K-POP好きなら誰もが共感!?きっかけはBTS…話題の漫画『おじさん、ドル活はじめました!』原作者シバタヒカリ先生に古家正亨がインタビュー

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「こんな漫画知ってました?」

ある日、スタッフから紹介してもらった一冊の漫画。『ミセン』の原作以降、全く読んでいなかった漫画でしたが、帯に記された「46歳。人生初推しは男性アイドル!!!!」に心捉まれ、一気に読んでしまった古家正亨、46歳。

『おじさん、ドル活はじめました!』は、人気K-POPボーイズグループ“APOLLO”にハマった46歳のおじさんが、タワーレコードのK-POP売り場で出会った、娘世代の姉御肌ギャルと共に、同じK-POPスターの追っかけを通じて、共に大切なものを見つけていくコメディであり成長物語。

K-POP好きであれば共感度1000パーセント(帯より抜粋)な場面や出来事が凝縮された、そのストーリー展開はK-POPファンでなければ決して書けないものばかり。一体どんな人が、どんなきっかけでこの作品を手掛けたのか。ダメ元で出版社に問い合わせたところ、原作者であるシバタヒカリ先生に直接お会いして、インタビューさせていただくことに。多くのK-POPファンに読んでいただきたいと思い、今回Kstyleの連載第3弾として、先生との対談を掲載させていただくことになりました。


古家と同い年!46歳のおじさんがK-POPに嵌る

古家:今回、お会いできて光栄です。久々に漫画を読みましたが、とにかく一気に読んでしまいました。K-POP好きであれば共感できる場面のオンパレードで、何度も笑ってしまいましたが、単なるコメディで終わらせていないところに好感を持ちました。ただ、どう考えてもK-POPファンでなければ書けない漫画ですよね? どういった経緯でこの作品を書くことになったんですか?

シバタ:担当編集の方から、私自身が楽しんで書けるテーマで次回作を描いてみませんかと言われたので、打ち合わせの際「BTSのことしか、考えられないんですよね、最近……」って正直に話してみたら、「どうしてその魅力に嵌ってしまったのかっていう、その過程について描いてみると面白いのでは?」ということになって……

古家:K-POPを題材にした漫画って、これまではどちらかと言えばK-POPあるある的な内容のものが多いですけど、この作品が凄いのが、主人公が僕と同い年(笑)の46歳のおじさんが、K-POPの、しかもボーイズグループに嵌るという……まずその設定が新鮮でした。そしてそのおじさんが、あるきっかけから、まるで娘のような年齢のKポおたくと知り合い、同じ「推し」を介して心を通わせ、不思議な友情を育んでいくというストーリーですよね。でもこの物語って、「K-POP最高!」とか「K-POP万歳」という感じではなく、夢中になれるもの、それがこの漫画においてK-POPなわけですが、それを見つけることで、生きる糧を得るというところが、素敵というか、誰もが共感できると思うんです。そして、僕はどちらかと言えば、K-POP裏方目線でこの漫画を読んでみたんですが、すごくファンの皆さんの心理が理解できますし、イベント会場の描写が凄くリアルで「あ~、このステージのこの辺に、僕が立っているんだろうな」っていう想像まで出来るというか……。

シバタ:(笑)

古家:でも、同時に同じ年の男性が主人公であるが故に、1人のK-POPファンとして、彼の気持ちもすごく理解できるんですよね。ただ、あえてガールズグループではなく、ボーイズグループに嵌ってしまうというストーリーにしたのには、それなりに理由があるのかなぁと思ったんですが。

シバタ:私自身がBTSファンということもあって、まずボーイズグループを扱うストーリーにしたいという気持ちがあったんです。でも漫画として、それをストーリーにしていく際に、どうしても何かフックが欲しかったんですね。それで、同じ年の男性を目の前にしてお話するのも複雑ですが、ちょっと突拍子もないような設定にしたかったんです。なので、主人公をおじさんにするということに関して、当初は深い意味はなかったんですが、裕美智(ひろみち)さんという主人公が誕生してから、彼を介してK-POPファンである自分でも、今まで見えなかったものが見えるようになっていった感じがするんです。

古家:なるほど。でも、これは個人的な感想なんですけど、読み進めていくと、実は主人公は、このおじさまではないのかなって、思ってきたんです。どちらかというと、彼のK-POPの師匠になるマミコの成長物語なのかなぁと。

シバタ:なるほど。そういう観方も確かにできますね。
 

BTSに夢中「K-POPオタ活のリアルが満載」

古家:先生がK-POPを好きになったきっかけは、BTSだったんですか?

