「ごめん、愛してる、ありがとう」ソン・ユリ“まだ、ワントップ主演は準備できていないようです”

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「私は南扶余の女王ジュ姫だ!」ソ・ジソブに大声を出す唐突だったこの一言が生み出した波及効果は大きかった。Fin.K.Lで美貌担当、元祖センターだったソン・ユリ(34)が女優ソン・ユリへと名前を広く知らせる踏み台を作ったためだ。数々のアンチファンを作り、様々なモノマネで笑いの的になったものの、女優ソン・ユリの名前一つは確実に覚えさせた名台詞だった。

2003年SBSドラマ「千年の愛」を通して華麗なる登場を果たしたソン・ユリがいつの間にか経歴13年目の女優に成長した。レッテルのように貼られていた“演技力議論”もいつしかなくなり、傷だったジュ姫も今や冗談として受け入れられる余裕も出来た。大人ソン・ユリ、女優ソン・ユリになる方法を知ったのだ。

メインステージのテレビドラマを通して着実にステップを踏んできたソン・ユリが久しぶりにスクリーンのドアを叩いた。2012年「チャ刑事」(監督:シン・テラ)以来3年ぶりに選んだ作品だ。近いという理由だけで、気持ちを表現することができなかった様々な人々にやってきた日常のもっとも輝く告白の瞬間を盛り込んだオムニバス映画「ごめん、愛してる、ありがとう」(監督:チョン・ユンス、制作:タイムボックスエンターテインメント)を通して観客と会う。

映画で完璧なルックスとは異なり、気難しい性格を持つ女優ソジョンを演じたソン・ユリ。濃い目のスモーキーメイクをしたソジョンはどんなありえない設定も完璧に演じこなすマクチャンドラマ(非現実的で、ありえない設定のドラマ)界のベテランだ。寂しくても悲しくても泣かなかった“キャンディ(漫画キャンディ・キャンディの主人公、お転婆で元気に困難を乗り越えるキャラクター)”ソン・ユリが演じたため、さらに衝撃的でさらにコミカルだ。演技力議論はつきものだった彼女が、本当の演技下手が何かを見せてくれる。びっくりするほど図々しい。

「ソジョンという人物になりきりました。恐らく、私がもう少し作品に出演し、演技を長くしていたらソジョンのように演技スランプを感じたのではないでしょうか? ソジョンは演技力についてすでに自信がある人です。ただ、自分が持っている演技力に比べ、作品の質が著しく低いという考えから、気難しい性格になったのです。私でも同じだったと思います。今、私は限りなく足りないですが、もしソジョンぐらい自信があったら性格が尖ったかも知れません。色々な議論の中でもソジョンという人物は明るいですが、その部分に特に共感できました」

以下はソン・ユリとの一問一答である。

―3年ぶりのスクリーン復帰、「ごめん、愛してる、ありがとう」を選んだ理由は?

ソン・ユリ:温かい映画に対する渇きがありました。映画に出演したいという意思も大きかったです。最近はスリラー映画が多数出ているじゃないですか。元々血が流れて、残忍なスリラーは見られないのですが、「ごめん、愛してる、ありがとう」シナリオはこれまで見たジャンルとまったく違いました。温かい雰囲気が良く、一緒に働いたスタッフ、俳優すべてよくて嬉しい気持ちで参加することが出来ました。

―では、普段スリラージャンルの出演オファーが多いのか?

ソン・ユリ:そんなことはありません。フフ。所属事務所に入ってくるシナリオは私宛ての提案でも、そうじゃなくても全部読みます。本を読むように読むのが習慣になりましたが、スリラーが多かったです。私にはスリラージャンルのオファーはあまりありません。私と合わないからみたいです(笑)

―「チャ刑事」以降、「姉」(2013、監督:イ・ウォンシク)という低予算映画に参加したりもしたが?

