矢吹奈子、K-POPを夢見る日本の後輩たちへ「韓国への挑戦、諦めないで」 ― Vol.2

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アンニョン! 古家正亨です。2021年ももうすぐ暮れようとしていますが、皆さんにとっては、どんな1年になりましたか?

さて、今月の僕の連載ですが、今月のはじめに、福岡の西鉄ホールで行われた、僕がCROSSFMで毎週土曜日18時半からOAしているラジオ番組「これ韓~これであなたも韓国通~(提供:韓国観光公社福岡支社)」の公開収録の模様を、OAでは聞けなかったところも含めて文字でその様子をご紹介していこうと思います。ゲストはHKT48の矢吹奈子さん!

矢吹さんと言えば、この春まで日韓メンバーで構成されたグローバルグループIZ*ONEのメンバーとして活躍されていましたよね。今回の公開収録では、そんな矢吹さんの韓国での思い出やIZ*ONEのメンバーとして活躍されてきた、その経験談などを、いろいろと伺うことができましたので、エリア外で聞けなかった皆さんにも、その様子をご紹介しよう! ということで、2回に分けてご紹介していこうと思います! 今回は後半です!

矢吹奈子、IZ*ONEの活動を振り返る「メンバーとのグループチャットで…」古家正亨のラジオ公開収録に登場 ― Vol.1

古家:改めて言うまでもないですが、矢吹さんと言えば、日韓を音楽で橋渡しされていたといってもいいでしょう、IZ*ONEのメンバーとして活躍されてきたわけですが、日韓両国で、それぞれ違った音楽性を持ちながら、1つのアイドルグループとして活躍されたケースって、これまでそうなかったと思うんですね。だからこそご本人が感じられた、その違いみたいなものって、少なからずあると思うんですが……。

矢吹:そうですね……日本の場合だと、成長していく姿をお見せしていくスタイルだとすれば、韓国は準備をたくさんして完成したものをお見せするという感じはしました。

古家:この話って、いろんなところでよく聞く話ではあると思うんです。でも実際のところ、当事者として、矢吹さんもそれを肌で感じることってありましたか?

矢吹:実は、韓国のアイドルも日本と同じで、デビューした時と比べると、時間を重ねることで、どんどん成長していくのは当然のことですから、最初からものすごく極められた姿をお見せできるというわけではないと思うんですね。韓国でも同じように、徐々に成長していく姿を楽しみに、応援してくださっているファンの方はたくさんいますし。

古家:そうだよね、完成されたものをお見せするからと言って、そこで完全に完成されたわけではないし、常にそういった意識で練習に取り組んでいるっていうことだよね。

矢吹:その通りです。
 

韓国での練習生活「日本人メンバーは慣れるまで大変でした」

古家:それでも、こういった形で日韓の違いを表現する人が多いっていうことは、そのための練習量の違いというか、そこに向かっていく時間のかけ方の違いが決定的に違うからじゃないかと思うんですが。1つの曲を完成までもっていくまでには、だいたいどのくらいの時間をかけているんですか?

矢吹:完成というものをどこにおいて考えるかって難しいのですが、まず振り入れと言われる、曲の最初から最後までのダンスの振りを覚える作業でいうと、だいたい日本の場合は、比較的短時間で終わってしまうんですね。2~3時間ぐらいで。

古家:え? 2~3時間で覚えちゃうんですか? それで覚えられるんですか?

矢吹:一応、はい。もちろん個人で練習する時間が、その後あるわけですけど……。

古家:すごい能力というか集中力ですね。

矢吹:でも韓国の場合は、1つ1つの振りをみんなと、細かいところも合わせながら振り入れをしていくので、1日で1曲を終わらせることはないんです。1日8時間例えば時間をとって、その日は曲のイントロから1番の終わりぐらいまでの振り入れをまずやってから、次の日に2番を、そしてその次の日に残ったパートを最後まで通してみたいな感じでやっていくんですね。なので、3日間ぐらいかけて1曲の振り入れを進めていくんです。

古家:で、そこからさらにパフォーマンスを洗練させていくんでしょ?

