チャン・ギハと顔たち、12月12日に東京でラストライブ開催「バンドのお陰で、日本という国をたくさん知ることができて良かった」

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今年2018年いっぱいでバンドの“仕上げ”(解散)を発表した、チャン・ギハと顔たち。2008年に結成してから10年間、唯一無二の“大韓ロック”バンドとして、個性的な音楽やパフォーマンスを発表し続け、大きな注目を集めてきた。

日本ではサマーソニック2012への出演をはじめ、ZAZEN BOYS、トクマルシューゴ、ヒカシュー、怒髪天、キセル、在日ファンクなど、多くの日本バンドと積極的に対バンをおこない、来たる今週12日には海外で唯一、東京でのラストライブを開催。解散に至る経緯や、日本への思いを語ってくれた。

――まず、今年でバンドの“仕上げ”をすることになった経緯を教えてください。

チャン・ギハ(Vo):最新アルバムの「mono」を作る過程で、とても満足できる音楽ができ、これはチャン・ギハと顔たちが10年間追求してきた音楽の結晶体になるなと感じました。言い換えると、次のアルバムがもっと良くなるのは難しいだろうと。6人でできる最も良い音楽を実現できた今、カッコよく仕上げをして各自の道へ進み、また新しい音楽をしようということに皆が同意した結果、バンドを“仕上げる”ことになりました。

――日本でも、チャン・ギハと顔たちがいなくなってしまうことを残念に感じている人たちが多いです。韓国バンド界にとって画期的な存在でしたので、1つのカルチャーが消えるほどにも感じますが、メンバーの皆さんは“仕上げ”について、どんな気持ちなのでしょうか。

イルジュン(Dr):韓国を代表するバンドがなくなって残念です。

チャン・ギハ:残念に思ってくれるのも分かりますし、残念な思いをさせて申し訳なくも思いますが、実は残念に思う人が多いということが、ある意味では拍手する時に旅立つことのできるベストな時期だと思います。チャン・ギハと顔たちの活動は仕上げとなりますが、6人のメンバーはそれぞれ良い音楽とより新しい音楽を求めて旅立つので、楽しみにしてもらえればと思います。

ミンギ(Gt):今がバンドを仕上げるのに良い時期だと思いますが、残念ですね。日本でのライブはいつも楽しかったので、またこのメンバーで日本でライブができないことがとても残念だと思います。

ジョンミン(Ky):チャン・ギハと顔たちというバンドのお陰で、日本という国をたくさん知ることができて良かったです。他のメンバーたちの今後にも期待したいですね。

長谷川陽平(Gt/以下陽平):私はもう少し韓国にいます(一同笑い)。

ジュンヨプ(Ba):一つの文化が消えるほどと言うのは少しオーバーかも(笑)? 僕は長く続いたバンド一つが消えるということが、少し残念ですね。

――10月にリリースされた5thアルバム「mono」はステレオでは無くモノラル・ミックスで収録されている、今の時代にはとても珍しい作品です。最も気を使った点はどこですか?

陽平:実は私たちよりミキシングエンジニアのナ・ジャム・スさん(Sultan of The Discoのリーダー)が苦労したんじゃないかと思いますね……。それでも最後まで挑戦しようという気持ちで、結果的にはうまくいって嬉しかったです。

チャン・ギハ:モノラル・ミックスの難しい点は、楽器の位置を指定できないので、アレンジの段階でかなりスッキリしていなければうまくいきません。なのでアレンジ面が最も尽力した点で、一番やりたかったことでもあり、一番難しかったと思います。でもミックスを終えて曲を聴いた時、その努力が無駄ではなかったと感じました。実はアルバム発売直後に僕たちの音楽を車の中で楽しく聴いたんです、こんなことは初めてなんですが。サウンド的にやりたいことが出来たな! という思いです。



――アルバムのリード曲「それは君の考えでしょ」は、歌詞がとても個性的です。この曲で伝えたかったのは、どんなことですか?

チャン・ギハ:昨年から今年を過ごしながら感じていたのですが、僕らがデビューして社会生活を10年間過ごしてた中で色んな経験をし、様々な人に会って感じた結論は、「すべての人は、幸せの前でこれと言った良い案がないのと同じだ」。つまり“人生に正解がない”ということで、それぞれ自分だけの道を進めばそれが正解だという思いを抱きました。そう考えてみると「この道が自分の道だと思い込むのではなく、ただ道がそのままそこにあるから行くんだ」というある文章を思い出して、そこから思い浮かぶ歌詞を紡いだものです。一見すると他人の意見を無視するように聞こえるかもしれませんが、信じる思いを持ち自分の道を行こう、という感じに受け止めてもらえればと思います。

――ラストライブのタイトルに、1stアルバムのタイトル「何事もなく暮らす」と付けたのはなぜですか?