ソン・ユリ:その作品は牧師である父を通して入ってきた作品です。時々父を通して作品が入ってくる場合があります。最初は期待しないで見ましたが、シナリオを1時間で全部読むほど集中して見ました。それで決めましたが、撮影しながら大変だったのもあります。予算が少なく、スタッフの半分以上が映画学科に在学している学生でした。休みが終わるとスタッフと連絡が取れず、一人、二人姿を消しました(笑) 涙が出る作品でした。あのころは負担を感じないで主演に就きましたが、商業映画では今でも無理だと思います。私は。

―主演に対する渇きはないのか?

ソン・ユリ:独立映画や低予算映画は制作会社には申し訳ないですが、興行のプレッシャーがなくて、主演に対するプレッシャーなく思いっきり出来たと思います。ですが、商業映画はそれが出来ないじゃないですか。今回の映画も商業映画ですが、主人公が多いので不安が1/nになると思いましたが、いざ公開を控えるとプレッシャーがものすごいですね。まだワントップ主演は準備できていないみたいです。

―映画でソジョンは最初歌手を目指したが、女優になった。

ソン・ユリ:私のことを意識して作ったコンセプトではないと思います(笑) ギターの弾き語りのシーンがありますが、とても心配しました。その場面のためにボーカルレッスンとギターレッスンを1ヶ月以上練習しました。ハハ。でも、歌手というタイトルを置いて取り組んだため、プレッシャーは少し減りました。もし、“Fin.K.Lだから上手にやってみせる”となっていたら、ステージの上ですごくドキドキしたと思います。フフ。

―ソジョンが10年間マネージャーを務めたテヨン(キム・ソンギュン)に格別な感情を抱くが、その演技は実際の経験から出たのか?

ソン・ユリ:それは違います(笑) 周りでもマネージャーと付き合う芸能人を何人か見ましたが、長続きしませんでした。やはり毎日顔を合わせているので、あらゆる姿を見るようになるじゃないですか。経験で演じたわけではありません。ハハ。

―キム・ソンギュンとの出会い、しかもロマンス演技をしなければならなかったのか?

ソン・ユリ:最初は(キム)ソンギュンさんがテヨン役を演じると聞いてびっくりしました。シナリオには“マネージャーらしくないハンサムなルックスのテヨン”と書かれていましたから。ハハ。むしろ周りでは斬新なラブストーリーになりそうだと楽しみにしていました。最初の台本読み合わせで初めて彼に会いましたが、それまでは寡黙で怖い人だと思いました。カリスマ性あふれるイメージでしたが、会ってみるとかなりの恥ずかしがり屋でした。私と目を合わせられませんでした。話し方はなんて優しかったか。適役だったと思います。

―映画の中でマクチャン演技を披露した。

ソン・ユリ:撮影しながらもすごく楽しかったです。チョン・ユンス監督と様々なことを話し合い、マクチャンコンセプトを決めました。演じながら感じたことですが、マクチャンドラマに出演する俳優を尊敬するようになりました。映画で救急室でのシーンがありますが、人がすぐに死ぬようだと思いながらさらに大げさに、真剣に取り組みました。集中すれば集中するほど面白くなりました。真剣になるほど喜びが感じられました。この楽しさのためマクチャンドラマに出演するみたいです。ハハ。

―気難しく、どこでも大声を出す人物ですが、プレッシャーはなかったのか?

ソン・ユリ:救急室シーンではチョン・ウンイン先輩と気の張り合いをしましたが、チョン・ウンイン先輩はベテランで、カリスマ性があるためプレッシャーを感じました。このシーン一つでチョン・ウンイン先輩を制圧しなければならなかったため、震えながら演じたことを覚えています。昔、私のことをすごく叱った監督のことを思い出しながら目を見開きました。思いっきり大声を出しましたが、“こんな気分なんだ”と感じたと思います。私の中に存在する怒りと気難しさを集めて叫んだと思います。ハハ。

