チェ・ジョンウォンがおすすめする「おぼろげな恋の記憶を呼び起こす歌たち」

10asia |

「脳には人間の思い、過去の記憶や痛み、傷などの全てが入っているようです。本当に不思議です。私が変わっているのですか?ハハ」

KBS「ブレイン 愛と野望」(以下「ブレイン」)の制作発表会で会ったチェ・ジョンウォンは、確かにはしゃいでいるようだった。いつの間にかデビュー10年目を越えた女優だが、彼女は依然として新鮮な好奇心で満ちている。そして、そんな好奇心は一度も演じたことのないキャラクターを、粘り強い努力で100%演じきる原動力となる。チェ・ジョンウォンは神経外科専門医3年目のユン・ジヘになるため、撮影に入るずっと前から、あらゆる医療ドラマやドキュメンタリー、手術シーンの映像まで手に入れて探求するなど、気合を入れた。夜を明かして書いたレポートをイ・ガンフンが破ってもくじけずに、改めてもっと良いレポートを作成して出したユン・ジヘの根性がとりわけ心に焼きついたのは、チェ・ジョンウォンの生まれつきの性格だったからだ。

しかし、最も重要なのは結局キャラクターへの深い愛情だ。「芝居をする時は、本当に徹底的にそのキャラクターになって、息をすること一つまで似せたいし、没頭したいです。余計な欲を出すとか、きれいに見せたいとか考える暇はありません。どれだけ骨の髄までその人になりきり、視聴者の方々から共感と感動を導き出せるのかという悩みでいっぱいですから」純粋な愛でガンフンを変化させるという固い信頼と信念で、どんなことにも揺るがずにひたすら自分の心に従って走っていくユン・ジヘの物語は、チェ・ジョンウォン自身の物語でもある。

ナイトクラブダンサーのユ・ジョンエ役を演じ、一回の魅惑的なダンスで深い印象を残したSBS「オールイン 運命の愛」から、いつも正直で堂々としたナ・ミチルで大きな人気を集めたKBS「噂のチル姫」を経て、今の「ブレイン」にたどり着いたが、チェ・ジョンウォンは「やっとここまで来たようだ」と軽く言わない。ただ、「ここまで来て満足だ、これぐらいならいいと思う、といった考え方は絶対できないと思う」と淡々と語るばかりだ。今まで10年ほど見てきたが、これからのチェ・ジョンウォンにまた期待するようになるのはそのためだ。

「“チェ・ジョンウォン”という名前が、人々の胸の中に明確なイメージで思い浮かぶ女優になりたいです。良かった作品での姿で残れると、さらにいいですね」

以下の曲はチェ・ジョンウォンが選ぶ「おぼろげな恋の記憶を呼び起こす歌たちだ。

1.パク・ヒョシン「『ごめん、愛してる』OST(オリジナル・サウンドトラック)」

チェ・ジョンウォンが最初に推薦した曲は、2004年に韓国で放送されたKBSドラマ「ごめん、愛してる」のOSTの中で、パク・ヒョシンが歌った「雪の華」だ。中島美嘉の歌をカバーしたこの曲で、ドラマの中のソン・ウンチェ(イム・スジョン)とチャ・ムヒョク(ソ・ジソブ)の非情に切ない愛がさらに高まった。サビの歌詞は、真っ白な雪で覆われた冬の風景を思い出させるほど印象的だ。先日、自分のSNSを通じて「今年はあまり雪が降りませんね~冬はやっぱり雪らしい雪が降るのが醍醐味なのに……」と寂しさを表したチェ・ジョンウォンがこの曲をおススメしたのも、まさにそのためではないだろうか。

