韓国エンタメに世界中が注目!K-POP、ドラマ、映画、バラエティまで…古家正亨が振り返る2021年と2022年

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写真=BIGHIT MUSIC / Netflix「イカゲーム」
古家です! 今年もどうぞよろしくお願いします。さて、2022年は始まりましたが、いかがお過ごしですか? 新型コロナはオミクロン株の影響で、まだまだ国境を越えた交流の本格的な再開は先になりそうですが、時期的に2021年の統計の発表などが出てきているので、数字で2021年の韓国エンタメ界を少し振り返り、今年2022年の(個人的な)展望を今回は綴っていこうと思います。
 

K-POPはフィジカルメディアが好調!驚異的な増加へ

まずはK-POPです。GAONチャートが先日発表した2021年の年間販売枚数上位400位の内、アルバムの(CDやレコードなど)フィジカルメディアの販売枚数は合わせて5708万9160枚を記録して、前の年に比べると36.9%増加となったようです。注目すべき統計は、この上位400位の販売枚数の推移で、2018年に初めて2000万枚を超えて、19年に2500万枚、20年に4000万枚、21年に5700万枚と、驚異的な増加を続けているということ。なお、この数字は去年の1~11月の数字のため、12月までを含めた最終的な年間売り上げ枚数は約6000万枚になると予想され、2020年の年間売上枚数(約4200万枚)に比べ42.9%増と、大幅な伸びを見せそうです。この数字から推測できるのは、売上金額で世界の音楽市場ランキングに大きな変動が起こるのではないかということ。

写真=BIGHIT MUSIC
ご存じの通り、世界1位のアメリカを筆頭に2位の日本、それ以下の3位イギリス、4位ドイツ、5位フランス(2020年IFPI調べ)は不動の上位5ヶ国と言われてきましたが、2020年に韓国が6位(IFPI調べ)に名を連ねたことが業界内で大きなニュースになりました。なので、このフィジカルメディアの売り上げを考慮すると、2021年の統計では(当面不動と言われてきた)上位5ヶ国が入れ替わる可能性も出てきているのです。しかもこの上位5ヶ国でマイナス成長なのは日本のみ。また71%という圧倒的なフィジカルメディア主流の音楽業界は、世界的に見ても類を見ないケースになっていて、もはや日本の音楽業界の成長は配信・ストリーミング市場の成長なくしてあり得なくなっています。しかも、ここ数年は3位のドイツや4位のイギリスと差も詰められてきているので、日本が4位以下、また韓国にも追い抜かれ、昨年7位(IFPI調べ)にまで迫ってきている中国にも肉薄される日が来るのも時間の問題かもしれません。

このように韓国の驚異的な成長は数字でも明らかなんですが、一方で懸念も少なくないんです。

コロナ禍で海外公演がほとんどできない中でのBTSの年末に開催されたアメリカLA公演は(コロナ禍での開催の是非はともかく)、改めて彼らの人気を世界に大きく知らしめ、更なる人気獲得へと繋がった1年となりました。そして、そんなBTSが所属するHYBE LABELSの力が改めて示された1年だったともいえるでしょう。

写真=Pledisエンターテインメント
韓国のGaonチャートが1月7日に発表した統計結果によると、BTSをはじめ、SEVENTEEN 、TOMORROW X TOGETHER、ENHYPENなどのHYBE LABELSアーティストがトップ100に合わせて26枚のアルバムをランクインさせ、年間累積販売数で1,523万を記録。この数字はトップ100に入ったアルバムの全体販売数の33.5%までに達します。

またSMエンターテインメントも好調でした。NCTをはじめ派生ユニットの活躍やaespa といった新人グループの活躍。またベクヒョン、カイ、D.Oといったソロアーティストたちのアルバムの売れ行きも良く、SM所属アーティストの昨年のアルバム販売枚数は約1762万枚に達し、前の年より約2倍も増えたということです。つまり2社を合わせると約3300万枚となって、ガオンチャートの上位400位内の過半数を超えることになり、K-POP業界全体が潤っているわけではなく、ヒットに偏りがあるということでもあるのです。