―これまで優しい役割だけ演じたため、気の強いキャラクターに対する意欲もあったと思う。

ソン・ユリ:キャンディみたいな役割が多かったのですが、実はかなりもどかしさを感じていました。“なぜヒロインはいつも優しくて、耐えなければならないんだろう?”と思いました。周りに気の強いお姉さんたちが多くてさらにそう感じたようです。正直、優しい性格より強い性格が好きです。自分自身がそれを表すことができないためです。この作品で少しでも解消することが出来てよかったです。

―コミカルに壊れるのはどうか? 最近、MBC「彼女はキレイだった」のファン・ジョンウムがこのケースで好感を得たと思うが。

ソン・ユリ:私もそのドラマの初回を見ました。(チョン)リョウォンと一緒に見ましたが、見て羨ましく思いました。想像を絶するほどエネルギーがあふれ、自尊感と自信がかなりある人だと思います。自分が壊れても大衆に愛されるという信頼が大きいですし。年下ですが、尊敬できました。素敵ですね。結局、自信だと思います。私がそばかすを書いて出ても、爆発したようなヘアスタイルをしても、自らプライドがあれば、好きでいてくれるようです。後で自信が出来たら私もそんな役を演じてみたいと思います。

―デビューして初めてビキニを着たシーンが登場するが?

ソン・ユリ:それは話したいことがあります。ハハ。元々契約する前はなかったシーンですが、私が契約書にサインしてから修正本に出来たシーンです。あのシーンは、チョン・ユンス監督と本当にたくさん妥協して完成したシーンです。出来るだけいやらしくならないようにしながらキャラクターを説明する必要があって、それに相応しいビキニを見つけるためにあらゆるショッピングモールと水着売場をあさりました。

―ソン・ユリは非常に正しい生活を追及するが? お酒も飲まないのでは?

ソン・ユリ:私の家族みんな肝臓の解毒能力が落ちます。ハハ。だからお酒が飲めないですが、以前、シン・グ先生がお酒を勧めたときは断ることが出来ず飲んだことがあります。お酒を飲んだら楽しく、幸せになればいいのに、私は限りなく落ち込む性格です。周りの友達もほとんどお酒を飲まないためか、それだけは今のまま生活したいです(笑)

―いつのまにか13年目の女優になったが、これまで出演した作品の中で一番記憶に残る作品があるとしたら?

ソン・ユリ:2006年に放送されたKBS 2TV「雪の女王」です。あのときすごく悪口を言われて(笑) ヒョンビンとラブストーリーをするというのも憎まれポイントで。当時、イ・ヒョンミン監督も私に対する信頼がなくて、私だけを別に呼び出して勉強させたりもしました。いつも怒られていたときで、落ち込んでいました。ところで、ある瞬間から私に対する視線が温かくなり、私のことをケアしてくれるようになりました。信頼が出来たようで安心しました。「雪の女王」放送終了打ち上げのときは、イ・ヒョンミン監督が私に“ソン・ユリがキム・ボラ(役名)に見えた”と話してくれましたが、それがすごく感動でした。

―やってみたい役割があるのか?

ソン・ユリ:若いころは清純可憐な国民の妹役がたくさんありました。しかし、私は意外とサバサバとしている性格で、そんなキャラクターが気恥ずかしくて。私は地べたに座り込むのが好きですが、演技はそうしてはならないですから。かなり断りました。そんな役を避けていたため、自然と強烈なキャラクターをしましたが、それはまた私と合わない服だったためか、演技力議論が起きたようです。年齢に合う役割があるのにそれを知らなかったのです。今はキラキラとした背景で清純な人物を演じてみたいですが、もう年を取ってしまって(笑) 後悔したりもします。

―映画のタイトルが「ごめん、愛してる、ありがとう」だ。普段、どんな単語を一番使うのか?

ソン・ユリ:ハハ。恥ずかしいですが、3つの単語とも良く使いません。くすぐったいことが本当に言えないです。SNSを良く使っていますが、そこではハートをつけたり、くすぐったいことを良く書きますが、面と向かっては出来ません。誰にでも。

記者 : チョ・ジヨン、写真 : イ・ソンファ