「サラリーマン楚漢志」会長はなぜ長生きしなければならないのか

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写真=SBS

SBSドラマ「サラリーマン楚漢志」の最終回、悪役モ・ガビの破滅

戦争が終わり、「巨悪」モ・ガビ(キム・ソヒョン)が敗北した。

SBSドラマ「サラリーマン楚漢志」は、13日の最終回でモ・ガビに総攻撃を仕掛けた。欲を原動力にしてきたモ・ガビを没落させることは簡単ではなかった。だが、「過猶不及(過ぎたるはなお及ばざるがごとし)」という言葉通り、結局行き過ぎた欲望は裏目に出た。天下グループは倒産し、モ・ガビはチン・シファン殺人罪とウヒ殺人未遂罪に問われ完敗。そして気が狂った。 完璧な破滅だ。

1980-90年代に放映されたKBSドラマ「テレビ孫子兵法」は、サラリーマンの生活を「戦いの技術」に喩えたが、「サラリーマン楚漢志」はまさに銃なき戦争の叙事詩、そのものだった。サラリーマンの話を描いた同ドラマが放送前に作ったミュージックビデオに、なぜ戦場のシーンが盛り込まれているのかは見れば分かる。資本主義社会で生き残りをかけて激しく競争しなければならないサラリーマン。これを代表するキャラクター、ユ・バン(イ・ボムス)は失業者ながら大手企業への就職を夢見て必死にあがき、天下グループのトップにまで上りつめた。

平凡な人が権力層の腐敗を暴きだして立ち上がるという話は、同ドラマの制作スタッフの前作といえる「ジャイアント」に似ている。「ジャイアント」は独裁政権下で人が耐えるべき逆境を描き、「サラリーマン楚漢志」は大手企業内の不祥事を告発したが、決局底辺にあるのはお金と権力を持つ人々の限りない執着と欲望だと訴える。

写真=SBS
そして、「サラリーマン楚漢志」は上層部の軋轢以外にも、これによって犠牲になる最下位の労働者の事情にも注目した。ニュースではよく報道されなかった双龍(サンヨン)自動車などの解雇労働者の奮闘は、このドラマを通じてかなり具体的に描かれた。天下グループと戦うためにユ・バンが立ち上げた「ペンソン実業」は、大手企業の横暴に対抗し、健全な経営方式で勝利する中小企業の快挙を見せた。

中国の歴史書籍「楚漢志」をモチーフに各エピソードを多様な四字熟語に喩えたこのドラマの最後の四字熟語は“勧善懲悪”だった。だが、ありふれた結末を選んだこと以外にも物足りなさは残る。モ・ガビの破滅に全力を尽くした後に残る気まずい疑問。それはモ・ガビだけなくなれば終わりということなのだろうかということだ。

「サラリーマン楚漢志」の最後のシーンでは、トップになったユ・バンととぺク・ヨチ(チョン・リョウォン)が堂々と登場する。オーナーが変わっただけで、大手企業という背景から聞こえてきた最後の台詞は、「会長、長生きして元気でいて下さい」だった。これで果たして戦争は終わったのだろうか。

記者 : イ・ヒョンジン