【REPORT】ソン・ガンホ&ポン・ジュノ監督、映画「パラサイト 半地下の家族」記者会見に登場…日本語披露も

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ポン・ジュノ監督の最新作「パラサイト 半地下の家族」の公開に先駆け、ポン・ジュノと主演のソン・ガンホが来日。記者会見が行われた。ポン・ジュノ監督とソン・ガンホのタッグは今回が4度目。一緒の来日は「グエムル -漢江の怪物-」以来13年ぶりということで、笑いのたえない和気あいあいとした会見となった。

【PHOTO】ソン・ガンホ&ポン・ジュノ監督、映画「パラサイト 半地下の家族」記者会見に登場…久々の来日に緊張?“ドキドキしている”

――まずはご挨拶をお願いします。

ポン・ジュノ:こんにちは。監督のポン・ジュノです。お目にかかれて嬉しいです。本日は起こしいただいてありがとうございます。多くの国ですでに公開されていますが、ついに日本で皆さんと「パラサイト」についてお話しできることになって嬉しく思います。

ソン・ガンホ:お会いできて嬉しいです。ソン・ガンホです。3年前にも日本でご挨拶しました。今回、特にポン・ジュノ監督と「パラサイト」で来日してご挨拶できることを嬉しく思っています。

――4度目のタッグを組んだお2人が久しぶりに一緒に来日されたお気持ちは?

ポン・ジュノ:ソン・ガンホ先輩と初めて東京に来たのは2003年です。東京国際映画祭で「殺人の追憶」が上映されました。その次に来たのが「グエムル」で2006年でした。今回ガンホ先輩と13年ぶりにご一緒できて非常に意義深い時間になったなと思います。

ソン・ガンホ:ポン・ジュノ監督とはこの「パラサイト」まで含めた4作品でご一緒して、皆さんにご挨拶しています。他の監督との作品でもご挨拶したことはたくさんあるのですが、皆さんはポン・ジュノ監督の作品が特にお好きなようで(笑)。ポン・ジュノ監督との作品でないと、なかなか愛されないという現状がありますが、とにかく、ついに今回来日できて、愛される準備もできました(笑)。

――さまざまな賞を受賞して世界中が「パラサイト」に熱狂している状況をどう受け止めていますか?

ポン・ジュノ:全く予想していませんでした。今回も私はガンホ先輩や素敵な俳優の皆さんと一緒にこれまでどおり淡々と映画を撮ったつもりでした。しかし撮り終わったあと予期せぬ出来事が巻き起こりました。アメリカや他の国でもいろんな状況が起きていますが、私としては“楽しい騒動”というふうに受け止めていますね。

「日本でもそんな騒動が起きてくれたら嬉しいな」という欲も今は持っています。今回はガンホ先輩と来日しましたが、「パラサイト」では全てのキャストが見事なアンサンブルを見せています。ヒットの理由は俳優の魅力によるところが大きいのではないかと思うんですね。俳優が表現する人間の感情というものは、万国共通の言語だと思います。それがうまく表現されたことによって、世界で多発的にこのように良い反応が起きているのだと思います。

ソン・ガンホ:この映画の物語は、特定の国に限られたものではなく、日本をはじめ、アメリカ、西欧の国、私たちが生きている地球上のすべての人の物語だと思っています。それを監督がとても温かい視点で描いてくださったので、多くの共感を得られたのだと思います。

監督は「俳優の手柄」と言ってくださってますが、これはポン・ジュノ監督の約20年にわたる長い間の努力、監督だけが持つ作家としての野心が実を結んだのだと思います。そう考えると、これはひとえに監督が一人で考えたものだと思います。

――物語の着想について教えてください。

ポン・ジュノ:この映画は大学生の息子が裕福な家に家庭教師に行くところからスタートしますよね。日本でも大学生が家庭教師をすることがよくあると思います。韓国も同じで、僕も本当に裕福な家の家庭教師として、中学生の男の子を教えたことがあるんです。そのときに意図せず裕福な家の中を隅々まで見るチャンスがありました。

他人の私生活を覗き見るという体験をしたわけですが、そのアルバイトを紹介してくれたのは当時の私の彼女で、現在の妻なんです。なんとなく映画と似通っているところがある気がします。幸いにも2ヶ月でクビになったので、この映画の後半のようなおぞましい展開にはならなかったのですが(笑)。シナリオを書いているときには、当時の記憶が少しずつ蘇っていました。

――ソン・ガンホさんが本作の構想を聞いたのはいつ頃でしたか?

