2020年ドラマ・映画・K-POPベストは?そして今年、韓流・K-POPシーンに期待すること ― 古家正亨 2020年総決算 Vol.2

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ドラマ・映画・K-POPのベスト作品発表!2021年期待することは? ― 古家正亨 2020年総決算 Vol.1

ベスト作品はイ・ビョンホンにナムグン・ミン主演作…2021年韓流・K-POPシーンに期待することは? ― 古家正亨 2020年総決算 Vol.1

新しい年が始まって、すっかり時間も経ってしまいましたが2021年、いかがお過ごしでしょうか? 今回は、古家なりの“日本における”2020年の韓流・K-POP総決算と迎えた2021年を占っていきたいと思います。

前半では、2020年の韓流コンテンツを日本・韓国の視点でどうだったか伝えてきましたが、ここからは古家個人の2020年のベストをご紹介していこうと思います。

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#古家正亨の2020年のベスト


◆映画 ベスト『KCIA 南山の部長たち』

写真=SHOWBOX『KCIA 南山の部長たち』
近年、『タクシー運転手 約束は海を越えて』や『1987、ある闘いの真実』など、日本でも韓国の現代史ものがヒットを記録していますが、僕個人的にその頂点に立つと思われるのが、日本でも間も無く公開されるこの『KCIA 南山の部長たち』です。1979年に、韓国の朴正煕大統領がKCIA(中央情報部)の部長キム・ジェギュに暗殺された実話を基に映画化した作品ですが、実話なので、結末はわかっているし、そこに至るまでの過程も凡そ推測できるわけですが、それでも、この映画の全編に漂う緊張感にただただ圧倒されます。その空気を作り出しているのが、映画の中ではひたすら寡黙なイ・ビョンホンさん。沈黙の中から見える心の台詞が、語られずとも聞こえてくるその演技力はとにかく凄いの一言。その演技は、彼のフィルモグラフィーの中でも、トップと言って良いのではないでしょうか。


◆ドラマ ベスト『ストーブリーグ』

写真=SBS『ストーブリーグ』
凄いドラマでした。プロ野球球団「ドリームズ」をめぐるドラマなんですが、プロ野球をテーマにしているものの、実質はオフィスを舞台にした人。僕個人的にも、オンラインでのイベントの司会間ドラマと言っていいと思います。よくある万年最下位のチームを、どうにかして優秀なチームにしていくまでを描いていくんですが、ドラマの主人公は選手たちではなく、フロントの人たち。つまり、このドラマはスポーツドラマではありません。野球のシーンもほぼ出てきません。その裏方として活躍している人たちを描いている作品なんです。でも、そこに描かれる人間ドラマ、そしてそれぞれのキャラクターから発せられる台詞の一言一言が心に響きます。野球のことがある程度わかった方がより楽しめると思いますが、でも、誰がみても楽しめるそんな作品です。

主演のナムグン・ミンさん。何度もお仕事ご一緒させてもらっていますが、今が役者として、一番脂の乗っている良い時期ではないでしょうか。『愛の不時着』も『梨泰院クラス』も確かに面白かったけど、僕はこの2つよりも『ストーブリーグ』(原題)の方が断然面白かったですね。こういうドラマが日本でも地上波で放送されると、韓国ドラマの人気に、改めて火がつきそうな気がするんですけど……。『ミセン -未生-』を観た時に近い感動がありました。


◆音楽

SF9(에스에프나인)「Good Guy」



イントロを聴いた瞬間、「あ、この曲でSF9は1位取るな」と直感でそれを感じた2020年1月リリースのヒット曲。そして、実際にSF9はこの曲で、音楽番組で1位を取りましたよね。やっぱり人気者になれるかどうかって、良い曲に出会えるかどうかっていうことが、いかに大事かが判る良い例だと思います。ポップなメロディーと疾走感あふれるリズム。今でも僕のIPHONEの毎日のルーティーン・プレイリストに入っています。


GFRIEND(여자친구)「교차로(Crossroads)」



今やBig Hitレーベルの一員となったGFRIENDですが、彼女たちのアイデンティティである郷愁誘うメロディーを残しながら、次のステップへとむかう同世代の女性の心をしっかり表現した歌詞が絶妙に融合した1曲で、もっとヒットしても良かったのに……と思うほど、彼女たちの代表曲になったのではと、個人的には思っています。クレジットを見る前には、PEPPERTONESが作った曲なのか? と思ってしまったほど、リズムには渋谷系の味わいが漂っています。彼女たちのパフォーマンスも美しいです。


ONF(온앤오프)「스쿰빗스위밍(Sukhumvit Swimming)」



デビュー当時から、ONFとはずっとお仕事をご一緒させてもらっていますが、2020年はMnetの「Road to Kingdom」を通じて、より多くの人に、その潜在的な力を知ってもらえた年になったので、本当に嬉しいですし、この曲を聴いた時に「ONFの時代が、ついに来るのか」と思ったほど、今の音楽シーンのトレンドをしっかり取り入れながらも、ONFのスタイルと、全編に渡って、ちゃんと散りばめているのが素晴らしいですね。もともと所属事務所のWMエンターテインメントは、曲選びが上手い事務所として知られているんですよね。2021年はより羽ばたいてくれることを期待しています。