矢吹:そうですね、ディテール合わせはそこから始まりますから。

古家:ていうことは、だいたい1曲を1ヶ月ぐらいかけて、完成させていくんですね。

矢吹:そうですね、1ヶ月はかかりますね。

古家:日本だと、そんなに時間をかけることはないでしょ?

矢吹:私の場合、メンバー全員が集まって、振りを合わせることもほとんどできなかったので、先生から教えてもらって、あとは各自自己練習と確認っていう感じでした。ここまで時間をかけてすることはなかったですね。

古家:それも、韓国の場合は1日当たりの練習時間が、半端ないって、皆さんおっしゃるわけですよ。長い時は10時間近く練習することもあるって。でも、そんな状況におかれて、めげちゃうことってなかったんですか?

矢吹:最初のころ、日本人メンバーはやっぱりそのやり方に慣れるまでが大変でしたね。でも、韓国人のメンバーのみんなは、練習生生活でそういったやり方には慣れていたので、そこまで苦ではなかったと思うんです。日本人メンバーは長い練習時間に慣れていなかったので、とにかくへとへとでした。体力がついていかないという感じで。コンサート前になると、より体力を必要とするので、筋トレしてましたね。

古家:日本のアイドルで、体系維持のために筋トレとかジムに行く人はいると思うけど、普段の活動のために、筋トレしている人って、そういないですよね?

矢吹:少なくとも、グループ全員でトレーナーの方を呼んで、活動のために筋トレするっていうケースは、私の周りでは聞いたことがないですね。
 

韓国語の勉強方法は?「メンバーとの会話で実践的に…」

古家:大変ですね……。大変と言えば、日本人メンバーの場合って、言葉の壁もあったと思うんですね。韓国語、どうやって勉強したんですか?

矢吹:私は最初、書いて覚えようと思っていたんです。本やテキストを見ながら、書き写したりして……ってやろうと思っていたんですが、全然頭に入ってこなくて(笑)。「昨日勉強したことって、なんだっけ」という感じが続いたので、私にはこの勉強法は合っていないんだなぁって気づきました。それ以来、普通にメンバーと会話するようになってからは、自然と覚えていましたね。

古家:それがすごいよね。でも、やっぱり言葉って、聞くことって大切だよね。

矢吹:そうなんです。私の場合、メンバーと話していると、ある言葉が急に耳に届き始めた瞬間があって、「きっとこの言葉って、こういう意味なんだろうなぁ」っていうのがあったんです。それでメンバーにその都度「それってどういう意味」って必ず聞くようにして、それで覚えていった単語や表現が多かったです。たとえ、その韓国語の意味が日本語でわからなくても、メンバーがさらにわかりやすい韓国語とジェスチャーで教えてくれたので、むしろ実践的に使えるようになっていきましたね。きっとこの言葉は、このシチュエーションで使えるんだって、想像できるようになっていったので。

古家:それって、子供たちが言葉を覚える過程と一緒だよね。

矢吹:そうです、まさにそれです。赤ちゃんになった気分でした。

古家:でも……韓国のバラエティ番組に出演することは、正直しんどかったでしょ?

矢吹:いや~、最初は皆さん、何をしゃべっているのか全く分からないですし、でも集中して、頭をフル回転させながら聞こうと努力するんですけど、そんな時に急にトークを振られるわけですよ。今、何を振ってこられたんだろう? って……。

古家:それがいつぐらいから、なんとなくわかるようになってきたんですか?

矢吹:1年ぐらい経ってからですね。これも一緒で、あれだけ何を言っているかわからなかったのに、急に耳に入ってくるんですよね。あと、夢で韓国語をしゃべっていたら、それは言葉を習得したことになるっていう噂を聞いていたんですが、自分にもその瞬間があって、その時は「あ! キタ!! 今だ!!!」っていう感じでしたね(笑)。

古家:好きな韓国語ってありますか?

