チェ・ジニョク「ブレイクしたって?僕は浮かれないように努力中」

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写真=レッドブリックハウス
俳優チェ・ジニョク(28)。雲の上を歩いているような気分であっても不思議ではないが、この男は本当に落ち着いている。周りの反応に流されないように努力している姿をうかがうことができた。すでにデビュー7年目。自分自身をコントロールする方法を身に付けて久しい。

2006年にあるオーディション番組を通じてデビューした。オーディションブームが起こる前の番組だった。結果は1位だった。これで全て大丈夫だと、残るはブレイクすることだけだと思ったが、道は遠く険しかった。名前を知らせるまでなんと7年の歳月がかかった。演技は忍苦の歳月だった。

MBC月火ドラマ「九家の書」は彼の多くのものを変えた。人々からはお祝いの電話が殺到し、母親は息子のことに気付く周りの反応に驚き、涙を見せた。さらにキム・ウンスク脚本家の「王冠を被ろうとする者、その重さに耐えろ-相続者たち」(仮題、以下「相続者たち」)にキャスティングされる幸運も手にした。チャンスは準備されている者にだけ訪れるものだ。

「最も怖いのは変わること。僕は変わりません」

「最近の周りの反応に困惑する。電話が鳴る回数で実感しているが、それでも後味が悪いのは仕方がない。全く連絡がなかった人たちから何回も電話が来たりする。普段から連絡していたのならよかったが……それでも、嬉しい気持ちのほうが大きい。ここ数日間、検索ワードランキングで1位になるのを見てすごく不思議だった。生まれて初めてのことだった」

それでもチェ・ジニョクは浮かれないように努力している。彼が最も怖がっているのは変わることだ。多くの仲間や友人たちが“人気”のせいで変わっていくのを目にしてきた。そのせいで傷付いたことも多くある。自分も知らないうちに変わっていくのではないかと時には怖くなる。自分だけは絶対に変わりたくないという。

「もちろんすさまじい人気を得たわけでもなく、まだ遠い道のりだとは思うが、浮かれないように努力している。仲の良かった同僚が変わるのを見たことがある。その時、すごく傷付いた。主演ではないということで当たり前のように見下すスタッフも多かった。その分負けん気が沸いてきた。もちろん『成功して、見返してやる』というような負けん気ではない。僕自身への決心のようなものだった」

チェ・ジニョクは若い新人たちを見ると、妙な仲間意識を感じるという。アイスクリームでも買ってあげたい気持ちだそうだ。新人の試練や苦難を誰よりもよく知っているためである。まだ純粋な若い新人たちがいじけるところは見たくない。慣れない撮影現場で一言でも親切に声をかけてあげる人が必要な時だ。

「若い年齢でデビューした子達は、傷付きやすい。僕も新人時代は寂しくて一人で泣いたりもした。彼らを元気付けられるような声をかけたい。僕は情の深い性格だ。正直、傷付くのが怖くて逆に人間関係には慎重だ。しかし、新人たちはそれだけで同情を感じる。応援してあげたい」

「R&Bの歌手だったら人生が変わったでしょうか?」

チェ・ジニョクは自身の新人時代を振り返って笑った。とても幼い時代だった。20歳に音楽への夢を抱き、行き当たりばったりでソウルに上京した。正確に言うと19歳だった。R&Bグループを準備していたが、デビューが遅くなり、結局失敗に終わった。あの頃はどんなに彷徨ったものか。所属事務所や友人の家を転々とし、泊まっていた。とても辛く悲しい時代だった。

「音楽がやりたかったのは、アイドルになりたかったわけではない。高校時代の文化祭で偶然ステージに上がったのだが、友人たちの熱狂的な反響に妙なカタルシス(解放感)を感じた。ステージの上で感じるその歓声とは…あの時の思い出が忘れられず、音楽を夢見るようになった。まだ未練もある。一生懸命勉強し、ミュージカルに挑戦したい気持ちもある」

歌手を夢見ていたというチェ・ジニョクの言葉は、大げさなものではなかった。チェ・ジニョクが歌った「九家の書」のOST(劇中歌)「お元気ですか」は各種音楽配信サイトで1位に輝き、人気を博した。彼の人気が一目で分かる出来事でもあった。その時検索ワードランキングの1位も手にした。

「夢が叶った感じかって?あれだけでここまで愛されることもあるということに驚いたし、感謝するだけだ。今は演技の道を歩んでいるので。『九家の書』は僕に新しい道を切り開いてくれたドラマだ。多分一生忘れられないだろうし、当分は(心の中から)行かせることはできないだろう」

「九家の書」は彼にとって命綱のようなチャンスだった。今回も失敗したら、演技の道を諦めようとも思った。最後だという切実な気持ちが彼を生かしたのだろうか。善良なロマンチストとカリスマ性溢れる悪霊を行き来するウォルリョン役は、彼のために生まれたキャラクターのようだった。チェ・ジニョクの持つ魅力を倍増させ、相乗効果を得た。

「多くの方がウォルリョン役と僕の声が合っていたとおっしゃった。かなり太く、低い声だが、超越的な存在であるウォルリョンとよく合っていたようだ。しかし、悪霊のウォルリョンに扮する時はかなり苦労もあった。視聴者の目には見えなかっただろうが、メイクだけで4時間がかかった。爪も付ける必要があり、トイレに行けないのが一番辛かった」

「恋愛は慎重に押していくタイプ」

ドラマで神獣であったチェ・ジニョクは、人間のイ・ヨニに一目惚れする。禁断の恋に落ちたのだ。実際、チェ・ジニョクの恋愛スタイルもウォルリョンと似ている。誰か気に入った人がいれば、他人の話は耳に入らない。自分の気持ちを第一にするほうだ。

「自分の恋人のことを他の人に聞いたり、噂を聞こうとする人がいるが、おかしいと思う。僕自身が彼女のことをどう思うかが重要なのに、なぜ他の人の考えをより重要に思うのだろうか。誰かが僕の恋人を悪く言っても気にしない。そうして後で後悔したこともあるが、まずは僕の気持ちがもっと大事だ」

最近は恋愛よりも重要なものができた。「相続者たち」は彼にとってまた新しいチャンスとなるだろう。多くの俳優たちがこのドラマにキャスティングされたいと、行列を作ったが、チャンスはチェ・ジニョクに与えられた。新しいサイを投げる時が来た。

「本当に頑張らないといけないが、心配だ。迷惑にならないように今回も切実に最善を尽くす。最近は欲も多くなった。映画にも出演したいし、CMにも出たいし色々とやってみたい気持ちだ。7年間学んできたことをこれからは思いっきり披露したい」

記者 : キム・ジヒョン