チョン・ジェヨン「同じ年頃の人たちを見ているともどかしい…それでもビビらずに行こう!」

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演技の幅を広げているアドリブの達人、チョン・ジェヨン「僕は分別のない俳優」

かつてチョン・ジェヨンは韓国映画界においてタフな男の象徴と見なされ、ヤクザ役ばかり任されていた。デビューしたての頃は脇役でヤクザやヒモ男、タクシー強盗などを演じ、ストーリーの一部を満たしてきた。もちろん彼の熱烈なファンなら「シルミド/SILMIDO」(2003)で演じた情け深い軍人ハン・サンピルや、恋愛映画「小さな恋のステップ」(2004)で女性の心を打ったトン・チソン、あるいは「黒く濁る村」(2010)の狂気に満ちた村長があるじゃないかと異議を唱えるかもしれない。

どちらも正しい。その時もチョン・ジェヨンで、今もチョン・ジェヨンだ。変わったことがあるとすれば、デビュー19年目を迎えた彼がいつの間にか演技の幅を広げ、観客に様々な姿を見せていることだ。従来の強いキャラクターをそのまま維持しながらも、気楽な日常生活の演技までこなす。彼のドラマデビュー作「ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~」が前者で、最近公開されたホン・サンス監督の「Right Now, Wrong Then」と近い将来公開される「恋するインターン~現場からは以上です!~」が後者だ。

黙々と自分だけの領域を広げている俳優チョン・ジェヨンにソウル三清洞(サムチョンドン)某所のカフェで会った。


「パク・ボヨンには僕が既成世代に見えるだろう」

小説を原作にした「恋するインターン~現場からは以上です!~」で彼はあるスポーツ紙の芸能部部長ハ・ジェグァン役を演じた。見習い記者のト・ラヒ(パク・ボヨン)はもちろん、部員たちをせかして、もっぱら特ダネを叫ぶ人物だ。真実の報道は棚に上げ、ひたすら人々の関心を引くようなネタだけに集中する。苦しんでいる部下たちに情熱がないと言いながら、結果のためにあらゆる手段を強要する。

その姿を思い出しながら、11月16日に映画評論家協会授賞式で主演男優賞(ホン・サンス監督の「Right Now, Wrong Then」)を受賞した彼に、「おめでとう」とお祝いの言葉を伝えた。「受賞したことはさておき、まず映画がヒットしないといけない」と笑ってみせるチョン・ジェヨンは間違いなくハ・ジェグァンそのものだった。

「芸能部記者の生活はよく分からないが、まず台本自体がリアルだった。あえて記者でなくても、社会に出て生活をしているとハ・ジェグァンのような人もいるし、ト・ラヒのような人もいる。それをもっと理解してもらうのが僕の役割だった。組織生活の経験が全くないと見ることもできるが、大きく見れば作品ごとに異なる組織と働くようなものだから俳優も同じだと思う。本当は撮影に入る前にある新聞社に数日間いるつもりだったが、事情があってそれができなかったのは残念だ。

ハ・ジェグァンは既成世代(中高年世代)全体ではなく、悪い既成世代を代弁する人物だ。だが、人って“絶対悪”ではないじゃないか。本当に悪いやつだったら会社で部長にまでなれなかっただろうし。ただ、下にいる人の目には悪魔のように見えるかもしれない(笑) だからハ・ジェグァンはもともと優しい人だったが、状況によって変わったと見るのもおかしい。彼はもともとそういう性格なのだ。それなりの哀歓と悩みを描こうとした」

この映画には世代論と韓国社会の暗い面がある程度反映されている。就職難でとにかくどこかに就職しようと考えるト・ラヒがおり、その心理を利用し、安い給料で職員をこきつかうスポーツ新聞がある。そしてその中心にハ・ジェグァンがいる。

チョン・ジェヨンもこの分析に同意した。ただ「僕は既成世代ではなく、新世代だ」といきなり“差別化”を宣言した。「そう言われると、逆にもっと既成世代に見える」という記者の言葉に怒ったふりをしながら彼は続けた。

「僕も40代半ば(満45歳)だが、僕と同じ年頃の人たちに会う度にもどかしい。何が彼らをそのようにしたか分からないが、頭の固い人が多い。僕の思う既成世代は僕たちの父の世代なのに。ところで、僕がいくらこういうふうに説明してもボヨンは僕を既成世代だと思うだろう……ふぅ」


情熱のチョン・ジェヨン

「情熱があるから全部できるだろう」と怒鳴るハ・ジェグァンを思い出し、チョン・ジェヨンの新人時代を振り返ってみた。約20年前、演劇の舞台と映画の撮影現場を転々としていた新人俳優チョン・ジェヨンは、端役ながら現場でアドリブをして同僚を当惑させた。ヤクザ役をリアルに演じようと事前協議なしで主演女優の身を触ろうとして怒られた。「本当にバカ真面目だった」と彼が大声で笑った。「そんなとき、アン・ソンギ先輩のような素敵な方々が暖かく、優しく、ハ・ジェグァンとは正反対にかばってくれた」と伝えた。

