パク・ボゴムの“人生を変える言葉”が溢れる ― 「ボーイフレンド」鑑賞コラム
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が、王道の展開を踏みながら、本作は既存のそれらとはちょっと趣を異にする。第一に、男女の逆転だ。誰かが誰かに出会い、閉ざした心を解きほぐされ変わっていく。その過程のあれこれにときめくのがロマンスの醍醐味で、変わっていく主人公は男性が定石だ。が、このドラマでは誰かを“変えていくほう”が男性主人公。傷ついた男が変わっていくから萌えるのに! と思うなかれ。この男(名はキム・ジニョク。演じるのは言うまでもなくパク・ボゴム)、氷のヒロインの窮地をさりげなく助け、知らぬ間に笑わせ、一瞬にして人の心を溶かす様があまりにも自然で、こちらまでその魔法にかかってしまう。その魔法とは何か。それは、文学青年ジニョクが物語の要所要所で口にする“道標”の言葉。題して、“人の心はこんな言葉に動く!”
運命の出会い…すべてはここから始まる!
靴ずれを起こしたヒロイン、スヒョン(ソン・ヘギョ)を案じ、「裸足で歩けば?」と促すジニョク。周りの目を気にして「できない」と拒む彼女に、自ら裸足になってジニョクが口にしたセリフがこれだ。いつもなら我慢してしまうだろうスヒョンだが、ジニョクと一緒なら「できない」と思っていた靴を脱ぐという選択もできて、それにより自分自身が楽になっていく。彼女を変えた運命の言葉で、今後の2人の関係を示唆するこのセリフに(スウィートな笑顔付き!)、これはオチるわ……と思ってしまった次第。事実、この言葉を機に、スヒョンは重荷だった“家柄”を脱ぎ捨て、自分の意思で生き始めるのだ。
惹かれる心…恋とはこういうもの!
スキャンダルを追求され、窮地に陥るスヒョンを助け出すジニョク。ホテルの代表として独りで戦い続ける彼女を目にし、いてもたってもいられなくなった彼は彼女にこう告げる。ジニョクのスヒョンに向かって走り出した心がこの言葉に詰まっていて、ドキドキ。さらに、本で読んだとして、こんなセリフを吐く。
「異性への好感は好きだという確信と疑心の間の闘いだと。確信と疑心が入り混じっていて、疑心が薄まり確信だけが残ると、その時、恋が始まる。この感情が恋愛感情かどうかは確信と疑心の闘いに任せてみませんか」
ジニョクがスヒョンの住む世界に飛び込もうとする一方、スヒョンは戸惑い、線を引く。揺れる彼女をまるごと理解し、心に任せてみようと促すジニョクのこの言葉もまた魔法だ。無理に心をこじ開けるより、揺れるままを見守ることで、彼女の気持ちは着実に確信へと移っていくのだから。
ライバルを前に…敵の存在が愛を強くする!
「スヒョンは僕が一目惚れして今も愛してる僕の女だ」と言い放ち(くうっ!)、ジニョクを牽制する元ダンナ、ウソク(演じるのは、最近注目の二番手名優チャン・スンジョ)。こういうライバルが出てくるから、愛は燃えさかる! 財閥子息で仕事もできるウソクに「君は(スヒョンの相手として)力不足だ」と言われたジニョクが、毅然と返した言葉がこれである。――愛は身分や年齢が釣り合うか否かが決め手ではなく、一瞬で惹かれるもの――これぞ愛の真理! スヒョンとジニョクの愛の前に立ちはだかるのは、年の差&身分差の二重試練。これをジニョクは痛快にぶち破るのだ。
試練を前に…人はこうして乗り越える!
「君は別れていい。僕は愛し続ける。また賭けよう。君の別れと僕の愛。どっちが勝つか」
ラブストーリーでは必ず通る道、別れ。が、このドラマでも当然訪れるわけだが、そのつらい試練の前に、ジニョクはこう言う。詳しい状況はネタバレになるので、本編を観ていただくとして。どんなときも彼女を縛ることなく、彼女の選択を尊重したうえで、自分自身の意思を貫くジニョク。さらに、「賭け」という「強引」をオブラートに包んだような心憎い方法で、彼女をさらりとリードしていくなんて! この言葉が再び、スヒョンを動かしていくのだ。
番外編…光る言葉のセンス!
これは、心にズキュンと来た個人的お気に入りの場面なのだが、ある難しい選択で自分を選んでくれたスヒョンを前に、ジニョクが驚きのあまり口にした言葉だ。「出口がない」という何かに迷い込んだ状況は、まさに恋。このセリフだけで(いや表情も!)、彼女にオチていくジニョクのリアルな恋心が伝わり、思わず興奮(ここのボゴム、最高です)。
とまぁ、あげればキリがなく。王道ラブストーリーがたどる道を丁寧に描きながら、その道の岐路、要所要所でジニョクが発する魔法の言葉たちがあまりにもいい。“なるほど、人はこんな言葉で背中を押されるのか”、“なるほど、人はこんな言葉で変わるのか”“なるほど、人はこうすれば乗り越えられるのか”。ただ愛するだけ、ただ迷うだけ、ただ耐えるだけでなく、ジニョクが見出し選んだ道に、都度都度はっとさせられ、自分自身の指針さえ見えてきたりする(個人的にも、今度つらいことがあったら、この言葉を使おう! と思った箇所がある)。それらの言葉には、心洗われるほどの崇高さと温かさ、切ないまでの真っ直ぐさ、ドキドキするほどの力強さがあり、「人を愛する心」の尊さにひれ伏したくなるほどだ。それが、普段のパク・ボゴム自身にも重なり、さらに「純度」と「尊さ」が増すのかもしれない。
「ボーイフレンド」は王道ラブストーリーだ。そのうえで、“人生を変える言葉”に溢れた美しく尊いドラマでもあるようだ。
高橋尚子 「韓国TVドラマガイド」編集・ライター
「ボーイフレンド」リリース情報
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記者 : Kstyle編集部