ソン・ヒョンジュ&チャン・スンジョ「模範刑事」には“出演しない理由がなかった”…日本ファンにオススメの韓国ドラマも

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「梨泰院クラス」での主人公の父親役をはじめ、数々の作品で名演技を見せてきたベテラン俳優ソン・ヒョンジュと、「ボーイフレンド」や「チョコレート:忘れかけてた幸せの味」などのドラマだけでなくミュージカル俳優としても活躍するチャン・スンジョがタッグを組んだ刑事ドラマ「模範刑事」が、1月22日より衛星劇場にて日本初放送となる。

真実に近付こうとする者と隠蔽しようとする者の対決を中心に、リアルな刑事たちの世界が描かれている本作。韓国での放送時には月火ドラマの1位を独走し、俳優たちの好演と目が離せないストーリー展開で高い評価を得た。

この度、日本初放送を記念して主演のソン・ヒョンジュ&チャン・スンジョにインタビューを実施!「すごく良かった」という現場の雰囲気から日本での思い出まで、たっぷりと語ってくれた。

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――日本の衛星劇場で「模範刑事(原題)」が1月22日から放送されます。感想をお聞かせください。

ソン・ヒョンジュ:とても感謝していますし、ドキドキしますね。何年か前に「かくれんぼ」という映画のプロモーションで大阪に行って、一般の方々と一緒に映画を観てトークをする機会がありました。その時にすごく胸がドキドキしたんです。韓国のドラマが日本でもたくさん放送されていますが、「模範刑事」が1月22日に放送されると聞いて、とても期待しています。

チャン・スンジョ:私もとてもうれしいです。がんばって撮影したので、その情熱が日本の皆さんにも伝わるとうれしいです。

――「模範刑事」がどんなドラマか、簡単にご説明をお願いします。

ソン・ヒョンジュ:難しいドラマではありません。刑事ドラマというとアクションもあってカッコいいイメージがあるかもしれませんが、このドラマに登場する刑事は“生活型”の刑事が多いです。日常を生きている刑事なのですが、過去の過ちを隠したいという気持ちを持って生きています。誰もが過去の過ちは隠しておきたいと考えますよね。でも結局はその過ちを隠さずに、仲間たちと共に真実に向かっていきます。最初は“卵を岩にぶつける(韓国語のことわざで「無駄なこと」の意味)”ように無駄な抵抗なんですが、その無駄な抵抗が最後には結実していく、そんなドラマです。たくさんのことをお話してしまうと面白くなくなってしまうかもしれないので、このくらいで(笑)。最初は見ていてもどかしく感じるかもしれませんが、一つ一つのキーが組み合わさって謎が解けていきます。

――本作に出演することになったきっかけや理由はありますか?

ソン・ヒョンジュ:台本を読んだときに心が痛かったんです。それに演出のチョ・ナムグク監督とはこれまでに数多くの作品でご一緒しました。監督の演出は素晴らしいですし、スタッフとの調和を計るのもお上手な方です。それも演出の一つですよね。台本が素晴らしくて、演出もスタッフもよく知っている面々だったのでやらない理由がなかったです。それに、カン・ドチャンという人物が隠蔽しようとしているものが明らかになってしまったときに、画面上でどのようにドチャンを表現するべきか、どうすれば視聴者の心に迫ることができるのか、そんなことが気になって出演を決めました。

チャン・スンジョ:私はソン・ヒョンジュ先輩とチョ・ナムグク監督のケミ(化学反応)に惹かれました。やらない理由がないと思いました。お二人がタッグを組まれた「追跡者 チェイサー」が私の人生の中でも一番好きな作品の一つで、本当に涙を流しながら観たんです。そのチームに入ることができるなら、無条件でやるしかないです。それにキャラクターが“財閥刑事”なのですが、どんな人物なのかという好奇心もありました。だから出演を決めたのは当然のことです。

ソン・ヒョンジュ:他のドラマでもそうやって話しているんじゃないの?

チャン・スンジョ:そんなことないですよ! 他のドラマにはないことです。本当ですよ。

ソン・ヒョンジュ:(チャン・スンジョを見ながら)ありがとう。


年の差を感じる?役作りのための準備とは

――ソン・ヒョンジュさんが演じるカン・ドチャンはどんな人物ですか?

