「ハロルドとモード」カン・ハヌル、どうしてこの人気俳優はまた舞台へ戻ったのか

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写真=セム・カンパニー
これほど健気な歩みがあるだろうか。俳優カン・ハヌルが舞台に戻った。“人気俳優”と呼ばれ、その立場と雰囲気に心酔してもいいはずのこの若い俳優は、再び自分の故郷である舞台に戻った。ドラマと映画を行き来しながら忙しいスケジュールをこなしながらも、比較的早い時期に舞台に再び立つことになった。

カン・ハヌルが出演する劇「ハロルドとモード」は、世代を超えた青年とおばあさんの純粋な恋と友情を描いた作品だ。カン・ハヌルは19歳の学生ハロルドに扮し、演劇界の大御所女優パク・ジョンジャと一緒に呼吸を合わせる。

カン・ハヌルは最近、演劇「ハロルドとモード」の制作発表会後に行われたインタビューで、「あまりにもよい作品だとということを多くの方々が知っているようだ。スケジュールだけ見ると、人々が『大変そう。休みながらしたら?』と言ったが、僕は個人的にこれが休むことだと思っている。むしろ幸せだ」と口を開いた。


「これ以上、空しい状態ではいられなかった」

カン・ハヌルは現在、ケーブルチャンネルtvN「ミセン」の撮影をはじめ、忙しいスケジュールをこなしている。ここに演劇の舞台にまで上がるというから、その理由が気になるしかない。彼は「スケジュールをこなすのは、どんな風にこなさなければならないかどうかの方法がない。ただやみくもにしている。しなければならない。なぜなら、これ以上は空しい状態ではいられなかった」と明らかにした。

「正直に言うと、今このタイミングで演劇のスケジュールをこなすということは欲張りだ。でも『今このテンポだけ休んでから次に演劇をしよう』という、そんな気にならなかった。空虚な心がそれほど大きかった。メディア演技ということをするたびに、瞬発力がどれほど必要なのか。その瞬発力を育てるにはとても役立つだろうが、僕が持つことのできる根本的なものについて考えるようにした。100ができれば120、130にするのではなく、ずっと瞬発力が落ちて100からさらに削られた。このままでは、元の木阿弥になることが僕も分かった。演劇を通じて至らないことを埋める作業中だ」

空しさを埋めているからだろうか。カン・ハヌルは、この状況で演劇をこなすことが容易ではないという周囲の視線を見事に吹き飛ばしている。彼は「最初は『過去に僕が忘れたかった部分が再び思い浮かんだら嫌じゃないだろうか』という思いもしたが、実際に行ってぶつかってみるとよかった。『あ、そうだ。僕が初めて演技を習うとき、こうだった』という考えもたくさんする」と言いながら、「周りの人たちが容易ではないと言ったが、僕はすごく簡単だった。僕は不足しており、しなければならないことが必要だったし、僕はそれが演劇と考えていた」と告白した。

“人気俳優”と呼ばれれば呼ばれるほど、不便な部分が生じたかと聞くと、そうでもないと言う。彼は「周りで写真を撮ってほしいなど言われると、友達が『本当に不便に暮らしている』と言う。ところで僕はまだあまりそのように見ていないのでそうなのか、不便なことがない。写真を撮ろうと言われたら、僕がありがたく思う。僕が不便に思っている場合はまだない。(キム)ウビンが『君がまだ十分にそうしたことを経験していないから、そうだ』と言うが、僕は大丈夫だ。最初から楽しめないと言えば嘘になるが。今日もバスに乗ってきた。人々は気づかない。どれだけ気楽に行き来していることか……バスもどれほど安くていいか。気づかれると、バスで一緒に写真も撮っている」と打ち明けた。

「もともとミュージカルを少ししながら、放送を始めるようになった最も大きな理由は、周辺で本当に骨が折れるほど2ヶ月間にわたり練習したが、観客があまりいなくて、早めに幕を下ろす作品が多くて心が痛く、その状況が腹立たしかった。放送に出て、僕が少しでもよく知られた後、これからもっとよい演劇、ミュージカルだけを選択するから、僕に会いに来て、この作品を知って帰ってもらって、もっと素敵な人たち、素晴らしい先輩、後輩たちを知って帰ってもらいたいという気持ちが大きかった。実は少し生意気だと思われるかも知れないが、“今演劇をすれば、この作品を多くの方々が見ることができる。多くの方々が関心を持つかもしれない。『ミセン』がうまくいったから”ということを思った。そのような点で『ミセン』のキム・ウォンソク監督に感謝する。ちょっと出てくるエピソードの主人公たちも、舞台に訪問してくださるのが本当にありがたい」


