Vol.3 ― 放送終了「グッド・ドクター」が乗り越えた“脚本、主人公、マクチャン”への偏見

TVREPORT |

※この記事にはドラマ「グッド・ドクター」の結末に関する内容が含まれています。
写真=KBS 2TV「グッド・ドクター」ポスター、スクリーンショット

KBS 2TV水木ドラマ「グッド・ドクター」(脚本:パク・ジェボム、演出:キ・ミンス、キム・ジヌ)が8日、第20話の放送が終了し、視聴者に別れを告げた。自閉症を持つ研修医1年目のパク・シオン(チュウォン)は、誰もが“君はダメだ”と言う偏見を破り、仕事と恋の両方を成功させる感動的な結末だった。

しかし、KBSドラマで編成される頃の「グッド・ドクター」もパク・シオンの境遇とさほど変わらないドラマだったという事実がある。地上波ミニシリーズドラマでのメイン執筆経歴が全くない無名作家の脚本と、演技力は実証済だがスター性が確実ではない主人公、泥沼を引き起こす“マクチャンドラマ”(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国特有のドラマ)の悪役の不在などから、このドラマの成功は半信半疑であった。

しかし、このような懸念を消し去るかのように「グッド・ドクター」は8月5日の放送開始から最終話の終了まで月火ドラマ視聴率1位の座を奪われたことは一度もない。男女の主人公たちのキスシーン一つさえなかったが、視聴率上昇の曲線を見事に描いた。パク・シオンが偏見と立ち向かい人々に認められたように、「グッド・ドクター」も多くの懸念を消し去り、ドラマが忘れてはならない大切な価値を証明した。

そこで、このドラマが証明したものを選び以下にまとめた。

1.ドラマの命とも言える最も重要なものはシナリオ

熾烈な地上波ドラマの編成マーケットにおいて「グッド・ドクター」は早くからKBS 2TV月火ドラマに編成された“幸運”な作品だった。ヒット脚本家、トップスター俳優などドラマの成功の可能性を高める確実な条件を満たさない「グッド・ドクター」の早期編成に“型破りな編成”という声があがるほどだった。

ドラマで最も重要といえる生命線は“良いシナリオ”だ。しかし、その生命線の責任者であるパク・ジェボム脚本家に対する信頼はあまり高くなかった。OCNでシーズン3まで放送された「神のクイズ」を執筆し、医療ドラマのキャリアはそれなりに華麗だが、全20話にも及ぶ長い地上波のシリーズはパク脚本家にとっても「グッド・ドクター」が初めてであったため、懸念を持たれて当然だった。

しかし、このような懸念について放送前、「グッド・ドクター」のある制作陣は「『グッド・ドクター』は企画が良いため編成されたケースだ。韓国ドラマが、これからはヒット脚本家とトップスター俳優に依存しなくても大丈夫だという事実を『グッド・ドクター』を通して証明してみせる」と自信を見せた。そして、「グッド・ドクター」の成功で「良いシナリオこそが第一である」というドラマを、制作する上で優先すべき条件として世間に強くアピールした。

2.演技が上手な俳優は、何をやらせても通じる

先述したように、韓国ドラマはとりわけトップスター俳優に依存する度合いが高い。基準以上の視聴率を保障し、海外でも売れている俳優がいわゆるドラマプロデューサーたちが言うところの“編成俳優”の条件である。「グッド・ドクター」もキャスティング初期は編成俳優たちがパク・シオン役の候補に挙げられたが、不発に終わった。

パク・シオン役を手に入れたチュウォンは、KBS 2TV「製パン王キム・タック」「烏鵲橋(オジャッキョ)の兄弟たち」を経て昨年、時代劇のKBS 2TV「カクシタル」のワントップ主人公として活躍し、演技力を認められた俳優である。しかし、脚本家、プロデューサー、俳優にとって難しいとされる医療ドラマを引っ張る主人公を演じるには“まだ力不足だ”という懸念の声があったことも事実だ。

