K-POPにハマったきっかけは?ヲタクYouTuber“あくにゃん”こと阿久津愼太郎が初の書籍を刊行「推しが4人連続で辞めた」

Kstyle |

今、界隈をざわつかせている強火ヲタクYouTuber・あくにゃんこと阿久津愼太郎。今では“プロヲタク”として活動の場をYouTubeに移し、ヲタ活を動画にしてアップしている彼は、かつては舞台を中心に俳優として活動していた経歴を持つ。「推される側」だった彼が「推す側」になって見えてきたこととは?

今年3月に刊行した書籍『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場にいる―誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル―』(主婦の友社)をもとに、お話を伺った。

【プレゼント】あくにゃん直筆サイン入り書籍を1名様に!応募はTwitterをフォロー&リツイート

 

まわりからの反響は?「共感はできないけど面白いという声も…」

――この本を出版するに至った経緯は?

阿久津:雑誌「S Cawaii!」のメンズメイクの企画の時にご連絡をいただいたのが、編集さんとの出会いですね。その後、雑誌「Ray」でジャニーズJr.について語るページをやらせていただいたんですけど、その時、その編集さんに「ヲタ活について本を書いてみませんか」と誘われて、二つ返事で本を出すことになりました。僕は以前、芸能活動をしていて、当時から本を出したいと思っていたけど叶わなかったので、絶対いつか本を出すって心に決めてたんです。本を出すことにもともとモチベーションがあったから、書籍のお話はすごくうれしかったですね。

――エッセイでは阿久津さん自身のヲタ活について、そして周りのヲタクの様子などが鮮明に描写されています。本を出したことで反響はありましたか?

阿久津:この本が異文化交流のきっかけになってるみたいですね。K-POP好きな人はジャニーズのことをあまり知らないし、逆にジャニーズ好きな人にとっては韓国のヲタクって未知数だったから。でも基本的にはジャニーズファンとか地下アイドルのファンがK-POP文化に驚いている、という反応が多いですね。どっちのヲタクでもない親戚は、自分の知らない文化を知ることができる本として読んだみたいです。コロナの時期に出版したので、ライブ配信だったりMVだったり、みんなが何かしらのK-POPに触れやすいタイミングでもあったんですよね。それこそJO1が架け橋になって、他のいろんなグループを見つけやすい時期というのもあったし。あとは、そこに属するファンについて知れるのが面白い、という声もありました。

実は、アイドルの子もこの本を読んでくれているらしいんですよ。僕のYouTubeチャンネルとかこの本でアイドルについて勉強してるって、教科書的に使ってくれてる子が多くて。地下アイドルの子とか特にそうですけど、本当にこの前まで学生だった子が急にアイドルやれって言われても、何をすればいいのかわからないじゃないですか。だから、この本はすごく勉強になるって言われました。でも話半分で読んでね、とは思いますけどね。極端なことも書いてるから(笑)。全部が全部、こんなにヤバい人ばかりじゃないぞっていうのは知っておいてほしいです。

――ご自身ではこの本の面白さはどんなところにあると思っていますか?

阿久津:共感できるところとまったく共感できないところが結構はっきりしてるかなと思ってて。共感はできないけど面白いという声もあったので、振り幅がある話が一冊にまとまっているところは面白いかも。扱っているジャンルも結構、幅広いんですよ。ヲタクの属性的にもそうだし、推しに没頭してる度合いとかもけっこう幅広く取り上げて書いているので、上には上がいるなと驚愕するし、下には下がいるなって安心できるみたいなところは結構大きいかなと思います(笑)。


K-POPにハマったきっかけ「現場に行ってみたら、超楽しくて!」

――そもそも、なぜK-POPにハマったのでしょう?

阿久津:K-POPにハマったのは親の影響で、BOYFRIENDの武道館公演が初めて行った現場でした。あの日、初めて交換というものをしてみたくてやったんですよ(笑)。「ドンヒョンとミヌを交換してくる人いませんか?」って。別にミヌのままでもよかったんですけど、交換を経験してみたかった!(笑) そこから現場にも行くようなったし。ヲタクやりたい! と思ってやりはじめましたね。現場に朝早くに行ってグッズに並ぶとか、そういういわゆるヲタ活をし始めたのはBOYFRIENDが初めてです。

それまで僕は人生の中でヲタクにはめちゃくちゃ会ってたんですよ。もともと俳優として活動していたので、握手会は行くよりもやるほうが先だったし。でも、自分でヲタ活したことはないなと思って。アニメとかは好きだったんですけど、現場に行くヲタ活はやったことがなかったから、やってみたいと思ってはじめたら、超楽しくて!

――現場を経験して、面白さにハマっていったんですね。

阿久津:自分のファンと現場がかぶる、みたいなこともありました(笑)。でもその時には誰も言ってこないんですよ。あとあと言われることが多いですね。自分のファンを辞めた人と会うこともあります。それこそ自分をメチャクチャ応援してくれてた子を某グループの武道館で見かけました。でも、なんか感動しましたね。その子はすごく僕に会いに来てくれていた人だったんだけど、ずっと会えなかったから。まさか同じ現場で会えるなんて、って。なんか、エモかった!