さらに、韓国関税庁が16日に公表した貿易統計内の2021年CD輸出額は前の年と比べて62.1%増加の2億2083万6000ドル、日本円で約253億円となり過去最高を記録。この数字は、この5年間で約5倍の規模になったことを示しています。つまり、驚異的なCDの売り上げの伸びは、その多くを輸出に頼っているということでもあります。さらにその数字を国・地域別にみると、日本が7804万9000ドルで最も多く全体の3分の1を占め、前年比で151.4%増の伸びを記録した2位の中国(約4247万ドル)を大きく上回っています。

写真=SMエンターテインメント
もちろん、アメリカ(約3790万ドル)でのBTS人気を受けての売り上げの急増やそれ以外の国や地域での売り上げも伸びていますが、やはりフィジカルメディアがいまだ強い日本でのこの売り上げがあるからこそ、達成できた伸びだったと言えるのではないでしょうか。とはいっても、かつては海外の売り上げの多くを日本に委ねてきたK-POPが確実にその市場を広げてきていることは間違いないでしょう。

ただ、フィジカルメディアの伸びが顕著な一方で、配信・ストリーミング市場は縮小。昨年の配信・ストリーミング利用量上位400位までの合計は、前の年よりも10.3%の大幅な減少を記録していて、コロナ禍以前の2019年と比べると、その数字は23.8%もの減少とGAONチャートは伝えています。

K-POPのCDはここ数年、SNSの影響もありCDそのものが音楽メディアという域を超えて、(もちろん、購入特典の影響も大きいと思いますが)1つのグッズ、アート化し、それを持つ事への満足感によって、その売れ行きが伸びていることは間違いないわけで、世界的に配信・ストリーミング市場が拡大している中、その分野で先駆的存在である韓国の市場縮小は、もちろんエンターテインメントの多様化といった影響はあるものの、特定のアーティストの固定ファンを除く一般層にアプローチできる音楽コンテンツが不足している可能性も否定できないでしょう。

写真=STARSHIPエンターテインメント
2022年に入ってからはすでに、ガールズグループのIVEがフィジカルメディアだけでなく、配信・ストリーミング市場でも大ヒットを記録し、Mnetの「Girls Planet 999」から誕生したKep1erにも勢いが感じられ、この後もHYBEやJYP Entertainmentから誕生する新しいガールズグループに対しても期待が高まるなど、すでに活躍しているBLACKPINKやITZY、aespaといった人気グループと共に、ガールズグループがK-POPシーンを牽引する1年になるだろうと予想する関係者も少なくありません。いずれも日本デビューは確実でしょうから、あとはいかにオフライン公演が早期に再開し、手触りでもK-POPが身近に感じられるようになるかで、BTSが作り上げた新規K-POPファンの関心を繋ぎとめられるかどうか、そこに2022年の日本のK-POPシーンの行方、盛り上がりはかかってくるのではないでしょうか。
 

大手配信プラットフォームに韓国ドラマが続々!

写真=Netflix「イカゲーム」
続いてはドラマです。ご存じの通りNetflixで配信された「イカゲーム」が驚異的なヒットとなりました。世界での視聴数は加入世帯ベースで1億世帯以上とNetflixのオリジナルシリーズとして過去最多となり、83の国と地域で視聴ランキング1位を獲得。ここ日本でも大ヒットとなりました。単にヒットしただけでなく、オ・イルナム役を演じた俳優のオ・ヨンスさんが韓国の俳優で初めてアメリカのゴールデングローブ賞の演技賞を受賞したことも大きなニュースになりましたよね。

そして、NetflixだけでなくDisney+では様々な議論を巻き起こした「スノードロップ」(설강화)が。Amazon Prime Videoでは「ある日~真実のベール」が、さらにApple TV+では名匠キム・ジウン監督が手掛ける「Dr.ブレイン」がそれぞれのオリジナルドラマとして(日本を含む)世界では配信され、話題の新作のほとんどが配信プラットフォームに乗り、韓国での放送とほぼ時同じくして日本に上陸を果たすことにもなりました。

写真=JTBC「スノードロップ」
このように、韓国ドラマが欧米の動画配信プラットフォーム各社で優良コンテンツとして取り合いになっている理由は、コア・コンテンツ以外にも、配信ならでは“メリット”があるから。そのメリットは、アルゴリズム推薦によって、1つの韓国ドラマがヒットすることで、他の韓国ドラマがレコメンドされる。こうして韓国ドラマ全体に波及効果が表れることで、どんなドラマがいつ、どんな形で大きなヒットに結び付くか、様々な可能性が生まれるわけです。Netflixで配信されヒットした「地獄が呼んでいる」はまさに「イカゲーム」のヒットがあったからなのは言うまでもないでしょう。

さらに欧米の大作ドラマが一シーズンあたり20話以上で長い一方、韓国ドラマは平均16話で、最近の配信オリジナル作品に限っていえば、6話から10話とかなり短く、テレビではなく、移動中や外出先でも映像コンテンツを楽しむ今という時代に、この長くもない短くもない話数は、手軽に観られるドラマ作品として、視聴者のニーズに合っているということも、韓国ドラマの人気の後押しになっていると言えるでしょう。

写真=Netflix「地獄が呼んでいる」
ただ、かつて2003年のドラマ「冬のソナタ」の放送以降、日本で巻き起こった韓流ブームを受けて、日本向けに高額で版権を販売しようと、日本人の韓流ファン向けに俳優や題材を選択しすぎた結果、韓国ドラマそのものが持つ魅力に欠け、一時期それが作品の質を下げることにつながったことは、今回の流れでも危惧されています。つまり、欧米の配信プラットフォームに合わせた作品作りは、世界的に話題になっても、韓国らしさがどこまで表現できるのか。それを自分たち自身で表現の自由を縛ることになってしまうのではないかということです。

こういった背景もあってか、2022年は韓国最大手の配信プラットフォームTVINGが攻勢をかけることが予想され、プラットフォームも日本や台湾へ本格進出を図ることも計画されています。ここ数年は、コンテンツを輸出することで、その地位を確実に高めてきた韓国ドラマ界ですが、これからは、コンテンツとプラットフォームの両輪で世界に打って出ようとしているわけです。
 

映画業界はコロナ禍で厳しい1年に

写真=『ミナリ』ポスター
映画は2020年の『パラサイト』旋風に続くように、映画『ミナリ』(映画の国籍はアメリカ映画)で国民女優のユン・ヨジョンさんがアメリカ・アカデミー賞で助演女優賞を受賞されたことが大きなニュースとなった2021年。ところが韓国映画の話題は少なく、コロナ禍のため、韓国国内での映画館の上映規制や観客動員規制などがあり、大作であればあるほど上映が先送りされ、大変厳しい1年となりました。しかも、この年末年始も、感染拡大の影響を受け、1月の公開を予定していたソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン主演の映画『非常宣言』が再度上映が延期されるなど、かなり影響が出ています。そのため、年間の観客動員数も2020年に続き激減。一部のマーベル作品を中心としたハリウッド作品や日本のアニメーションを除いては、韓国映画のヒット作はかなり限られました。

コロナ禍前の2019年には『パラサイト』をはじめ、5本の観客動員1千万人以上という国民ヒットが生まれ、ヒットの目安とされる100万人以上を動員した作品は50本に達しましたが、2021年は公開からわずか2週間で500万人の動員を記録した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が最高で、これを含めた百万人以上の観客動員映画はたった15本。しかも、この1位の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』をはじめ、上位ベスト10中、実に8本が外国映画(韓国映画は1位の『モガディシュ 脱出までの14日間』、2位『シンクホール』の2作品)という近年まれにみる韓低外高な状況となりました。

写真=『モガディシュ 脱出までの14日間』ポスター
ただ、それは単に作品の質の問題ではなく、話題作の公開先送りや一部話題作を配信先行という形で、コロナ禍での劇場上映を避けたということにほかなく、再びコロナが落ち着きを見せ、話題作が一気に上映されれば、映画館にも人は戻ってくるだろうとみる関係者も少なくありません。実際、年末年始の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のヒットはそれを裏付けています。それでも、一旦劇場に通う習慣をなくしてしまった人々が、本当に劇場に戻ってくるのかという不安を抱く劇場関係者も少なくありません。