ソン・ヒョンジュ:先程も言いましたが、一言でいうと“生活型ベテラン刑事”です。昇進もできず、自分の同期はチーム長(チョ・ヒボン扮)になっているけど自分は警査(キョンサ/日本の巡査部長に相当)のままでいる、少し面倒くさい人物なんです。“適度”という言葉がピッタリかもしれないですね。“適度”に生きてきた人物です。そこにチャン・スンジョさん演じる問題のオ・ジヒョクが入ってきて、彼を邪険にするんです。このジヒョクが魅力的な人物で、間違っていることは間違っていると言わなくちゃいけないんだな、と考えさせられたり、ジヒョクから影響を受けていく部分が多いんですね。そして真実を見つけ出して、世間に真実をさらけ出していく……。とても弱い人間なのですが、仲間たちの助けを借りて大きなことを成し遂げる、そんな人物です。

チャン・スンジョ:オ・ジヒョクはとんでもない額の遺産を相続した、エリート警察学校出身のエリート刑事です。彼は心の中に大きなトラウマを抱えているんです。どんなことにも動じず、失うものがないから恐れを知らない人物です。それに、自分のやるべきことに邁進する、自信にあふれた人物です。

ソン・ヒョンジュ:このオ・ジヒョクは、なんとなく趣味も兼ねて生きているように感じられる人物なんです。劇中で身につけている時計も8億ウォン(約8千万円)もする時計ですし……。ジヒョク本人も嫌々チームに入ってきて、ドチャンや他のメンバーも彼が入ってくることを歓迎してはいないんです。入ってくるとすぐに衝突するのですが、彼がとっていく選択や行動に対して、他のメンバーたちも「悪くないな」「正しいことだな」と気付いていくんですね。本来はその事件をぶり返さなければ楽に生きられるのに……、ジヒョクを見ながら妥協をしないということを学んで、チームが一丸となっていくんです。

チャン・スンジョ:お金持ちではありますが、無駄遣いはしないですよ。必要なことにだけお金を使っています。

ソン・ヒョンジュ:ドラマの中の彼にたまにムカついていましたよ(笑)。車もいいものに乗ってるし。ドチャンは離婚した妹と一緒に暮らしているのですが、ジヒョクはラグジュアリーな場所でリラックスしながら高そうな洋酒を飲んでいます。こっちはマッコリなのに……。

チャン・スンジョ:人物紹介だけでも面白いですね(笑)。

――刑事の役は久しぶりではないですか? いつももう少し地位の高い役が多かった気がしますが……。

ソン・ヒョンジュ:他の人に「その年齢で警査なの?」と言われたのですが、設定上ではまだ40代中盤なんです。だからそんなに不自然ではないんですよ。後々は警衛(キョンイ/日本の警部補に相当)にはしてもらわないとね(笑)。刑事役は本当にたくさんやってきたので自然に演じられますね。その代わりに女優さんとの共演はほとんどないです。でも大丈夫ですよ! 男優陣と撮影後にマッコリを飲んだりして、結構楽しいですよ。

――今作で刑事を演じるために、何か準備したことはありますか?

ソン・ヒョンジュ:アクションスクールに通いました。「隠密に偉大に(邦題:シークレット・ミッション)」という映画があったのですが、そこでは北朝鮮軍人の役でした。力を使う大佐役だったので、アクションスクールに6ヶ月通い、その後で日常のアクションを習うために3ヶ月通いました。だから今回もアクションスクールに通うのは自然なことでした。ドチャンは末端の刑事なので、走るシーンも多いんです。もし署長とかだったら指示を出すだけなのですが……、チャン・スンジョさんと一緒にいつも外を走り回ってましたよ。

――チャン・スンジョさんもアクションシーンが多かったですが、何か準備されたことはありますか?

