ナムグン・ミン、片思い男からサイコパスに「僕のキャスティングが“神の一手”?自分でもそう思う」

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写真=935エンターテインメント、SBS「匂いを見る少女」スクリーンショット
無表情で誰かを見つめると、ぞっとする。何も映らないその目が、固く閉じた唇が何を考えているのか、恐ろしくさえなる。しかし明るく笑うときは幼稚にも“春の日差し”のようだ。冷たい気運はすぐに隠して優しさを感じさせる。俳優ナムグン・ミンの顔は、小さな変化でもその差は非常に大きい。

ナムグン・ミンは、放送終了したドラマ「匂いを見る少女」(監督:イ・ヒミョン、演出:ペク・スチャン、オ・チュンファン)で自身の魅力を十分に発揮した。今回のドラマで彼はスターシェフのクォン・ジェヒに扮した。優しい男のようだったが、ドラマの軸となるバーコード連続殺人事件の殺人犯という隠していた正体を現し、視聴者をあっと驚かせた人物だ。普段の優しい顔と殺人魔の非情な姿の大きな違いが衝撃を与えた。

そのためか、今回のドラマでナムグン・ミンのキャスティングを「神の一手」という人が多かった。彼はその話に「そう思う」とうなずき、笑いを誘った。何よりも多くの人が、自身が出演したドラマを見て「いい」「怖い」などの反応を示したことに満足したそうだ。

「悪役が初めてではないにもかかわらず、とりわけ“再発見”と言われることが多かった。恐らく僕を代表する作品にまだ出会えていないため、そう言われるのではないかと思う。それで、今年は休まず働こうと思う。『良い作品だ』と思えれば、とりあえずやります(笑)」(以下、一問一答)

―「匂いを見る少女」のナムグン・ミンのキャスティングを巡り、“神の一手”だと言われた。

ナムグン・ミン:そうだと思う(笑) とりあえず、ドラマが上手くいったのでそのようなことも言われるのだと思う。俳優は“関心を集めるドラマ”に出てこそ、視聴者から関心を得られると思う。いくらアカデミー主演賞を受賞するほどの名演技をしても、見る人がいなければその演技はいいものだと言われない。前の作品でも演技は頑張ってきたが、反応がイマイチで、そのようなことで心を無にしていたところ、この作品に出会った。関心を受けることのできるドラマに出られたという点で、運が良かったと思う。

―ドラマの結末を巡って意見が分かれた。クォン・ジェヒに対する説明が不十分で「不親切だ」という話もあった。結末に満足しているのか。

ナムグン・ミン:気に入っていると思う?(笑) しかし、ドラマの結末について僕が不満を持つことは出来ないと思う。どんな結末であれ、僕の演技がすべての人を満足させなければならないと思った。正直、前は流れが良くなければ悩んだが、今はもうそんな時期は過ぎたようだ。

―ナムグン・ミンが思う“クォン・ジェヒの殺人の理由”は何か?

ナムグン・ミン:正直、クォン・ジェヒがサイコパスになるしかなかった理由など、詳しい部分が台本に描かれると思った。僕が勝手に決めて演じるのは違うと思い、後半で僕も知らなかった物語を聞かせることが出来ると予想していた。しかし、そんな時間が与えられなかった。ドラマが終わった今になって考えてみるが、ありふれた言葉ではあるが、“僕の人生で感じられなかった部分を他の人の人生を通して感じてみたい”というものではないだろうか。恐らくチョン・ベッキョン(ソン・ジョンホ)は身長が高すぎて殺したかも知れない(笑)。

―クォン・ジェヒにはあだ名も多かった。

ナムグン・ミン:ナムグン・ミンを見て鳥肌が立つと、「ナムボソ」という。そんな風に注目してくれるのは嬉しかったが、一方ではプレッシャーを感じたりもした。このドラマでは僕だけでなく、他の俳優も輝く必要があったためだ。みんなの話が上手く組み合わさり、それぞれの役割に合う注目を浴びるのがいいじゃないか。この作品に僕が出演して上手く行ったが、欲張ったりはしなかった。

―悪役が初めてでないにもかかわらず、“ナムグン・ミンの再発見”という話をたくさん聞いた。

ナムグン・ミン:この流れをこのまま次の作品に繋げていけばどうなるか分からないが、タイミングを逃してしまうといつか作品をやるとき、また“再発見”と言われそうだ(笑) 恐らく僕を代表する作品にまだ出会えてないためだと思う。「匂いを見る少女」で演技が特に上手だったとは思わない。恐らく多くの方が見たというのが一番大きい理由だと思う。

―クォン・ジェヒが犯人だということが明かされた後、周りの反応はどうだったか。

ナムグン・ミン:(クォン・ジェヒが犯人と明かされた)その日、知人からたくさん連絡をもらった。僕の目が怖かったという。その後、所属事務所の代表は僕と話すときに僕の視線についてたくさん指摘した。僕がうつむいて話を聞き、顔はそのままに視線だけを上に向けることを嫌がった。「そんな風に見ないで」と言った(笑)

