SHINeeが創り上げたアイデンティティ…走り続ける彼らの魅力を紐解く5曲 ― Vol.2

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デビューから入隊に伴う活動休止迄、SHINeeはひたむきに走ってきた。グループとしての活動に加え、ソロ活動、俳優業、そして日本、アジア、世界ツアーと、常にフル回転。にも係わらず、ステージ上の彼らはいつも、朗らかでピュア、そしてナチュラルな笑顔を見せていた。ダンスがどれだけ緻密さや難易度を高めようとも、彼らはそれをクリアーするだけのポテンシャルを持ち併せ、SHINeeにしか成しえないパフォーマンスで魅了してきた。ここでは代表曲5曲をピックアップし、それを基にSHINeeの魅力に迫る。
 

◆デビュー曲にして歴史的逸曲「누난 너무 예뻐(お姉さんはとても綺麗)」「Replay -君は僕のeverything-」

2008年5月に発表された彼らのデビュー曲にして歴史的逸曲。この3年後、日本語バージョン「Replay -君は僕のeverything-」で日本デビューも果たす。

アメリカの男女混成R&Bユニット、ルーシー・パールのデビュー曲「Dance Tonight」をサンプリングしたトラックはスムーズ&流麗なグルーブ感を持ち併せ、美しさ満点。メロウな極上R&Bチューンに年上女性との愛、そして、自分の幼さゆえの別れの予感をのせる。ステージではあどけない笑顔も見せる彼らだが、歌の世界は切なく、そのギャップに女性のハートはキュンキュン。つい守ってあげたくなる、そんなイメージが懐かしい。

その実力を常に高く評価され続けているジョンヒョンの伸びやかな歌声はデビュー時から輝いており、ミンホがラップでクールに締める様も格好いい。歌い繋ぐ彼らの歌声には個性が光っていた。

また、末っ子のテミンは、当時、中学生ながらも、抜群に高いダンススキルで強烈な存在感をスパーク。センターで舞うことの多い彼がダンス面でチームをリードし、メンバーは細かなステップを刻み、軽やかかつシャープな足さばきで魅せていく。この振り付けは、ブリトニー・スピアーズのワールドツアーに参加するなど、米国・ロサンゼルスを拠点に、ダンサー、コレオグラファーとして活躍する仲宗根梨乃によるもの。少女時代の代名詞=「美脚ダンス」(「チェギチャギ・ダンス」)も彼女のプロデュースで、仲宗根はこのSHINeeのデビュー曲を皮切りに、その後も彼らの初期の振り付けを手掛けることに。他にも数々のK-POPアーティストにタッチし、さらには『SHINee WORLD 2017~FIVE~』の総合演出も担当――すべてはここから始まった。



この曲で光るアーバンな音楽性は彼らを特徴づけるものとなり、ここに充満するピュアな清澄感と瑞々しさもまた同様。どれだけキャリアを重ねようとも、そのピュアな印象は決して失われることがなかった。つまり、彼らのイメージを決定づけることになった記念碑的名曲にして、原点中の原点と言えるのだ。

また、日本デビューまでの3年間にテミンはボーカリストとして急成長を見せる。彼のソロパートが日本語バージョンではグッと増え、彼のパートから始まるのもポイントだ。
 

◆イメージを一新した「Sherlock」

一つの枠に収まることなく、一歩先行く音楽でファンを楽しませてくれるーSHINeeのそんな音楽的側面が2012年発表の「Sherlock」で全面展開される。

2011年に日本デビューを果たし、年末には日本での活動を振り返るように日本盤1stアルバム『THE FIRST』をリリースしたSHINeeは、ここまで、主にR&Bに軸足を置いてきた。もちろん、ド派手なプロモーション・ビデオとインパクトあるエレクトロ・サウンドで大人の愛を描いた「LUCIFER」も衝撃的だったが、振り付けにはパフォーマンス・ディレクターのシム・ジェウォンをサポートする形で仲宗根梨乃も参加したため、柔らかさも加味されていた。

が、彼らはそれまでのイメージを「Sherlock」で一新する。曲は「Clue」と「Note」という二つの曲をハイブリッドに掛け合わせ、リスナーは2曲分の興奮を1曲で堪能出来る仕掛け。制作陣の発想もすごければ、それを受け止め、余裕で表現してしまう彼らもまたすごい。



この曲のコレオグラフィにはジャネット・ジャクソン、ブリトニー・スピアーズ、カイリー・ミノーグなどメインストリームのスターを手がけてきたトニー・テスタ(マイケル・ジャクソンが亡くなる前に予定していた「THIS IS IT」ツアーの振付師としても知られる)が新たに参加。トニーは、オープニングから、一拍ずらし輪唱するように踊っていくカノンを演出し、ダイナミズムたっぷりに劇場性を高める。サビには力強いコサック風ダンスをアレンジし、楽しさもプラス。サウンドは爆発的なビートがスリリングに展開され、詞の世界は知的ゲームのよう。ミンホは古畑任三郎バリの推理で真相に迫る。聴きどころ、見どころを満載したこの曲はSHINee第二章の幕開けとも呼べるもの。その革新性から、アメリカのカルチャー・マガジン「ローリング・ストーン」が選ぶ「史上最高のボーイズ・グループ・ソング50」(2015年)では12位(アジア勢では最上位)、「同75」(2020年)では14位に選出された。
 

◆J-POPのど真ん中を攻める「Dazzling Girl」

日本デビューから約10年が経過したSHINeeは日本オリジナルのヒット曲も多数、持つ。その中からピックアップするなら、この「Dazzling Girl」! 日本オリジナル第一弾で、ジョンヒョンも「それゆえ、とても意味がある曲」と紹介している。

