チュ・サンウクが見せる大人のロマンス!“怒り”の感情に支配される運命の愛の物語「偽りのフィアンセ~運命と怒り」鑑賞コラム

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電光石火のごとく運命的に出会った男と女。それだけ聞けば、まぁよくあるラブストーリーだが、なにせ副題が「運命と怒り」である。運命、と、怒りって並べて語る? 恐くない?……と、一瞬ひるんでしまうわけだが。実は、“怒り”の感情とは、知れば知るほど複雑怪奇(そして振り回されがち)、運命をも動かし得るもの(しかも劇的に)。本作の主人公たちもしかりで、そこから目が離せないのだ。

さて。物語は、偽ブランド靴を作って生計を立てる貧しきヒロイン、ヘラ(演じるのは、スッピンでも美しいイ・ミンジョン)と、製靴会社社長インジュン(大人のロマンス俳優チュ・サンウク)の2度にわたる偶然の出会いから始まる。窮地を救ってくれたヘラが妙に気になるインジュン、彼に手を差し伸べられ叶わぬ夢を見るヘラ。が、どう考えても住む世界が違う。加えて、インジュンには政略結婚の相手スヒョンがいる(演じるイ・スヒョンの小憎らしさよ!)。さらに、スヒョンの元恋人テオ(イ・ギウが穏やかに冷酷ぶりを発揮)がヘラに接近、ある取引を持ちかける……。

とまぁ、冒頭から激しくなりそうな雰囲気ぷんぷん。どん底の生活から抜け出したいヒロインと、彼女の深みにハマっていく男性主人公、彼らの関係を揺るがす男女2人という構図に、思わず2003年の大ヒット作「バリでの出来事」を思い浮かべてしまう(もちろん別ものだが)。


パワーワードは「運命」

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そんななか、第1のポイントが訪れる。ヘラが作った靴を通して彼女にビビビッと来たインジュンは、こう言うのだ。

「(君との出会いは)運命とも言える。キスしたい」

序盤から「運命」というパワーワードを口にするインジュンにドキドキ(これをさらっと言えてしまうチュ・サンウク、最高です)。が、ときめきつつも、ヘラが選んだ行動は、インジュンを「偽る」こと。思い通りにいかない世の中への“怒り”、自分を見下すセレブ女スヒョンへの“怒り”から、インジュンに惹かれる自分の心も偽り、彼を落とし、人生を変えることに走るのだ。

“怒り”で自分を偽るのは、ヘラのみならず。彼女に騙されていたことを知ったインジュンもまた、“怒り”の感情に支配される。すがるヘラの手を振り払い、彼女の前でスヒョンとの結婚宣言をしてしまうのだ。つまり、“怒り”による当てつけ。恋愛あるあるの行動。想いを寄せる相手に騙されたことを認めたくない気持ちが“怒り”となり、「君に騙されたわけじゃない。そもそも君に関心なんてない!」なんてフリをして、本心とは裏腹な行動に出てしまうわけ。なんて愚かな、でも、やりがちでわかりすぎる行動心理!

では、“怒り”に愛が対抗してきた時、運命はどちらに傾くのか?


“愛”という感情は、運命など相手にしない!?

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その回答は、中盤のシーンにある。

ある人物の差し金により男たちに追われたヘラが、怖さのあまり思わず助けを求めた相手は、なんとインジュン。彼女の電話を受けたインジュンは、スヒョンとの両家の顔合わせの席にもかかわらず、一瞬も迷うことなく、ヘラのもとに駆けつけるのだ(待ってました! の理想の展開)。

騙したにもかかわらず気遣ってくれるインジュンに、おそるおそるヘラは訊ねる。「(自社の)社員だから管理を?」「いや、それ以上だから」と返すインジュンの回答も百点満点。彼の表情にもはや“怒り”はなく、同様に、「怖かったんです……」と素直に話すヘラの表情からも、怒りの“険”は消えている(イ・ミンジョンの“素の美しさ”たるや!)。愛により怒りの火が消えたとき、人は素直になれるのだ。

怒りを脱したインジュンはヘラに告げる。

「運命じゃなくても、だまされていたとしても、片思いでもかまわない。君は私が必要で、私は君が好きだ」

再び出た「運命」というパワーワード。しかも、序盤の告白とは真逆の意味なのに、想いは格段にパワーアップ。“怒り”は運命をねじ曲がらせるが、“愛”という感情は、運命など相手にしない、ただ心に生まれ育つものなのだ。

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では、このまま一途な愛で突っ走るかと思いきや、そうは問屋が卸さないところが人の心の難しさで面白さ。些細なボタンの掛け違いから、ヘラは心惹かれたはずのインジュンに “怒り”の矛先を向け、彼を偽り、自身の運命をも狂わせていく。そして、ヘラの偽りを知った時、インジュンは……。と、誤解の連鎖、“怒り”の誤作動で、2人の愛は揺れる揺れる!

ちなみに、心理学的にいえば、怒りとは、悲しみや悔しさ、寂しさという本当の気持ちにフタをし、自分が傷つかないように、自分を守るために起こる感情らしい。自分だけが大事なら、運命は怒りに動かされる。一方で、愛とは自分以外の他人を守りたいと思う感情だ。

ということを踏まえて観ていくと、このドラマの主人公たちがたどり着く先に「ほほぉ!」となるはず。果たして、運命を決定づけるのは、怒りか? 愛か?

最後に、本作を観たあとの個人的感想は、「怒りで道を誤っても、愛で取り戻したい!」である。

高橋尚子(エンタメライター&「韓国TVドラマガイド」責任編集者)

「偽りのフィアンセ~運命と怒り~」リリース情報

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・レンタルDVD Vol.16~20……2020年2月4日(火)レンタル開始

各¥19,000+税 発売・販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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トレーラー:https://youtu.be/eygMAF4oB94

※U-NEXTにて独占先行配信中

■関連サイト
公式サイト:http://kandera.jp/sp/fiancee/

記者 : Kstyle編集部