チャン・スンジョ:刑事という職業を演じるのが初めてだったので、私にとっては挑戦でしたね。刑事という役にできるだけ近付きたかったんです。実は古くから付き合いのある友人に警察に務めている友人がいます。だから警察署まで行って、彼にチーム長や彼の先輩の警衛を紹介してもらい、インタビューをしました。ドラマに出てくるこんな事件のときはどうするのか、といったことを聞きましたし、射撃も練習場を教えてもらい、実際にそこに行って射撃の練習もしました。刑事という役になりきれるように努力して撮影に臨みました。

ソン・ヒョンジュ:私も刑事ドラマのときは知人を訪ねたりしたので、刑事の知り合いが結構いるのですが、やはりスンジョさんとは年の差があるので、今では署長になっている人とかすでに引退をされている方が多いですね。演じているときは年の差を感じませんが、こういうときに年の差を感じますね(笑)。


お互いの第一印象は?「山のような人だと…」

――演じられている役柄とご本人との共通点や相違点を教えてください。

ソン・ヒョンジュ:誰もがそうかと思いますが、進んでつらいことをしようとしないですね。そこは似ていますね。それに私もあまり妥協はしないので、そこも共通点ですね。似ている点はたくさんありました。他の俳優たちとも話したのですが、計算された演技ではなく、“素”でやってみようと最初に話したんです。脚本家さんもそれを望んでいたし、台本から大きく逸脱することなく、その中で楽しんでみようと提案したのですが、各自が“素”でやって楽しめていたと思います。

チャン・スンジョ:ジヒョクはある事情を抱えているのですが、ポーカーフェイスを維持しながらそのことを表には出さないんです。でも時間が経つにつれて、ドチャン刑事と情が通うようになってきて、他の刑事たちとも打ち解けてきて少しずつ冗談を言ったりするようになっていきます。心に芽生えていたものが少しずつ吹き出していくんですね。私は家では自分の息子とすごくふざけあうのですが、そんなところが似ているかなと思いました。

――カン・ドチャンは再捜査を始めることになりますが、再捜査をするというのはものすごく大変なことだと思います。その感情を表現するために重点を置いた点は何でしょうか?

ソン・ヒョンジュ:(再捜査を決めることは)つらいですよね。それに、事態が複雑になっていくとその分撮影も大変になっていくんです。その後の展開が台本にはまだ書かれていないので。でも一つ一つをどうやって解いて見せていくのか、それがとても気になったんです。刑事たち(俳優たち)は今後の展開がどうなるのかは知らないので、漠然とした緊張感や不安を抱えていました。でも俳優というのはいつもそうなんですね。一つ一つの宿題を解いていくように演じるのですがうまく解けないときもあって、そういうときはつらいんです。今作では脚本家さんが刑事たち一人ひとりの性格をうまく書いてくれたと思います。今の生活に安住したい人、反対に血が沸騰してすぐに飛び出そうとする人、いろんな性格のメンバーがチームとなって真実に向かっていきます。それぞれの俳優がその宿題を解いたときに、ある種の“喜び”を感じていたと思います。

――チャン・スンジョさんは前作の「チョコレート:忘れかけてた幸せの味」では感情を爆発させるパワフルな役柄でしたが、今回のオ・ジヒョクは前半では感情をおさえた演技だったと思います。ジヒョクを演じるために重点を置いた部分はどこですか?

チャン・スンジョ:大きく感情を出そうとしないようにしました。第1話ではまるで不眠症にかかっているかのように警察署のソファーで眠ってしまい、そこでぐっすり眠って目が覚めて仕事を始めるシーンがあります。ジヒョクは心の中に抱えているものが大きすぎて、周りで起きる出来事が大したことだと感じられないんですね。それを表現する必要もないですし。だから刑事として自分がやるべきことだけに集中しよう、という姿勢に重点を置きました。ですので、カッコよく見せるフリをしようとか、そういうことは考えないようにしました。

ソン・ヒョンジュ:カッコよく見せるフリはしてましたよ。

チャン・スンジョ:そうでしたか?(爆笑)

ソン・ヒョンジュ:カッコよかったですよ。動作自体がカッコいいですよ。

チャン・スンジョ:カッコよく見せようとしていたみたいです(笑)。とにかく……、ジヒョクがやらないといけないことに集中するようにしていました。

ソン・ヒョンジュ:とても上手かったですよ。

――お二人の第一印象はいかがでしたか?

ソン・ヒョンジュ:良かったですよ(笑)。予測ができない、平凡ではない人物だと思いました。いろんなカラーを見せられる俳優だと思ったんです。色で言うと、例えば赤でもいろんな赤がありますが、彼は多彩なカラーを持っていて、演技に変化をつけたりもできるし、善と悪の両方を持っている顔だと思いました。

チャン・スンジョ:第一印象でですか?(笑)

ソン・ヒョンジュ:(爆笑)

――チャン・スンジョさんは以前、ソン・ヒョンジュさんがロールモデルだとお話しされていましたが、第一印象はいかがでしたか?