「そのおかげで今も演技しているのだと思う。そういえば今僕がちょうどあのときのアン・ソンギ先輩の年なのになぜ僕はこんなに分別がないわけ?(笑) 正直、わざと分別がないように振舞おうとしている。分別がつけばつくほど人々は観照的になりがちだ。全部理解してしまえば情熱が色あせると言うか。自由にならなければならない。何か一つを徹底的に信じたりしてはいけないような気がする。疑わなければならない。特に学ぶものならなおさらだ! これは僕の個人的な考えだ。

人はビビッてはいけない。ハ・ジェグァンはト・ラヒに『指示されたことだけやって!』と言ってから後に『指示されたことばかりやっているつもりか?』と叱るじゃないか。人というのは皆、自己中心的に言うから、全部そのまま受け入れる必要はない。あまりにも言葉に集中しすぎると誤解が生じる。だから一言にビビるなと言っているわけだ。打ち上げのとき、ボヨンにも一言だけ言った。ビビらずに、気楽にやろうと。僕もボヨンのときは怖かったし、今もいつも怖い。芝居の初公演、映画の初撮影のときとても緊張した。ビビらずにいこう、と普段も思う」

映画を見て観客が組織生活の辛さだけを感じるなら、チョン・ジェヨンの立場では非常に残念だろうと思った。彼は「映画が描いた現実が面白いながらも辛いように見えるが、それでもこの映画を見ながら上司も、部下もそれぞれ努力しなきゃと思って頂きたい」と伝えた。そう言いながらも「(コミュニケーションのため)ト・ラヒが前面に出たとき、ようやくみんなが助けてあげる。それなりに韓国社会の現実を見せてくれたような気がした」と笑ってみせた。


「ドラマ『ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~』を撮りながら内心申し訳なかった」

韓国社会の話にドラマ「ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~」の話は欠かせなかった。現代の政治を描いたドラマでチョン・ジェヨンは労働者出身で、与党の中の野党を名乗る国会議員チン・サンピル役を演じた。国民の生活と本来の役割を忘れ、ひたすら各種の利害関係に戦う国会議員たちをチン・サンピルは批判し、皮肉った。彼は確かに視聴者に大きな快感を与えた。

「ドラマ出演は大きな決断ではなかったし、良いものがあればやろうと思っていた。『恋するインターン~現場からは以上です!~』の撮影が終わるや否や、急いで合流することになった。少し休みたいと思っていたが、チョン・ギフン監督(『恋するインターン~現場からは以上です!~』の演出者)を通じて台本が入ってきた。実は『鄭道傳』を書いた脚本家チョン・ヒョンミンさんの作品だった。『ラスト・チャンス!~愛と勝利のアッセンブリー~』は視聴率はさておき、非常に良い作品だった。ただ僕の体力が少し問題だった。今度ドラマに出演することになればきちんと準備しなきゃならないと思う。それでもドラマ撮影のときはほとんどお酒を飲めなかったので身体は健康になった(笑)

実は政治には別に興味がなかった。普段白紙のように生きているところもあるし、もともとなまけ癖がある。演劇も長期公演はできない。すぐにあきるので。本も長編小説は読めない! 漫画は長編でも好きだが(笑)

韓国政治の現実はもどかしい。ただ、チン・サンピル役そのものは自分の好きなようにする人物ですっきりした。それと同時に内心申し訳ない気持ちもあった。僕はその役をするような人間じゃないから。普段は勇気もないし、もしかしたら普通の人よりも足りないかもしれないので、申し訳なかった。その部分については反省した。チン・サンピルまでにはではなくてもその人物のように考えながら生きていこうと決心した」

今年半ばに入り、チョン・ジェヨンは生活パターンをシンプル化した。マネージャーなしで一人で運転し、全てのスケジュールをこなす。ラジオを楽しんでもっとゆっくり、余裕を持って生きる姿から、彼の真面目な一面を見ることができた。

「僕が意図した流れはない。一つずつやっているうちにふと振り返ってみたら作品がたまったし、それで(演技の)幅も広くなったのではないだろうか。好評でも、悪評でも、僕が出演した作品一つ一つが全部友達みたいで子供みたいで分身みたいだ。様々な作品に出演することができるということがとてもありがたくてやりがいもある。今もドラマでも、映画でも良いと思う。特に今回のドラマではドリブもやってみたが、うまくいった! もちろん皆困惑し、面食らったような顔していたが(笑) 情熱さえあればできないことってあるか! できる!」

彼は相変わらず「情熱みたいなこと」を言っていた。いや、情熱について語っていた。

記者 : イ・ジョンミン、イ・ソンピル、写真 : イ・ジョンミン