チャン・ギハ:「何事もなく暮らす」は、僕たちにとってとても特別な曲です。勿論これまで発表したすべての曲に愛着がありますが、この曲は<チャン・ギハ>と<顔たち>の態度を代弁する曲だと思ったのが一つの理由です。そしてチャン・ギハと顔たちの“仕上げ”は、他の仕上げや別れとは違い、悲しくて切なくて名残惜しいだけではなく、ごく自然な過程。じゃあねという言葉より「仕上げもやはり、何事もなく」という思いでタイトルをつけました。

――今週12(水)の日本公演は約2年ぶりとなります。色んな日本バンドとも対バンをしてきましたが、どんな思い出がありますか?

ジョンミン:僕は、在日ファンクのステージで、彼らの曲をコラボレーションしたことが記憶に残っています。

ジュンヨプ:トクマルシューゴさんとも、日韓を行き来しながら友情を築きましたね。

チャン・ギハ:トクマルシューゴさんは、最も深い友情を刻んだミュージシャンですね。バンド初期に対バンをして、年齢も同じぐらいでした。韓国と日本の両方でライブをして、フェスにも一緒に出たこともありましたね。音楽も楽しいし、素敵なメンバーの皆さんで、一緒にお酒もたくさん飲んで、たくさん遊びました。

ジュンヨプ:僕はZAZEN BOYSのライブを見て驚いた記憶があります。すごく息ピッタリで、驚きました。

陽平:私はヒカシューというバンドが記憶に残っていますが、ヒカシューのボーカルが、僕らの「胸ぐら一回つかませて」(1st収録)の曲を日本語で歌って、すごく面白かったですね。渋谷のクラブLUSHでやったけれど、狭い場所に人がたくさん集まりすぎて人が倒れそうなほどでした。

ジュンヨプ:そういえば、風神雷神もいたよね。

チャン・ギハ:福岡で、総合パフォーマンスチームの風神雷神と公演したことも思い出ですね。ヒカシューのときは、インタビューのため先に一人で日本へ行きました。その時のレーベル担当の方がヒカシューのライブを見せてくれて。すぐにファンになって、あのバンドとライブがしたいと思い、機会があって対バンすることになりました。そのとき「胸ぐら一回つかませて」という僕らの曲を、ヒカシューのボーカル巻上さんが一緒に歌ってくれて、僕は彼らの曲「人間の顔」という曲を日本語で全部覚えて歌ったんですよね。

陽平:ずっと前から歌っていたようでした。巻上さんもすごく愉快に歌ってくれて……ほんと笑いました。

――また今回、ソウル以外で唯一、東京だけでライブをしようと思った理由は?

チャン・ギハ:韓国以外でチャン・ギハと顔たちがもっとも沢山ライブをした場所が日本で、行く度に日本のファンの皆さんがいい思い出をたくさん作ってくれて、ありがたく感じていました。10年間のバンド活動を締めくくる時なので、日本のファンの皆さんへ直接お礼を伝えなければと思い、開催することになりました。

――日本のファンの皆さんに、メッセージを。

イルジュン:バンドの美しい“仕上げ”の場所に、皆さんが集ってもらえればと思います。

ジュンヨプ:韓国からの方も、日本にいらっしゃるファンの皆さんも、会場でお会いしましょう。

チャン・ギハ:日本語どころか英語の曲さえも無くて言語の壁があるにもかかわらず、行くたびに沢山集まって盛り上がってくれて、本当に良い思い出ばかりです。最後まで素敵な思い出を作ってくれると嬉しいし、これまでありがとうございました、という気持ちを先にお伝えしておきます。

ミンギ:この先、メンバーたちは独立してそれぞれの音楽をやっていくことになりますが、余裕があれば、メンバー個々の活動も見守ってくれたらうれしいですし、日本でライブをする(韓国)バンドたちの音楽もぜひ見守って下さい。これまで数ヶ月間、何かを整理すると言うよりは、新しいアルバムを出して曲を届けるという感じでしたが、このライブからは少し違うような気がします。

ジョンミン:別れの感じがしないよう、数年前に初めて会った時のように、さわやかなライブをします!

陽平:バンドの“仕上げ”活動の中に日本があるのも(日本人の)私にはありがたく、それを見せられることも嬉しいです。仕上げるその瞬間のためにも、これから私たちの行動のためにも、楽しいライブをお届けしますので、その様子を見てもらえるとうれしいです。

■公演情報
「チャン・ギハと顔たち ラストライブin東京【仕上げ:何事もなく暮らす】」
12/12(水)渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 18:00/START 19:00
¥5,500-(税込/All standing/1Drink別)

■関連サイト
イベントページ:https://www.creativeman.co.jp/event/chan_kao/

記者 : Kstyle編集部