チャン・ドンゴンだけが魔性の男?ホ・ジノ監督も変わりたかった!

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「危険な関係」を見逃してはいけない理由とは?“ホ・ジノ監督の変化に注目”

映画と監督の相関関係を論じるなら、ホ・ジノ監督は自身と一番似ている映画を作り出す監督の一人だ。「八月のクリスマス」「きみに微笑む雨」「春の日は過ぎゆく」などを思い出せば、心の片隅にどうしようもないくらい懐かしさがこみ上げる。

そんな彼が2012年「危険な関係」を世に送り出した。すでに5月にカンヌ国際映画祭で全世界の観客に公開され、その後若干の修正を経て韓国でも上映されている。中国資本で制作され、事実上中国映画として分類されたことや、韓国映画にあまりにもヒット作が多かったことで、それほどたくさんの観客を呼ぶことはできていないが、ホ・ジノ監督を思い出せば、この冬「危険な関係」を見逃すことは難しいだろう。

変化を渇望したホ・ジノ監督「映画を3本は撮った感じ」

インタビュー当時ホ・ジノ監督は「『危険な関係』を撮ってみたら、一気に3本の映画を撮った感じだった」と説明した。セシリア・チャン、チャン・ツィイー、チャン・ドンゴンが出演する大作で、さらに海外でのロケだったため、彼は相当疲れたはずだ。

これまで低予算の恋愛映画でマニア層の支持を得てきたホ・ジノ監督は、「危険な関係」で新たな挑戦をしたことを強調した。莫大な予算で、素敵な俳優たちと、きちんとした映画を作ってみようと思ったのだ。すでに何回もリメイクされたゲリン・ヤンのシナリオをホ・ジノ流に変えることも課題だった。

「変わりたい気持ちでいっぱいでした。原作のある大規模な映画で、登場人物も多い作品にしたいという考えもありました。二人の話ではなく、様々な人物の話を描きたかったんです。

挑戦でした。映画を撮るとき、僕はいつも決まった方法でやっているのですが、今回は意図的にその方法を破りました。カット数を増やし、空間自体をセットの中に持って来ました。これまでセットを撮ったことがなかったので、人工のセットに慣れなかったけれど、その部分は撮影監督に頼りました」

写真=DAISYエンターテインメント
「危険な関係」はコデルロス・ド・ラクロの小説が原作だが、シナリオは作家のゲリン・ヤンがリメイクしたものだ。ゲリン・ヤンは、チェン・カイコー監督の「花の生涯~梅蘭芳(メイ ラン ファン)~」を始め、チャン・イーモウ監督の新作「金陵十三釵(The flowers of war)」のシナリオを書いた作家だ。

「中国の小説家たちが選んだ有名小説家の1人です。企画の序盤から会って原作をどういうふうに持っていけばいいのかと悩みました。この作家は上海出身だったので、舞台を上海にしましたが、時代をどうするのかでかなり悩みました。第1次日中戦争当時にするか、あるいは『ラスト、コーション』の舞台である1940年代にするのかについて話しました。結局選んだのは、戦争が起こる前の1931年、難民たちが上海に渡ってきた時代でした」

中国の現代史をホ・ジノ監督の“独自の映像と感性”で

ホ・ジノ監督は映画を通して1930年代の中国を忠実に表現しようとした。中心となるストーリーは、上流階級の若い男女の愛だ。つまり、これは中国の時代劇にホ・ジノ監督独自の感性が入った作品である。

「ゲリン・ヤンのバージョンと共に、『きみに微笑む雨』で仕事をした脚本家と再度書き直してみました。高麗(コリョ)大学中文課のチャン・ドンチョン教授にも意見を求めました。1930年代の上海に対する資料はとても少ないけれど、その方が『上海モダニティー』という本を翻訳していましたので。毎回訪ねて当時の上流階級がどのような暮らしをしたのか聞きました」

当時、上海の人々が読んだ雑誌や書籍など、たくさんの部分から考証の痕跡が見えた。「危険な関係」のあちこちに「吶喊」「良友」などの色々な書籍が登場する。中国の作家、魯迅の短編小説集「吶喊」は、当時の庶民の啓発に重要な役割を果たした書籍で、「良友」は上流階級の女性たちが読んでいた雑誌であった。

「上流階級の女性たちがどんな歯磨き粉で歯を磨き、赤ちゃんにはどんなミルクを飲ませていたのかまで参考にしました。不安定な時代だったけれど、上流階級はよくJOHNNIE WALKERを飲むなど、とても消費を楽しんでいました。『良友』という雑誌は、モジエウィ(セシリア・チャン)という人物を説明するための装置でした。『吶喊』を書いた魯迅は、庶民にも貴族にも尊敬された文豪でした。トゥパンイ(チャン・ツィイー)が良識のある人ならどうだろうかと思い設定したんです」


“魔性の男”チャン・ドンゴンにはホ・ジノの欲求が込められている

映画の中心はやはりチャン・ドンゴンだった。チャン・ドンゴンも「生まれて初めてこういう悪い役を演じた」と感想を語っている。ホ・ジノ監督が見たチャン・ドンゴンは、そのままでも充分魅力的だったが、どこか決まった枠があった。チャン・ドンゴンは自らその枠を破りたいと思っていたという。「危険な関係」のシェイパンは、変化に対するチャン・ドンゴンとホ・ジノ監督の欲求が一つになって誕生したキャラクターだった。

「チャン・ドンゴンさんは今まで強い役を主に演じてきていたので、男性的な感じが強かったんです。映画『友へ チング』で新しい姿を見せ、それから強い役を演じるようになったわけですが、『危険な関係』では普通に生活する人を演じなければなりませんでした。これをやってみたいと思ったのは、自身の枠を破ろうとしてのことです。

チャン・ドンゴンさんは性格が良いし、優しい人です。欲望があってもそれを外に出すのか出さないのかによってかなり変わってくるようです。チャン・ドンゴンさんには新しい姿を見せたい気持ちがあったので、アイディアもたくさん出してくれました。彼がかけたサングラスや、トゥパンイが彼の手紙を破って出て行くときの泣く姿は台本になかったものでした」

ホ・ジノ監督が好奇心を持ったのは、正確なディレクションがない状況でのチャン・ドンゴンだった。これまでチャン・ドンゴンが演じてきたキャラクターは、ほとんどが徹底した分析と監督のディレクションによって作られた傾向が強かったという。

ホ・ジノ監督は、チャン・ドンゴンがやりたいと思ったことに関しては、彼の意見を尊重して自由にしてあげたかったと言う。金持ちの浮気者はチャン・ドンゴンに出会って本当に魅力的なキャラクターになった。「危険な関係」でチャン・ツィイーとセシリア・チャンの共演を見たのであれば、次は新しい部分に注目しよう。ホ・ジノとチャン・ドンゴン。この二人の男の変化への欲求が強く作品に反映されているはずだから。「危険な関係」は現在上映の真っ最中である。

記者 : イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル