「赤道の男」誰がスミを“化け物”にしたのか?

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「赤道の男」のチェ・スミ、“究極の悪役”に生まれ変わる

2日放送されたKBS 2TV「赤道の男」で、画家のチェ・スミ(イム・ジョンウン)が検事のイ・ジャンイル(イ・ジュニョク)に投げかけたセリフは、衝撃的なものであった。

「私が法的なことを何も知らなくても、あなたがやったことが何かはわかるわよ!殺人未遂!」

“脅迫”という手段を使って、上辺のみの愛を勝ち取ろうとするスミの姿は、恐ろしいと表現するのがまさにふさわしい。冷血漢ジャンイルまでもを涙ぐませるスミの手口に、彼女の姿は「赤道の男」の中でも“究極の悪人”とも言うことが出来るだろう。

かつてスミは、ジャンイルのことを深く愛していた。しかし、時間が経つにつれ、スミの愛はその形を変えていく。彼女の愛は、執着と憎悪によるものへと変わり果てた。今スミは、誰よりも恐ろしい悪役に変化を遂げ、「赤道の男」に緊張感を張り巡らせている。一体、誰がスミを“化け物”にしてしまったのだろうか。


誰がスミを化け物にしたのか?

スミは、静かな海辺の町で、芸術家を夢見ていた少女だった。シャーマンの父を持ち、同年輩の子供たちにいじめられそうになるなどの出来事もあったが、ソヌ(オム・テウン)のように良い友人がいたため、平穏な学校生活を送ることができた。

そんなスミが道を誤り始めたのは、ジャンイルに出会ってからだった。初めての出会いから、すでに間違いはあった。ジャンイルがスミと付き合ったのは、お金持ちの令嬢だと錯覚していたからだ。ジャンイルはすぐに事実を知り、“シャーマンの娘”のスミとの付き合いを冷たく切ってしまう。そしてスミの貧しさにまでも憎悪の念を抱く。

スミにはこのような状況がは自分にとって恥ずべきもので、一方では深く傷つきもしただろう。しかし彼女は初めての出会いでジャンイルに恋心を抱いた。結局、ジャンイルへの一方的な片思いが始まり、これがスミに道を誤らせたのだ。

ある日スミは、偶然ジャンイルがソヌを崖から突き落とす“殺人未遂”の現場を目撃する。しかし、ジャンイルを愛しているという理由から、その事件に関しては、見て見ぬふりをした。親友のソヌが生死の境を超え、視覚障がい者となって闇の中をさまよっていたときも、スミはただジャンイルへの“盲目的な愛”から、黙ってソヌから目をそらした。

このようなスミの姿は幼なじみのソヌの立場からすれば、裏切りに近いものと言える。視聴者もまた、スミの行動に怒りを示した。しかし、彼女の間違った愛は、一方では同情の余地があった。ジャンイルからあらゆる“屈辱”を受けながらも、自分の想いを捨て切れないスミの姿に、哀愁が感じられたからだ。

しかし、海外に留学し有名な画家となって帰国したチェ・スミは一変していた。彼女がイ・ジャンイルに対して抱く感情は、もはや“愛”とは呼べないものだった。ジャンイルの悪行を描いた絵で脅迫するスミから、ジャンイルへの心からの愛は感じられなかった。そこには“憎悪”と“執着”の感情だけが漂っていた。

ジャンイルは、初めての出会い以降、スミを忌み嫌ってきた。そんなジャンイルに対するスミの愛が、“見て見ぬふりと脅迫”などで実を結ぶわけがない。結局スミとジャンイルの関係は破局に至った。二人の間には、やはり憎悪と執着だけが残ることとなる。

世界的に認められる画家のスミが、愛憎の対象である検事ジャンイルに“絵での脅迫”を行う理由は、結局、憎悪と執着のためだった。スミのこのような憎悪と執着は、彼女を「赤道の男」のイ・ジャンイル、チン・ノシク(キム・ヨンチョル)をも超える悪人に仕立て上げた。


道を誤った愛によって“悲劇の悪人”のイメージを与えられたスミ

ある意味では「赤道の男」のヒロイン、ハン・ジウォン(イ・ボヨン)よりはるかに魅力的で能動的な人物だったスミ、しかし、道を誤った愛によって、彼女は“悲劇の悪人”のイメージを被せられた。

ふと、スミの愛の対象がソヌだったら?と考えてみた。もちろんハン・ジウォンと運命的な恋に落ちるキム・ソヌがスミに恋したかどうかは知るすべもないが、少なくとも今よりは幸せになったのではないかと、そんな気もする。

2日の放送でスミは、ソヌとジウォンの思うように進まない関係を発展させる鍵のような役割を果たした。スミは、ソヌがジウォンを愛していることがわかる一枚の写真を、ジウォンが見られるようにしたのだ。結局これにより、ソヌとジウォンの愛は再び以前の甘く切ない関係に戻ることになる。

もしかすると、スミが夢見ていた愛もこのような切なくも幸せな何かだったのかも知れない。しかし、ジャンイルを選択したスミの愛は、幸せとはほど遠いものだった。その不幸のどん底から抜け出せず、依然として愛憎が入り乱れ、イ・ジャンイルに対する危険なほどの執着を見せている。

日増しに化け物に変わりつつある「赤道の男」のスミを見ながら、気の毒だと思うようになった。結局、彼女を化物にしたのは、彼女自身だったのだ。

記者 : クァク・ジンソン