【PEOPLE】チャン・ヒョクを構成する5つのキーワード

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チャン・ヒョク

「私が停滞していない限り、いつかはいい人間関係が築けて演技もうまいと言われる日が来ると思っている」―チャン・ヒョク「フィルム2.0」とのインタビューより

子供のときは何がしたいかわからなかった。学生のころは何がしたいのかはわかったが、うまくできなかった。うまくなるために努力したら、30代になった。したいことも、積み重ねてきたことも多くなった。妻と子供もできた。そして人生を左右するようなチャンスが訪れた。今もっとも力強く刀を振り回すときが来た1人の男の人生。


チョン・ヨンジュン

チャン・ヒョクの本名。チャン・ヒョクという名前は新人のころ、同じ会社で働いていたマネージャーの名前で、“判を押す”ような強い感じが気に入ってつけたという。チャン・ヒョクはチョン・ヨンジュンとして生きた10代、疾風怒濤の時期を送った。小学生のころ、建設会社で働いていた父の仕事の関係で転校を繰り返していたので、友達を作ることもできなかった。中学校ではマラソンと器械体操に夢中になり、全国大会で1位を獲ったこともあったが、担任の教師から褒められることも無く、机の上に賞状が置いてあったことに傷ついた。ぐれた時期や、全国模擬試験を受けたくないと反抗したこともあったし、高校時代には喧嘩をして歯が折れることもあった。子供のころ、“白人小娘”というニックネームがつけられるほど、白い肌で、綺麗な顔立ちだった彼は、自らが言っているように10代のころはかなりの暴れん坊だった。結局チャン・ヒョクは運動以外の勉強を進める父の意見を受け入れ、大学で演技を専攻した。

god

チャン・ヒョクとともに練習生時代を送ったグループ。チャン・ヒョクとgodは同じ宿所で生活した。お腹が空いたときは、宿舎の前のとうもろこし畑でとうもろこしを盗んで食べたこともあるし、演技の練習をするときはgodのメンバーの1人を呼んで一緒に台本の読み合わせをしたこともある。チャン・ヒョクはイ・スンファンの「哀願」とgodの「お母様へ」のプロモーションビデオに出演したことで名前が知られるようになった。当時チャン・ヒョクをキャスティングしたチョン・フンタクは、チャン・ヒョクが「本当に純粋な子」で「これからすごいスターになれる」と確信したという。

チョン・ウソン

チャン・ヒョクと同じ芸能事務所の俳優。チャン・ヒョクは“リトル チョン・ウソン”というニックネームでデビュー。映画「チャン」、KBS「学校」などで、「ビート」のチョン・ウソンのように反抗的なキャラクターを演じた。だが、チャン・ヒョクは「周囲に溶け込まない一匹狼のようだけれど、俺は違う」と話している。実際にチャン・ヒョクは映画の中ではチョン・ウソンのようにタフだが、人の輪に溶け込むタイプだ。彼は「学校」の撮影をするとき、映画の舞台となる高校の男子学生が、芸能人たちに敵意を持っているのが分かって、彼らと親しくなるために学生たちに「俺も高校のときは体育系だった。今俺と喧嘩したいヤツはかかってこい」とわざと喧嘩を売ったこともあった。また、彼はインタビューでたびたび親しい友達の名前を挙げる。「芸能人になっても変わらずにいられるのは友達がいるからだ」と話すほど友達を大事に思っている。さすがはタフな釜山の男。

ソ・ジソブ

SBS「モデル」と「ワンルンの大地」で共演した俳優。チャン・ヒョクはソ・ジソブと親しくなり、趣味でボクシングのスパーリングを一緒にしたことがある。チャン・ヒョクは「モデル」に脇役として出演したが、数十秒しか映らなかったため、自ら「ビデオを止めてコマ送りして見ないとわからない」という意味で「ストップモーション」だと言った。また、当時は演技がそれほど上手ではなかったため、友人やタクシー運転手、地下鉄の乗客など周りの人々の話しぶりを録音しながら研究したりもした。この様な日々が過ぎてスターダムにのし上がったチャン・ヒョクは「ワンルンの大地」でまた新しい姿を見せる。このドラマで、うまくいかない自分の人生に対して不満を持っている町の不良役、ボンピルを演じるが、軽薄さと真剣さを同時に表現するというすごい演技を見せてくれた。その後、彼は「ジャングルジュース」などで歓楽街のチンピラとして出演し、不良少年やタフガイとはまた違う役に挑戦する。

チャン・ナラ

SBS「明朗少女成功記」で共演した女優。このドラマは大ヒットを飛ばしてチャン・ヒョクに様々な可能性を与えた。御曹司を演じた彼は、自身のキャラクターをただ格好良く見せるのではなく、お調子者で面白いキャラクターだと解釈し、従来の素敵な男性キャラクターを超えた個性的な演技を見せてくれた。また、チャン・ヒョクは同じキャラクターを演じるよりは、「一つのキャラクターのイメージが固まらないようにしたい」と言ってSBS時代劇「大望」、デパートの職員を演じた映画「英語完全征服」などに出演する。不良少年というイメージで人気を得た若いイケメン俳優が、本物の俳優になろうと決心したときである。

