【REPORT】BTSのSUGA、初の日本ソロ公演を開催!Agust Dの全貌、ここに解禁
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Agust Dが己のルーツをディグ!

そんなビデオと、青白く光るリアルなステージとがシンクロする。場内の雨脚も強くなり、暗闇の中、雷光が幾つも走る。そして、4人のフードを被った男性に担がれ、まだ目覚めていないユンギがステージへ。4人は彼をそっと舞台に置き、ユンギはビデオと同じ状態で横たわるのだが、違いはただ一つ、左手にマイクを持っていたこと。そう、彼は今、Agust Dとして覚醒し、「Yeh!」とシャウトを放ってから、挨拶代わりに『D-DAY』のタイトル曲「Haegeum」を見舞う。ビートは、韓国の伝統弦楽器、奚琴(ヘグム)のサウンドでオリエンタルなスパイスを効かせ、そこに乗るのは、SUGAのストレートなメッセージ。それは、禁じられた事からの解放、即ち、“解禁(ヘグム)”で、拝金主義や虚栄心、利己主義の奴隷となることを戒め、リスナーに“自由であれ”と説く。彼の強烈なメッセージはフロアにフリーダムな空気をもたらし、SUGAは初っ端から会場の興奮を沸点へと導いていく。
その後、彼は正規アルバム以前に発表した2本のミックステープ、『D-2』(2020年)、『Agust D』(2016年)のタイトル曲を続けざまに演じて、Agust Dのルーツをディグする。韓国の伝統的なマーチソングを下敷きにした「Daechwita(大吹打)」では、王者の印でもあるガウンをまとい、バックダンサーは彼の従者状態! SUGAが髪をかき上げイヤモニに手を当てるだけでも館内は沸き、ケンガリ(韓国の金属製打楽器)の音が大きく鳴り響くと、彼は「皆さん、準備はいいですか?」と煽って、ミュージックシーンの覇者、キング・オブ・ステージの風格を露わにす。間奏部では「一緒に!」「Let's Go! 1,2,3」と声をかけ、彼がビートにのって自在にステージを舞えば、フロアももちろん呼吸を合わせて縦のりに! 原点中の原点「Agust D」では、まずフロアに向けて、「今日が最後の公演です。楽しんで下さい。皆さん、準備はいいですか?」と話しかけ、彼を育んだ大邱への誇りを胸に、ワックなMCに口撃を浴びせ、ラップでファンをイカせる。リリックは、BTSの「We Are Bulletproof pt.1」の詞に若干の変化を加えながらセルフサンプリングし、これより以前にリリースした「サイハヌウォル」にも言及。ソロ・アーティストとしての歴史をぐるりと振り返ってみせる。

ストロベリー・ムーンの夜、「Moonlight」に酔う

「ARMYの皆さん、こんばんは! SUGAです。皆さんに会えて、嬉しいです。日本でのソロ・コンサートは初めてで、凄く楽しみでした(深々と一礼)。もう最後の公演、寂しい~ BTSのSUGAとしては、初めてお見せするステージをたくさん準備しました」
そして、何度も「楽しみですか?」と尋ねた後に「叫べ!」と煽り、フロアからのレスポンスににっこり笑顔! 「では行ってみましょう!」と話して、雰囲気をガラリ変えていく。
オープニングの緊迫したムードとは一転、別れを決意する瞬間の想いをのせた「Trivia 轉: Seesaw」はギターの弾き語りでアコースティックにパフォーマンス。ギターにはBTSメンバー、それぞれのサインやメッセージが施され、1人ステージに立つSUGAをメンバー6人で見守っていることが伝わってくる。そして歌い終えた後は、革張りのソファーに腰かけ、テレビのスウィッチをオン! かつての恋人に想いを馳せるR&Bチューンの「SDL」を歌えば、過去を懐かしむような詞に合わせて、チャンネル・ガチャガチャなブラウン管テレビに歌うSUGAが! 投げキッス風に締めたラストも格好良かった。