チャン・スンジョ:読み合わせのときのことを鮮明に覚えています。私の目の前に座られていて、少しご挨拶して、本当にこ~んな(ジェスチャーをしながら)山のような人だと感じました。ソン・ヒョンジュ先輩と共演するのであれば、まずは「頑張らなきゃ」と思いましたが、その思いのままうまく行くわけではないないですよね。だから今だから話せますが、最初は一言先輩が言われたことに対して、どう返答するべきか毎回考えていたんです。第一印象が“山”でしたので、自分にとっては「うまくやらなければ」というプレッシャーもありましたし、パートナーとして迷惑をかけたくなかったという気持ちが強かったです。

――最初は“山”のようでしたが、撮影をしながらこんな一面もあるんだな、と感じたことはありましたか?

チャン・スンジョ:撮影の序盤ですごく私が緊張していると、先輩が「やりたいように、ただ気楽にやってみればいい」と言ってくださって、すごくグッと来ました。それから警察署の2階での撮影シーンだったのですが、先輩の演技がすごく面白くて普通に私も演じながら笑ってしまったんです。すごくリラックスしていたんですね。本当に笑える演技だったんですよ。先輩はスタッフや共演者たちのことをとても気にかけてくださって、その姿を見て私もいつかこうなってみたいと思いました。でも、俳優としてここまでできることがいかに難しいかというのは、俳優だったら誰もが分かると思うんです。だから一緒に撮影すること自体が私にとっては刺激でしたし、学びの場でした。

――反対に、ソン・ヒョンジュさんがチャン・スンジョさんのこんな姿が意外だったという点はありますか?

ソン・ヒョンジュ:特にそういうことはなかったです。映画やドラマの撮影のときにお酒の席などで後輩俳優たちに必ず言うことがあります。それは「約束されていることは守ろう」です。例えば決められた夕食の時間とか、約束が大事だと話しています。すべての俳優がそれを守ってくれました。特にスンジョさんは遅刻をしたり、時間を守らないということが一回もありませんでした。だから現場でピリピリすることが全くないんです。撮影現場は笑いが溢れているし、いつも良い雰囲気でした。本当に素敵な方々と一緒にやれました。スンジョさんは最初から最後まで一つも逃さないようにしようとされていたので、先程言ったようにこれからも多彩な姿を見せてくれると思います。


「放送禁止用語が2分間…いろんな経験ができました」

――「模範刑事」はアクションも多かったですが、演技が大変だった部分はどこですか?

ソン・ヒョンジュ:心理的には死刑制度と関連して、ある重要なシーンがあるのですがその部分は心が痛かったですね。肉体的には……ある人を追いかけるシーンを仁川(インチョン)の廃車場で撮影したのですが、ものすごい数の車が並んでいて武術スタッフ1名が足を骨折したんです。私も何箇所かケガをしました。そのスタッフのことを考えると今も心が痛いです。今は回復したようですが、足が折れるときの音がして……、そのときのことを思い出すと胸が痛みます。

チャン・スンジョ:体力的には最初に走るシーンを撮ったときは本当につらかったです。監督に「アクションシーンは大変だろ? ジャンルものはつらいだろ?」と言われたんです。

ソン・ヒョンジュ:(爆笑)

チャン・スンジョ:だから走るシーンのために半月は毎日スクワットを何十回もやりました。それからはだいぶ楽になりました。監督も私が走れるようになったので驚いてくれました。刑事ドラマに追撃シーンは欠かせませんが、簡単な撮影ではないですね。

ソン・ヒョンジュ:監督も指示するだけじゃなくて、どんなふうに走るのか見せてほしいよね!「よーい、スタート」だけなら私だってできるし(笑)。

チャン・スンジョ:撮影監督は走って撮りますしね。

ソン・ヒョンジュ:そうそう(笑)。カメラを持って撮るのは本当にキツいよね。

――チームワークがすごく良いなと感じますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

ソン・ヒョンジュ:ものすごく良かったです。一人憎たらしい人がいたのですが、チョ・ヒボンさんはチーム長なので野外には出てこないんです(笑)。同期の刑事なのに。我々は警察署内にはほとんどいなくて野外で撮影しているのに、あの人はずっとセットの中なので(笑)、ちょっと憎たらしかったです。

――撮影現場での面白いエピソードはありますか?