―クォン・ジェヒのキャラクターについてどこまで知って撮影を始めたのか。

ナムグン・ミン:具体的な設定は知らなかったが、最初から殺人犯ということを知って撮影に入った。ドラマの前半は本当に顔だけ洗って撮影に取り組んだ。犯人であるため、黒い服を着て帽子を被り、顔も隠した状態で撮影したため楽だった。正直、分量が少なくて最初はカメオ出演のようで、僕のドラマじゃないような気もした。それが少し寂しくもあったが、その時貯めておいた体力でドラマを終えることが出来たと思う。

―鍛えられた筋肉も話題を集めた。

ナムグン・ミン:露出をするために運動をしたわけではない。腰の状態が良くなかったため、リハビリのために始めた運動が続いた。運動するのが好きだ。正直、ドラマの前半は僕の分量があまりなく、運動する時間がたくさん与えられたが、後半に向かうほど上半身の露出シーンがたくさんあった。「運動したものをここで全て使おう」と思ったりもした(笑) 正直、露出シーンはもっとあったが、かなりカットされた。

―ドラマが始まる前に考えていた通り、演技は上手く行ったのか。

ナムグン・ミン:思った通りに出来た。ドラマの撮影前に台本を見ながらその回の中のワンシーンのインパクトのある部分を探す。全体的に力を入れて演じると、演技をする僕も、見る視聴者も疲れるためだ。特に、クォン・ジェヒの正体が明かされる回では「怖く感じられるようにしよう」と思ったが、僕が思ったように視聴者も感じてくれたようだ。

―ポイントになるように演じた部分の中で、もっとも記憶に残るシーンは?

ナムグン・ミン:一つだけ選ぶにはあまりにも多い。チョン・ベッキョンを殺すことを決心するシーン、オ・チョリム(シン・セギョン)が顔面認識傷害を持っているにもかかわらず「僕のこと知っているだろう?」と怖く聞いたシーン、エレベーターで「なぜここに来たんだ?」と聞くシーンなど……あ、ヨム班長を救うために来たチェ・ムガク(JYJ ユチョン)が僕に銃を構えたシーンも思い出す。実際に僕のスタイリストは、僕があまりにも怖く映ったため、モニタリングも出来なかったそうだ。幸い(怖さによる)非好感と好感の間のギリギリの綱渡りが出来たようだ。

―片思い男からサイコパスになった。

ナムグン・ミン:片思い男を演じるときはパートナーがいたのに、今回はパートナーがいなかった。いつも完璧なパートナーはいなかったが、今度は相手すらいなかった。ドラマの前半はチョン・ベッキョンとのブロマンス(BrotherとRomanceを合わせた言葉、男性同士の近しい関係のこと)はあったが、僕が消した後(笑) からは完璧に一人になった。一人で撮影するとやはり楽で、それだけ体力の消耗も少なく、撮影が早く終わるのは良かったが、撮影現場で話を交わす相手もいないというのは残念だった。

―クォン・ジェヒとの完璧な別れのため、ナムグン・ミンがクォン・ジェヒに別れの挨拶をするとしたら。

ナムグン・ミン:すごく申し訳ない。(彼は実際に、謝罪するように頭を下げてみせた)あなた(クォン・ジェヒ)が心の中に積み上げていたであろう話をすべて表現できなかったから、兄貴(ナムグン・ミン)がもう少し有名になって主人公になったら僕の思うままに全て打ち明けられる日が来るようにするね(笑)

僕はいつもキャラクターを演じるたび、そのキャラクターに申し訳ない気持ちがある。積み重なっている感情が多く、物語の後半ではそれを開放してあげたいが、結局我慢しなければならない部分が出来るためだ。今回もそうなったようだ。これからはそんなことがないように、商業的なことを頑張らなければ(笑)

―昔と比べて、考えがかなり変わったようだ。

ナムグン・ミン:年を一つ一つ重ねるほど怖さはなくなり、欲もなくなる。何かをやっているとき、“ガツガツ”しない僕を見る。(―年を取るほど持っているものを逃さないために恐れるものが多くならないのか) 高くまで上り詰めた、頂点を極めた人なら守るべきことが多いため怖くなると思うが、僕はまだ演技の頂点を極められていない。もちろん、まだ頂点までいったことないのに今の位置を維持し続けているのも不思議だが(笑) 確かなことは今年よりは来年が、来年よりは再来年の僕がもっと良さそうだということだ。

―今年の計画は?

ナムグン・ミン:言い続けたい。演技を中心にしようと思う。機会があれば、感情が満たされているとき、表現できなかった部分を表現できるキャラクターに出会いたい。演技をしてスカッとするようなキャラクターのことだ。気持ちをすべて表現できる機会が僕にも来るでしょうか?(笑) いい作品だと思えれば、何があっても出演する。

記者 : チョ・ヘリョン