Vol.2 ― 映画「後宮の秘密」扮装チーム“心を扮装する扮装師”

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「後宮の秘密」ファン・ヒョンギュ室長、キム・ジョンジャチーム長が扮装の哲学について語る

映画「後宮の秘密」のヒットは、皆が喜ぶことだったが、その分スタッフたちにとっては新たな課題を残すものでもあった。特に、映画に直接表れる俳優たちのビジュアルを担当した扮装チームにとっては、新たな課題ができたという。

ファン・ヒョンギュ扮装室長とキム・ジョンジャ扮装チーム長は「後宮の秘密」を担当した後、もう一度時代劇をしっかりやってみたいという決心をしたという。「後宮の秘密」のスタッフの中で一番最後に合流し、時代考証にこだわるよりは、多くの部分をオープンにして作業していただけに、心残りや補完すべき部分も見えたためである。

「心残りも多く、今度もう一度挑戦して頑張ってみたいとは思っています。一方で、タイトなスケジュールの中では最善を尽くせたという気もします。監督がたくさん(扮装チームの役割について)話をしてくれて、その中で頑張りましたが、今後、特定の王と特定の時期の時代劇で本当に細かいところまで完璧に具現化してみようという気持ちもあります」(ファン・ヒョンギュ室長)

心残りや不足した点を述べたが、実は「後宮の秘密」の扮装チームは、忠武路(チュンムロ、韓国の映画業界を表す言葉)でもっとも長く一緒に仕事をしてきたチーム長が集まったチームである。そのため“忠武路最高齢”の扮装チームとも言われている。ファン・ヒョンギュ室長は、1995年に扮装の仕事を始め、今年で17年目である。「ペパーミント・キャンディー」「オアシス」「殺人の追憶」「坡州(パジュ)」「ポエトリー アグネスの詩」「アジョシ」など、各時期を代表した映画に関わってきた。

「後宮の秘密」扮装には俳優への配慮と合理的な思考があった

経験豊富なファン・ヒョンギュ室長は、仕事において合理的なやり方を求める。扮装そのものに力を入れることも大切だが、俳優の状態や特徴を把握し、効率的な方法を探すことを重視する。

今回の「後宮の秘密」でもそうだった。時代劇というジャンルの特性上、扮装に長い時間がかかるのは当然だが、タイトな撮影スケジュールと集中力を要する俳優たちのためにも、事前制作方式を利用し、特殊メイクにかかる時間を短く収めた。

「早くできる方法や合理的な方法について悩みました。キム・ドンウクさんには火傷の特殊メイクがありましたが、手や背に同じ火傷を維持するのは、時間的にも状況的にも難しくて、カラーでカバーしたりもしました。扮装チームとして力を入れたい部分と全体の撮影進行で重なってしまう部分があれば、譲るようにしています。

また、俳優たちが演技に集中できるように、ストレスを受けない方向で作業をしようとしています。金属アレルギーの俳優もいますし、宮中の女性たちのカチェ(朝鮮時代に女性の髪を豊富に見せるために被ったかつら)は非常に重いです。木のピンを作って使いました。実際に当時木のピンを使ったという記録があったので、助かりました。軽いし、丈夫なので。大妃(パク・ジヨン)のブーメランヘアーも、予めカチェに針金で穴を制作して、撮影に入る時に、木のピンで固定する形でした」(ファン・ヒョンギュ室長)

「いざ撮影の時に扮装をするよりは、扮装のために準備して制作する時間のほうが長かったです。現場で時間がかからないようにするためでした。ソンウォン大君の即位式の時、大妃のかつらも2日間徹夜で作って、最大限軽くしようとしましたが、もともととても重いものだったので、帽子のように簡単に被ったり脱いだりすることができるようにしました。パク・ジヨンさんに撮影をしない時は脱がせて、撮影が始まると被せるんです(笑)」(キム・ジョンジャチーム長)

忠武路最高齢扮装チームの精神……“心も扮装できたら……”

気持ちは通じるもの。このような扮装チームの苦労を俳優たちも分かってくれるという。扮装室が俳優たちの楽屋になる場合はよくあり、特に「後宮の秘密」の扮装室は撮影中にすべての俳優がシナリオや本を読んだりおやつを食べながらおしゃべりをする場所になったという。

「『後宮』の俳優たちがとても良い方々でした。私たちの気持ちを汲んで、食べ物やプレゼントをしてくれたりもしました。うちのチームは忠武路最高齢の扮装チームと言われています(笑) どの作品もほとんど雰囲気は良かったのですが、今回はセットでの撮影のためか、さらに仲良く過ごしました。また豊かな気持ちになることができました。

扮装チームは、俳優が映画の人物になる通路の役割をします。扮装室でも俳優の名前ではなく、役の名前で統一して呼んでいました。『今日はソンウォン大君(キム・ドンウク)が大変な日だけど、大丈夫?』というふうにです。

以前、ソル・ギョングさんが“心を扮装する扮装師”という表現をしていましたが、本当に心まで扮装できればいいなと思います。扮装室が俳優の外見と心となり、作品の人物になるものであればと思います。外見も重要ですけど、その役柄になる心の準備のほうがもっと重要だと考えています。

そのため、扮装チームとして外見に力を入れるべきなのに、どうすれば俳優が快適なのかを考えて譲る場合があります。俳優の内面の演技を妨げたくないですから。扮装チームとしては悔いが残るかもしれませんが、私はそんなスタイルだと思います」(ファン・ヒョンギュ室長)

「扮装は大変?」…「好きなことをしながら食べていけることを証明したい」

ファン・ヒョンギュ室長以下、チームメンバーの作業方法は、扮装に限らない。キム・ジョンジャチーム長は「映画に出演する俳優たちが室長を“お母さん先生”と呼んでいる」ということからも分かる。作業をしながらも、俳優たちと良い関係を築くことを優先するのもこのチームの個性である。

このチームには3チームあった。しかし、特に体系はないように見える。ファン・ヒョンギュ室長の話によると、各チーム長は室長となって別々に作品をやったり、また集まって一緒に仕事をしたりもするという。緩い組織だが、互いへの仲間意識は強い。それが10年以上もチームが解散されず維持される秘訣とも思えた。

「楽しく仕事ができることは幸せなことだと思います。自分でも今までこの仕事をしてきたということに驚いています。映画スタッフは寿命が短いじゃないですか。でも、このように現場で最高齢で働いていることが楽しいです」(ファン・ヒョンギュ室長)

55歳にはとても見えなかった。それほど体力の面と気持ちの面で若く見えたためだ。好きな仕事を楽しくやってきたことが秘訣だろうか。そして、たくさんのノウハウを持っていると同時に、人材の育成も考えているのではないだろうか。

「以前とは違って、最近はメンバーを探すのが大変です。基本的に一つを長い目で見る世代ではないので、どんどん変わっています。我慢して投資する時間を減らし、その分早く判断をしますが、それが長所にも短所にもなると思います。また仕事をする態度も違ってきました。

映画の作業をする時は、この作業室で徹夜をする場合が多いですが、仕事への限界をある線までと決めている人に強制はできません。新人を採用するために質問をしますが、『扮装が本当に好きか、そして最後までやりたいか』この二つを聞きます。

才能のある人が辞めるのを見ると残念です。もちろん、この仕事は保証が不確かな部分もあります。だからこそ私は好きなことを長くしながらも十分食べていけることを証明して、そのような環境を作りたいと思います」(ファン・ヒョンギュ室長)

記者 : イ・ソンピル