「極秘捜査」ユ・ヘジン、笑わせなくても通じる彼の真価

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写真=ムン・スジ記者
何もしたくない。すでに何もしていないけれど、さらに激しく何もしたくないと話していた俳優ユ・ヘジン(45)。自分が発した言葉に責任でも取るのか、今度は本当に激しく何もしなかった。無駄のない淡白さがこんなにも致命的なのか、彼に会う前は分からなかった瞬間だ。

1978年、韓国を騒がせた誘拐事件をスクリーンに収めた犯罪映画「極秘捜査」(監督:クァク・キョンテク、制作:(株)ジェイコンカンパニー)。一風変わった占いで誘拐された子が生きていることを確信した導師のキム・ジュンサンを演じたユ・ヘジンは、刑事のコン・ギルヨン(キム・ユンソク)と共に極秘で子どもを捜す捜査を始める。

2005年、映画「王の男」(監督:イ・ジュンイク)では確かな技芸と口才で市場町を魅了した大道芸人のユッカプ、2006年「タチャ イカサマ師」(監督:チェ・ドンフン)では花札のギャンブル場を転々とするコ・グァンリョル、2010年「黒く濁る村」(監督:カン・ウソク)では村の秘密を知っている狂気を持つキム・ドクチョン、昨年約800万人以上の観客を動員した「パイレーツ」(監督:イ・ソクフン)では海賊だったが、船酔いのため山賊に転職したチョルボンなど、作品ごとに演じた特別な職業に、自身だけの魅力を加えたユ・ヘジン。

限界のない変身で観客から信頼されてきたユ・ヘジンは、今回「極秘捜査」でこれまで見せた強烈で線の太い演技ではなく、信念を守る小市民に変身し、感動を届ける。観客が腹を抱えて笑うほどのコミカルさも、戦慄が走るほどの狂気もないが、ユ・ヘジンはユ・ヘジンだった。人間味を加えたユ・ヘジン。彼の逆攻撃が今回もしっかり利いた。

「ロールモデルが何人かいますが、とりあえず『良い年のとり方をしよう』と思います。『いつもきちんと生きよう』と悩み、『小さな器のように行動しないこと』を誓います。時には敏感になるときもありますが、そんなときは山に登って反省して帰ります。でも、こんなことを考えずに生きるよりは、考えて生きたほうがいいと思います。ハハ」(以下、一問一答)

―ユ・ヘジンの今年初めての映画だ。「極秘捜査」を見た感想は?

ユ・ヘジン:僕も同じように見ました(笑) 撮影前にクァク・キョンテク監督、(キム)ユンソクさんと会ったとき、映画について話しましたが、あの時交わした話の雰囲気が上手く表現されたようで満足しています。まず、映画から人間らしさが感じられてよかったです。

―マスコミ向け試写会の評価も非常に良く、公開前に心配は少し減ったと思うが。

ユ・ヘジン:僕もレビューを見てみましたが、良く見てくれたようでした(笑) オールドになりかねない物語ですが、それに勝てるずっしりとしたメッセージがあるため良かったと思います。ハリウッド超大作と戦わなければなりませんが、美徳があるためやってみても良さそうな戦いだと思います。まあ、興行は天の意思でしょう。人間に出来るのはここまでだと思います。

―「極秘捜査」を選んだ理由は?

ユ・ヘジン:「極秘捜査」は豆腐のように綺麗で純粋な味と色を出すことを望みました。漂白したり、調味料をたくさん入れない豆腐のようであればと思いました。演技をするときも久しぶりに多くのテクニックが入らないようにしました。実話をベースにしたのもありますが、こんなシンプルな魔力が「極秘捜査」を選んだ理由です。

―誘拐された子どもを捜す導師のキャラクターがとても新鮮だ。コメディーとして活用しやすい役柄だが、コミカルさをすべて抜いた。

ユ・ヘジン:そうです。正直、今回はコメディーを念頭において演じたわけではありません。本当に真剣にアプローチしたかったです。導師のキム・ジュンサンは映画の中でまるで数学者のような雰囲気です。四柱推命というのが科学的な確率であるということを学びました。所信を持って動く、竹を割ったような気性を持つといいましょうか。シャーマンという偏見を打ち破りたかったです。

―前作で見せた演技とはかなり変わったようだ。

ユ・ヘジン:演技も僕の年齢と共に変わるようです。子どものころ読んだ本が、今読むと感想が変わるように、演技も年齢によって感じられる感情が違うようです。年齢に相応しく変わるみたいでしょう?ハハ。

―それぞれの所信について語る映画だが?

