Vol.1 ― MBLAQ 「とても忙しくて田舎の青年のように暮らしてます」

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今韓国でアイドルとしてデビューするということは、まるで浜辺で孵化をした亀の子のようだ。自らの力で海に入る瞬間、限りない自由が保障されるが、海にたどり着くまでのその短い間に、多くの亀が命を落とすのである。

アイドルも、デビューしてからある程度のポジションにたどり着くまでの時間が、最も辛く危険だ。ほとんどのアイドルがデビュー直後、注目を集めることができずに消え、その中でも残ったアイドルが数多くのステージやバラエティ番組に出演する。その過程を経て人々が彼らを知り、目を引くほどのファンが付いた後に、アイドルは少しずつ自分の望むものを手に入れることができる。

MBLAQはその険しいサバイバルゲームを経た小さな勝者だ。デビュー当時、RAIN(ピ)がプロデュースしたアイドルグループとして話題になった彼らは、数ヶ月の試行錯誤とそれだけの成果を上げて、少しずつ自分たちの存在感を高めていった。今ではバラエティ番組などで彼らの姿を簡単に目にすることができるし、Mnetの人気音楽番組「M COUNTDOWN」で1位を獲得したこともある。海に向かって泳ぐ準備を終えた彼らに、今この瞬間の話を聞いた。

―ワールドカップはご覧になっていますか。(インタビューは2010年6月に行われた)

ジュン:はい。ハイライトで(笑)

―忙しいですか。

ジュン:はい。本当に忙しいです。僕はもともと演技をやりたかったので、デビュー前までは映画館で今何が上映されているのかすべてチェックしていたのですが、最近はどのような映画をやっているのかまったく知りません。


「今後も1位になったらずっと忘れようと思います」

―ワールドカップを観られないほどなら、世間と断絶されたのと同じですね(笑)

ミル:ワールドカップなのに!(笑)
ジオ:だから、とても素朴に生きてるようです(笑) 田舎の青年のように。たまに時間ができて同僚の歌手と会ったとき、“ああ、僕はとても真面目な青年だな”と感じます(笑)
ジュン:本当に本当に本当にそう。

―ジオさんはテレビで、デビュー前は20名の女性と付き合ったことがあるという話をされていましたが(笑)

ジオ:ああ、今はみんなきれいに洗い流されて、白紙状態に戻ってしまった感じです(笑) 何でもやり過ぎると飽きるし、ずっと刺激が必要じゃないですか。僕らは何年か、世間と断絶された生活を送っているので、自由になった時にやることが多そうで幸せだと思います。

―若いメンバーの方々は、今のような生活で大丈夫ですか?

ミル:僕はもっとブレイクしたら遊びます(笑)
スンホ:あの子はもうよく遊んだから、すでに初心を忘れた子なので。

―ミルさんはデート費用のために牛を売ったと聞きました(笑)

ミル:はい。僕は自由な性格だったので…やりたいことはすべてやってきました。

―「Y」が「M COUNTDOWN」で1位になりましたが、初心は変わりませんでしたか?(笑) 終わってから身内でパーティーのようなものはしなかったのですか。

ミル:仕事を終えて練習しただけですよ。

―初心に変化はなかったようですね(笑)

スンホ:心持ちの変化はありました。責任感もさらに強くなり、次の音楽はどのようにしなければならないのかと考えましたし。
チョンドゥン:ただその日だけ泣いて忘れました。1位になった事実は忘れ、今後も1位になってもずっと忘れていくつもりです。

