ユ・テオ、日本で仕事をしたりファンミーティングもしてみたい!「パスト ライブス/再会」日本公開控えインタビュー

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ⒸGareth Cattermole/BAFTA/Getty Images

本年度のアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされた話題の米韓共同製作映画「パスト ライブス/再会」が、4月5日より全国公開される。本作は、海外移住によって離れ離れになった初恋同士の男女が、24年後、ニューヨークで数日間の再会を果たす大人のラブストーリー。タイトルのパストライブスとは前世の意味で、運命や摂理を表す韓国語、「縁(인연/イニョン)」が物語のキーワードになっている。

ニューヨークに住む初恋の女性を、ソウルから一途に思い続ける主人公を演じたのは、ドラマ「その恋、断固お断りします」で一躍人気となったユ・テオ。ドイツで生まれ育ち、ニューヨーク生活を経て2009年より活動の拠点を韓国に移した彼にとって、本作は特別な作品になったようだ。公開直前の単独インタビューをお届けする。

――本作は「縁―イニョンー」という東洋的な概念がテーマになっていますが、映画の独特な感性がアメリカでも高く評価されたと聞きました。ユ・テオさんは、この映画にどんな“イニョン”を感じましたか?

ユ・テオ:この“イニョン”という言葉ですが、僕だけでなく関係者みんなが毎日のように口にしていました。監督、俳優同士、照明さん、カメラスタッフさんたち、「みんな良いイニョンで繋がったね」と。

なかでも僕たちはチームワークが最高でした。「こんな映画を作ってみたかった」「こんな映画で自分を表現してみたかった」という渇望感をもっていた仲間が、同じタイミングで導かれて、出会えたからです。映画を撮っていたあの瞬間は、本当に格別でした。アメリカで評価いただけたのは、そんな僕たちの感情が画面を通して伝わったからなのかもしれません。“イニョン”というものは、自分の思い通りに操ることはできませんよね。だからこそ、この巡り合わせをとてもありがたく感じました。

――なるほど、この映画を通じて、より強く意識するようになったのですね。

ユ・テオ:そうですね、とくに僕が演じたヘソン役は、イニョンという言葉をよく使う人物でしたから。役のおかげで、この概念は本当に存在するんだ、信じて生きていかなくちゃ、と、納得することができました。

――ヘソン役には、オーディションで抜擢されたと聞いたのですが、その時、どのようなことを表現して、どんな点が評価されたのでしょうか?

ユ・テオ:まず、どの国もそうなのですが、通常、オーディションといえば一次審査は動画です。この時も、自分のスマートフォンで課題を撮影して、送りました。どんなシーンだったのか、ちょっと覚えていないのですが、後日、セリーヌ・ソン監督から面接をしたいので2次に進んでほしいと連絡をいただきました。ソン監督との面談はとても細やかで、シナリオを一緒に読んだり、何度かパターンを変えて演じてみたりと熱がこもっていました。通常、2次面談といえば、長くても30分から1時間程度なのですが、この時は3時間もお話しました。ありがたいことに、この時すでに監督の心が決まっていたのだと思います。「無表情のときは、落ち着いた大人の印象があるけど、笑ったり表情が変わったりすると、ピュアで若々しく見える」とおっしゃっていました。成人になったヘソンのなかに、若い頃のヘソンを感じられたのが決め手になったようです。

――ユ・テオさんは、ドイツ、ニューヨーク、韓国とさまざまな文化や価値観のなかで生きてこられました。そんなユ・テオさんが、初めて本作のシナリオを読んだとき、どのような印象をもったのか気になります。

ユ・テオ:最初に感じたのが、“イニョン”という東洋的な概念を、映画を通じて西洋社会に紹介できる点がいいなと思いました。最近は、いろんな映画で、いろんな文化が取り上げられるようになり、東洋独特の考え方も受け入れられる土台ができてきました。そんな時に、僕のもとに機会が訪れてくれたのがうれしかったです。
 

主演俳優としてニューヨークへ「縁という言葉を噛み締めた瞬間」

――以前、ニューヨークに住んでいらしたそうですが、本作の主演俳優として再びニューヨークの地を踏んだとき、どんな思いでしたか?

ユ・テオ:僕だけではなく、グレタ・リーさん、ジョン・マガロさん、そしてセリーヌ・ソン監督もそうですが、みんな15年、20年前は、ニューヨークに住む学生、新人俳優でした。レストランで働いたり、アルバイトをしたりしながら、夢に向かっていた時期ですね。それから20年後、A24という映画会社のもとに集まった僕たちは、ニューヨークの街を封鎖して、ストリートの真ん中に主役として立っていました。夢のような瞬間には感謝しかありません。なんとも言えない不思議な感覚で、撮影がとても楽しかったです。この映画で夢を叶えたみんなが、“イニョン”という言葉をかみしめた瞬間でした。

――メガホンをとったセリーヌ・ソン監督は、12歳のときに韓国からカナダに移住し、その後、ニューヨークで結婚した女性だそうですね。本作は、そんな彼女の経験談を基にした映画ですが、どんなところに共感しましたか?

