曲だった。同曲は、富裕層が集まっている江南地域では、「昼には温かい人間的な女、夜になれば胸が熱くなる女」や「大人しく見えるけれど遊ぶ時は遊ぶ男、筋肉より思想がごつごつした男」が集まって遊ぶということを主な内容としている。

だが、また同じ江南地域である“清潭洞(チョンダムドン)”は、話が違う。全身を高級ブランドで固めた品のある男女がそばを通り過ぎるようなところという印象が強く、遊興とは距離があるように見える。SBS新特別企画「清潭洞アリス」(脚本:キム・ジウン、キム・ジンヒ、演出:チョ・スウォン)は、清潭洞を小説「不思議の国のアリス」の中の神秘的な国に例えた。キム・ジウン脚本家は「『豊かな時代になぜ私たちは剥奪感を抱くのか』という疑問から始まった」とし、「持っていても不幸で持たなくても不幸ならば、幸せになるためにどんな価値を持って機会を模索しなければならないのかを描きたい」と伝えた。

27日にSBSで開かれた制作発表会では「清潭洞アリス」のハイライト映像を見ることができた。華麗な世界に憧れるアパレル会社の新人デザイナーハン・セギョン(ムン・グニョン)と、女の俗物根性を嫌悪する世界的なブランド流通会社のCEOチャ・スンジョ(パク・シフ)の最初の出会いが描かれ、学生時代にハン・セギョンとライバルだったソ・ユンジュ(ソ・イヒョン)が玉の輿に乗ってハン・セギョンの上に君臨するシーンが流れた。

パク・シフ「これから情けない男の姿をお見せします!」

だが、ドラマではこの過程を一遍のchit-lit小説(20~30代女性の仕事と恋愛を描いた大衆的な内容の小説)のように愉快に描いた。ハン・セギョンが清潭洞の道端で両手を上げながら「私も人気デザイナーになりたい」と叫ぶシーンや、ソ・ユンジュに過去の復讐をするかのようにチャ・スンジョが自身の名言を録音して聴きながら拳を握り締めるコミカルなシーンは爆笑を誘った。

これをうまく表現するため、俳優たちは壊れる役を演じることになったが、特にパク・シフはこれまで悲劇的な恋愛を描いた朝鮮時代のロミオ(「王女の男」)やイケメン殺人犯(「殺人の告白」)で見せたイメージから脱し、恋愛とコメディのジャンルを行き来する活躍を見せた。これに対し彼は、「これまで僕が演じてきた全てのキャラクターの集大成に壊れる姿を加えた。感情の幅が広く、ただカッコいいキャラクターではなく、視聴者に親近感を持ってもらえると思う」と期待を示した。

「少し情けない姿を見せると思います。普段とは違って(笑)…というのは冗談です。僕が長く付き合ってきた友人にしか見せられない姿を、キャラクターを通じて表現しているようで、演技しながら楽しかったです。僕は(キャラクターの特徴を)自分の中から見つけ出そうとする方で、そのような面が自然にカメラに収められたのではないかと思います。露出シーンもあると思いますが、それはまだ準備ができていません。身体の具合を見て決めなければならないと思います」(パク・シフ)

これまで主に都会的な役を演じてきたソ・イヒョンも、自身のイメージをより多様化させた。どのドラマにも出てきそうな普通の“悪役”に見えるソ・ユンジュが、ストーリーが前に進むことにつれ、より多様な姿を見せるためだ。ソ・イヒョンは「ユンジュは最初から金持ちの、もともと清潭洞に住んでいた人ではない。だから、たまにがっかりさせる部分もあるし、品があるように見せているけれど、後になってそうではないように見えるところもある」と伝えた。

ソ・イヒョンは、清潭洞婦人(玉の輿に乗った女性)らしさを表現するため、撮影現場でかなり苦労したと言う。彼女は「ハイライト映像に出てきたダイヤモンドセットも、本当に1億9千万ウォン(約1430万円)で、着ているワンピースも5~6百万ウォン(約37万6千円~45万円)もする。そういったものと一緒に撮影するのはとても疲れる。普通にご飯を食べに行ってもいけないし、車にもそのまま入ってはいけない」と話した。おかげでフロアディレクターとスタイリストは尻に火がついたという。ソ・イヒョンは「いつも白い綿手袋を着用して扱い、(衣装とアクセサリーのせいで)私は冷や飯食いだ。高価な服ばかり着ているので、ちょっと不便だ」と付け加えた。

ムン・グニョン「誰にもあり得る欲望に気づき、変化する姿を描きたい」

だが「清潭洞アリス」の美徳は“清潭洞”という世界と、その中の人物を愉快に描きながらも、決して軽くならないよう注意したところにある。「幸せになるためどのような価値を持たなければならないのかを描きたい」という脚本家の言葉のように、ドラマは輝く幻想の中の現実を描く。そのメッセージを伝える核心的な人物は、清潭洞を探険するアリス、つまりハン・セギョンだ。

ハン・セギョンを演じるムン・グニョンは「(人物が)その目的を明確に表わしていることが、以前のドラマのキャンディ(漫画キャンディ・キャンディの主人公、お転婆な少女の意味)のような役柄とは違うと思う。男性主人公が女性主人公に偶然に会い、『君のような女は初めてだ!』という形で恋に落ちるわけではなく、女性が『私も素敵で堂々と生きていく』という目的を持っている」と説明した。

やる気満々な新人のデザイナーハン・セギョンをこのような“清潭洞婦人”志望者にするきっかけも、ドラマで明確に説明される。みっともない現実に恋人(ナムグン・ミン)とも別れ、留学していないという理由で仕事からも外される。弱り目にたたり目で、自身がいつも努力で勝ってきたソ・ユンジュは玉の輿に乗った。「私がダメなわけじゃなくて、私が身に付けているものがダメだから、センスがなさそうに見えるんじゃないか」というハン・セギョンの一言は、見た目で判断される自身の立場をひしひしと感じ、変化を夢見る決定的な一言になる。

ムン・グニョンは「これまでセギョンは『努力して何かを成し遂げる』と信じて生きてきた人だった。だけど、あるきっかけによって変化し、心の中に秘められていた欲望を表に出すという部分で共感できる」と語った。誇張されたり、とんでもない欲だけがハン・セギョンの全てではないということだ。また、彼女は「誰もが欲望や羨み、嫉妬などの感情を持てると思う。先入観からこれを隠す場合もあるし、逆に自慢する人もいるだろうけど、その正直なところに気づくところを上手く表現したいと思う」と意気込みを見せた。

だが、ドラマはもう一度ハン・セギョンに真の愛と幸せの意味を気づかせるきっかけを与える。これに対しソ・イヒョンは「『玉の輿に乗って運命を変える』と誓う女と『そのような女に会ってはならない』と思う男性が対立する状況で、どのように愛すべきかを教えてくれるドラマ」と強調した。俳優たちが「ただ平凡な町」と口をそろえて話したように、清潭洞も結局人が生きていく世界なのだ。同ドラマは、12月1日の午後9時50分から韓国で放送が始まる。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ミナ、写真 : イ・ジョンミン