ソ・イングク「オオカミ狩り」の悪役でイメージを一新“また違う悪役を演じてみたい”

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撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO

「第47回トロント国際映画祭」のミッドナイトマッドネス部門に正式出品され、その残酷描写が話題を呼んだソ・イングク主演の最新作「オオカミ狩り」が、4月7日(金)より新宿バルト9ほか全国公開される。公開を前にKstyleではソ・イングクへのインタビューを敢行。映画の見どころやビハインドストーリー、役作りなどについてはもちろん、次回作の話題や日本に関することなど、さまざまな質問をぶつけた。

 

予測不能な展開「期待が裏切れられるような効果」

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO
――「オオカミ狩り」では、第一級殺人の国際手配犯であり生まれながらの極悪人ジョンドゥ役を演じています。以前から悪役に挑戦したいとおっしゃっていましたが、どのような点に惹かれて出演を決めたのでしょうか?

ソ・イングク:今までに見たことがないようなジャンルとキャラクターに魅力を感じてオファーを受けました。

――予測不能な展開にハラハラしましたが、台本を読まれた時の印象は?

ソ・イングク:おっしゃるとおりに予想できないストーリーが展開されるので、後半は一体どうなってしまうのだろうと読んでいてすごく気になりました。また、ジョンドゥが序盤から非常に強烈な姿を見せることにも興味をひかれました。

――そのジョンドゥにも予測不能な展開が訪れますが、どんなことを感じましたか?

ソ・イングク:むしろ僕はそこに魅力を感じました。観客の皆さんはきっとなにかしら僕に対する期待を持って見てくださると思うのですが「ソ・イングクが出るのだったら、なにか起きるのだろう」と期待して見ていたら、その期待が裏切れられるみたいな効果がおもしろいと思いました。

――今、日本ではフィリピンの収容所にいた特殊詐欺事件グループのことが連日ニュースになっているので「オオカミ狩り」を見ると、その事件が思い浮びます。ジョンドゥの役作りにあたって、参考にした映像作品や事件などはありますか?

ソ・イングク:キャラクターを作る時、僕は何かを探して見るというよりも、監督と台本についてとことん話し合って想像をクリエイトするのが好きなんです。でも、今回はそれ以外に資料として見たものがありました。それがちょうどフィリピンの収容所でした。どんな環境で、どんな人たちがいるのか、どんな雰囲気なのかを検索して調べました。

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO
――役作りでソ・イングクさんがアイディアを出した部分はありますか? 体重を16kg増やしたことが話題になりましたが……。

ソ・イングク:監督が持っていたジョンドゥのイメージはすごく痩せていたのですが、僕はこれまでにも痩せた悪役はたくさんいたし、少し食傷気味ではないかと思ったんです。またシナリオを見た時にジョンドゥは若いボスという立場だったので、残忍さの他にカリスマ性が必要で、そのためには身体を大きく作らなくてはいけないと考えました。監督にそのアイディアを申し上げたら、とても喜んでくださったので、そこから身体を作りました。また全身にシールでタトゥーを入れていましたが、僕はシールアレルギーがあったようで、あせものような湿疹ができてかゆくなりました。でもカメラの中の自分の姿を見たら苦痛も忘れてしまい、楽しく撮影しました。キャラクターが完成していく姿を楽しみながら撮影をしたのですが、ホテルに帰ってシールをはがすと蕁麻疹のような感じになっていて、薬をつけても痛みがありました。でも、次の日にまた撮影に行くと楽しくて、そんな風に自分の中で天国と地獄を行ったり来たりしながら撮った作品です。

――前半と後半では展開ががらりと変わります。後半の怪人よりも、前半のジョンドゥのほうが残忍で恐ろしいと思いましたが、ソ・イングクさんは全体のストーリーの流れについてどのような感想を持たれていますか?

ソ・イングク:全体を見た時に、とことん絶望的な世界観を観客たちに見せたいという意図がある台本だと感じました。監督はそのあたりを表現したかったんだろうと思ったし、監督もそうおっしゃっていました。ストーリーが進むうちにどんどん恐怖が増していきますが、登場人物たちがどのような壮絶な命の戦いをするのか、絶望感をどのように表現するのか。悪役が出てきて、さらにもっとすごい悪役が登場しますが、絶望的な状況の中で人々が生き残りをかけて必死にもがく姿をどのように表現するのか、それがとても気になる作品になっていると思います。

――血が飛び散るシーンが多く、血のりをあそこまで大量に使う撮影は初めてだと思いますが、苦労はありましたか?

ソ・イングク:苦労はありましたね。まず冒頭で僕が悪事をはたらくシーンで血がたくさん出るのですが、そのシーンでNGが出ると飛び散った血をすべて拭き取らなくてはいけないし、服も着替えないといけないんです。そのシーンは1つの部屋で起きることだからまだよかったのですが、長い廊下のシーンでは血を拭きとるのが大変で、とても長い時間がかかり、たしか数日かかった気がします。だからすごく記憶に残っていますね。とにかくスタッフさんやそのシーンに関与した俳優さんたちの苦労が大きかったです。僕はセッティングされるまで待っていて、最後に入ればよかったので、僕より苦労した方々がたくさんいます。
 

イメージを一新した悪役への意欲「また違う悪役を演じてみたい」

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO
――俳優の中には、演じるうちに自分でも気が付かなかった部分に気づくことがあるとおっしゃる方もいます。ソ・イングクさんはいかがでしたか? 自分の再発見みたいなものはあったでしょうか?

