映画「全国のど自慢」現実と理想の間で悩む

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写真=人&人ピクチャーズ

金は稼げない夫の夢は叶えられるか?

1980年代の番組が未だに残っているとしたら?当時空前のヒットを記録した番組「捜査班長」と「田園日記」はなくなったが、「全国のど自慢」は1980年から今まで33年間生き残った、現存する最長寿番組だ。「黄山ヶ原」の台詞のように、強いものが生き残るのではなく、生き残るものが強いということを見せてくれる番組なのだ。

映画「全国のど自慢」は、「全国のど自慢」番組参加者の実際のエピソードを基に作られた映画だ。会社の製品の広報のために参加するが上司への恋の感情を隠せない若々しいOL、得票のための広報効果を狙い参加する市長、祖父に言えなかったことを告白したい小学生の女の子など、様々な参加者の物語は全く加工の産物ではない。

「全国のど自慢」のMCソン・ヘは、映画のためのカメオにだけ留まらず、彼なりのキャラクターを構築する。孫娘よりも幼い少女にオッパ(お兄さんの意)と言われ嬉しい気持ちを隠せないソン・ヘの表情が読み取れるのは、80代という高齢を超え、ソン・ヘの感受性が未だに若々しいことが伝わるシーンである。

色んな参加者の中で視線を引くのは、キム・イングォンが演じるボンナムだ。ボンナムは妻と交際する当時は歌手志望生だった。妻のミエ(リュ・ヒョンギョン)はボンナムの甘い歌の実力に魅了され彼と結婚するが、現在のボンナムは結婚前ミエが描いた夫の姿ではない。ボンナムは歌手の夢は抑えこみ、妻が経営する美容室のシャッターマン、または代理運転ドライバーとして生きている。

世の中で恐ろしいものの一つは、時間だ。エリザベス・テイラーのような稀代の美人も、どれだけ豪華な文化遺産も、時間の前では歳をとったり、雨風に風化する。

ボンナムとミエの夫婦も同じだ。結婚前ミエはボンナムにお金は自分が稼ぐから、歌手の夢を育てるように言う。しかし、歳月はミエを現実主義者にしてしまった。歌手デビューできなかったボンナムは、金が欲しければ妻にねだるか、代理運転手をやって稼がなければならない。

そのようなボンナムに対してミエは、美容師の資格証を早く取るように急かす妻になってしまった。ボンナムが結婚前から夢見ていた歌手の道は、見向きもしないように禁じる。ボンナムの理想主義に魅了された乙女のミエが、歳月という荒波の中で、結婚後現実主義者になることは、夢を食べては生きていけないことを悟ったからだ。

大人になっていないからだろうか。ボンナムは歌手の夢を諦められない理想主義者だ。暇ある度に妻の助言通り美容技術を練磨することよりも、ダンスと歌の練習にのめり込む。

夫を食わせていかなければならない切迫感が、ミエを現実主義者に仕立てた。現実の金の前では夢も留保されざるを得ないことを早くから悟ったためだ。しかし夫は未だに金は全く稼げないだけでなく、結婚前の夢まで諦めきれないでいるため、ミエは大いに気苦労している。

ボンナムが妻の助言通り現実を直視し美容師の資格証をとったほうが賢明だろうか、それとも夢は叶うものだという2002年ワールドカップのスローガンを信条に、粘り強く自分の夢を捨てないほうが賢明かを問う映画が「全国のど自慢」である。

記者 : パク・ジョンファン