チョン・ジヒョン

映画「僕の彼女を紹介します」と、チャン・ヒョクがTJという名前でラップを披露した「Hey Girl」のミュージックビデオで共演した女優。2人はデビュー当時から同じ芸能事務所の仲間で、「5つくらい年が離れているが、仲のいい友達」である。しかし、TJとしての活動と「僕の彼女を紹介します」は事務所主導の企画のようにみえる。TJという活動は名目上、チャン・ヒョクの演技活動の一環としてラップとナレーションをするという話だったが、商業的な色合いが濃い企画となった。チャン・ヒョクが冗談で「セカンドアルバムが発売されることがあれば、それはマネージャーたちの僕への愛情が冷めたからだ」と言っているほど。また「僕の彼女を紹介します」は練られてないストーリーと行き過ぎた広報活動、そしてチョン・ジヒョンに集中した内容などで、チャン・ヒョクには何一つも良い影響を与えることができなかった。スター性と演技力を合わせ持っている俳優になることができた時点で、所属事務所の女優と共演させた企画自体が問題だったのだろう。そしてチャン・ヒョクは「王の男」の出演(チャンセン役)がほぼ決まったときに、兵役問題で軍隊に入る。

コン・ヒョジン

MBC「ありがとうございます」で共演した女優。チャン・ヒョクは兵役不正問題を起こしてから入隊した部隊の先輩に「俺はお前が芸能人だとは思わないぞ」という言葉を聞いて“一つ”になれたという。兵役不正問題は非難されることだが、軍生活はチャン・ヒョクにとって自分を省みる時間になったようだ。兵役義務を終えた後は、「決して派手な役ではないが、人生の希望を切実に探しているというところが俺と似ている」と言って「ありがとうございます」のギソ役を演じた。ギソは多くの罪と傷を抱いて暮らしている中、HIVにかかった娘がいる女性に出会って人間としての温かさを取り戻すというキャラクター。この役は30代に差し掛かったチャン・ヒョクに、より深みのある演技を見せるチャンスを与えた。また「ありがとうございます」の後、SBS「不汗党(ブランダン)」で人生のどん底に立たされた男を演じたことで、様々なキャラクターを演じることができる俳優としての基盤を作った。今チャン・ヒョクのように傷を負った男を、肩の力を抜いて笑いを交えながら、ときにはお調子者っぽく見せることのできる俳優は少ない。

ブルース・リー

チャン・ヒョクが習っているジークンドー(截拳道、武術の一種)の創始者。チャン・ヒョクは6年前にジークンドーを始め、練習を重ねた末、他人に教えることができる教練資格を取得した。チャン・ヒョクはジークンドーを「相手の技術によって私のリアクションも変わるという点で演技と似ている」と思っている。また、子供のころから映画が好きで、今でも寝る前に映画一本を見終えた後で寝る。「次の日、一日中映画を楽しみに待つことができる」といって他の映画を10分ぐらい見てから寝る。彼は現在約5000枚のDVDを所蔵している。まるで武術家のように精進して、演技力も所蔵している映画の枚数もジークンドーの実力も高めている人生のようだ。

キム・スロ

映画「火山高」で共演した俳優。チャン・ヒョクが通うジークンドー道場もキム・スロが先に通っていたところ。また、キム・スロはチャン・ヒョクとSBS「日曜日は楽しい」の「ファミリーがやってきた」とKBS「ハッピートゥゲザー」で共演し、二つの番組ではチャン・ヒョクの飾らない本来の姿が見られる。“情熱”という単語が一番好きだと言っていた彼は「ファミリーがやってきた」では、ユ・ジェソクからコメディを熱心に学ぼうとしたし、「ハッピートゥゲザー」では、ロケ地で「寝ることさえもしないで、屁もこかないよう努力した」と語った。チャン・ヒョクのこの様な姿は、俳優としてのイメージを守ろうとしたというよりは、俳優としての真剣さを守ろうとする努力のように見えたし、これはチャン・ヒョクの人生そのものでもあった。何がしたいのかもわからないまま生きていた10代の不良少年は、20代では着実な努力を重ねて自分の姿を変えようとしたし、犯した罪を反省したこともあった。そんな彼は今や可愛いところのある30代になった。

イ・ダヘ

SBS「不汗党(ブランダン)」、KBS「チュノ~推奴~」で共演した女優。チャン・ヒョクは初めて10%未満の視聴率を記録し、かえって気楽に見ることができた「不汗党(ブランダン)」とは違って「チュノ~推奴~」では高い視聴率をたたき出した。アクション、ユーモア、恋愛模様など男性たちの激しさが描かれている「チュノ~推奴~」は、チャン・ヒョクのためにオーダーメイドした服のような作品だ。彼はこのドラマで自身のジークンドーの実力を思う存分発揮する。また、“チンピラ”のように振舞い軽薄なユーモアを見せたり、自身の暗い過去のために暴走したりもする。チャン・ヒョクはますます演技の幅を広げていくが、まだ、明確なイメージとして記憶に残る俳優でも、演技派の俳優でもなかった。そんなチャン・ヒョクは「チュノ~推奴~」でイ・テギルというキャラクターとして記憶され、人気演技派俳優としてのお墨付きをもらった。演技とは縁がなかった不良少年がスターになって、演技の経験を積みながら武術にも挑戦して精進していく。そしてそのすべての努力が報われるチャンスを得た。30代半ばに差し掛かったチャン・ヒョク、果たして彼は「チュノ~推奴~」を通じて次の人生の目標を見つけることができるだろうか。

記者 : カン・ミョンソク