「ユンヒへ」キム・ヒエ“同性愛を扱った作品…出演に悩みはなかった”

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写真=リトル・ビック・ピクチャーズ
最近、ソウル鍾路(チョンノ)区三清洞(サムチョンドン)のあるカフェで会ったキム・ヒエは、映画「ユンヒへ」に収めた彼女の本音を説明した。

「ユンヒへ」は、ユンヒ(キム・ヒエ)に届いた初恋のジュン(中村裕子)の手紙をこっそり読んだ娘のセボム(キム・ソヘ)が、初恋の人がいる場所への旅行を提案することで繰り広げられる物語だ。

キム・ヒエは娘と二人きりで平凡に暮らしているが、秘密の初恋を胸に秘めている母、ユンヒを演じ、昔の思い出を探しに行く。

彼女は「ユンヒへ」に収められた欲張りでない心がよかったと話した。

「台本をとても興味深く読みました。素朴に、欲張らずに書かれていたので斬新さが感じられました。上手くやらなければならないという強迫観念のため、面白さを追求していくと、刺激的に書いたりするところがありますが、台本を見た時、欲張らずに純粋な心が感じられました」

「ユンヒへ」は同性間の愛の話を描く。作品を選ぶことに対して悩みはなかったのかと聞くと、彼女は全くなかったと答えた。

「悩みは全くありませんでした。私が認めるも認めないもないじゃないですか。その方たちにはその方たちの人生があるのです。一人で暮らす人生もあるし、結婚して一人になる人生もあるし、共同体での人生もあるし、様々な人生の中の一つだと思います。今回の映画を通して私もたくさん学びました。試写会をやった時、どんな人でも大丈夫だと労わってくれる心が見えてよかったです」

キム・ヒエは落ち着いた演技のトーンを維持することが難しかったが、幸いうまく表現できたようだと笑った。

「落ち着いたトーンを維持することが難しかったです。言葉よりも隠された秘密めいた姿をずっと維持しなければならず、とても短い瞬間で見せる必要があって。それなりに感情を持ち続けていました。あまりにもプレッシャーを感じると、その瞬間に緊張してダメなんです。ですが、上手く表現できたようでよかったです」

彼女は娘役で共演したキム・ソヘの純粋さも褒めた。

「ソヘがとても上手で、可愛らしかったです。あの子も欲張らない子だと思います。考え事をたくさんしないで、ストレートに行くのがよかったですね。“演技には正解がないんだな”と改めて感じさせてくれたと思います」

キム・ヒエは息子が二人いる。彼女は娘がほしいと打ち明けた。

「娘が本当にほしいです。ですが、全部はくださらないから、うちの息子たちが健康であることに感謝しないと(笑)」

初恋を描く映画だけに、キム・ヒエの初恋を聞くと、彼女は思い出せないと笑いながら、映画「君の名前で僕を呼んで」の話をした。

「初恋は思い出せません。もし思い出しても思い出せないと言わないと(笑)。だから映画を通じて代理満足しました。似た素材の映画をたくさん見ました。映画『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメが彼氏と別れて、母親と泣く場面が感動的で本でまた見ました。すごくよかったです」

キム・ヒエは先立って釜山(プサン)国際映画祭の舞台挨拶で自身の活動が“成熟した”と表現した。しかし、今になってみるとそんな表現は慎重に使うべきだと思うと話した。

「そのような表現は少し慎重になります。今活動している先輩方が聞いたら笑うと思います。私と同年代の最高の男性俳優がそんなことを言ったら、シン・グ先生が“君たちはつぼみだ”と話したそうです。先生が見たらそうでしょう(笑)。2~30年後に絶頂を迎えるために夢があり、目標があるというのは幸せです」

彼女は年齢が中年になっても変わらずラブストーリーを演じていることについてプライドはないが、いつも最後だという心構えで取り組んでいると打ち明けた。

「ラブストーリーに対するプライドはありません。“今回で最後だ“と思ってやりましたが、うちのスタッフたちが“お姉さん、それ20年間言ってるよ“と言うんです。私はいつも最後だと思いますが、どうしてかこうして長くやりましたね(笑)。いつもおまけだと思います」

年を取って作品を選ぶ基準に変化はあるのだろうか。

「まだ運がよくて現役でやっているから感じていませんが、恐らく私にできることがますますなくなり、叔母みたいなサイドの役割になるでしょう。どんなことでも私が出て、働くということに力をもらっていると思います。年を取ることで私にできる役割があり、私によって作品が引き立つなら、いいことだと思います」

彼女は運がいいといったが、キム・ヒエが主演を務める理由があるはずだ。自分だけの強さを挙げてと言うと、台本を一生懸命見ることだと話した。

「プライドというか、迷惑をかけることが嫌で台本を一生懸命に見て、NGを出さないようにします。私、覚えるのが苦手で。他の人は急にもらった台本でもすぐに覚えるのに。私は前もってもらってやるのでたくさん見て、演技をより深く理解するしかありません」

また彼女は実践でより強いタイプだとし、自信を見せた。

「カメラの前に立つ瞬間まで、私がどうなるか分からない部分が多いです。映画『Herstory』の時も、慶尚道(キョンサンド)の方言が難しくて、リハーサルの時、私がおかしく見えたみたいです。最初のシーン、最初のカットで流暢に方言を使わなくてはならなくて緊張しましたが、心配したよりはワンカットで終えたというのです。その時、監督が私を褒めてくれた言葉を覚えていますが、私がリハーサルの時より、カメラの前で上手なんですって。だから私もカメラの前に立つとできそうな自信があります」

キム・ヒエは「ユンヒへ」を観客にどんな映画として感じてほしいだろうか。

「ご覧になる方も、作った人たちの真心を感じて、“私たちが決心した部分が間違っていなかったな”と感じてもらえたらどれだけ幸せだろうと思います。正解はないと思いますし、どんな人でも大丈夫です。必ずしもそのような愛(同性愛)そのものということではなく、どんな人間として生きてもその人はそのままで大丈夫だと勇気を与え、励ましてくれる映画であってほしいです」

記者 : ソン・ミンジュ