―「M COUNTDOWN」で初めて1位になった時、スンホさんは少し泣いていましたね。リーダーとして喜びは格別だったのではないでしょうか。

スンホ:泣かないと思っていました。でも1位になる前に祖父が亡くなって、そのせいか一言しゃべっただけで涙が出てきました。あと2週間長く生きていたら新しい曲も聴かせてあげられたのに……だから僕がその場で少ししゃべっただけで本当にまるで絵のように脳裏に過去の出来事が浮かんだのです。祖父を思い出すととても悲しいです。
ジオ:そしてミルは泣くと同時に初心を忘れました。
ミル:(泣く真似をしながら)ううー。
チョンドゥン:涙よりも初心を流してしまいました。
ジュン:上岩洞(サンアムドン、番組の収録場所)に初心を置いてきてしまいました。
ジオ:1位という発表があった時、アルバムの集計や審査委員の集計のようなものが出るじゃないですか。その時からすでにいろいろな感情が湧き上がってきて、そしてポーズをとっていたとき……。
チョンドゥン:横で見ていたんですが、その前から泣きそうになっていましたよ。この子は。
ミル:みんな3秒~5秒ほどびっくりした表情をした後で泣き出すのに、僕は「MBLAQ!」と呼ばれた瞬間に泣きました。とても恥ずかしかったです。


「今回は悪口を言われないように練習しました」

―「Y」でこれほど良い反応が得られると思っていましたか? 曲がサビのリフレイン(繰り返す部分)を強調するというよりも、曲全体に緊張感を与えるスタイルなので、最近のトレンドとは違うかなとも感じましたが。

スンホ:初めて聞いたときは配しました。最近の曲はすべてリフレインで勝負をかけるのに、これは雰囲気が大切な曲だから。でも「Y」ほど僕たちが自信を持って表現できた曲はありませんでした。

―練習の時はいかがでしたか。全体的に微妙に変わるリズムを合わせることができなければ、曲が滑稽になってしまう場合もありますが。

スンホ:まず繰り返し練習しました。そして練習でも手を抜かず、渾身の力を込めてやるのが大切です。力を抜いて10回練習するよりも、本当にステージにいるように歌いました。練習室ではマイクが無いから、アカペラで歌うかわりに伴奏を小さくして歌い、そして確認しました。

―ダンスをしながら歌うことはいかがですか。ひと息で歌わなければならないような曲なので、とても大変ではありませんか。

スンホ:初めはできるのかなと思いました。このような感じで歌ったこともなかったので、うまくできなくてよく怒られたし。だからスランプに陥り、自分は歌が下手だ、そのうえ激しく踊らなければならないのにどうしよう、と悩んだりもしたのですが…やってみるとできるもんですね(笑)

―身体の線を長く伸ばす動作が多いながらも、至るところに激しい動きが散りばめられていて、さらに歌の呼吸は途中で切らしてはいけないので、「これをさせた人もする人も本当にすごい」と思いました(笑)

スンホ:そうですよね。「Oh yeah」は力強いパフォーマンスが中心なので見ている人に強いイメージを与えれば良いのですが、「Y」は最初から最後まで呼吸を切らすことなく、さらに雰囲気もちゃんと掴まなければならないので大変でしたし、息を切らしてしまうととても辛そうに見えてしまいます。反対に、歌をとても楽そうに歌ってしまうと見ている人は退屈してしまいますからね。

―ジュンさんは曲の歌い出しを担当していますが、そこで曲の雰囲気が決まりますよね。曲をどのように解釈されましたか。

ジュン:今でも難しいです。その部分はビートしか流れないじゃないですか。それにダンスもあるからすぐに姿勢を正して音程を合わせなければならないし。だからステージが始まる前に音程を合わせるため、入る前から「サムーサムーsomebody」と歌っています。まだテレビでパフォーマンスしながら音程を少しはずしてしまうこともよくあります。

―歌の呼吸をずっと続けている間にも激しい動作があり、ずっと筋肉を緊張させなければならないようですが、練習はどのようにしましたか?

