「皇帝のために」イ・ミンギ“オスの持つ本質的な欲望、極大化して見せようとした”

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俳優イ・ミンギが男の中の男として戻ってきた。これまでは芸能界を代表する年下男として保護本能を刺激し、お姉さんたちの胸をときめかせたイ・ミンギは、映画「恋愛の温度」で誰でも一度ぐらいは会ったことのある“ありふれた男”の定石を見せてくれた。以後、映画「その怪物」では、欠点のない殺人鬼テスを演じた。この世の中にいなそうな、いてはならないテスを通じて、イ・ミンギは自身の皮を脱いで出てきた。

過去には女が見る男、またはこの世の中にいなそうな虚構の人物を見せてくれたイ・ミンギは、映画「皇帝のために」では、男の世界の男を演じた。オスの本質的な欲望を極大化させたキャラクターであるイ・ファンは、イ・ミンギを通じて改めて作られた。

「皇帝のために」は、釜山(プサン)を背景に勝った者だけが生き残るギャンブルのような世界で、異なる皇帝を夢見る二人の男性の物語を描いた作品だ。イ・ミンギは、将来有望な野球選手だったが、八百長に関与して墜落してしまったイ・ファン役を引き受けた。イ・ファンは男の欲望を極大化したキャラクターだ。必ずどこかには存在しそうな人物だった。ただ“欲望”という枠組みの中でのみ見せられただけである。

皇帝になりたい男たちの欲望、30代に差し掛かった俳優イ・ミンギと人間イ・ミンギ、過去のそして未来のイ・ミンギについて話を聞いてみた。

以下はイ・ミンギとの一問一答である。

―前作「その怪物」に続く、また強い役どころである。

イ・ミンギ:前作に比べて苦労はなかった。精神的にはむしろ「その怪物」が大変だった。テスは非人間的な感情と表現すべきことがあった。イ・ファンは一つの感情(欲望)を極大化させて断面的に見せようとしたら、ちょっと強く見えはしたものの、人の中に存在する感情だった。

―男たちの色が濃い映画は、実は初めてのようだが。

イ・ミンギ:男たちの物語を渇望していたというよりは、嬉しかった。「恋は命がけ」を撮った後、「次の作品で何をするかは分からないが、男の話がしたい」と思った。その次が「恋愛の温度」だった。個人的に男についてよく理解しているようだ。知り合いの年下の友達と年上の友達、同い年の友達がみんな男だ。女性については、むしろ作品をしながら学んで感じているようだ。それで僕が(パク)ソンウン兄さんを魅了したのではないかと思っている。ハハ。

―実際に男たちの世界では、イ・ファンのような欲望を普遍的に持っているのでは?

イ・ミンギ:どうしてもそうだ。男同士で集まれば、リーダーがいる。例えば会合を行った時に、人々を集めたり、食事をして支払ったり、着々と進める、そんな人がいる。ある人は顔色を見ながらためらうが、リーダーはそうではない。また、言った言葉の責任を負わなければならない。オスの本質的な欲望だと思う。

―イ・ファンは普通の男という意味か?

イ・ミンギ:親子関係を見れば、父親をすごく高い所にいると思っている。憧れの対象だ。父親は僕が知っている大人の中で、最も大きな大人だ。年を取って父親がだんだん小さく見える。父親を超えたいという欲望を少しずつは持っているのである。そんな理由で、イ・ファンはある意味では一番軟弱な人物であるのかも知れない。自分自身では満たせない人だったから。その先の空しさに出くわした時も、結末を知っていても、止められないものだ。ある面では、おぼろげに見えるかもしれない。

―「その怪物」に続き、今回もアクションがある。

イ・ミンギ:大変さの面では、「その怪物」がもっと大変だった。「皇帝のために」では、人が多くて物理的な時間が長くかかるというのが大変だった。また、空間的制約があった。それから来る疲労感だ。また天気がとても寒かった。撮影に入ると何でもないふりをして、OKのサインが出とぶるぶる震えたりしていた。

―アクションと同様に、ベッドシーンがかなり印象的だった。

イ・ミンギ:撮影に入ってから、ヨンスとの関係が恋なのか欲望か考えた。その中間地点でなければならないという話をした。ベッドシーンだけ見せてはならなかったし、その中に感情が見えなければならなかった。もし「皇帝のために」でベッドシーンがきれいに描かれたら、そのベッドシーンは必要なかった。初めからその方向で行く映画だった。女性観客には心地よくないかもしれない。

―それならヨンスとイ・ファンは、本当の愛だったのか?

イ・ミンギ:シナリオでは誰が見ても愛だった。男性主人公に刃になって戻ってくような、そんな愛だ。食傷された感じと公式的な感じがあった。監督と話をして修正された。観客たちが見るに、愛と簡単に認められない地点があってほしかった。きっと愛だが、イ・ファンが愛という感情だと認めない。月日が流れた後、それもまた愛だったと感じたはずだ。

―最近「魔女狩り」の収録をしたと聞いた。実際行ってみたらどのような感じだったのか?

イ・ミンギ:水準が高い。高いが、放送で僕を知らない人に僕に対する話をしたからそうで、日常生活では水準はないではないか。単にいやらしい話ではなくて、人間の感情について率直な話をする。ある程度現実に触れている、適度な深さがある番組だと思う。逆に色々なことを考えるようになった。

―いつのまにか30代に入った。変化の必要性を感じるのか?

イ・ミンギ:俳優としてはよく分からない。個人的な部分である。30代には僕の人生を持ちたいと思う。20代では作品を通じて、作品で僕を使った。消耗されるという感じがどんな感じなのか分かった。僕の中にたまったものがあってこそ、見せるものがある。僕が丈夫でいてこそ、演技する時も丈夫に見えて、年相応な演技ができると思う。

―それでは、個人的に自らに変化を与えてはいるのか?

イ・ミンギ:一度演技しない僕の人生自体に、何らかの価値を付与してちゃんと暮らしていかなければならないと思う。趣味でもありえるし、手放せないものでもそうだ。慣れができると挑戦せずに諦めるようになる。基本的な枠組みの中で、適切に妥協する。そうならないようにしている。

―10年近い歳月にわたって演技をしている。自らによくやったと褒めるに値する歩みだと思うか?

イ・ミンギ:個人的には褒めるしかない歩みだった。仕事をなんでもかんでもしなかった。条件が合わなかったら、作品に入らなかった。休むならば単にやってしまえという思いで作品に入っていかなかった。映画「TSUNAMI -ツナミ-」以降は1年以上休んだ。仕事があった。次の作品を選択して撮影するようになるまで時間がかかるから、残念なことがあったら捨てられた時間である。しかしその時間にも何かをして生きたから、僕の中に積み上げられたものはある。

記者 : イ・ウンジ、写真 : ソン・イルソプ