「雰囲気を変えてみました。(これからも)もっと色んな人生の話を描いてみたいと思います」と振り返った後は、再びヒップホップモードへ突入だ! 『D-2』のオープニング・トラックでもある「Moonlight」は、大邱・南山洞の地下の練習室から上り詰め、漢南洞の高級マンションに住むようになった道のりを振り返るナンバーで、自分と正面から向き合い、“あの頃も今も、夜明けに見る月は変わらない”と歌う。偶然にも、この日は満月の日で、別名:ストロベリー・ムーン。ステージのバックにも満月がぽっかりと浮かび、そこには、成功者だけが一望できるソウルの夜の街並みが映る。館内が赤く染まった「Burn It」では、SUGAも想いを叩きつけるようにラップし、立ち上がる無数の炎と、縦に揺れる赤いARMYボムが彼をアツく援護射撃していた。
BTSチューンのSUGAパートをリレー形式で!

ハーコーなパートを終えたSUGAは装着していたグラブを脱ぎ、「メンバーがいなくて1人で歌うとすごく寂しいですね。でも皆さんが一緒に歌ってくれてとても心強かったです」とファンに感謝。「I love I love I love myself~」の詞を再びファンと唱和して一体感を演出すれば、ARMYのナイスな歌声にレゲエホーンも歓喜の雄叫びを上げる。そしてラストは「ARMYしか勝たん!」のセリフでファンを労った。
ARMYの記憶の中で永遠に再生される物語

「皆さん、盛り上がってますか? 僕も幸せな時間でした。あっという間の3ショーでした。明日も会いたいですね。最後のステージも全力で楽しみましょう」と告げたSUGA。全力で「Make Some Noise」とシャウトすれば、ファンもこの日一番の熱狂的な歓声を贈る。本編は自分の過去と向き合う「AMYGDALA」で幕を締め、歌い終えたSUGAはステージに崩れ落ち、彼をステージに運び出した人たちの手で、舞台を去った。エンディングを迎えたステージでは開演時と同じように雨が地を叩いていた。「AMYGDALA」のPVではデビュー前のSUGAが配達のアルバイトをし、その際、事故に遭っていたことが描かれる。つまり、この本編のフィナーレの物語は、再びオープニングへと続き、その循環に終わりはない。SUGAが次なるストーリーをドロップするまで、ファンの記憶の中で、この日の本編の物語が永遠に再生される、そんな壮大な仕掛けになっていたのだ。SUGAだからこそ出来るスケールの大きなプレゼントに感謝だ!
ARMYと同じ目線&正面から生身でステージング

BTSとして発表し、SUGAがメインMCとしてドロップした「INTRO Never Mind」ではMCとしてのアティチュードを改めて表明し、アンコールのラストには「The Last」をチョイスする。イントロはファンが叫ぶ「ミン・ユンギ」コールで、それに合わせて、SUGAもリズムを刻むのだが、さらに驚くべき事件がここで起きる。彼はフィナーレで舞台をすべて取っ払い、アリーナ席のファンと同じフロアに立ったのだ! しかも、360度でカメラが設置され、彼のパフォーマンスはマルチアングルでファンの元へ。そこにはタネも仕掛けもなく、存在するのは過去も自分の負も包み隠さずさらけだす生身の一人のアーティスト! 9千人のファン一人ひとりと直接対話するような、全身全霊でのパフォーマンスに、ユンギ、SUGA、Agust Dという三つのアイデンティティの区分すら不要に思えた。
「今日の僕は100%のコンディションではありません。今は6、70%くらいまで上がってきましたが、100%は次回僕が来た時に確認できると思います。今日、皆さんが送ってくれた応援を忘れません。今日はとても素晴らしい思い出を作って下さり、ありがとうございます。皆さんの思い出の中に、素敵な思い出だけが残る事を願っています。次回、日本で公演をする時は7人で行います」
終盤、ファンにこう述べ、BTSとしての再会を約束してくれたSUGA。アンコールを終えた彼は、振り返ることなく、両手を振りながらステージを後にした。
取材:きむ・たく
■公演概要
「SUGA | Agust D TOUR 'D-DAY' in JAPAN」
【日時】
2023年6月2日(金) 開場17:30/開演 18:30
2023年6月3日(土) 開場16:00/開演 17:00
2023年6月4日(日) 開場16:00/開演 17:00
【会場】
神奈川・ぴあアリーナMM
記者 : Kstyle編集部