「危険な関係」チャン・ドンゴン“観客が僕に期待していないことを見せたかった”

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チャン・ドンゴンやチャン・ツィイー、セシリア・チャン、そして、ホ・ジノ監督。第17回釜山国際映画祭(以下BIFF)のガーラプレゼンテーションを通じて公開された映画「危険な関係」は、俳優と監督の名前だけでも注目を集めている。ほぼすべての台詞が中国語であり、撮影も中国で行った「危険な関係」は、1782年に発表されたフランスの小説家コデルロス・ド・ラクロの同名小説が原作である。1930年代の上海を舞台に、オムファタール(魔性の男)のシェイパン(チャン・ドンゴン)と最高の権力家のモジエウィ(セシリア・チャン)、そして貞淑な未亡人トゥパンイ(チャン・ツィイー)との間で繰り広げられるゲームを通して、嫉妬と独占欲からなる愛の破壊力を見せてくれる予定だ。釜山(プサン)で行われた記者会見でホ・ジノ監督や俳優チャン・ドンゴン、女優チャン・ツィイー、セシリア・チャンが、この映画が伝える愛の寂しさについて語ってくれた。

―同じ小説を原作にして作られた映画はすでにたくさんあるが、どうして演出を決心したのか。

ホ・ジノ監督:演出を依頼された時、同じ原作をもとにした映画「スキャンダル」がまず頭に浮んだ。そして「スキャンダル」のイ・ジェヨン監督とも、どうして僕に依頼したのかという話を交わした。でも原作を読んでみると、どうして多くの監督たちがこの作品を映画にしたのかが分かった。18世紀に恋愛小説として書かれた本だが、男女の欲望、嫉妬など人物の心理が非常によく表れている。チャン・ドンゴンさんとも僕たちがこの本をもう少し早く読んでいたなら、もっとうまく恋愛することができたんじゃないかと話したほど魅力的だった。

―チャン・ドンゴンやチャン・ツィイー、セシリア・チャンをキャスティングした特別な理由はあるのか。

ホ・ジノ監督:最初は韓国の監督が1930年代の上海を舞台に映画を撮るということが負担に思えた。どのように映画を撮ればいいのかたくさん悩んだが、韓国人俳優を一人出演させて一緒に作業した方がいいと思った。チャン・ドンゴンさんは中国映画の出演経験もあるし、彼がプレイボーイ役のシェイパンを演じる姿が想像できないので、逆に新しいと思った。チャン・ドンゴンさんもちょうど悪い男を演じてみたいと言っていたし。セシリア・チャンさんの場合、「パイラン」で見せてくれた清純な姿が個人的に好きだったので、彼女が上海で撮影をしている最中に訪ねて、朝5時に会った。実は、原作ではモジエウィがシェイパンより年上なので、清純なイメージの女優がそのような強い役を演じきれるのかと思ったりもしたが、女優本人のカリスマ性が普段の生活でも出ていると分かったので彼女に決めた。チャン・ツィイーさんは、本人は隠しているようだが、少女のような姿があると思い、今まで見せていた強い姿とはまた違う姿を見せることができると思いキャスティングした。

チャン・ドンゴン「自分のイメージに僕自身も飽きていた時だった」

―シェイパンはプレイボーイだが、最後まで彷徨する寂しい人物でもある。このキャラクターのどんな部分に惹かれて選んだのか。

チャン・ドンゴン:観客たちが僕に期待していないもので僕が持っているもの、まだ見せることができてないものを見せたいと思った。これまで僕がやってきた演技やイメージに自分でも飽きていた時でもあったし、オムファタールの演技をしてみたいと思っていた時に、ちょうどこの作品に出会った。撮影の時は大変なことも多かったが、このキャラクターを演じることができたことに誇りを持っている。

―チャン・ツィイーとセシリア・チャンは、それぞれトゥパンイとモジエウィという個性が強いキャラクターを演じたが、出演を決心した特別な理由はあったのか。

チャン・ツィイー:原作の小説が大好き。誰がどんなふうに見るかによって様々な観点で解釈することができるから。だから、どの俳優が演じるのか、どの監督が演出するのかによってもまったく違った作品になるだろうと思った。つまり、「危険な関係」は俳優にとって挑戦意識を呼び起こす作品だと思う。トゥパンイというキャラクターは複雑で難しい人物だからこそ、女優として演じることができて幸せだった。

セシリア・チャン:当時の社会で、ある程度の力を持っているモジエウィという女性が、本当の愛を見つけて、それを守るために頑張る姿が好きだった。正直、モジエウィは私にかなり似ていて、キャラクターに共感できる点が多かった。

―モジエウィとトゥパンイ、二人とも人を愛することを恐れる人物だが、チャン・ツィイーとセシリア・チャンは、実際に愛についてどんなふうに思っているのか知りたい。

セシリア・チャン:色んな愛を経験してきたが、真実の愛が存在すると信じている。

チャン・ツィイー:どの人を愛そうとも、確信がないと当然距離を置くしかない。でもその愛に確信があったら、心の扉を開くべきだと思う。

ホ・ジノ監督「これまでのスタイルより強く感情を表に出した」

―ホ・ジノ監督はこれまでの作品では、主に二人の感情を深く表現してきた。しかし、「危険な関係」は主人公だけでも三人いて、その三人が映画の中で年下の恋人と関わったりもするが、この作品を作りながらこれまでと違う点を感じたのでは?