ソン・ヒョンジュ:すごく多いですよ。他の刑事ドラマよりも面白いエピソードが多かった気がします。記者が身分を明かさずに私に付きまとって取材をするシーンがあり、そのシーンで強めの悪口が出るのですが、その悪口のほとんどが放送禁止用語で、テレビでは「ピー」の音がずっと出ていて、それが2分間くらい続いていました。ある意味、いろんな経験ができたドラマでしたね。それと警察署の外観を大田(テジョン)のシンタンジン(※地名)に移転してきた警察署で撮影したんです。内観はヨンチョン(※地名)にあるセットで撮影したのですが、外観はそこで撮影しました。その警察署は我々だけが使用することができたので、撮影の邪魔になるものが何もなくて、ストレスなく撮影できました。普通は場所の使用には気を使うし、静かに使わないといけなかったり、待ち時間があったり……、変数が多いんですね。でもそういうものがなくて、ストレスなく撮影できて良かったです。

――撮影中にはアドリブシーンも多かったですか?

ソン・ヒョンジュ:考えながらやるのはアドリブじゃないですよね。私はそこまでアドリブが好きな人ではないですが、撮影の雰囲気にあわせてやることはありますよ。それは「こうやらなくちゃ」ではなくて自然と出てきてしまうものなんです。最近放送されていた、とあるクイズ番組であるお坊さんが「私ではないアバターではないか」と仰っていたのですが、それが正しい気がします。チャン・スンジョではなく、チャン・スンジョのアバターがオ・ジヒョクを演じているんです。私も身体を借りてカン・ドチャンを演じているんです。

チャン・スンジョ:これがアドリブですよね?(笑)

ソン・ヒョンジュ:うまいこと言うね。

チャン・スンジョ:私は今も「模範刑事」をたまに観ながら、ソン・ヒョンジュ先輩とのシーンを振り返ったりするのですが、急にアドリブシーンが思い浮かびました。対話をしているシーンで急に携帯電話に着信が来るんです。そこでふざけ合いながら「先輩、電話だよ」と言うシーンなのですが、撮影しているときは着信音が鳴っているのか、振動になっているのかは分からないんです。そこで先輩に「電話だよ」と教えてあげると、先輩が「俺は聞こえないのに、なんでお前には聞こえるんだ」とボソボソ言いながら電話に出るんですね。そのシーンがすごく面白くて……(笑)。あれはアドリブでしたね。急にそのシーンを思い出しました。

ソン・ヒョンジュ:でも自分の電話に気付かなくて、「電話が鳴っているよ」と言われて初めて気付くことってあるよね?(笑)


「シーズン2だけでなく…」続編にも期待?

――お二人が選ぶ名シーンや名セリフを教えてください。

ソン・ヒョンジュ:ちょっとネタバレになるかもしれないけど、ドラマの中盤にあるシーンです。ある事件があって、その事件のために刑事たちが一つに団結していくんです。その事件が名シーンです。でもどのシーンも瞬間瞬間が気持ちの良いシーンでしたし、心が痛いシーンでしたし、愉快なシーンでした。

チャン・スンジョ:ご覧になれば同じように感じられるかもしれませんが、後半になってくると痛快なシーンがたくさん登場してきます。カン・ドチャンが署長室にバンッと入っていき、署長に言う痛快なセリフがあるんです。視聴者の方々も胸がスーッとするようなシーンですが、先輩がすごくカッコよく表現されています。名シーンはたくさんありますが、そのシーンは皆さんも共感していただけると思います。

――事件解決のために最善を尽くす刑事たちの真面目な話の中に、笑えるシーンもたくさんありました。一番お気に入りの面白いシーンを教えてください。

ソン・ヒョンジュ:たくさんありすぎて、1つや2つを選べないですね。特に記憶に残っているのは……、我々だけで会議をしながらチーム長や署長にバレそうになる瞬間に、ホワイトボードに書いたものを一瞬で消したり、バレないようにこっそり真剣に話し合うシーンですかね。真剣な中にユーモアはあるものですよね。そんなシーンが好きなんです。