2.ノラ・ジョーンズ「Come Away With Me」

シンガーソングライターでジャズポップボーカリストであるノラ・ジョーンズは、2003年の第45回グラミー賞で「最優秀レコード賞」「最優秀アルバム賞」「最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス賞」など、計8部門で受賞する驚くべき記録を打ち立てた。デビューアルバム「Come Away With Me」収録曲の中で、チェ・ジョンウォンが2番目に推薦した「Don't Know Why」は、ノラ・ジョーンズのハスキーながらもしなやかなボーカルと、ジャズやポップ、どちらか一つには定義できない魅力的なメロディーが調和し、心地よく耳元をくすぐる。一方、ノラ・ジョーンズはウォン・カーウァイ監督のハリウッドのデビュー作「マイ・ブルーベリー・ナイツ」に出演し、女優としての魅力と可能性を証明したこともある。

3.キム・テウ「『IRIS -アイリス-』OST Part4」

3番目の推薦曲はKBS「IRIS -アイリス-」のOSTから、キム・ヒョンジュン(イ・ビョンホン)のメインテーマ曲として使われたキム・テウの「夢を見る」。昨年Mnet「SUPER STAR K3」では、シルム(韓国相撲)少年キム・ドヒョンが、自身を応援してくれたシルム部の監督と同僚に捧げる歌としてこの曲を選んだことがある。「夢を見る」でキム・テウは、ずっと感情を抑えて、「君を愛したのに、君を愛しているのに、傷が広がって行けない」というサビで、別れの痛みを最大限に引き上げる。「ブレイン」でイ・ガンフンを愛しているが、彼によって付けられた傷が余りにも大きくて、「もうやめたいです。誰かを愛するいう罪で、ずっと自分が無気力になって行くことに腹が立つのです」と言って背を向けるしかなかったユン・ジヘの心情にもぴったりな曲だ。

4.パク・ギヨン「Promise」

パク・ギヨンの2ndアルバム「Promise」で最も愛された2曲は、「始まり」と「最後の愛」だ。今から恋を始めようとする歌と、既に別れた恋人に遅い後悔を打ち明ける歌が同時に人気を集めるとは、奇妙な偶然とでもいうべきだろうか。この中でチェ・ジョンウォンが4番目に推薦した曲は「最後の愛」。独特な歌声を持つロッカー、パク・ギヨンの爆発的な歌唱力が光る代表曲でもある。再び戻って来てほしいという切ない告白は、パク・ギヨンの力強いボーカルに出会い、皮肉にもさらなる悲しみを深める。発表して10年ほど過ぎた今も、多くの人々に愛されている曲として挙げられている理由であろう。

5.吉俣良「映画『冷静と情熱のあいだ』OST」

「真実の愛は変わるものではない。心を尽くして愛したなら、必ずいつかは出会える。しばらく疎遠になっても、長い間遠回りをしても、結局こうやってその人の前に立つようになる」運命のようにお互いを懐かしむ元恋人たち、そしてイタリアのフィレンツェのドゥオーモのクーポラで再会しようという10年前の約束。チェ・ジョンウォンが最後におすすめした「『冷静と情熱のあいだ』OST」の中の「冷静と情熱のあいだ」は、その愛の風景の上でか細く鳴り響くチェロの演奏曲だ。「繊細で心にしみる恋愛の演技にも挑戦してみたい」というチェ・ジョンウォンが、この曲にはまったのは当然のことなのかも知れない。

「イ・ガンフン先生のお母様がこの世を旅立ったシーンを撮ってから、しばらくの間胸が詰まって涙が出ました。一方では死を悲しみ、もう一方では新しい命が生まれる世の中と、そういったことを宿命のように受け入れなければならない医師という職業がとても不思議に感じられました。『ブレイン』に出演しながら、瞬間ごとにすごく真実に、最善を尽くして生きていこうと度々思いました」このように「ブレイン」は彼女にとって“女優としてのターニングポイント”だけでなく、一人の人間としても新たに誓わせる作品だ。これからもチェ・ジョンウォンは演技を辞めないだろうし、それに自分の人生に与えられた小さな幸せも逃さないように努力するだろう。「女優だから、バカみたいに自分の人生で大事なものを諦めなければならない時もありました。だけど、もうそんなことはしません」

記者 : ファン・ヒョジン、翻訳 : ハン・アルム