ホ・ジノ監督:これまでは二人の人物を撮ることに慣れていたので、今回はそのスタイルをかなり捨てなければならなかった。以前よりも強く感情を表出するなど、色んな変化を与えたが、個人的にも新しいチャレンジだったし、楽しい経験だった。

―チャン・ドンゴンは撮影する時、大変だったと話したが、具体的にどんな点が大変だったのか。

チャン・ドンゴン:最初は、監督の撮影スタイルがこれまで僕が経験したことと違い、慣れるまでかなり苦労した。監督は現場で特別なディレクティングをしてくれないタイプだ。でも、そのおかげで役について自分からたくさん考えるようになったし、映画の全般的なことにも関心を持つようになった。慣れてからは現場に行くことが幸せだった。あと、中国語で演じることが大変だった。最初は中国語だけで演じるつもりじゃなかったのに、中国語で演じているうちに欲が出てきて、むしろ韓国語で演じる時に感情移入がなかなかできなかった。そのため、最初から最後まで中国語で演じようと決めたけれど、本当にものすごい集中力を発揮しなければならなかった。寝ずに台詞を覚えて次の日に現場に行ったら、監督が台詞を変えて、もう一度台詞を覚え直したりもした(笑)

ホ・ジノ監督:僕は現場で台詞をよく変えるタイプなので……(笑) しかしその度に、チャン・ドンゴンさんが嫌なそぶりを見せず、完璧に新しい台詞を覚えるのを見て本当にびっくりした。

―チャン・ツィイーとセシリア・チャンは言葉が違うせいで、チャン・ドンゴンとコミュニケーションを取るのが難しくなかったのか。

セシリア・チャン:そのような大変さはまったく感じなかった。チャン・ドンゴン“オッパ(お兄さん)”の中国語演技も自然だったし、目を見れば何を言いたいのかよく分かった。18歳の時に韓国で「パイラン」を撮影した時、私一人だけ中国人だったので、外国人が外国語で違う国の映画を撮る大変さがよく分かっている。そのことを考えたら、チャン・ドンゴンさんは本当に素晴らしいと思う。撮影の初日から最終日までチャン・ドンゴンさんが休む姿を一度も見たことがない。いつも台本を手に持って台詞を覚えていた。

チャン・ツィイー:チャン・ドンゴンさんはこれからアラブ語、ロシア語など、どの言語でも映画を撮ることができると思った(笑) それほど素晴らしい俳優だと思う。

セシリア・チャン「『危険な関係』は愛を学ぶことができる教科書」

―チャン・ドンゴンとセシリア・チャンは、以前「PROMISE 無極」で一緒に共演して以来、久しぶりに会ったが、今回新しく感じたことはあるのか?

チャン・ドンゴン:二十年近く演技をしてきたけれど、一人の女優さんと二つの作品で共演したのは、今回が初めてだ。個人的にセシリア・チャンさんと特別な縁があるんだと思った。名字が同じ“チャン”だし(笑) 「PROMISE 無極」を撮影した時は少女のような感じがしたけれど、今はすっかり大人になって凛としていて、よほどのことがない限りぶれない余裕すら感じた。それがいい演技として表現されていた。

セシリア・チャン:久しぶりに会ったけど、ちっとも変わっていない。ただ一つ変わったことは、私も一人の子どもを持つ母親になったし、チャン・ドンゴンさんも一人の子どもを持つ父親になったということだ。でもそれが成熟した男性の目つきとなって魅力的だと思った。モジエウィとシェイパンはお互いに愛し合っているが、シーンごとに異なる感情を持って接するので、難しい作業になるかもしれないと思った。でも、リハーサルの時から様々な感情がこもった目つきを感じることができてよかった。

―「危険な関係」が中国に次いで韓国でももうすぐ公開されるが、俳優としてどんな意味を持つ作品であるのか。

チャン・ツィイー:俳優が観客を感動させるためには俳優自身が感動しなければならないし、観客の心を痛くするためには俳優自身が心を痛めなければならない。この作品を撮影しながら本当に心が痛かったが、その分幸せでもあった。これからこの原作小説を元にした別の映画が作られるとしたら、もう一度演じてみたいと思う。その時はモジエウィの役を演じたい。

セシリア・チャン:「危険な関係」は愛を学ぶことができる教科書だと思う。この作品を何度か見たらその理由が分かると思うけれど、この作品の中には何が本当の愛なのか、人間関係において重要なことは何なのかに関する答えが入っている。個人的にもそのようなことについてたくさん考えることができた。

チャン・ドンゴン:BIFFでは「コースト・ガード」や「グッドモーニング・プレジデント」が開幕作品として紹介されたこともあるので、個人的にも特別に思っていたが、今回の作品も公式上映できてとても嬉しい。そして、何より素敵な俳優たちとこれまでと違う演技をすることができたので胸がいっぱいだ。

記者 : 釜山=ハン・ヨウル、写真 : 釜山=イ・ジンヒョク、編集 : キム・ヒジュ、翻訳 : ナ・ウンジョン