「奴が嘲笑う」イム・ウォニ“僕にはヒット作がない”

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俳優イム・ウォニはこれまで笑わせるために演技をしたことは一度もない。笑わせるための演技は間抜けに見えがちで、注目を浴びるためのアドリブは作品の論点を外しがちであるためだ。

それでも客席では彼が登場する度に笑いの声が上がった。濃い感じの鼻筋の通った顔立ち、中低音の声の彼が一言言う度に笑わずにはいられない。わざわざ笑わせようと頑張らない演技。それがイム・ウォニが休むことなくフィルモグラフィーを埋められた秘訣なのではないだろうか。

映画「奴が嘲笑う」(監督:ホ・ジョンホ、制作:CJエンターテインメント)もイム・ウォニならではのわざわざ笑わせようとしない、そこでもっと笑える演技が印象的な作品だ。イム・ウォニは今回の映画でイ・ソンギュンが演じた弁護士のパートナーであるパク事務長役を演じた。意外なほど少ない出番だが、笑いの打率は100%を誇る。毎シーンで笑えて、毎シーンで強烈な印象を与える。

「パク事務長に対する反応がここまで良いとは思っていませんでした。出番が少なくて残念だという反応も僕にはありがたいことです。監督が撮った分をほぼ編集なしで全部使ってくれました。映画そのものがピョン・ホソン(イ・ソンギュン)一人で孤軍奮闘する内容なので、(他の人物は)出番が少なくなるしかないのです。パク事務長がピョン・ホソンに話した『どうせ一人で全部やるくせに』という台詞は僕のアドリブでした。うはは。もし続編が出たら僕の出番も少しは増えるのでしょうか?(笑)」

イム・ウォニはヒットに渇きを感じていると話した。指を噛んだら10本のどれも痛いだろうけれど、どうしても心に残るのはヒットに失敗した映画だという。そしてこれは常に選択を受けなければならない立場にある俳優なら避けられない悩みでもあるとか。

「ヒットに関しては傷があります。『タチマワ・リー~悪人よ 地獄行き急行列車に乗れ』が失敗してからかなり彷徨いました。とりあえず映画はヒットすべきだというわけではないですが、俳優の立場からすると打撃が大きいです。次回作にまたキャスティングされることができるかできないかの問題でもあります。(制作者でなく)俳優だからと言って、演技が終わったからヒットはもう自分の仕事ではないと言うわけにはいかないのです。ヒット、もうそろそろほしくなりました」

以下はイム・ウォニとの一問一答である。

―出番が多くはない。どのようなきっかけで出演を決めたか。

イム・ウォニ:最初からこれほどの出番だった。シナリオが面白く、イ・ソンギュンが出演するというので信じて出演した。

―登場するシーンごとに観客が笑っていた。監督の立場からすると、「こんなにウケるんだったら事務長の出番をもっと入れれば良かった」という残念な気持ちがあったかもしれない。

イム・ウォニ:残念だという反応そのものが僕にはありがたいことだ。撮った分をほぼ全部使った。ここまで編集されなかったのも初めてだ。監督に感謝している。パク事務長がピョン・ホソンに「どうせ一人で全部やるくせに」と言うが、それは僕のアドリブだった。不思議なほど、事務長は出番が少ないのに説明もないではないか。ピョン・ホソンがもともと一人で事件を解決するタイプなので、そのような部分もあったとは思うが、観客にそれなりの説明が必要だと思って一言投げてみた。

―裸になってベランダに上るシーンが事務長の出番の中で最もインパクトのあるシーンだったが。

イム・ウォニ:普段は悪口が好きではない。シナリオに悪口が書いてあっても純化させて演じるほうだ。なのに今回は自然に悪口が強く出てきた。上る前にイ・ソンギュンさんと漫才のようにやりとりする台詞も全部アドリブだ。上手く映ったようで満足している。それこそが相乗効果なのではないかと思う。ソンギュンと僕はツーショットが似合うとよく言われていた。僕は顔が丸い方で、ソンギュンは長い方だから“木魚カップル”とも言われた(笑)

―友情出演だったが、「逮捕王」の時もイ・ソンギュンと共演したことがあった。

イム・ウォニ:「逮捕王」の前にもある程度交流はあった。近所に住んでいたので。大学路(テハンノ:劇場が集まっている演劇の街)で公演をしながら一緒に飲んだことも多い。友人だからといって、誰もが共演の息がぴったりであるわけではない。そんなところからソンギュンとは本当に息がぴったりで良かった。主演だが、助演を上手く活かしてくれる俳優なのだ。僕の出番が面白かったなら、それは全的にイ・ソンギュンのおかげだ。演技もやりとりができてこそ完成される。