チャン・スンジョ:ソン・ヒョンジュ先輩式のシットコムですよね。真剣な中でブラックコメディのように面白く料理されるのがお好きなようです。

ソン・ヒョンジュ:後輩たちの演技がみんな上手いんです。チャ・レヒョンもチョン・スンウォンも、キム・ジフン、キム・ミョンジュン、チョ・ヒボン、ソン・ジョンハク……、みんな呆れるくらいに演技が達者です。パッと投げたら全部キャッチしてくれる。普通はここまではできないですよ。チャン・スンジョさんも自分で考えてキャッチしてくれます。みんな自分の役について忠実に研究してきていて、レベルの高い演技をしてますね。

――「模範刑事」シーズン2の制作の期待も高まっていますが……。

ソン・ヒョンジュ:私も他の俳優たちもシーズン2を望んでいますが、制作される可能性は……、何%ですかね?(笑)私は制作されることに50%は期待しています。でも、もし制作されるのであれば「もっと面白くしなければ」と考えたらダメだと思います。やはりシーズン2にはシーズン2の作品の個性というものがあると思うんです。だからシーズン2もシーズン1を制作しようとしたときと同じようなマインドが大切だと思います。

チャン・スンジョ:私はシーズン2だけでなく(笑)、3、4と続いてほしいです。

ソン・ヒョンジュ:行けると私は思いますよ。

――「模範刑事」というタイトルを聞くと何が思い浮かびますか?

ソン・ヒョンジュ:「真実は生きている」。その言葉が浮かびます。多くの人が真実は隠されてしまうものだと思っているかもしれないけど、実はそうではないと思います。だからこの世の中は生きる価値がある、そう思いました。

チャン・スンジョ:「ティキタカ(短い言葉でテンポ良く会話する様子)」。全員がお互いのどんな演技もキャッチしてくれたことです。お互いが助けようとするわけでもなく利他的にこのシーンを良くしようと動くんです。シーンにあわせて各自が自分のポジションにつくのですが、始めるときにソン・ヒョンジュ先輩が「リハーサルをやろう」「OK。準備できた」という一言が今もたまに恋しくなります。スタンバイができたら後はシーンに入るだけなんです。カメラが回れば、あとは「OK! カット!」で次のシーンに行く、というふうにすごくスムーズに進んでいくんです。「模範刑事」と言えば、その記憶が大きいですね。


普段の過ごし方に爆笑「ボーッとして…」

――普段、作品活動以外ではどのように過ごされていますか?

ソン・ヒョンジュ:作品活動をしていないときに、皆さんは俳優がすごいことをされていると思うようですが……、私は運動をするときは運動をしているし、台本の検討をしているときは台本の検討をしています。でも主に何をしているかと言うと……、ボーッとしているんです。(チャン・スンジョ爆笑)ボーッとしていると一日の半分が過ぎることもあります。小さな書斎の窓から外を見てみると時間が過ぎてしまうんです。ただボーっとしている状態で何も考えない、そんな時間が実は長いんです。そうすると夕方に後輩たちから連絡が来て「一杯飲みましょう」と。そうすると外出します。後輩と近所の店に行って、スンデクク(豚の腸詰が入ったスープ)で焼酎を一杯やるんです。スンデククも美味しいですが、何よりも話が美味しいんですね。

チャン・スンジョ:私はまだボーっとする余裕がないので(笑)。まだ子供が小さいですし、新型コロナ感染拡大の影響で妻も外出を控えているので、作品活動以外の時間はできるだけ家族で過ごすようにしています。

――役者として、これまでも様々な経歴をもつお二人ですが、ご自身の俳優人生の中でピークやターニングポイントとして、記憶に残っていること、出来事はありますか?