ユ・テオ:僕がいちばん共感したのは、ヒロインの夫、アーサーです。彼は、遠くから訪ねてきた初恋の男性と妻が再会することを許してくれる夫です。すべてを受け入れて、包み込んで見守って、3人で一緒に会話も分かち合う。とてもいい姿勢だと思うし、奥さんを本当に愛しているんだなと感じました。

――セリーヌ・ソン監督とは、映画作りについて、どんな話をしましたか? 役者としてリクエストされたことなどがあれば教えてください。

ユ・テオ:撮影中は、特に演技に関する話しはなく、「もうちょっとこうしてみて」とか、「少し控えめに」とか、そんな程度でした。ただ、その前に2週間、リハーサル期間があったんです。この期間がとても大事な時間になりました。ノラ(ナヨン)役のグレタ・リーさんと監督と僕の3人で話しあって、それぞれの人物が、どんなことを表現し、どんなことを表現しないのか、一緒に役作りをしていきました。

面白いのが、グレタ・リーさんと僕は同じ部屋でリハーサルをしていたのですが、ソン監督は僕たちのスキンシップを一切禁じたんです。互いに手を触れないように、と。なぜなら、ノラとヘソンは24年ぶりにニューヨークで再会する人物だから。再会の時、感激の抱擁を交わすシーンがありますが、実際の僕らも、その時が初めてのスキンシップだったんです。リハーサル中は、すぐ隣にいるのに、触れることができないせいで、僕たちの間に、なんともいえない感情が湧いてきました。そのもどかしさを作り上げるために監督がわざと環境を創り出してくれたのです。また、グレタは、夫のアーサー役、ジョン・マガロさんともリハーサルをしていたのですが、僕はそこには入りませんでした。またしても監督は、グレタに対して「マガロさんの前では、テオさんの自慢をしなさい。テオさんの前ではマガロさんの自慢をしなさい」と言っていたそうです(笑)。そうやって僕とマガロさんの感情も映画の雰囲気に寄せていったんですね。
 

「大人になったら、あの時の初恋をもう一度確認したくなる」

――映画は、ヘソンとノラ、そしてアーサーの3人がバーでお酒を飲んでいるシーンから始まります。遠くから見ていたお客さんが、「アジア人の男女と白人男性」という3人の組み合わせを不思議がる台詞がでてきますが、もしユ・テオさんがその3人を見かけたら、どんな関係に映ると思いますか?

ユ・テオ:うーん、僕はお酒を飲むときは、飲むことに集中しますので、他人のことは目に入りません(笑)。3人がどんな関係だろうと気にしないと思います(笑)。

――バーでの会話で、ヘソンはノラに「もし、あのときこうだったら、どうなっていたか」と、話をするのですが、ユ・テオさんも、過去を振り返って、そのように思ったことはありますか?

ユ・テオ:僕は、過ぎたことを後悔しないタイプです。毎日が忙しいので、この先のことを考えるだけでもワクワクします。過去を悔んだことは、一度もありませんね。

―― 一般的に、女性よりも男性のほうが初恋を引きずる印象があるのですが、12歳の時に好きだった少女のことを、会えなくても、夫がいても、忘れられずにいたヘソンについて、どのように解釈しましたか?

ユ・テオ:僕は、初恋を引きずるヘソンの気持ちがよくわかります。一般的にという質問でしたので、僕からも一般的なこととしてお答えしますが、まず、初めて恋が実って恋人になる時、多くの場合は女性が愛され、男が愛を捧げる、という関係になると思うんです。男性は小さいときから、男はこうあるべきだ、ああでなくちゃいけないという言葉をいっぱい聞いて育つので、もし、女性に愛されるという経験ができたならば、それは衝撃にも近い出来事。少年時代であれば、その後の人生にも大きな影響を与えると思います。だからこそ、多くの男性にとっては初恋が忘れられないし、思い入れも強いんですね。そして大人になったら、あの時の初恋をもう一度確認したくなる。だめならケリをつけて、確認できなければ……いつまでも頭から離れません。ヘソンもきっと、そんな気持ちを整理したくて、ニューヨークまで会いに行ったのだと思います。
 

来日を待っているファンも「日本に行きたいです」

――なるほど。少年時代の初恋だからこそ、なんですね。話は変わりますが、昨年、ユ・テオさんが主演されたドラマ「その恋、断固お断りします」が日本でも配信されて、人気を博しました。ユ・テオさんの来日を待っているファンも多いのですが、ご予定はありますか?

ユ・テオ:日本! 行きたいですね~。早く行きたいのですが、今はスケジュールが忙しいので予定を立てられずにいます。日本で映画を撮ったり、仕事をしたり、もちろんファンミーティングもできたらいいですよね! まずは旅行がしてみたいです。ちゃんと観光をしたことがないんですよ。

――これまでに、いらしたことはあるんですか?

ユ・テオ:以前、「ロスト・エモーション」(2015年)というハリウッド映画に端役で出演したことがあるのですが、その撮影場所が淡路島だったんです。淡路夢舞台というリゾート地で、建築家の安藤忠雄さんがデザインした建築施設で撮影しました。その時は観光する暇もなく、安藤さんの建築物だけ見て帰国したのですが(笑)、今度、日本に行ったら、札幌や東京に行ってみたいです。あと温泉にも行ってみたいですね。

――来日、お待ちしております!



(取材:野田智代)

■作品概要
『パスト ライブス/再会』
2024年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

【STORY】
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とはー。

監督/脚本:セリーヌ・ソン 出演:グレタ・リー、ユ・テオ、ジョン・マガロ
2023年/アメリカ・韓国/カラー/ビスタ/5.1ch/英語、韓国語/字幕翻訳:松浦美奈/原題:Past Lives/106分/G
提供:ハピネットファントム・スタジオ、KDDI 配給:ハピネットファントム・スタジオ
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■関連リンク
・『パスト ライブス/再会』公式サイト
・『パスト ライブス/再会』公式X(@pastlives_jp)

記者 : Kstyle編集部