しかし、このような懸念は「グッド・ドクター」の放送開始と同時にすっかり消え去った。チュウォンは表情、姿勢、歩き方、話し方のすべてを自閉症を持つパク・シオンに合わせ変化させるという驚きの演技力を見せ、俳優が持つべき最も重要な能力は「演技力」であることを証明したのだ。

あるドラマプロデューサーは「チュウォンは最近20代俳優として取り上げられるソン・ジュンギ、キム・スヒョン、イ・ジョンソクより演技力は優れているが、スター性と立ち位置に不安のある俳優だった。しかし、『グッド・ドクター』を通してこれを乗り越えた」と評価した。

3.“マクチャンドラマ”ではないドラマも愛される

KBS 2TV「ギャグコンサート」の「視聴率の帝王」コーナーで。ドラマ制作会社の代表パク・ソングァンは、視聴率が低下すると“マクチャンドラマ”の要素を要求する。一風変わった刺激的であり得ない設定が入ると、視聴率は嘘のように跳ね上がる。“ギャグはギャグ”なだけと言って笑い過ごすこともできるが、業界では「視聴率の帝王」が韓国ドラマの笑えない現実をしっかり指摘していると評価されている。

いわゆる“マクチャンドラマ”には御曹司、出生の秘密、優しい主人公をいじめる悪役というような、過度に刺激的なシーンが登場する。“悪口を言いながらも見る”という言葉まで生まれるほど、マクチャンドラマは韓国で大きな地位を占めている。マクチャンドラマが非常に多い理由についてドラマ専門家たちは「視聴者がマクチャンドラマを好むためだ。マクチャンドラマが消えて欲しいと願うなら見なければいい」と口を揃えた。

そんな中、「グッド・ドクター」は刺激的なマクチャン要素がないにも関わらず、視聴率と作品性の両方を手に入れた“良質なドラマ”として評価されている。「グッド・ドクター」の成功は、韓国の視聴者の目も変わってきているという現状を示す。いつか「グッド・ドクター」がマクチャンドラマの根絶に“バタフライ効果”(通常なら無視できる小さな差が、やがて無視できない大きな差となる現象)を起こしたドラマとして評価されることを期待する。

4.医療ドラマは絶対にコケない

医療ドラマは、ドラマ業界で“医療ドラマはコケない”という通説があるほど韓国の視聴者が好むジャンルの一つだ。それは「総合病院」「白い巨塔」「外科医ポン・ダルヒ」「ゴールデンタイム」「ブレイン」など、医療ドラマが概ね成功したためだ。それは、20話連続で月火ドラマ視聴率1位をキープした「グッド・ドクター」も例外ではない。

それに加え、「グッド・ドクター」が医療ドラマの新たな分野を切り開いたと評価されている。小児外科分野を取り扱った初めての医療ドラマで自閉症の主人公を前面に押し出し、“ヒューマン”と“癒し”を強調したことが視聴者に通じた。ジャンルの限界にぶつかり、“下降する道”しか残されていない韓国の医療ドラマが「グッド・ドクター」を通してジャンルの多様性を議論できるようになった。

その「グッド・ドクター」のバトンを受け継ぎ、新たな医療ドラマMBC「メディカルトップチーム」(脚本:ユン・ギョンア、演出:キム・ドフン)が放送を開始した。「メディカルトップチーム」は果たして「グッド・ドクター」が証明した“医療ドラマはコケない”という説を受け継ぐことができるのか、視聴者の関心が高まる。

また、「グッド・ドクター」の後続作として今月14日からユン・ウネ、イ・ドンゴン、CNBLUE ジョン・ヨンファ、ハン・チェア出演の「未来の選択」(脚本:ホン・ジナ、演出:ユ・ジョンソン、クォン・ゲホン)の放送が韓国でスタートする。

記者 : イ・ウイン