―演技をする前に徹底的に計算をしてその通りに行うタイプなのか? それとも現場の雰囲気によって少しずつ変わるほうなのか。

イム・ウォニ:昔は前者だったが、どんどん後者のほうに変わってきている。柔軟さが出てきたというか。

―アドリブに懐疑的な俳優たちもいるが。

イム・ウォニ:実は、僕も好きな方ではない。アドリブというのは、ある意味では約束を破ることなのだ。昔のようにアドリブを乱発する俳優はかなり減った。アドリブもやりとりができてこそ活かされるものだが、自分だけ目立ちたい気持ちで投げてしまうと作品の論点が外されてしまう。アドリブは決して簡単ではない。100のアドリブがあるとしたら、その中から20くらいのみが活かされる。本当に確信がある時にだけやるべきなのがアドリブだ。

―「奴が嘲笑う」は100%標準契約書を使って撮影した初の韓国映画だ。

イム・ウォニ:撮影前にはみんなとても緊張していたが、いざ実施してみたら思ったより良かった。もちろん不便なところもなくはなかった。例えば、誰から見ても早く食事を済ませて撮らなければいけない状況なのに、昼休みの1時間は必ず守るとか。それでも肯定的な部分がもっと多い。「忠武路(チュンムロ:韓国の映画界の代名詞)で標準契約書が可能なのか?」という視線が多かったが、やってみたら可能だった。

―「ベテラン」の観客動員数が1000万人を突破した際に、リュ・スンワン監督が「タチマワ・リー~悪人よ 地獄行き急行列車に乗れ」に言及した。「ベテラン」の半日間の観客数が「タチマワ・リー~悪人よ 地獄行き急行列車に乗れ」の累積観客数を超えたことを見て苦い思いをしたとか。

イム・ウォニ:1000万人突破というのは、見た人がリピートして見たり、家で寝ていた人が突然起きてまた見に行ってこそ可能な数値ではないか。人口数を考えると、1000万人を突破した映画がこんなにも多いなんて。その映画の中には、「この映画が1000万人を超えたと?」と疑うほどの作品も正直あるではないか。リュ・スンワン監督がどんな意味から苦い思いをしたと話したのかとてもよく分かるような気がする。

―リュ・スンワン監督と作品でまた出会う予定はないか。

イム・ウォニ:さあ。まず、周りからリュ監督と喧嘩をしたかとよく質問があるが、そんなことは全くない。僕も「タチマワ・リー~悪人よ 地獄行き急行列車に乗れ」の失敗以降にかなり彷徨った。長いトンネルを渡った。リュ監督もとても辛い日々を過ごした。

―観客動員数1000万人を突破したが作品的には評価が良くない映画と、評価は良いがヒットには失敗した映画の中で一つを選ぶとしたら。

イム・ウォニ:1000万人の映画。700万、800万でなく、1000万人の映画であるためだ。僕にはヒット作がない。ヒットに関する傷がある。とりあえず映画はヒットすべきだというわけではないが、俳優の立場からすると打撃が大きい。次回作にまたキャスティングされることができるかできないかの問題でもあるので。(制作者でなく)俳優だからと言って、ヒットはもう自分の仕事ではないと言うわけにはいかない。

―バラエティ番組の出演で第2の全盛期を迎えた。

イム・ウォニ:バラエティ番組を一度やってみようかと思っていたところで、MBC「黄金漁場-ラジオスター」に出演することになった。そこでトークが弾けてリアルタイム検索語ランキングで1位になったりもした。それから「無限に挑戦」にも出演し、そのおかげで「私は男だ」に出て「僕らの日曜の夜-本物の男」にまで挑戦することになった。一度やってみようかと心に決めたらチャンスが次々と訪れてくれた。

―その中でも「本物の男」はヘアスタイルを坊主頭にまで変えた。俳優の立場から、バラエティ番組のために坊主頭にするというのは容易い選択ではなかったはずだが。特別な愛情があるようだ。

イム・ウォニ:正直、坊主頭の話を聞いた時は本当に悩んだ。それでも、海兵隊にはぜひ一度行ってみたかった。「『本物の男』はリアルなのか?」とよく質問されるが、本当にものすごく大変だ。僕たち出演者が1年も部隊にずっといられるわけではないので、4泊5日間本当に厳しく訓練を受ける。寝る時間を除いて、ずっと大きな訓練が繰り返される。この部分については本当に話したいことがたくさんある。

―フィルモグラフィーの中で最も愛着を持っている作品は?

イム・ウォニ:どちらかというとヒットできなかった作品が心に残る。「Three Summer Night」もその一つだ。痛い子とでも言えようか。ああ、もう過ぎたことを話してどうする。今やっている作品のほうが重要だ。

記者 : キム・スジョン、写真 : ムン・スジ