シバタ:実は、BIGBANGなんです。「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で「FANTASTIC BABY」をパフォーマンスしている姿を初めて見た時は「ずいぶん、格好つけているな、この人たち」って思ったんです。でも気づいたら、YouTubeで彼らの動画を何度も観ていたんですよね。その時「あれ、この気持ちは何?」って。これがすべての始まりでした。でも、韓流という括りで言えば、かつてフジテレビで「韓流α」っていう枠があったと思うんですが、ちょうどその時、私は大学生だったんです。そこでチャン・グンソクさんを知ってしまったんです。

古家:2011年! 『美男ですね』じゃないですか。

シバタ:そうなんです。その時代の、まさに韓流に嵌る女子大生の典型中の典型でした。

古家:BTSを知るきっかけは?

シバタ:(BIGBANGの)G-DRAGONさんが兵役で活動をお休みした際に、空虚な私の心を埋めようと、友人が教えてくれたのが、(BTSの)「DNA」だったんです。

古家:「DNA」からBTSに入る人も本当に多いですよね。

シバタ:そうなんです。でも、一気にこの曲で惹き込まれたんですよね。

古家:すごくよくわかります。ということは、そういったこれまでの、先生のK-POPオタ活も今回の漫画のストーリーに反映されているっていうことですよね。だって、ファンの行動や心理描写、その1つ1つが、あまりにリアル過ぎるんですよ。

シバタ:だいたい私のリアルなんですが、特に裕美智とマミコの心理描写は、ファンのスターへの想いをうまく表現できたんじゃないかなぁと思います。

古家:ハイタッチ会とかリリースイベントとか、実際に参加してみないと書けない描写ですよ。

シバタ:そうですね(笑)。でもイベントに行く楽しみと言えば、スターに会えることは勿論ですけど、それ以上にその会場に来ている他のファンの子たちの話を聞くことなんです。これまでスターが辿ってきた軌跡をファン同士で振り返りながら、涙を一筋流した後に、ハイタッチに向かうとか……そういった様子を、ちょっとお姉さん的年齢の私のようなファンが、客観的に見てほっこりするというか……。そんなやり取りが、今回の漫画のストーリーを固めていく要素になっていったと思います。
 

「年齢や性別を超えて、仲良くなれることを描きたかった」

2020年7月8日発売「おじさん、ドル活はじめました!」(祥伝社)
古家:漫画の中で「あ~、やっぱり」って思ったのが、K-POPを好きになって、韓国に興味をもって韓国に行き、現地で言葉がうまく話せなくって悔しくて、帰ってきてから日本で韓国語を習う……というこの流れも、読んでいて納得させられるというか、多いですよね、こういうK-POPファンの方。

シバタ:かく言う私も……という感じですが、あくまで漫画では1つの流れとして書きましたが、今では、いろんな形で韓国により深く入っていく人が多いと思います。K-POPから韓国コスメ通になったり、K-HIP HOPに思いっきり嵌ってしまった知り合いもいますし。

古家:カルチャーから韓国への理解を深めようとすることって、やっぱりきっかけがないとできないことだと思うので、すごく良いことだと思うんです。漫画の中で、裕美智には実は高校生の息子がいるんですけど、そんな息子に自分がK-POPアイドルに嵌っているということを、裕美智は秘密にしているんですよね。この描写が、すごく僕的にリアルだったんです。特に今、日韓関係が決して良いとは言えない状況の中で、男同士、しかも高校生であれば、そういった観点から息子の、韓国に嵌る父に対する想いって、ちょっと複雑なんですよ。でも、そんな父への理解が深まっていくストーリーに、先生の想いも込められているのかなぁと思いまして。

シバタ:私の周りでは、政治的な問題で韓国や韓流と距離を置く人はいないんですが、決して、全てを愛する、国ごと愛する必要はないと思うんです。私も韓国にも、日本にも、政治に対して言いたいことはありますし、自分なりの意見も持っています。だからと言って、自分が好きな、関心を持ったものに対して、それを否定する必要はないと思うんです。その想いをしっかり言葉にして、伝えていくことが大切ですし、理解につながっていくのではないでしょうか。