また、韓国でまずは公開されることが、日本で公開される条件になっている作品も多く、特に注目の大作は、韓国での公開のめどが立たなければ、日本で観ることもできない状況です。『パラサイト』をきっかけに韓国映画に興味を持った人も少なくなく、まずは幅広い客層にアプローチできる作品が上映され、いい形で韓国映画に対する熱い視線が、2022年は注がれることを期待したいです。
 

バラエティにも注目!「脱出おひとり島」が成功モデルに

写真=Netflix「脱出おひとり島」
最後にバラエティにも触れておかなくてはならないでしょう。これまで日本で韓国のバラエティ番組と言えば、基本的に有料チャンネルに加入している人が、そのチャンネルで視聴可能な韓国の地上波やケーブルテレビのバラエティ番組を観るというパターンが圧倒的で、特にK-POPアイドルが好きな人が好んで視聴していた傾向が強く、好んで韓国のバラエティを観ていた人は決して多くはありませんでした。それは、ドラマや映画、K-POPのミュージック・ビデオを観るよりも、言葉の壁を含めて敷居が高かったからです。ところが最近、僕の周りでもNetflixの「脱出おひとり島」を観ている人が、本当に多いんですね。つまり、このようなバラエティ番組も、その存在に触れることがなかっただけで、十分に日本でもその面白さが理解されるという1つの成功モデルになりそうです。

もちろん、日本にも多くのバラエティ番組があり、面白いものも数多く、その面白さは、韓国のバラエティ番組にもかなり大きな影響を与えてきました。しかし、日韓共通していることは、そのバラエティ番組の発信源であった地上波テレビの勢いが徐々に衰退し、表現にも制約が増していく中、(今のところ)放送法に左右されない、より柔軟な対応ができる配信プラットフォームに、その主戦場は移りつつあるということです。

韓国の方が、いち早くその流れに乗りそうですが、日本でもその流れは着実にあり、今後は日韓共同制作のバラエティ番組が誕生することも、これまでのケースを考えると出てくるのではないでしょうか。そうなると、日韓それぞれの芸人やバラエティ・タレント達も、その活躍の場が増えていくかもしれませんね。

果たして2022年、どんな韓国エンタメが日本を賑わせてくれるでしょうか。僕自身も一ファンとして、そして一人の業界人としても、楽しみです。

古家正亨×Kstyleコラム Vol.17

古家正亨(ふるやまさゆき)

ラジオDJ・テレビVJ・MC
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年から韓国音楽を中心に、韓国の大衆文化をあらゆるメディアを通じて紹介。昨年までは年平均200回以上の韓流、K-POP関連のイベント等のMCとしても活躍している。

現在もラジオでは、NHK R1「古家正亨のPOP☆A」(土曜14:05~)、FM NORTH WAVE「Colors Of Korea」(土曜11:00~)、CROSS FM「これ韓~これであなたも韓国通~」(土曜18:30~)、テレビではMnet「MタメBANG!」(隔週日曜20:30~他)、テレビ愛知「古家正亨の韓流クラス」(隔週火曜 深夜0時30分~)、BSフジ「MUSIC LIST~OSTってなに~」(不定期)、配信では韓国文化院YouTubeチャンネル「Kエンタメ・ラボ~古家正亨の韓流研究所」といった番組を通じて日本から韓流、K–POP関連の情報を伝えている。

また3月に開校(?!)するKstyleとコラボレーションしたBS12(トゥエルビ)の韓流情報番組『古家正亨のKスタ学園』で学園長(MC)に就任。放送までインスタライブなど、様々なコンテンツで番組を盛り上げることになっている。

自身のYouTubeチャンネル「ふるやのへや」では妻でアーティストのMina Furuya(ホミン)と共に料理やカルチャーなどの情報を発信中。

Twitter:@furuyamasayuki0

記者 : Kstyle編集部