ソン・ガンホ:約4年前だったと思います。ポン・ジュノ監督は「殺人の追憶」のときから、シナリオを書き終わってから渡すのではなく、構想を練っている段階からひとつひとつ小出しにして巧妙なやり方でお話ししてくださるんですね。

初めて「パラサイト」の話を聞いたときは、貧しい家族と裕福な家族が出てくる話だというので、私は当然、裕福な家族を演じるんだろうな、と思いました。私はそこそこの年齢ですし、歳を重ねる間に品位も高まりましたし、当然パク社長の役だと思ったんですが、まさか半地下に連れて行かれるとは想像もしていませんでした(笑)。

ポン・ジュノ:ほんとすいません(日本語で)。

ソン・ガンホ:なので今後は、大雨が降るとか階段が出てくる話には出演したくないと思っています(笑)。

――ポン・ジュノ監督はこれまでも格差や貧困についての映画を撮ってこられていますが、今回の「パラサイト」はなぜここまで世界に受け入れられたのだと思いますか?

ポン・ジュノ:是枝裕和監督の「万引き家族」や、ジョーダン・ピール監督の「アス」など、テーマ的に共通点のある作品が多く撮られているように思います。多くの国でよく聞かれた反応が「この映画では富める者と貧しい者の善悪の区別がない」「悪党とヒーローに分かれていない」というものでした。

「明確な悪党や明確な善人が出てこないからこそ、ストーリー展開を予測するのが難しかった」という感想も聞きました。本作には間違いなく、悪魔や悪党が登場しないのにもかかわらず、終盤になるとおぞましい事件、悲劇が起こる。そこがまさに、この映画が伝えようとしていることであり、投げかけている質問と通じるところなんです。それがこの映画が共感を得ている理由なのだと思います。

ソン・ガンホ:貧しい人と裕福な人の葛藤を描くだけではない映画です。表面的にはそう見えるかもしれないですが、結局のところ監督が語ろうとしていたのは「私たちがどう生きるべきか?」だったと思います。韓国、アメリカ、ヨーロッパ、今の時代を生きている全ての人に、同じように考えさせてくれる。そういうところが多くの人の共感を呼んだのだと思います。

――最初からソン・ガンホさんはじめ特定のキャストを想定した上で脚本を書かれましたか?

ポン・ジュノ:「グエムル」にも4人の家族が登場しますが、シナリオを書く段階から4人のことが頭の中にありました。ソン・ガンホさんをはじめ4人の俳優さんには、事前にお話をしました。「母なる証明」でも、キム・ヘジャさんを念頭に置いてシナリオを書きました。

「パラサイト」の場合はソン・ガンホさん、その息子役で、「オクジャ/okja」にも小さな役で出ていただいたチェ・ウシクさんには、事前に伝えてからシナリオを書き始めました。俳優さんの姿や表情や話し方がわかった状態でシナリオを書くと、人物を描写する上で役立つことがあります。

最初にソン・ガンホ先輩に話をしたときは、複雑な話はほとんどしませんでした。「裕福な家族と貧しい家族が出てくる、ちょっとおかしな映画ですよ」とだけ言いました。またチェ・ウシクさんには「体が随分細くて痩せているけど、今後太る計画はないですよね? この体型を維持して欲しいです」ということだけ簡単に伝えました。

――ソン・ガンホさんは出演を依頼されたとき「ポン・ジュノ作品ならば絶対に出る」という感じですか?

ソン・ガンホ:ポン・ジュノ監督とかれこれ20年くらい長い間一緒に作品を撮っています。監督のファンとして、同志として、同僚として。初めて監督の作品に出たのは「殺人の追憶」ですが、私はデビュー作「ほえる犬は噛まない」を見たときに「この監督はとても非凡で、独特で、作家として素晴らしい芸術性を持っている芸術家だ」と感じました。

以来20年間、いつでも期待を寄せています。「新しいポン・ジュノ監督の世界を見たい」「深まっていく作家としての野心を見たい」と、俳優として心待ちにしてきました。でも今は違います。雨が降ったり半地下が出てきたら、考え方も変わります(笑)。

ポン・ジュノ:来年シナリオをひとつ渡そうと思っていたんですが、タイトルが「梅雨時の男」なんです(苦笑)。

ソン・ガンホ:ありがとうございます(日本語で)(笑)。実際にシナリオを受け取ったら考えが変わるかも(笑)。

――お互いの“すごいところ”を教えてください。

ソン・ガンホ:韓国で初めて「パラサイト」が公開された記者会見で私がお話したのは、「これはポン・ジュノ監督の進化の形だ」ということでした。私は監督の作品をデビュー作から観てきました。私が出演した「殺人の追憶」も「グエムル」も。出演はしていない「母なる証明」も「オクジャ」も。ポン・ジュノ監督は20年間、ずっと監督として、作家として、自分が生きている社会を鋭い視点で見つめています。

ときにはその視点が温かかったり、冷淡だったりしましたが、いずれにしても「そういう状況を全て抱えて生きていかなければいけない」という叫びを感じていました。そして監督の世界がどんどん深まって、拡張してきたのを20年間見守ってきました。

「パラサイト」は芸術家ポン・ジュノにとっての「一つの到達点」であると感じています。監督の進化の終わりはどこなのか? 「パラサイト」の次に来るリアリズムの発展は、どんなものになるのか? それを考えると怖いようでもあり、でも心待ちにもしています。とにかくドキドキさせてくれる唯一の監督だと私は感じています。