「僕の原動力はいつもプレッシャーだった」

演技に対する空しさが大きかっただけに、彼が選択した演劇「ハロルドとモード」は彼の空しさを十分に埋められる作品だ。演劇界の大御所女優パク・ジョンジャと一緒にすることだけでもラッキーなことだ。演劇俳優だった両親も、パク・ジョンジャと一緒だという言葉に、「当然しなければならない」と言ったほどだ。

カン・ハヌルは、「パク・ジョンジャ先生は、『私はお前だ』のチョ・マリア女史を演技しているということを知っていたためか分からないが、初めて見た時、僕には偉人のお母さんのような感じだった。偉人伝を読むと、偉人のお母さんもいつも偉人らしくないだろうか。初めて会って話を物静かにしてくださったが、その時から『これだからパク・ジョンジャ先生なんだな』と思った。そのまま『先生』という単語がまず出た」と明らかにした。

彼は先輩たちの期待が負担にならないかという質問に、「演技ができる原動力はいつもプレッシャーだった。幼い頃から僕の能力を超えた役どころをいつも務めてきた。それでその役どころを果たしていくためには、間違いは許されなかった。とにかく上手くならなければならなかったし、上手くしなければならなかった。いつも見る視線もあった。それで僕が演技できるようにしたのはプレッシャーだが、その多くのことが負担にはなる。負担になるが、これをどう乗り切るか、このような悩みも実は僕にしてみれば、違う面から見るとちょっとした楽しみだ」と話した。

先立つ舞台に立った6人のハロルドとの比較も負担ではない。彼は「僕には初の作品だ。どうすればハロルドをもう少し観客たちに共感させて理解させるようにするかについて悩むが、この前にこのようにしたから今度は違うようにしないと、というような考えは持っていない」と説明した。

「後に夢見ている『ヘドウィグ』をすることになるとしても、そんな考えだ。ミュージカルに対するよい感情を植えつけた作品が『ヘドウィグ』だが、見る機会が多かったにもかかわらず、わざと一度も見なかった。僕が後にする時、なんとなく真似てしまったり、残像が思い浮かぶだろうかと思って見なかった。僕がやるようになるか分からないが、僕がしてから『ヘドウィグ』は見ることができそうだ」


「こんにちは。僕は俳優カン・ハヌルです」

カン・ハヌルは同年代の俳優たちに比べて、確実に成熟した俳優として通じる。幼い年齢にもかかわらず、演技に対する価値観がはっきりしていて、役どころの消化においても重厚な姿が際立つ。スターより本当に俳優になりたいという悩みや努力もうかがえる。

これと関連してカン・ハヌルは、「こんなに確固とすることができるのは、周辺で演技する人たちの影響が大きかった。一緒に演技の練習をする学校の同年代の学生たちや先輩、後輩を見ながら『僕はあんな風にしないべきだ』というのが大きかった。その人達に何かを学んだということより、『僕はあんな風にしてはだめだ』ということが僕が持っている価値観を作るのに大きく役立った」と明らかにした。

彼は「高校生の時『天上時計(The Celestial Watch)』という作品をしたが、突然チャン・ヨンシル役をいただき、当時たくさん嫉妬もされた。『お金を払って入った』『優遇した』など、そんな話も多かった。それで僕は、とにかく上手にしなければならなかった。大学の時も、中央大学50周年記念公演『ハムレット』をしたが、1年生だったが急にハムレットになった。だからどれほどプレッシャーが多かったことか。僕が選んでしたものでもあったが、与えられたことに対するプレッシャーがあった」と説明した。

さらに「避けたいこともとても多かった。しかし、また他の意味で簡単な道に行くことはできるが、それでは僕が得ることはないと思ったので、僕が下手でも無茶しても壊れても、してみようと思った。その心を失わないように努力する。慣れて多くのことを知っていくことにおいて、安易な道を選択することになる。もちろんそれなら早くなって心も楽だろうが、僕に得られることがないようだった。そんなことがとても嫌だ」と話した。

「どこでも話をする夢があるが、他の人たちに『こんにちは。僕は俳優カン・ハヌルです』と堂々と言えるようになることだ。文章を書く脚本家も、どこかに行って僕が脚本家だと話をするのが大変な場合が多い。僕もそうだ。まだ堂々と僕のことを俳優だと言えない。堂々と話をできる時が来ることが僕の夢だ。俳優として残りたいというような雄大な言葉よりは、細く他の人に便乗しながら演技したい(笑) 観客たちが持っている価値観に触れない線で、変化させて進化させる素敵な作品を続けたい。そのような点で『ハロルドとモード』はとても美しい童話のような内容だ。心温まるヒーリング演劇になれるだろう」
カン・ハヌルが出演する演劇「ハロルドとモード」は、来年1月9日から2月28日まで、ソウル国立劇場タルオルム劇場で公演される。

記者 : ホ・ソルヒ