ソン・ヒョンジュ:ほとんどの人が知らないと思いますが、デビュー作の月火ドラマ「兄」という作品があります。キム・ウンギョン作家の脚本で、演出はファン・ウンジン監督です。それから96年のドラマ「初恋」。それに「バラ色の人生」「追跡者 チェイサー」「模範刑事」もそうですね。今挙げたような作品は、一つ一つのシーンがターニングポイントでした。

チャン・スンジョ:「カネの花~愛を閉ざした男~」という作品が、その後もたくさんの作品に出演できるようになったきっかけになったと思います。「模範刑事」もそうですね。果たして自分がジャンルもので刑事の役ができるのかという疑問を持っていたので、「模範刑事」で初めて刑事を演じることになったのは挑戦でもありました。刑事の役をやることにドキドキしましたし、最後までやり遂げたいという強い気持ちがありました。だから「模範刑事」に出会うことができて良かったですし、今後の作品にとってのターニングポイントになったと思います。

――今後の活動計画を教えてください。

ソン・ヒョンジュ:私たちは俳優なので、良い台本や良いテーマがあればやります。終わりを迎える作品があり、新たに始める作品もあり、どんな作品を次は選択するのか考えたり……、一日一日を楽しんでいます。いつも出会いと別れがあるんですが、その緊張感が今まで俳優を続けてこられた力の源なのかなと思います。

チャン・スンジョ:「模範刑事」シーズン2がもし実現したら、ベストを尽くしたいですね。もうすぐ40代に入るのですが、日記を書きながら「どんな40代の俳優になりたいのか」を自問自答してみたんです。俳優を長く続けたい、演じる役をちゃんと演じたい、それ以外には特に思いつかないんです。だから、与えられたことに最善を尽くして、この仕事をずっと続けていきたいと思います。

ソン・ヒョンジュ:「模範刑事」に出てくる後輩たちは役者をやりたくて、作品に呼ばれないときは物流の仕事や代理運転など他の仕事をしている人もいるんです。みんなそれぞれの生活があるのですが、役者の仕事がしたいんですね。だから役者をやること自体がとても幸せなことなんです……。この話は長くなってしまうので、また別の機会にお話しますよ(笑)。

――忙しいスケジュールを乗り切るためにやっているストレス解消法は?

ソン・ヒョンジュ:ストレスというのがよく分からないんですよね。36年間俳優をやっているのですが、ストレスというのをあまり考えたことがないです。ストレスになるんだったら、最初からやらなければいいのに……。誰もソン・ヒョンジュに対して「どうか演技をしてくれ」と頼んだわけでもなく、自分がやりたくてやってるので(笑)。自分がやりたくてやってるから、自分で責任は取らないといけないですからね。後輩たちによく言っているのが「嫌ならやるな」です。誰かが「どうか演技をやってくれ」なんて頼んだりすることはないですよね。「模範刑事」だって自分で選んでいるわけですから、自分で選んでいるものを嫌がる理由はないですよ。むしろ撮影をしながらストレスを解消しているんです。仕事をしてストレスを受けるならやめたほうがいいですよ。私は大学路(テハンノ)の学校の演劇映画科に通いながら劇団生活を始めたのですが、卒業後も劇団生活をしていました。お金がなかったのは事実ですが、その時もつらいとは思いませんでした。自分が選択したことについては責任を持たないといけないです。後輩たちにもそう言いますが、これは自分に対する言葉でもあります。

チャン・スンジョ:ストレスはないほうがいいですよね……(笑)。私は悩んだりするときはよく歩いています。2~3時間歩いて発散しています。

ソン・ヒョンジュ:歩くのはいいよね。ストレスが溜まったからといってお酒を飲んでも、翌日に胃がつらかったりするので……。お酒は楽しんで飲まなきゃね。

――世界的に困難な状況が続いていますが、2020年をどのように乗り越えましたか?

ソン・ヒョンジュ:たくさん笑うことはできなかったですね。私がたくさん笑えなかったから、一般の人々もそうだったと思います。たくさん笑える状況ではなかったですね。大衆文化に従事する人々も同じだったと思います。2021年は笑える一年にしたいですね。コロナが消えて、以前のようにたくさん人々が笑って幸せに暮らせるようになることを願っています。それに、それぞれの国に自由に行けるようになってほしいです。

チャン・スンジョ:2020年はコロナで始まり、コロナで終わる1年でしたね。すごく残念ですし悲しいです。そんな状況の中でも仕事をできることに感謝しました。

――現在の状況がよくなって、海外にも自由に行けるようになったら何をしたいですか?