ポン・ジュノ:演出家、監督という立場からいうと、私はソン・ガンホという俳優の演技を、この世界でもっとも早くモニターで目撃できる立場にいます。それはゾクゾクさせられる瞬間です。全く予想だにしていなかったディテールや、動物のような生々しい演技が目の前で繰り広げられます。撮影中はそれが毎日のように起こるのです。根本的に驚かされる、重要なことは、シナリオを書く段階ですでに感じられています。

「パラサイト」のクライマックスには、爆発的な議論を呼ぶであろう難しいシーンが出てきます。その部分のシナリオを書いているとき「観客を説得できるだろうか」「どう受け止められるだろうか」と悩んでキーボードの手が止まる瞬間もありました。でも、そのシーンを演じる俳優がソン・ガンホさんだということを考えたら、安心してまた書き始めることができたんです。

「どんなに難しくて議論になりうるシーンも、ソン・ガンホであれば観客を説得できるだろう」という信頼があったからこそ書き進められたんです。彼はシナリオを書いている段階から、私の恐れ、躊躇、気弱な部分を突破させてくれて、信頼を与えてくれる俳優なんです。そのことに気付いたときは驚きました。

――ソン・ガンホさんがこれまで監督とコンビを組んできて「これは大変だ」と感じたシーンは?

ソン・ガンホ:監督は実際に俳優の前で「こう演技をしてください」と例を見せてくれる唯一の監督なので、とてもやりやすいです。監督が演じたのと同じようにやればいいので(笑)。

ポン・ジュノ:うそだ(日本語で)(笑)。

ソン・ガンホ:それくらいユーモアにあふれている人で、他の監督とは雰囲気が違うと思います。きっと多くの俳優が、ポン・ジュノ監督と一緒に映画を撮りたいと思っているでしょう。その理由はなんだろう? と考えると、現場での監督の撮影に臨む姿勢を見ていて、感動を覚えるからではないかと思います。もちろん他にも立派な監督はいますが、その点において、ポン・ジュノ監督は特別な存在だと知られています。

――ポン・ジュノ監督が他の監督と違うところを教えてください。

ソン・ガンホ:監督は俳優に「できないであろうと思われる注文」をしません。ただ、なぜか「太ってほしい」と望んでいるようなんですね(笑)。普通の監督は「痩せてほしい」とか「骨格がシャープにかっこよく見えるようにしてほしい」というんですが。ご本人がどんどん太っていっているからか(笑)。その点が理解できないところです(笑)。監督の一番いいところは「痩せろ」と言わない唯一の監督であるところです。

ポン・ジュノ:「殺人の追憶」のとき、ぽっちゃりした田舎の刑事の感じを出すために、急に太ってもらったので苦労されたと思います(苦笑)。体重をいきなり増やすと関節を痛めたり、大変なことも多いですから。でも「パラサイト」のときはそんなことはなく、逆に奥さん役の方が体重を増やす必要があったので、横で苦労する姿を見ていたと思います。まあ、そういう状況が起こるたびに、私は家族から「俳優に注文する前に自分が痩せたらどうなんだ」と小言を言われています(苦笑)。

――最後に、映画を楽しみにされている方々にメッセージを。

ソン・ガンホ:ポン・ジュノ監督の「パラサイト」で、ついに日本の観客の皆さんにご挨拶できる日が迫っています。本当に期待していますし、楽しみですし、日本の観客の皆さんにどう感じていただけるか、ドキドキしています。万感胸に迫る思いです。楽しく盛り上がって、深くこの映画を楽しんで欲しいです。充分それができる作品だと思っています。

ポン・ジュノ:多くの国での公開を経て、ついに日本で公開されることになりました。とても興奮していますし、期待しています。「パラサイト」のタイトル通り「不滅の寄生虫」のように、観ていただいた皆さんの体、頭、そして胸に長くとどまり、永遠に寄生する、そんな映画になってくれたらいいなと思っています。

取材:望月美寿/撮影:前手秀紀

■映画情報
映画「パラサイト 半地下の家族」
2020年1月10日(金)より、全国ロードショー!
2019年12月27日(金)より、TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて先行公開

出演: ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ「殺人の追憶」「グエムル -漢江の怪物-」
撮影:ホン・ギョンピョ 音楽:チョン・ジェイル
提供:バップ、ビターズ・エンド、テレビ東京、巖本金属、クオラス、朝日新聞社、Filmarks
配給:ビターズ・エンド
(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED / 2019年 / 韓国 / 132分 / PG-12 / 2.35:1 / 英題:PARASITE / 原題:GISAENGCHUNG

<あらすじ>
全員失業中、“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行く。そして、兄に続き、妹ギジョンも豪邸 に足を踏み入れるが...。この相反する2つの家族の出会いは、次第に想像を遥かに超える物語へと加速していく――。

■関連リンク
公式サイト:http://www.parasite-mv.jp/

記者 : Kstyle編集部