矢吹:「하늘(ハヌル)」ですね。

古家:「空」ですね。これって生粋の韓国語で、漢字語から派生した言葉ではないんですよね。なるほど。きれいな言葉だよね。

矢吹:私のIZ*ONEでの活動における色も「ナブキハヌル(ナブキ空)」だったこともあって。水色なんですけど……。なので、「하늘」っていう言葉は好きですね。
 

日本から韓国へ「無理とは思わないで挑戦してほしい」

古家:そんな韓国での生活で一番リラックスできる時間は、いつだったんですか?

矢吹:家にいることでしたね。そしてデリバリー(笑)。私の場合は、宿舎にいることが圧倒的に多くて、外にご飯を食べに行くこともほとんどなかったです。でも、一時期、ゲームにハマったことがありました。

古家:咲良さんからゲームの話を聞くのは違和感ないんですけど、矢吹さんからゲームって話を聞くのは、意外な感じがしますね。

矢吹:一時期、ハマってたんです(笑)。

古家;今、日本から韓国にK-POPスターを夢見て、数多くの若者が渡り始めているじゃないですか。先輩の立場から、そんな夢見る若者たちへ、何か贈れる言葉ってありますか?

矢吹:そんなぁ~、先輩っていうほどの者では……。

古家:いえいえ、十分、先輩ですし、矢吹さんからのメッセージ、大切ですよ。

矢吹:いえいえ、ただ……ちょっとどこかで「私には無理」って思ってしまう人って、たくさんいらっしゃると思うんです。「韓国、行ってみたいけど……」って躊躇してしまう……。自分にコンプレックスがあって、それが背中を押してくれないっていうのって、あると思うんです。自分の中では、韓国のアイドルはみんな、身長が高くて、すらっとしたイメージがあったので、私は、自分の身長が低かったことがすごくコンプレックスだったんです。なので、最初はすごく不安だったんです。でも、韓国のファンの皆さん、そして日本のK-POPファンの皆さんが、そんな自分を温かく応援してくださって、あ、自分をこうして受け入れてくれているんだなって。なので、私が言えることは、無理とは思わないで「そんなことはないよ」って、声をかけてあげたいです。

古家:2022年、これからの矢吹さんへの期待も、ファンの皆さんの中では高まっていますし、僕自身も歌手として、女優として、マルチに活躍する矢吹さんの姿を期待してしまうんですが……。

矢吹:そうですね……せっかく韓国とつながるお仕事ができたので、韓国のファンの皆さんへの情報発信も、何かできることを考えてきたいと思います。

古家正亨×Kstyleコラム Vol.16

古家正亨(ふるやまさゆき)

ラジオDJ・テレビVJ・MC
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。2000年から韓国音楽を中心に、韓国の大衆文化をあらゆるメディアを通じて紹介。昨年までは年平均200回以上の韓流、K-POP関連のイベント等のMCとしても活躍している。

現在もラジオでは、NHK R1「古家正亨のPOP☆A」(毎週土曜日14:05~)、NORTH WAVE「Colors Of Korea」(土曜11:00~)、CROSS FM「これ韓~これであなたも韓国通~」(土曜18:30~)、Mnet「MタメBANG!」(隔週日曜20:30~他)、配信では韓国文化院YouTubeチャンネル「Kエンタメ・ラボ~古家正亨の韓流研究所」や韓国大使館YouTubeチャンネル「韓ON」といった番組を通じて日本から韓流、K–POP関連の情報を伝えている。
YouTubeチャンネル「ふるやのへや」では妻でアーティストのMina Furuya(ホミン)と共に料理やカルチャーなどの情報を発信中。

Twitter:@furuyamasayuki0

記者 : Kstyle編集部