是枝裕和監督&ソン・ガンホ、映画「ベイビー・ブローカー」のカンヌ2冠に喜び“感動をゆっくり味わいたい”(総合)

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写真=マイデイリー DB
映画「ベイビー・ブローカー」がソン・ガンホ、IU(イ・ジウン)などの熱演がカンヌの視線を奪ったことに続き、韓国の劇場でのヒットまで予告した。作品性、興行性の2つを持ったウェルメイド・ヒューマンドラマとして、観客の心を刺激する。

31日午後、ソウル龍山(ヨンサン)区CGV龍山アイパークモールでは、映画「ベイビー・ブローカー」のマスコミ試写会および記者懇談会が行われた。演出を務めた是枝裕和監督と、俳優ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、IU、イ・ジュヨンが参加した。

「ベイビー・ブローカー」は、2018年の「第71回カンヌ国際映画祭」で最高賞であるパルム・ドールを受賞し、世界的な巨匠としての地位を立証した是枝監督が初めて演出した韓国映画だ。今回の作品も「第75回カンヌ国際映画祭」のコンペティション部門にノミネートされた中、ソン・ガンホが韓国俳優では初めて最優秀男優賞を受賞するという記録を成し遂げた。

本作は、子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを預けていく“赤ちゃんポスト”を巡り、出会っていく人間関係と予想できない特別な旅を描く。

是枝監督は「30日にフランス・カンヌから韓国に入国したが、まだ興奮が収まらない状態だ。ソン・ガンホの最優秀男優賞の受賞は、私たちの映画への“最高のプレゼント”だったと思う。俳優の皆さんと共にこの場に立てるようになり、嬉しく誇らしい」とし「『ベイビー・ブローカー』は楽しい思い出だけが残っているほど、本当にスムーズに撮影が行われた」と明かした。

また「この作品を準備するために取材をしていた時、児童養護施設出身の方々に出会って話を聞いたが、その方々が『私が生まれてきてよかったのだろうか』という疑問を抱いたまま生きている気がした。命に対する不安を抱いて大人になった人生を考えると、その責任が果たして母親にだけあるのだろうか、私を含む社会や大人たちにも責任があるのではないかと考えた。なので、そのような方々に掛けてあげられる言葉は何か考えた時、『生まれてきてくれてありがとう』という言葉が出てきたため、それをソヨン(IU)が言うように演出をした。普段はこのように直接的なメッセ-ジが込められたセリフを使わないほうだが、今回はこの言葉を絶対に伝えたかった」と真心を伝えた。

さらに是枝監督は、ソン・ガンホの受賞について「俳優が称賛を受けて、心から嬉しさを味わうことができた。私が何かをしたというより、ソン・ガンホがこれまで成し遂げてきた成果ではないかと思う。『ベイビー・ブローカー』のための、最高で最も嬉しい賞だった」と伝え、喜びを表した。

初めて韓国映画を演出したことについては「私が韓国語を聞き取れなくて俳優たちは不安を感じたはずなのに、できるだけコミュニケーションをたくさん取ろうとしてくれた。私も撮影前には、手書きの手紙で気持ちを伝えようとした。現場でも密度の濃いコミュニケーションを取るために努力して、意見もたくさん交換した。特にソン・ガンホはその日に編集された映像を細かくモニタリングしてくれたり、ニュアンスに関するフィードバックをたくさんしてくれたので、信頼して頼りにしていた」と明かした。

ソン・ガンホは劇中、自称“善意のブローカー”サンヒョン役で熱演を繰り広げ、カンヌで最優秀男優賞に輝いた。

彼は「『パラサイト 半地下の家族』以来、3年ぶりに初めて劇場で皆さんのお目にかかれるようになり、嬉しく思っている。観客の皆さんも、映画業界の方も、1日でも早くこのような日が来ることを待ちわびていたと思うが、作品を自ら紹介できる日が来て本当に嬉しい」と感激した様子を見せた。

また「カンヌ国際映画祭」で最優秀男優賞を受賞したことについて「名前が呼ばれた瞬間、パニックのような妙な気分になった。嬉しいという感情より先に、夢なのかと思った。ポン・ジュノ監督やキム・ジウン監督をはじめとするたくさんの方が祝ってくださり、ありがたくてどうすれば良いかわからない。この感動はゆっくり、少しずつ感じていきたい」と感想を明かした。

カン・ドンウォンは劇中、サンヒョンのパートナーであるドンスに扮した。彼は「児童養護施設出身のドンス役を演じるため、実際に施設出身の方たちにお会いしてたくさん話をした。最も印象に残っていることが2つある。施設の関係者の方が言うには、施設に車が来ると幼い子供たちが、もしかしたら自分を迎えに来たのかもしれないと期待するそうだ。ドンスもそのような気持ちで、いつも母親を待っていたはずだと感じた」と話した。

続けて「また、僕に力を貸してくださった施設出身の神父さんに、必ず聞きたかった質問をした。ある程度の会話を交わした後、慎重に『お母さんに会いたいと思いますか?』と伺った。お年を召した神父さんだったので『今は会いたいという感情は残ってない気もするが、亡くなる前に1度は会ってみたい』とおっしゃっていた。その言葉を胸にドンスを演じ、観客の皆さんにもその気持ちを伝えたいと思った」と明かした。

IUは、赤ちゃんポストに子どもを預けた母親のソヨン役で、初の商業映画で主演デビューを果たした。彼女は「『ベイビー・ブローカー』は私にとって商業映画デビュー作だが、こんなにも素敵な先輩方、俳優の方々と作業することができ、良い時間を過ごせた」と伝えた。

また「30日にカンヌから韓国に帰国した時から、あまりにも多くの方々の歓迎を受けましたが、まだ実感が湧かずときめいています」とし「多くの観客の皆さんが、良い視線で私たちの映画を見ていただけたら嬉しい」と明かした。

イ・ジュヨンは劇中、ブローカーたちを追うイ刑事を演じた。彼女は作品のセリフに言及しながら「是枝監督の作品には、衝撃的な深みがあると感じた」と明かした。

続けて「命に関するストーリーを、心で深く受け入れられるように設計して演出されている。日本、韓国ということを切り離して、皆が共有することができる美しい話だと思う」と強調した。

「ベイビー・ブローカー」は韓国では6月8日に、日本では6月24日に公開される。

記者 : ソン・イルソプ