Vol.1 ― 「嘆きのピエタ」チョ・ミンス“中年の女優は立派な材料…使ってください”

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女優チョ・ミンスが中年女優を語る

女優のチョ・ミンスがチャンスを掴んだ。つまり、演技の味を知る時期に内面の新しいところを見せる機会を掴んだということだ。デビュー26年のベテラン女優がいまさら演技の味を言うのかと疑問を感じるなら、今すぐ彼女の話を聞いてみなければならない。

確かにチョ・ミンスは、そういうふうに表現した。「演技の味に気づいたとき、キム・ギドク監督に出会った」と。映画「嘆きのピエタ」で見知らぬ女役を演じたチョ・ミンスは、キム・ギドク監督のおかげで新しい内面を見せることができたと言った。映画で見知らぬ女は、残酷な方法で人を苦しめ金を奪う強盗(イ・ジョンジン)に母と名乗り、彼といろいろなことを一緒に経験する人物だ。

「ちょっと変わった感じだったと言えるのでしょうか。若干の緊張が人を興奮させますね。キム・ギドク監督特有の撮影現場を経験しました。進行が速いことは知っていましたが、スピードに関する概念が少し違います。事前に十分議論し、流れを切らずにずっと進めていくことです。本当に速かったです」

「嘆きのピエタ」チョ・ミンスのキャスティング、キム・ギドクがこだわり、チョ・ミンスが選択した

そうだったためなのか。チョ・ミンスは、キム・ギドク監督との撮影にまったくプレッシャーは感じなかった。もちろん、これまで見てきたキム・ギドク監督の作品があまりにも強烈な内容だったので多少心配はしたが、直接撮影しながら考えが変わった。

「もともとシナリオではとても年をとった人物でした。監督が私にこだわり、キャスティングしたことで『若すぎるのではないか』という懸念もあったようです。監督は『チョ・ミンスならできる』と言ったそうですが、台本を見る前に私が監督に会いたいと言いました

監督にどうして私をキャスティングしたのか聞いてみたら『チョ・ミンスさんのファンでした』と短く答えるだけでした。まったく考えたことのない役にキャスティングされましたが、これまでやったことのないキャラクターを演じられたのは幸せなことです。表現したかったけれどできなかった部分を。その感性を使うようにしてくれて感謝します」

確かに簡単な撮影ではなかった。2012年ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品された同映画はまだ公開されていないが、台本を見ると強いビジュアルのシーンが多かった。母親役だが、内面はよく分からない複雑な心境も表現しなければならなかった。

「私が今より若かったら大変だったと思うし、できなかったと思います。今のように演技の味に気付いたときに使ってもらえばいい姿です。若いときは綺麗で良いイメージの役を中心に活動しますよね。そのような女優が年をとると『もう年取っているから!』と言って使わない方がいるので残念に思いました」


「女優の多様な面を確認して!」

話のついでに韓国の中年女優の現実を考えなければならないだろう。確かに同じ年頃の男性俳優は、韓国映画界の中心と言われ全盛期を迎えるが、中年の女優は相対的にスクリーンで見ることが難しいのが現実だ。チョ・ミンスもほぼ20年ぶりに映画で主役を演じた。当時最高の若手スターだった彼女も映画ではないテレビでは、誰かの母親役ばかりだった。

「空しいですね。役者が一般人になったときに訪れてくる空しさかもしれないし、なかなか機会がなくてこのような演技までしなければならないのかと思うかもしれません。私たちと同じ年頃の人が楽しく演じる役割は、なかなか出ませんので。

よく考えてみると、世界的にも女優の中で恋愛の演技だけで長く人気を得た人はあまりなかったですね。違うところがあるとすれば、ハリウッドなど規模の大きいところでは私たちよりもっと多くのジャンルや多様な役があるということです。そこの俳優は、年とは関係なく演じられる役があります。

だが、韓国では恋愛以外にはほとんどやることがありませんでした。多様な職業がありません。女優として生きてくる中でいろいろ貯まった材料がありますが、今はあまりにも早く女優としての人生が終わってしまうのではないかと思います」

「年若い女優があまりにも早く女優らしくない、生活人の役を演じるときは悔しいですね。でも、そのようにしても自身を露出させたい気持ちは理解できてなんとなくやるせない気持ちにもなります。男性俳優より確かに役が限られています。

男性は泥棒、殺人犯など、多様な役を演じるが、女性はどうしてそんなことができないだろうか気になります。男性の脚本家ならば女性のことがよく分からなくて男性を使うとしても、今の脚本家は女性がほとんどなのに女性を描く分量が少ないことは、考えなければならない問題ですね」

写真=キム・ギドクフィルム
確かに考えなければならない問題だと思った。女優が色々な職業を持つ多様なキャラクターを演じるなら、韓国映画の多様性も保障されると思ったためだ。「嘆きのピエタ」での見慣れないチョ・ミンスの姿を見つければ、キム・ギドク監督にも観客にも大きな収穫になることは間違いない。

「内面に材料は多いけれど、監督が検証されなかったことには不安を感じますね。でも、キム・ギドク監督は私の別の内面を見てキャスティングしたと言って下さったので有難いです。シナリオの外でこの人物はどんな人なのか。もともとこの人はどのような人物だったのかを考えながら人物を作り出すことが私だけの作業ですが、これはとても幸せなことです。私の作業ですから!台本は別にあるけれど、そこにない部分を考えるわけです」

チョ・ミンスの話を聞いて確かにそんなに遠くないと思った。「セックス・アンド・ザ・シティ」や「デスパレートな妻たち」を羨むことなく、素晴らしい中年女優の活躍を想像してみよう。もちろん、チョ・ミンスは必ず含まれなければならないカードだ。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン