【REPORT】BTSのSUGA、初の日本ソロ公演を開催!Agust Dの全貌、ここに解禁

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写真=BIGHIT MUSIC
現在、ワールドツアーで世界を巡っている、BTS(防弾少年団)のSUGAが、その日本公演「SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' in JAPAN」(会場:神奈川・ぴあアリーナMM)を開催。4月にAgust Dとして発売した初のソロ・アルバム『D-DAY』を引っ提げ、6月2~4日の3日間にわたり、超満員のファンを魅了した。ここでは、BTSの日本デビュー9周年記念日ともなった4日の公演をレポート!


Agust Dが己のルーツをディグ!

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雨が降りしきる中、雷鳴が響き、舞台はミステリアスな雰囲気。石畳の路上にはミン・ユンギ(SUGAの本名)が気を失って横たわり、その傍らにはバイクが! 恐らく、ユンギは自分が運転するバイクで事故にあったのだろうか? そして彼の脳裏には様々な記憶(もしくは近未来に起きるだろうこと)がフラッシュバックし、蘇生する。

そんなビデオと、青白く光るリアルなステージとがシンクロする。場内の雨脚も強くなり、暗闇の中、雷光が幾つも走る。そして、4人のフードを被った男性に担がれ、まだ目覚めていないユンギがステージへ。4人は彼をそっと舞台に置き、ユンギはビデオと同じ状態で横たわるのだが、違いはただ一つ、左手にマイクを持っていたこと。そう、彼は今、Agust Dとして覚醒し、「Yeh!」とシャウトを放ってから、挨拶代わりに『D-DAY』のタイトル曲「Haegeum」を見舞う。ビートは、韓国の伝統弦楽器、奚琴(ヘグム)のサウンドでオリエンタルなスパイスを効かせ、そこに乗るのは、SUGAのストレートなメッセージ。それは、禁じられた事からの解放、即ち、“解禁(ヘグム)”で、拝金主義や虚栄心、利己主義の奴隷となることを戒め、リスナーに“自由であれ”と説く。彼の強烈なメッセージはフロアにフリーダムな空気をもたらし、SUGAは初っ端から会場の興奮を沸点へと導いていく。

その後、彼は正規アルバム以前に発表した2本のミックステープ、『D-2』(2020年)、『Agust D』(2016年)のタイトル曲を続けざまに演じて、Agust Dのルーツをディグする。韓国の伝統的なマーチソングを下敷きにした「Daechwita(大吹打)」では、王者の印でもあるガウンをまとい、バックダンサーは彼の従者状態! SUGAが髪をかき上げイヤモニに手を当てるだけでも館内は沸き、ケンガリ(韓国の金属製打楽器)の音が大きく鳴り響くと、彼は「皆さん、準備はいいですか?」と煽って、ミュージックシーンの覇者、キング・オブ・ステージの風格を露わにす。間奏部では「一緒に!」「Let's Go! 1,2,3」と声をかけ、彼がビートにのって自在にステージを舞えば、フロアももちろん呼吸を合わせて縦のりに! 原点中の原点「Agust D」では、まずフロアに向けて、「今日が最後の公演です。楽しんで下さい。皆さん、準備はいいですか?」と話しかけ、彼を育んだ大邱への誇りを胸に、ワックなMCに口撃を浴びせ、ラップでファンをイカせる。リリックは、BTSの「We Are Bulletproof pt.1」の詞に若干の変化を加えながらセルフサンプリングし、これより以前にリリースした「サイハヌウォル」にも言及。ソロ・アーティストとしての歴史をぐるりと振り返ってみせる。

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ジェームス・ブラウンの「It's A Man's Man's Man's World」をサンプリングしたトラックも強烈で、「俺がアイドルでいることに感謝しな」と言うリリックは、「オレがヒップホップMC一本で攻めたら、お前らの居場所なんてねえよ」ってこと。この詞だけでも格好良すぎなのだ! モニター画面には青と赤、二人のSUGAが映し出され、彼らが向き合えば、それはまるでSUGAとAgust DによるバーチャルなMCバトルのよう! パフォーマンス途中には「皆さん、こんばんは。D-DAY TOURにようこそ。全力で行きま~す。皆さんもそうですか? では、行ってみましょう!」と話して、右手で自分の胸を強く叩き、力強さを漲らせる。さらに同じ1stミックステープから「give it to me」をチョイスし、卑語だろうが何だろうか、おかまいなしにアグレッシブに展開すれば、場内にはエネルギーが充満! タイトかつスリリングなステージングでオープニングからARMY(BTSのファン)の度肝を抜いていく。


ストロベリー・ムーンの夜、「Moonlight」に酔う

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オープニングでAgust Dのヒストリーを遡った後、彼は最初のMCパートでこう述べた。
「ARMYの皆さん、こんばんは! SUGAです。皆さんに会えて、嬉しいです。日本でのソロ・コンサートは初めてで、凄く楽しみでした(深々と一礼)。もう最後の公演、寂しい~ BTSのSUGAとしては、初めてお見せするステージをたくさん準備しました」
そして、何度も「楽しみですか?」と尋ねた後に「叫べ!」と煽り、フロアからのレスポンスににっこり笑顔! 「では行ってみましょう!」と話して、雰囲気をガラリ変えていく。

オープニングの緊迫したムードとは一転、別れを決意する瞬間の想いをのせた「Trivia 轉: Seesaw」はギターの弾き語りでアコースティックにパフォーマンス。ギターにはBTSメンバー、それぞれのサインやメッセージが施され、1人ステージに立つSUGAをメンバー6人で見守っていることが伝わってくる。そして歌い終えた後は、革張りのソファーに腰かけ、テレビのスウィッチをオン! かつての恋人に想いを馳せるR&Bチューンの「SDL」を歌えば、過去を懐かしむような詞に合わせて、チャンネル・ガチャガチャなブラウン管テレビに歌うSUGAが! 投げキッス風に締めたラストも格好良かった。

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「人とは? 人生とは?」を歌う「People」では彼の柔らかなボーカルが浮き立ち、歌い終えた後には微笑みながらフロアに視線を。その続編となる「People Pt.2」では、彼が「皆さん、一緒に歌いましょう」と声をかけ、マイク持つ左手をフロアに向けて高々と。ARMYが一つになって、客演歌手IUのパートに声を重ねて、見事なハーモニーを演じれば、SUGAが右手グッドマークでレスポンス。その後も、ファンの大合唱は続き、それを彼は両手を広げて気持ちよさそうに全身で受け止め、最後はIUとファンの歌声にSUGAもエレガントなボーカルを乗せ、美しき三重奏を奏でた。

「雰囲気を変えてみました。(これからも)もっと色んな人生の話を描いてみたいと思います」と振り返った後は、再びヒップホップモードへ突入だ! 『D-2』のオープニング・トラックでもある「Moonlight」は、大邱・南山洞の地下の練習室から上り詰め、漢南洞の高級マンションに住むようになった道のりを振り返るナンバーで、自分と正面から向き合い、“あの頃も今も、夜明けに見る月は変わらない”と歌う。偶然にも、この日は満月の日で、別名:ストロベリー・ムーン。ステージのバックにも満月がぽっかりと浮かび、そこには、成功者だけが一望できるソウルの夜の街並みが映る。館内が赤く染まった「Burn It」では、SUGAも想いを叩きつけるようにラップし、立ち上がる無数の炎と、縦に揺れる赤いARMYボムが彼をアツく援護射撃していた。


BTSチューンのSUGAパートをリレー形式で!

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ユンギ「Exist In Memory」、SUGA「Lost In Memory」Agust D「The Chaser」。SUGAに内在する、そんな3つのアイデンティティをショートムービー風に展開した後は、「Interlude : Shadow」を挟んで、BTSの曲からSUGAのパートを繋いでいく。「BTS Cypher Pt.3: Killer」ではエロスも加味した切れ味鋭すぎるラップでブッタ切り、照準器でワックMCに狙いをロックオン。終盤にはペットボトルの水をフロアに向けてまき散らし、ファンの興奮は収まり知らず。「BTS Cypher Pt.4」のイントロでは客席に背を向け、両手を広げて、フロアをクールに煽り、今度は自分に水を浴びせかけ、ヘッドバンギングしながら「I love I love I love myself」とラップする。その後もBTSの「UGH!」「DDAENG」から自分のパートを歌い繋ぎ、J-HOPEを客演に向かえた「HUH?!」からも己のバースをかます。怒りをタイトなラップに昇華させつつ、美味しさを凝縮させたステージは疾走感に溢れ、その姿は3ポイントを次々とキメるシューティング・ガードのようだった。

ハーコーなパートを終えたSUGAは装着していたグラブを脱ぎ、「メンバーがいなくて1人で歌うとすごく寂しいですね。でも皆さんが一緒に歌ってくれてとても心強かったです」とファンに感謝。「I love I love I love myself~」の詞を再びファンと唱和して一体感を演出すれば、ARMYのナイスな歌声にレゲエホーンも歓喜の雄叫びを上げる。そしてラストは「ARMYしか勝たん!」のセリフでファンを労った。


ARMYの記憶の中で永遠に再生される物語

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ここから本編の最後まで、彼は『D-DAY』収録曲を中心に構成していく。まずはジェントルなピアノの音色を重ねて「Life Goes On」をじっくりと披露。歌い終えると、モニター画面には坂本龍一がピアノをプレイし、その横で教授の演奏に聞き入るSUGAという東京での対面シーンが! 教授は「良い子だ」と褒めながら、SUGAの肩を叩き、そんなビハインドストーリーに涙せずにはいられない。そして、彼は「長い旅路が平穏でありますように」という哀悼のメッセージが映し出して坂本とのコラボチューン「Snooze」を歌い、ピアノを弾きながらのラップを演じた後、マイクを手にしてステージに立つ。後輩たち、そして次世代の若者へのエールソングは力強き愛に満ち溢れ、SUGAは両手でスタンドマイクを握りしめながら熱唱。そして故郷を同じくする先輩フォークシンガー、故キム・グァンソクの「30の頃に」をサンプリングした「Polar Night」では、再び、その眼差しと舌先を社会へと向けた。

「皆さん、盛り上がってますか? 僕も幸せな時間でした。あっという間の3ショーでした。明日も会いたいですね。最後のステージも全力で楽しみましょう」と告げたSUGA。全力で「Make Some Noise」とシャウトすれば、ファンもこの日一番の熱狂的な歓声を贈る。本編は自分の過去と向き合う「AMYGDALA」で幕を締め、歌い終えたSUGAはステージに崩れ落ち、彼をステージに運び出した人たちの手で、舞台を去った。エンディングを迎えたステージでは開演時と同じように雨が地を叩いていた。「AMYGDALA」のPVではデビュー前のSUGAが配達のアルバイトをし、その際、事故に遭っていたことが描かれる。つまり、この本編のフィナーレの物語は、再びオープニングへと続き、その循環に終わりはない。SUGAが次なるストーリーをドロップするまで、ファンの記憶の中で、この日の本編の物語が永遠に再生される、そんな壮大な仕掛けになっていたのだ。SUGAだからこそ出来るスケールの大きなプレゼントに感謝だ!


ARMYと同じ目線&正面から生身でステージング

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アンコールは『D-DAY』のオープニング・トラックでアルバムタイトルと同じ曲をチョイスし、再び“解禁”をテーマにラップ。とりわけ、そのステージ構成が凄かった。この日、どんどん狭まっていくユニークなステージが注目されたが、アンコールでSUGAが立った舞台はわずか畳一畳程度で、高さは推定80センチ。ワールドクラスのスーパースターが一人で極狭の舞台に立ち、ファンとほぼ同じ目線で、約9千人のオーディエンスを相手に生のパフォーマンスを行うなんて、アンビリーバブル。途中、スモールな舞台を降りてファンの待つアリーナへと向かい、ARMYと触れ合うのだが、焦らす仕草もお茶目でキュート! バンドメンバーも「♡ユンギ♡大好きすぎる♡」(ベース)とメッセージを掲げるほどにお茶目だった。

BTSとして発表し、SUGAがメインMCとしてドロップした「INTRO Never Mind」ではMCとしてのアティチュードを改めて表明し、アンコールのラストには「The Last」をチョイスする。イントロはファンが叫ぶ「ミン・ユンギ」コールで、それに合わせて、SUGAもリズムを刻むのだが、さらに驚くべき事件がここで起きる。彼はフィナーレで舞台をすべて取っ払い、アリーナ席のファンと同じフロアに立ったのだ! しかも、360度でカメラが設置され、彼のパフォーマンスはマルチアングルでファンの元へ。そこにはタネも仕掛けもなく、存在するのは過去も自分の負も包み隠さずさらけだす生身の一人のアーティスト! 9千人のファン一人ひとりと直接対話するような、全身全霊でのパフォーマンスに、ユンギ、SUGA、Agust Dという三つのアイデンティティの区分すら不要に思えた。

「今日の僕は100%のコンディションではありません。今は6、70%くらいまで上がってきましたが、100%は次回僕が来た時に確認できると思います。今日、皆さんが送ってくれた応援を忘れません。今日はとても素晴らしい思い出を作って下さり、ありがとうございます。皆さんの思い出の中に、素敵な思い出だけが残る事を願っています。次回、日本で公演をする時は7人で行います」

終盤、ファンにこう述べ、BTSとしての再会を約束してくれたSUGA。アンコールを終えた彼は、振り返ることなく、両手を振りながらステージを後にした。

取材:きむ・たく

■公演概要
「SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' in JAPAN」

【日時】
2023年6月2日(金) 開場17:30/開演 18:30
2023年6月3日(土) 開場16:00/開演 17:00
2023年6月4日(日) 開場16:00/開演 17:00

【会場】
神奈川・ぴあアリーナMM

記者 : Kstyle編集部