ジュン:(ジュンがソロ写真撮影のために名前を呼ばれた瞬間)あ、この質問には答えたい!(笑) 話したいことがあるので。

―どうぞ。いくらでもなさってください(笑)

ジュン:僕の振り付けでは、ずっと切れるように体を跳ね上げる振り付けがあるのですが、そのときも歌は自然に続きます。実際、「Oh yeah」の時にいろいろと指摘されたので、今回は何も言われないようにしようと思って練習したのですが、上手くいきませんでした。実際、今もあまり上手くできませんが、本当に何百回も繰り返したから、まるで心臓や内臓がドクドクポロポロ出てくるような感じです(笑)


「ジフン(RAIN)さんがMBLAQに望むのは自立心」

―この曲では息の合ったダンスがポイントですが、ハイライト部分で動きを合わせるのはいかがでしたか。他のグループとは違う練習をしたのではないでしょうか。

スンホ:何度も試行錯誤を繰り返しました。デビュー当時と違うのは、メンバーがそれぞれソロ活動もしているため、集まれる時間が限られているので、1度集まったら本当に集中しなければならないし、翌日には必ずマスターしていなければならないというプレッシャーもありました。
ジオ:歌が大衆受けするようなものとは言い難いので、ダンスで人気を集めてみんながマネしやすいようにするのか、ダンスも歌と似たような雰囲気にするのか悩みました。
スンホ:練習の時は、ひとりだけ外れて4人のダンスを見ます。そうやって1回ずつ交代しながら5回やります。デビューの時からこのように練習をして、お互いの意見を聞けるようにしました。そして、最後にカメラで撮影した動画を5人で確認すると、練習が早く終わります。

―ミルさんはラップを担当されている分、他のメンバーとはまた違った状況にあったと思いますが。

ミル:プレッシャーですよね(笑) 1stアルバムのときは曲の歌い出しが僕だったのですが、大変でした。

―それもなんとデビュー曲を(笑)

ミル:はい。そしてジフン(RAINの本名)さんからも「最初が一番大切だ」とプレッシャーをかけられるし。それに「Y」はボーカルのアドリブが無く、その部分は僕のラップが入ります。曲がほとんど終わりかけの時に少しインパクトを与えなければならないから、それがプレッシャーなんです。その時、ジフンさんが直接ガイドボーカルをしてくださったのですが、とても難しかったです。さらにステージの興奮した状況でするから、うまく呼吸が合わないとラップがダメになってしまいます。

―MBLAQはRAINさんがガイドボーカルを務め、彼から学ぶこともあるでしょうが、歌のスタイルはRAINさんとは違いますね。一般的にプロデューサーごとに歌うスタイルが変わる場合が多いのですが、MBLAQはどのようにトレーニングをされていますか。

ジオ:僕たちはデビュー前の経歴が長いため、それぞれ歌を歌っていた時間が長いんです。歌それぞれの感じはある程度教えてもらって、基本的な声や歌唱法は自分がもともと持っているものを出しています。
スンホ:今回のアルバムは僕たちの意見がよく反映されていて、ジフンさんから強要されたことはありません。例えば、他のメンバーに合ったパートをあえて他のメンバーに練習させたりはしませんしね。曲のパート分けはほとんど僕たちがします。

―メンバー自らがするのですね。

スンホ:ジフンさんが強調したのは自立心です。次のアルバムには僕たちが書いた曲が収録されるかもしれません。強制的に何かをしろというのではなく、後ろからそっと(笑) だから負担を感じずに、時間の経過にともなって自然にMBLAQはこのような感じのグループだと受け入れられるようにしてくださったみたいです。ステージをすでに頭の中で描き、その後曲を提供し、その感じに合うようにされるようです。

―RAINさんがMBC「ラジオスター」で、MBLAQのメンバーへ、初めはイメージに気を遣えと言っていたけれど、テレビに出演した姿を見たら、このままで良いと思ったと語っていましたが、本当にそのように指示されたのですか。

スンホ:初め、僕らは歌番組だけに出演していたし、パワフルなイメージがありましたよね。だからジフンさんもあまり気にはされなかったのですが、バラエティ番組にひとつふたつ出演しだしてから、「こういう子たちはいないよな」と思われたようです。そうするうちに、これがますます収拾がつかなくなってしまって(笑) 「君たちがこんなにもおもしろいとは知らなかった」と言って、やりたいようにやりなさいと言われました。

記者 : カン・ミョンソク、チェ・ジウン、写真:チェ・ギウォン、編集:イ・ジヘ、翻訳:平川留里