ユ・ヘジン:最初から最後まで所信を語る映画です。実際にキム・ジュンサン先生も所信を持って一生を生きる方ですから。僕は演技をしながら父のことをすごく思い出しました。僕は余裕があって裕福に育った人ではないですが、子どものころ、父はしっかりとした所信を持つ方でした。いつも母が父の服をアイロンがけするなど、丹精でスマートな姿でした。強直な方ですが、今回演技をしながらその時の父を思い出しました。

―功を立てたが、それを隠すのもこの映画の美徳ではないか?

ユ・ヘジン:映画の台詞の中にも「子どもを見つけたらいい」というものがありますが、まさにそれだと思います。僕も所信をもって生きようとし、そんな人生を追求します。年をとってさらに切実になるようです。ありふれた言葉ですが、名誉や物質は努力した分だけついてくるようです。もちろん、がんばっても出来ないことがありますが。

―運を信じる方か?

ユ・ヘジン:努力することを前提ですべてのことには運が必要だと思います。ものすごく努力してチャンスがやってきたら掴む人がいれば、逃す人もいるじゃないですか。運に恵まれなくて、チャンスをつかめなかった人もいます。よく考えてみると、僕はとても恵まれています。昨年「パイレーツ」(監督:イ・ソクフン)がライバル作の中でヒットしたのも、tvN「三食ごはん」漁村編に出会ったのも運です。自分でもラッキーだとよく思います。疲れた後輩たちにも運を掴むまで絶対力抜かないでとアドバイスします。

―事件当時、ユ・ヘジンはどんな子どもだったのか?

ユ・ヘジン:78年度に起きたことですから、8歳の時ですね。ちょうど社会的なニュースに関心を持つ年頃ですから。ハハ。冗談です。僕はその時そんな事件が起きたことを知りませんでした。(キム)ユンソクさんとクァク・キョンテク監督は同じ地域で起きたことであるため、肌で感じたと思いますが、僕はただ遊ぶことに夢中でした。呼び笛も持っていませんでした。ただ、両親に変な人についていくなとはたくさん言われました。

―実際にキム・ジュンサンに会ってアドバイスを求めたのか。

ユ・ヘジン:まだ会えていません。映画撮影のときはキム・ジュンサン先生の娘さんが来てくれて、そのときお会いしました。映画にも娘さんが3人出てきますが、実際に3人の娘さんがいます。長女の方が撮影するのを見て涙を流したそうです。父のことを思い出したからだと思います。その話を聞くと「本当にしっかり演じないと」という責任感を感じました。ふざけないでもっと真剣に取り組まないとと思いました。

―キム・ジュンサンの娘さんによって胸がいっぱいになったと思うが。

ユ・ヘジン:長女の方が僕に直筆の手紙をくれました。2枚の便箋に書いたその手紙から、真心がすごく感じられました。形式的な挨拶ではなく、心が伝わる手紙でした。読んでから、家で大切に保管しています。実はこんな手紙は初めてでした。二度と感じられない気分を感じました。

―恥ずかしいところはなさそうだ。

ユ・ヘジン:コン・ギルヨンさんとキム・ジュンサンさんが試写会で「極秘捜査」を見ますが、マスコミ向け試写会ほど緊張します。事件の当事者の方が見て気に入らなかったらどうしようと思います。

―「極秘捜査」の後は「国選弁護人ユン・ジンウォン」(監督:キム・ソンジェ)ですぐに観客に会うが。

ユ・ヘジン:「極秘捜査」も大事ですが、「国選弁護人ユン・ジンウォン」も僕にとっては格別です。長いことインキュベーターにいた身体の弱い子どものようです。ちゃんと成長して欲しいです。愛情のある作品で、やっと公開しますから。可愛がらざるを得ない作品です。「極秘捜査」が今年のスタートで、その後「総数意見」「ベテラン」(監督:リュ・スンワン)などがたくさん待っています。観客の皆さんにも楽しみにしていただきたいです。

記者 : チョ・ジヨン