2012年、世界基準の新曲「Sherlock」をリリースし、ファンのみならず世界を驚かせたSHINee。日本で初のアリーナツアーを成功させた彼らは、エッジ際立つモード系K-POP「Sherlock」から、ひらりと立ち位置を変え、この曲でJ-POPのど真ん中を攻めていく。K-POPの要となるインパクトや刺激性ではなく、キャッチ―な爽やかさに比重を置いたことがJ-POP的だった。



“眩しいほどに輝く女の子”にときめく男子の気持ちをにこやかな表情で歌う。跳ねるピアノがアクセントを施すトラックも歌も輝きに満ちていた。

そして、今回、新たにタッグを組むクリエイターがメンバーをサポート。オリジナルの舞台公演など、エンターテインメント性の高いパフォーマンスで話題のダンスパーフォーマンスグループ、s**t kingzが振付を担当し、ハッピーなステージングをプレゼント。そして韓国ではファッション・デザイナーのハ・サンベクがスタイリングを手掛けたが、今回は、気鋭のデザイナー、丸山敬太がPVやジャケット写真のコスチュームを担当し、これまでとは違う布陣がNEW SHINeeを創り上げる。続くシングル「1000年、ずっとそばにいて…」も日本オリジナルで、シングルでは初のバラードという意欲作! 彼らはJ-POPモードで畳みかけていく。
 

◆ノンストップで息つく暇もない「Everybody」

2015年3月14日、初の東京ドーム公演の幕開けを「Everybody」(2013年発表)で飾る。オープニングにこの曲を選ぶことで、彼らは初っ端から5万人の観衆を熱狂の渦に巻き込んだのだ。それほど、この曲の熱量は高く、ダントツでファンをノリノリにさせる。

他に類を見ないほどダブステップを取り入れるK-POP界だが、「Everybody」もダブステップを基調にし、メロディアスなファンキーさも加味。尖がっていながらも、皆がアゲアゲで掛け声をかけることができる、そんなパーフェクト・チューンになった。



歌割りも完璧で、それぞれがボーカリストとして個性を発揮。同時にアンドロイドのおもちゃに扮して、演劇性、ストーリー性のあるパフォーマンスを演じていく。童謡「おもちゃのチャチャチャ」に出てくるおもちゃのように、夜になると覚醒するSHINeeアンドロイド。途中、キーとテミンは「ハーメルンの笛吹き男」の様にエアー笛を吹き、終盤ではテミンを中心に全員で飛行機にトランスフォーム! オンユがリーダーとしてプロペラになってメンバーを束ね、テミンが「眠っているこの夜を起こして~」と雄叫びを上げれば、飛び立つ飛行機が夜の闇を蹴散らしていくかに思われたが、ラストでは、おもちゃのバッテリーやゼンマイが切れ……。

再びトニー・テスタが担当したパフォーマンスは、4分間ノンストップで息つく暇もなく、まばたき厳禁! ビルボートは“2013年、最高の振り付けの一つ”と絶賛した。
 

◆自然体で舞う「Good Evening」

2018年、SHINeeは約4ヶ月をかけて3枚のミニ・アルバムをリリースし、それらを6thアルバム『The Story of Light ‘Epilogue'』としてコンパイルする。EP.1は「大衆から見たSHINee」EP.2は「SHINeeから見たSHINee」、EP.3は「ファンから見たSHINee」の作品になっていた。ここからは1枚目のミニ・アルバム『The Story of Light EP.1』のタイトル曲「Good Evening」を紹介したい。

アメリカの男性ボーカルグループ112が1997年にヒットさせたR&Bチューンの「Cupid」をサンプリングし、同じくアメリカのプロデューシング・チーム、ザ・フリップトーンズがプロデュースした、ディープハウス調のグルーヴィンなサウンドは耳に心地よい。



注目すべきはステージ上でのパフォーマンスだ。カメラ目線が人気アーティストの必須であるK-POP界で、ここでの彼らはほぼ、それを演じない。どれだけ一糸乱れずに舞えるかを勝負するK-POP界にあって、群舞に重きを置くこともない。どれだけ男らしく格好よく演じられるかを競うようなK-POP界において、彼らはおぼろげな表情でファルセットを多用し、自然体で舞う。そうしたステージングは、“ファンを魅了すること”と同じ強度で“自分の内面との対話”に重きを置いた結果だろう。コンテンポラリー・バンドというテーマを掲げてきたメンバーが、コンテンポラリーダンスとも形容できる振付けでK-POPの殻を破ったのだ。イノベーティブであることを信条としてきたSHINeeが「Good Evening」を演じた時、それが彼らにとって最もイノベーティブな瞬間となった。その意味で、この曲はSHINee史上の最重要チューン! テミンのソロ作でも振付師としてバックアップしたダンサーの菅原小春が彼らをネクストレベルへ引き上げた。


このようにSHINeeの転換期にはトップクラスのクリエイター、コレオグラファーが彼らをバックアップしている。彼らの才能がそうした一流のアーティストを引き寄せており、それもまた彼らが一流であることの証! 今後、SHINeeがどんなアーティストと共同作業をしていくのか、そこにも注目していきたい。

SHINee、世界も認めた彼らが帰ってきた!鮮烈デビューと13年に及ぶファンへの愛 ― Vol.1

SHINee、力強いパフォーマンスで新たなイメージを確立!待望される日本への再上陸 ― Vol.3

ライター:きむ・たく

■リリース情報
SHINee 7th Full Album「Don't Call Me」
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記者 : Kstyle編集部