ソ・イングク:この作品で僕も知らなかった表情を知りましたし、自分でもどん底の人生を表現することができるとわかって気分が良かったです。身体を大きく作ってタトゥーを入れたら「こんな姿も自分には似合うんだ」とわかって、今回の経験をまた次にも活かしたいと思いました。

――俳優としてイメージをガラリと変えることは一つの醍醐味だと思いますが、今回手ごたえを感じましたか?

ソ・イングク:そうですね。その部分が実は一番大きいかもしれません。僕がやりたかった悪役であり、そのジャンルの中でも特別な悪役をやることができて、やり遂げたと思えたので、また違う悪役を演じてみたいという気持ちになりました。

――対極するキャラクターのドイル役を演じたチャン・ドンユンさんとの初共演はいかがでしたか?

ソ・イングク:役柄はとても寡黙ですが、実際は僕よりももっと明るくて、話すことが好きなおもしろい子だったので、撮影の間とても楽しかったです。かわいい弟ができたみたいでうれしかったですし、撮影が終わってからトロントの映画祭にも一緒に行きましたが、その時も楽しませてくれて、性格がいい子だなと思いました。

――パク・ホサンさんなど個性的な先輩俳優との共演はいかがでしたか?

ソ・イングク:とても楽しかったです。パク・ホサンさんは僕と敵対する役でしたが、控室でよく一緒に話したり、差し入れをくださったりして、とてもよくしてくださいました。

――ドラマで見ると、おもしろいイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

ソ・イングク:実際もとてもおもしろい方です。茶目っ気があって、一番のいたずらっ子でした。おやじギャクをよく言うのですが、僕はおやじギャグが好きだから大笑いして、僕が喜ぶのを見てまた言ってという感じで、現場で一番のムードメーカーでした。
 

印象に残っている役は?「あんなにも胸が痛くなるキャラクターは…」

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO
――演じる作品ごとに魅力的なキャラクターを作り上げ、それぞれのキャラクターにファンがいますが、ソ・イングクさんご自身が特に印象に残っているキャラクターは?

ソ・イングク:「空から降る一億の星」のムヨンはとても寂しくて悲しいキャラクターだったので印象に残っていますし、「ある日、私の家の玄関に滅亡が入ってきた」の滅亡も悲しくて美しいキャラクターだし、「オオカミ狩り」のジョンドゥの場合はとても残忍だから記憶に残っています。

――どのキャラクターも印象に残っているということですね。もし順位をつけるならば?

ソ・イングク:「空から降る一億の星」のムヨンですね。あんなにも胸が痛くなるキャラクターは、それ以降演じたことがないので。

――次回作はWebマンガが原作のドラマ「もうすぐ死にます」だそうですが、どんな作品になりそうですか?

ソ・イングク:心が温かくなる作品です。見ている人も一緒に成長できるようなドラマになるのではないかと思います。

――数あるオファーの中からこの作品を選んだ理由は?

ソ・イングク:原作のWebマンガがとても好きで、これはドラマ化されるのではないかと思っていました。そしたら実際にドラマ化が決まって、それを僕がやることになったので、僕は運命だと感じています。

――これまでにさまざまなジャンルの作品に出演されていますが、ソ・イングクさんご自身は、最近はどんなジャンルの作品を好んで見られますか?

ソ・イングク:最近は僕自身が作品を撮っているところなので、あまり見ていないです。アニメくらいですかね。異世界のアニメをよく見ています。
 

熱心な日本ファンに感謝「気持ちに恩返しできるように…」

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO
――日本にはとても熱心なイングクさんファンがたくさんいます。日本のファンの応援について普段どんなことを感じていますか?

ソ・イングク:本当にありがたいです。僕を好きになって応援してくださること、僕の作品を好きになってくださって、僕が来ることをいつも待ってくださる。僕が音楽をやることも好きでいてくれて、そういう姿を見ると「もっと一生懸命にやらなければ」「その気持ちに恩返しできるようによい姿をお見せしなければ」という気持ちになります。

――ファンミーティングやコンサートで来日されていますが、日本に来るたびに楽しみにしていることは?

ソ・イングク:もちろん第一はファンの皆さんと楽しく遊ぶことを楽しみにしていますが、それ以外だとやっぱり食べることですよね。餃子が大好きなので。一番好きな餃子とラーメン、うな丼もおいしいです。

――もし、日本にゆっくり滞在するならどこに行きたいですか?

ソ・イングク:沖縄です。札幌にも行きたいです。都市よりもちょっと田舎の雰囲気で自然がある場所でゆっくりと休みながら時間を過ごしたいです。

――最後に、ソ・イングクさんが考える「オオカミ狩り」の見どころを教えてください。

ソン・イングク:僕の新しい一面や強烈な姿を見られる作品です。特にバイオレンス・サバイバル・アクションのジャンルがお好きな方には面白く見ていただけると思います。新しい試みの作品なので驚かれるかもしれませんが、すべてフィクションなので楽しんで見ていただければうれしいです。僕の演技、変身した姿にも期待してください!!

撮影:Kim TaeKoo / © LADSTUDIO KIMTAEKOO

取材:安部裕子

■作品情報
「オオカミ狩り」
2023年4月7日(金)新宿バルト9ほか全国公開

監督・脚本:キム・ホンソン
出演:ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ

配給:クロックワークス
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<STORY>
極悪犯罪者 VS 警察 VS 怪人 生死をかけた海上監獄バトルロイヤルがいま、始まる。フィリピンに逃亡した極悪犯罪者たちと護送官の刑事を乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”。太平洋のど真ん中に浮かぶ監獄は、犯罪者たちの反乱により血で海を染める。そして、“怪人”が目覚めたとき船上は地獄と化す。果たして、生き残るのは……。

記者 : Kstyle編集部