僕も今まで推しを何度も変えてきたし、この本には書き切れないぐらいの男たちを愛してきたから(笑)、推し変についてはそりゃもうしょうがないよねというか、そういうもんだし、みたいな気持ちになるんですよね。一方で、ヲタクを辞める時にわざわざ本人に言わないでほしいってアーティストもいるけど、言いたくなるファンの気持ちもめっちゃわかるんですよ。「もうお前とは今日で最後だ!」みたいな(笑)。引き止めるなら今だぞ! ってね。6割ぐらいの人はたぶん何も考えずに言ってると思うんですけど、4割ぐらいはやっぱり引き止めてほしいという気持ちなんじゃないですかね。これがラストチャンス、みたいな。それで思いとどまる人もいるんですよ、結構。

――あくにゃんさんはそれで思いとどまったことは?

阿久津:僕の場合、向こうが勝手に辞めていくので(苦笑)。4人連続、韓国の推しがグループを辞めてるんで。このことは本でも書いてるんですけど、普通にさらっと「推しが4人辞めてる」って書いたけど、結構すごいことかもって今さら思った(笑)。3年ぐらいの間で4人辞めてるんですよね。


「やっぱり推しって絶対にその人しかあり得ない」

――こうしてヲタ活をしつつ、自身も応援される立場でもあるというのが不思議です。

阿久津:今、僕の現場に来てくれる子達は、僕が芸能活動をしていた当時好きだったけど、僕が辞めて会えなくなった時期を経験している子たちが多いんです。その時の悔しい思いとか悲しい思いがあるらしく、めっちゃ通ってくれてますね。当時ガッツリ通ってくれてた子たちの中には、もう結婚の時期なので、結婚報告だけしに来てくれる子とかもいますよ。子どもの写真を見せて帰るみたいな感じですね。結婚報告してくれる人がいれば、離婚したって言ってくる人もいっぱい見てるから、結婚で幸せになれるかどうかはわからないよと思って見てるところはあるんですけど(笑)。でも嬉しいですよ、わざわざ報告しに来てくれるのって。

僕、めちゃくちゃ記憶力がよくて、自分のファンはほぼ認知してるんですよ。だけどみんな、忘れられてると思ってるんですよね。おそるおそる「覚えてますか?」って聞かれるんですけど、「覚えてるよ」って名前を言うと「すごい!」みたいな(笑)。当時から僕はヲタクの気持ちがわかる俳優って言われてて、自分でもそう思ってたんですけど、現場に週7で通いだしてからの方がファン心理は理解できてるなと思いますね。当時も理解できてるとは自負してたんですけど、今思えば全然理解できてなかった……。もっと奥が深かった!

――どちらも経験してきたからこそ、ファンにも推しにも寄り添える。これはあくにゃんさんの絶対的な強みですよね。

阿久津:自分が芸能活動をしていた頃はファンとは現場でしか会えないけど、ファンの人たちは現場で会う時以外にも働いたり日々の生活があって、有給すり減らしながら現場に通ったりしてるんだなって思いましたね。あと、ポジティブな話で言うと、ファンの言う「好き」を信じられるようになった(笑)。当時の僕は、自分を好きって言ってくれてる人が不思議というか、「僕にそんな魅力あるのかな?」って考えてたんですけど、自分が推す側になった時に思うのは、やっぱり推しって「絶対にその人しかあり得ない」んですよ。

今までの僕の推しも、マジで大したことない人なんですよ(笑)。ポンコツだし。だけど、「絶対この人しか無理!」みたいな気持ちが自分の中にはあって。だから、昔はファンに「好きです」って言われても、どうせいつかはよそに流れると思ってたし、中学生の間だけだよとか少しだけ疑ってたけど、そういう考えがなくなって、「そうだよね。そういうもんだよね」っていう気持ちになりましたね。そこはもう、わかる! っていうか。

――ご自身で経験して、ファンへの思いも変わってきましたか?

阿久津:今の自分って歌ったり踊ったりしないじゃないですか。演技している阿久津が好きっていう人たちもやっぱりいるけど、それでも僕に会いに来てくれる人がいて。僕がヲタクを経験してなかったら、たぶん不思議だったと思うんですよ。何で歌っても踊ってもない自分を好きでいてくれるんだろうって。でも今はもう理解できるというか。歌ってなくても、踊ってなくても“推しは推し”っていうね。

僕の推しも連続4人辞めてますけど、いまだにインスタはフォローしてるし、最近の動向見ちゃうし、幸せになってほしいなと思いますね。それこそ、練習生と付き合って勝手に事務所を出てった推しもいますけど(苦笑)、その人にも幸せになってほしいんですよ。それが推し。結局、ファンサが欲しくて現場に行ってた割に、ファンサがない世界に行っちゃったとしても、同じように応援してるんですよね。

――推しがいなくなってしまった今、新たな推しは見つかりましたか?

阿久津:今はまだ次の推しを探し中です。今までずっと追いかけてきた地下アイドルは、体力がなくなってきたから難しいかも……。毎日現場に行くくらいガッツリ追わないと、やっぱり面白くないんですよね。そこは今、悩み中というか。通いまくれる推しが欲しいんですけどね。

取材:尹 秀姫 / 撮影:前手秀紀

■書籍情報
『推しがいなくなっても、ぼくはずっと現場にいる―誰も語らなかったアイドルヲタクのリアル―』(主婦の友社)
著者:あくにゃん(阿久津愼太郎):著 
定価:1,540円(税込)
詳細:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b561884.html

■あくにゃん(阿久津愼太郎)
プロのヲタク / YouTuber
『ヲタクをするために生きている』をモットーに『好き』を共有する、男性アイドル好きYouTuberとして活躍中。SNSや総フォロワー数は20万人を突破!

関連リンク:https://lit.link/akunyan621

記者 : Kstyle編集部、撮影 : 前手秀紀