6/25日本公開の映画「ひと夏のファンタジア」岩瀬亮が体現した“リアル”とは

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※この記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。
2015年6月11日に韓国で公開され、少ないスクリーン数にもかかわらず、3万6000人の観客を動員したインディーズ映画「ひと夏のファンタジア」(監督:チャン・ゴンジェ、制作:NPO法人なら国際映画祭実行委員会・MOCUSHURA) が6月25日に日本で公開される。

現在韓国・サンサンマダンシネマでは、日本公開を記念して「ひと夏のファンタジア」を再上映するほど高い支持を受け、今もなお根強い人気を誇っている作品だ。

奈良県五條市を舞台に、韓国からシナリオハンティングにやってきた映画監督のテフンと助手のミジョンが、街を訪ね歩く姿をモノクロで映し出す第一部。そして観光案内所で、偶然知り合った韓国人女性のへジョンと柿農家の青年友助が、街を歩きながら少しずつ心を近づけていく様子をカラーで追うのが第二部だ。

チャン・ゴンジェ監督自身が、シナリオハンティングをした経験が色濃く反映されているだけに、作品は五條という街がリアルに切り取られている。それと同時に、タイトルが示す通りのファンタスティックな風合いも備えているという、稀有な映画である。

主演の岩瀬亮は、第一部では五條市の観光課職員の武田友助を、第二部では五條市で柿農家を営む武田友助を演じている。その演技は、まさにこの映画の「リアル」を体現している。

―真夏の撮影は大変ではなかったですか?

岩瀬亮(以下、岩瀬):めちゃめちゃ大変でした。二部でTシャツがびっちょびちょになってますけど、あれ本当の汗ですからね。カラーになった時に、やっとそれが伝わりました。白黒だと涼しげに見えますね、すごく静かな感じというか。でも、本当にすっごく暑かったです。一部と二部の撮影の間に3日間休みがあったので、吉野川の堤防のところで、ほぼ全裸で日焼けをしたんですけど、死ぬかと思いました(笑)。

―撮影がどのように行われていたのかをお伺いします。二部はシナリオがなかったそうですが、一部はどうだったんですか?

岩瀬:僕はほぼセリフがありました。飲み屋で(キム・) セビョクさんとイム・ヒョングクさんが二人で話すところは、自由にやったみたいです。

―では設定もしっかり決まっていたんですね。

岩瀬:裏設定のようなことは、結構ちゃんと決まっていました。

―では二部は、どのように撮影されたのでしょうか。

岩瀬:撮影の前日にプロットを渡されて「明日はこういうシーンを撮ります」とか「こういう内容の会話がされます」という説明をされて、当日は現場に行って1回テストで実際やってみて、いいところは残して、悪いところは改善してみたいなことをやって撮影していきました。その場での話し合いが結構多かったですね。「日本の彼氏はどうですか」というバーのシーンでは、撮影の前に「このシーンをどうするか」ということをずっと話していて、事前のコミュニケーションはすごく多い現場だったなという気はします。

―「夢の奴隷」という言葉を入れてください、と言われていたと聞きました。

岩瀬:そうそう、すごく難しかった。「夢の奴隷」なんて表現、使わないですよね(笑)。どう入れようかと…。とにかく単語が決まっていたのは、すごく覚えてます。

―「友助はこういう人」というキャラクター設定は、二部にはなかったんですか?

岩瀬:なんとなくはありました。最初の案内所のシーンで、外国の女の子がいて、その人に声をかけるわけじゃないですか。ということは、少なくともそういう時に声をかけられるぐらいの人間(性格) であるという、そのくらいの設定はありました。だけど、事細かなものはなかったです。ただ、アウトサイドの設定は結構ありました。柿農家をやっていてとか。それならということで日焼けして、髪も切りました。

―私、最初見た時に「うわ、こういう人いる! 超恥ずかしい」って思ったんですよ。すごくリアルじゃないですか、本人目の前にして言うのもなんですけど。

岩瀬:あんな人間じゃないですよ、僕は(笑)。

―でも、ああいう人にしか見えないです。

岩瀬:ああ、ありがとうございます。二部の友助も、恥ずかしがりながら話している瞬間も絶対あったと思うので、それが伝わってるんだろうなと、僕は今、良い方に解釈しました。そんな危険人物じゃないんだよというのは、できるだけ出そうとしたんですけど。とにかく体目当て、外国人とそういうことしたい、という人ではないんだということは意識したというか、そうはなりたくないなと思ったので。見る人が見たらそう見えるかもしれないですけどね。ただ、日本人は、もしかしたら最後にキスしない方がもっと受け入れたかもしれないですね。

―でも逆の立場なら、シチュエーションが韓国で、女の子が日本人だったらキスぐらいしないとねって思うのかもしれないです。

岩瀬:でもあれ、そんな嫌な思い出にはならないと思うんですよ。あの後韓国に帰って、自分の仕事が待っていて、いろいろあるだろうけど「本当に最悪だったな」とは思わないんじゃないかな。なんかふと、思い出しちゃうんじゃないかという気がしますけどね。

―この作品の後、岩瀬さんは韓国映画「最悪の一日」に出演されました。韓国では夏公開で、主演はハン・イェリさんですが、このタイトルは彼女が最悪な女という意味ですか?

岩瀬:監督は「彼女の最悪の1日」という意味合いだって話してました。彼女自体が最悪というよりも。

―岩瀬さんはどんな役ですか?

岩瀬:日本人の設定で、売れない小説家です。1冊書いた本が韓国語訳されて韓国で発売された出版記念的なことで韓国に訪れるという役なんですけど…。どこまで話していいのかな(笑)。

―説明を読んだら難しい映画なのかと思ったんですが…。

全然難しくないですよ、ラブコメです。全州映画祭でお客さんがものすごく笑ってて、意外でした。脚本を読んだ時は、正直そんな笑えるような映画ではないと思ったから(笑)。それこそ、岩井俊二さんとかに影響を受けたような映画なのかなと思っていたので。

―クォン・ユルさんと共演されていますね。

岩瀬:クォン・ユルさんは少し日本語が話せるんですよね。ただ撮影は同じ日がなかったので、撮影中は1、2回しか会ってなくて。この間、全州でようやくお話しました。彼、すごくイケメンじゃないですか。だけど全然飾っていなくて、割とざっくばらんに個人的なことを話してくれるから、とても好青年という印象です。「なんかいいやつ」でした(笑)。劇中でもすごく格好良い役なんですけど、でもコメディとしてきちんと成立していて、情けない瞬間とかもちゃんと見せられていて。あの格好良さで、そういう演技もできるというのは、すごく素敵な俳優さんだなと思いました。

記者 : キム・ミリ