世論の批判を浴びかねない韓ドラ新潮流「風の便りに聞きましたけど!?」この斬新なドラマの行きつく先は…?― 鑑賞コラム Vol.1

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ここ数年、韓国ドラマの進化には驚くものがある。ラブやサクセスストーリーを排除したサラリーマンドラマ「ミセン-未生-」や、不倫を純愛として描いた「密会」など、少し前ならば扱われないテーマや、世論の批判を浴びかねない内容のドラマが制作され、人気を集めているのだ。そんな中で、もうひとつ、韓国ドラマの常識をくつがえす作品が登場。「風の便りに聞きましたけど!?」は、これまでにまったく出会ったことのない、極上のブラックユーモアがつまった新感覚の作品だ。


超セレブ一家 vs ビンボー女子高生一家!他人の家庭の常識=うちの非常識!?

代々法廷界の血筋である超セレブ一家の息子と、庶民の娘のできちゃった婚から始まる、格差ラブコメディー。ここだけを見たら珍しくもないが、本作が斬新なのは、対照的な両家の人々の本音が生々しく描かれていることだ。まずはセレブ一家のハン家を見てみると、自慢の息子インサン(イ・ジュン) は、臨月の恋人ボム(コ・アソン) を突然、家に連れてくるが、なんと産気づいたボムがその場で出産。この状況に、これまでの韓国ドラマの財閥一家ならば嵐のごとくわめきちらすだろうが、体面ばかりを気にする父のジョンホ(ユ・ジュンサン) と、母のヨニ(ユン・ホジョン) は、平静を保とうと必死。内心では、はらわたが煮えくりかえっていても、使用人の前ですら品格を守るべく見栄を張り、この状況を隠ぺいして世間に知られないようにできないものかとの策略を練ってみたり、慰謝料の心配などなど、あたまの中は打算でいっぱいだ。このように、プライドと体面を気にする名門一家の表と裏の顔を生々しく、かつ皮肉たっぷりに描いたシーンの数々には思わず、くすっとさせられる。

対して、庶民の代表として描かれるヒロイン・ボムの家族の本音も見え隠れする。ボムの家族はいたって常識的で、娘の幸せだけを願っているが、やはり内心ではセレブと結婚した恩恵を少しは受けてもいいのではないかという物欲と、見下されたくないというプライドのはざまで葛藤する様子が、なんとも人間味があってリアル。そして、なにもかもレベルが違う2つの家族が、お互いの日常生活を垣間見ることによって受けるカルチャーショックにも爆笑。誰もが感じたことがある他人の家庭の常識=うちの非常識というおかしな違和感を笑いと風刺で見せてくれる。


共感を呼ぶヒロイン・ボム!先の読めない嫁姑バトルの行く先は?

さらに、興味深いのはコ・アソン扮するヒロイン・ボムのキャラクターだ。明るく優しく誠実という古来のヒロインの条件はもちろんのこと、聡明でそつがないボムは、次第にジョンホとヨニに認められるばかりか、逆に手玉にとっていく。それが痛快でありながらも、一方では庶民派のボムもハン家に染まってしまうのかと心配になるのだが、物語は中盤以降、意外な展開に……。嫁に実権を握られておもしろくない姑ヨニとの神経バトルもありで、女性視聴者も大いに共感するとともに、先の読めない展開に、いったいこの斬新なドラマの行きつく先はどこにあるのだろうとひきこまれ、最後まで目が離せなくなる。

また、ジョンホの法律事務所の部下や、ハン家の使用人が大勢登場し、ジョンホ夫妻の体面と俗物根性に振り回されては、状況次第であっちの味方についたり、こっちの味方についたりするのも、社会生活における人間模様を浮き彫りにしていておもしろい。このようにカメレオンのように変わる人間の本音をブラックユーモア満載でリアルに描いたことが好評の要因なのだが、そんな中で、唯一、周囲に流されずに和ませてくれるのがイ・ジュン扮する純粋な新米夫インサンだ。ボムを一途に愛し、賢いボムを誇りに思い、ボムを守るために背いたことのない両親に反論し、ボムの両親を敬う、優しくも一本筋が通ったインサンに胸キュン必至。“インボム・カップル”と呼ばれて視聴者から大いに愛されたイ・ジュンとコ・アソンの初々しくキュートなラブシーンも必見だ。

韓国エンターテインメントライター:安部裕子

「風の便りに聞きましたけど!?」DVD情報
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レンタルDVD Vol.15~22

価格:各¥19,000+税
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記者 : Kstyle編集部