ソン・ヒョンジュ:以前も行ったこともありますが、ネパールとヒマラヤに行ってみたいです。トレッキングをまたやってみたいです。

チャン・スンジョ:旅行に行きたいですね。仕事でフランスに行ったことがあるのですが、海外撮影も行ってみたいです。一日でも早くコロナが終息して、みんなが安全に暮らせる世界になってほしいですね。行きたい場所としては、大阪に行って美味しいものをたくさん食べてみたいです。家族と一緒に素敵な時間を過ごしたいです。


日本に旅行も「山によく登って…今は行けなくて残念」

――日本旅行に行かれたことはありますか? 好きな場所や行きつけのお店などありますか?

ソン・ヒョンジュ:私が一番好きなのは自転車(マウンテンバイク)と登山なんです。だから日本の山によく登っていました。屋久島にも行きましたし、立山、北アルプス……、山をメインによく行っていました。大阪には知人の兄弟が住んでいて、よく行っていました。大阪市から堺市まで行って、歩いてみたり。日本は近い国ですが今は行けない状況なので残念です。日本酒と一緒に少し焼いた明太子を食べるのが好きですね。

チャン・スンジョ:私は2回行ったことがあります。東京と大阪です。思い浮かぶのは、寿司とたこ焼きですね。すごく美味しかったですし、また行きたいです。行けないのが残念ですね。

――現在日本では、韓国ドラマが第4次ブームを迎えています。オススメしたい韓国映画・ドラマを教えて下さい。

ソン・ヒョンジュ:北野武監督の「HANA-BI」。あ……、韓国の作品の中でですか? 韓国の作品なら……、「追跡者 チェイサー」ですね。それから皆さんが大好きなパク・ソジュンが出る「悪のクロニクル」もオススメです。

チャン・スンジョ:「模範刑事」に出演されるソン・ヒョンジュ先輩とチョ・ナムグク監督が作った「追跡者 チェイサー」をオススメしたいです。個人的にも人生で最高の作品ですし、きっと楽しんでいただけるはずです。

――日本ではソン・ヒョンジュさんが出演されている「梨泰院クラス」がNetflixで配信され、2020年に大ブームとなりました。ご自身で海外からの反響を感じることはありましたか?

ソン・ヒョンジュ:海外に行けないんだから感じようがないですよ~! 実はパク・ソジュンの父親として第1話だけの出演のつもりだったんですが、ああやって最後まで出るとは思いませんでした(笑)。カメオ出演のはずなのに最後まで登場しました。でもソジュンのことが大好きなので良かったなと思っています。「梨泰院クラス」に参加できて良かったです。私が参加したから今度はソジュンに、助けてほしいときはお願いしたいと思います(笑)。

――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

ソン・ヒョンジュ:1月22日から「模範刑事」が放送されると聞きました。とても嬉しいです。おそらく次は「模範刑事 シーズン2」でお会いできるのではないかと考えています(笑)。そうなったらベストを尽くして、一つ一つのシーンを作っていきます。愛しています。ありがとうございました。

チャン・スンジョ:「模範刑事」は頑張って撮影した作品なので、その頑張りをそのまま皆さんにお伝えしたいです。愛してくださいね。ありがとうございました、またお会いしましょう。

■放送情報
「模範刑事」(原題)
CS衛星劇場にて、1月22日(金)から日本初放送!
毎週(金)後11:00~深1:30(再放送:翌(木)後1:30~4:00)
※2話連続放送

演出:チョ・ナムグク
脚本:チェ・ジンウォン
出演:ソン・ヒョンジュ、チャン・スンジョ、イ・エリヤ

2020年/韓国JTBC/全16話
(C) JTBC studios & Jcontentree Studios Co., Ltd All rights reserved

<あらすじ>
5年前、女子大生と刑事を殺害した死刑囚。そして何の疑いもなく彼を逮捕した刑事カン・ドチャン。死刑執行を前にして、ドチャンの前に真実に向かう新たな証拠が現れ始める。葛藤のなか死刑執行の時間は迫っており、真犯人は分厚い仮面の奥で笑いを浮かべている……。罪は憎んでも人間は憎むな。人間は罪で判断することはできない。人間を判断するのは人間の領域ではない。ただ犯罪を判断するだけだ。義理で武装した18年目のベテラン刑事ドチャンが、冷徹な警察大学出身のエリート刑事オ・ジヒョクに出会い、真実を追い始める。

■関連サイト
衛星劇場「模範刑事」ページ:https://www.eigeki.com/series?action=index&id=27680&category_id=5

記者 : Kstyle編集部