古家:裕美智の職場の女性社員たちが、彼がK-POPファンであることでコミュニケーションを積極的に取っていきますよね。この描写もリアルだなぁと思ったんです。

シバタ:同じものを推している人と話すのは楽しいですし、「同じものが好き」ということがキッカケで、主人公の2人だけに留まらず、年齢や性別を超えて、仲良くなれるんだということを描きたかったんです。裕美智が第1話で若い男性社員にドン引かれるシーンを描いたのですが、人が何かに夢中になっている、その楽しそうな姿って周りの人にもいい影響を与えるんじゃないかしら……という希望が描きたかったので、本編には入らなかったのですが、おまけ漫画にその気持ちを込めた4コマがあるので、巻末のおまけ漫画まで、余すところなく見てもらいたいですね。

古家:年齢も性別も関係なく、1つのことに夢中になれるって、客観的に見ていると、そういう人たちって、すごくキラキラと輝いて見えるんですよね。そして、その想いを共有できる喜びも大きいと思うんです。きっとこの作品がその橋渡しになってくれるような気がします。
 

「同じ好きという気持ちをもって、5万人も集まる光景に…」

シバタ先生が、サプライズでプレゼントしてくれた色紙です!とっても嬉しく、自宅の「ふるやのへや」の本棚に飾ってあります。先生ありがとうございました!
古家:先生が今回の作品を通じて、読者に一番伝えたかったことは何ですか?

シバタ:いろんなメッセージを込めたので、読者の皆さんがそれぞれ、自分自身に立場を置き換えて、それを感じ取ってほしいんですが、個人的に1つ大好きなところがあって、第3話で東京ドームに集まったファンがペンライトを灯す場面があるんですね。同じスターを「好き」という気持ちをもって5万人もの人が集まる光景、そしてステージに集中するその視線って、すごい熱量だと思うんです。そして、その環境に身をおける自分が本当に幸せに感じるんです。きっとその気持ちを共有できる方がたくさんいると思うので、分かち合えたら嬉しいですね。

古家:今、コロナ禍だからこそ、この空気感を味わえない悔しさがこみ上げてきますよね。ドームのような広い会場だと、ステージから遠く離れた場所だと、ステージの推しの姿が、本当に小さく見えますけど、同じ空気を吸えている感動って、会場に行ってみなければわからないと思うんです。でも、今それが出来ないからこそ、本当にあの会場の空気が恋しくなりますよね。オンラインでは、どうしても無理なんですよ。あの感動は、会場でしか味わえません。

古家:主人公2人のその後も気になりますが、続編もしくは韓流をテーマにした次の作品の計画はあるんですか?

シバタ:今考えている段階なんですけど、本の売れ行き次第かなぁ……。

古家:韓流ドラマに嵌った奥様が、旦那をその沼に引きずり込んでいくストーリーなんてどうですか?

シバタ:普段の生活に、韓流ドラマに出てくる文化・習慣が散りばめられた感じって、面白いかもしれませんね。

古家:つい「アイゴ~」って言ってしまうとか……。


シバタヒカリ
2016年、女性漫画誌「FEEL YOUNG」(祥伝社)にてデビュー。劇団雌猫『だから私はメイクする』(柏書房)のコミカライズ版を担当し話題になる。その他の著作に『ナツメくんなんか好きじゃない』(リイド社)など。

Twitter:@sunny_615

古家正亨(ふるやまさゆき)

ラジオDJ・テレビVJ・MC
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了
2000年から韓国音楽を中心に、韓国の大衆文化をあらゆるメディアを通じて紹介。昨年までは年平均200回以上の韓流、K-POP関連のイベント等のMCとしても活躍。

現在もNHK R1「古家正亨のPOP☆A」(水曜21:05~)、NORTH WAVE「Colors Of Korea」(土曜11:00~)、CROSSFM「深発見!KOREA」(土曜18:30~)、Mnet「MタメBANG!~ただいま打ち合わせ中」(毎月第1、3、5木曜23:30~他)を通じて日本から韓流、K–POP関連の情報を伝えている。

最近では、YouTubeチャンネル「ふるやのへや」を立ち上げ、妻でアーティストのMina Furuya(ホミン)と共に料理やカルチャーなどの情報を発信中。

Twitter:@furuyamasayuki0

記者 : Kstyle編集部