YUKIKA(유키카)「서울여자(SOUL LADY)」



新しい事務所も決まって、韓国での活動の継続がまずは決まってホッとしました! 年末、久々にお仕事ご一緒させてもらいましたが、彼女のソロアルバムの出来が、とにかくすごく良かったんですよね。ここ数年の韓国のニュートロ・ブームの中で、特に音楽シーンで人気なのは、80年代、90年代のアメリカのR&Bサウンドですが、もう1つの流れとして日本のシティー・ポップの要素が散りばめられた楽曲の多いこと。そういった中で、彼女は超ド級シティー・ポップアルバムを、韓国語で作り上げてしまったというところが凄い。今でも毎日聴いているアルバムです。僕ら(40代)世代には、かなり刺さるアルバムだと思います。


fromis_9(프로미스나인)「Feel Good(SECRET CODE)」



fromis_9には、もっともっと売れて欲しいんですが、色々あって、なかなか活動ができない、大変な時期を過ごしていたと思います。それでも2020年、この曲でカムバックしてくれた時は、本当に嬉しかったですね。しかも、このファンキーなサウンド。クセになりますね。多分、今年一番繰り返し聴いた曲が、この曲だと思います。



#2021年の韓流・K-POPシーンに期待することは…


そして今年2021年ですが、先の見えないコロナ禍の中、韓流・K-POPファンの皆さんが一番気になるのが、一体いつになれば、自由に日韓の往来が可能となり、オフライン、つまり実際にリアルなイベントが実施できるのかということではないでしょうか。もちろん、オンラインを利用して、日韓をつなぎ、少しでも大好きなスターとコミュニケーションを取れることに越したことはありませんが、そろそろどの分野においても、オンライン疲れが見えてくる頃。



僕個人的にも、オンラインでのイベントの司会などを昨年後半から頻繁にさせていただき、コロナ禍の中、お仕事をいただけるだけで感謝の気持ちでいっぱいではありますが、実は、オフラインイベントの2倍、3倍は体力を消耗します。どうしてもファンの皆さんがいない中でのイベントは、スターのテンションも自然と下がってきますし、技術的限界もあり、1秒、2秒のコミュニケーションのディレイが、オンラインイベント全体のスピード感に影響を与えるんです。なので、MCは常に1、2秒先を読みながら反応し、ファンが居ない分、ファンが喜ぶ姿、笑う姿、感動する姿を、僕の体を通じて、スターに表現してあげなければなりません。

もちろん、技術が更なる進化を遂げ、5Gも普及し、VRやAR、いずれは香りか風がでて、自宅にいてもその空気感が伝わるようなものを作り上げることは可能になるでしょう。でも、我々が求めているのは、それではないはずです。

きっと今より少し自由になれて、イベントやコンサートが開催されるようになれば、今まで我慢していた分、ファンの皆さんは、爆発的にオタ活に投資されるでしょうし、それによって日本の韓流・K-POPシーンは更なる盛り上がりを見せるでしょう。でも、それがいつなのか、見えないのが、ただただ不安ですよね。

写真=Netflix『勝利号』
映画やドラマは、ソン・ジュンギ主演の超話題作、SF作品の映画『勝利号』がNetflixで公開されるなど、今年はドラマだけでなく新作映画も韓国以外は、動画配信サービスを通じた世界配給が増えると見られ、当然、ドラマもその傾向が強まるでしょう。でもファンとしては、1人でいくつものサービスに加入する金銭的余裕もありませんし、できれば幅広いメディアを介して、多くの人にその喜びを共有できる環境ができることを、願わざるを得ません。

音楽で言えば、TREASUREやENHYPENといった注目の新人グループの日本本格進出が今年、間違いなくあるでしょうし、オーディション番組を通じて、更なるスターの誕生もあるでしょう。そして、K-POPシーンでの日本人メンバーの活躍は、これまで以上に観られるかもしれません。でも、それ以上に、長きに渡って日本のK-POPシーンを牽引してきた2PMの活動再開や、昨年実現できなかったBIGBANGのカムバック、すでにカムバックを果たしたCNBLUEをはじめとするベテラン勢の奮起にも期待したいです。そして、ここ数年IUの独壇場だった、ソロアーティストの活躍にも期待したいですね。

写真=YG ENTERTAINMENT「TREASURE」
去年はK-POPがきっかけになって、食やファッション、さらには文学やエッセイといった領域に至るまで人気が広がり、今や若者たちにとって“韓国”そのものが、文化、エンターテインメントと化しています。それについて、良し悪しの是非はあるとは思いますが、まずは“韓国”を知るというきっかけになっていることは、素直に喜ぶべきことではないでしょうか。

2021年もこの流れが続くでしょうし、NiziUやJ01のような、いわゆる韓流系スターの誕生、その人気によって日本の芸能界にそんな韓流系スターが、今年も様々な芸能事務所が日本の業界と組んで、デビューする可能性も多分にあります。しばらくは、若者たちの流行の中心はK-POPからということになりそうです。

そういった中、2021年前半、しばらくはStay Homeの状況が続きそうですから、まずはKstyleの情報も然り、ネットを介して入ってくる韓国からの韓流・K-POP情報で、直接スターに「会いたい」気持ち、その心を潤して、そしてその再開の瞬間を待っていてほしいと思います。

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古家正亨×Kstyleコラム Vol.8

古家正亨(ふるやまさゆき)

ラジオDJ・テレビVJ・MC
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了
2000年から韓国音楽を中心に、韓国の大衆文化をあらゆるメディアを通じて紹介。昨年までは年平均200回以上の韓流、K-POP関連のイベント等のMCとしても活躍。

現在もNHK R1「古家正亨のPOP☆A」(水曜21:05~)、NORTH WAVE「Colors Of Korea」(土曜11:00~)、CROSSFM「深発見!KOREA」(土曜18:30~)、Mnet「MタメBANG!~ただいま打ち合わせ中」(毎月第1、3、5木曜23:30~他)を通じて日本から韓流、K–POP関連の情報を伝えている。

最近では、YouTubeチャンネル「ふるやのへや」を立ち上げ、妻でアーティストのMina Furuya(ホミン)と共に料理やカルチャーなどの情報を発信中。

Twitter:@furuyamasayuki0

記者 : Kstyle編集部