【映画レビュー】「私の心臓を撃て」もっと良い映画になれたはずだった

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写真=ジュピターフィルム

原作の魅力を生かせなかった脚色…脚色の重要性を思い知らせた作品

スミョン(ヨ・ジング)は幼い頃のトラウマで6年も精神病院を転々としている。ある日、精神病院で25歳の同い年のスンミン(イ・ミンギ)に出会ったスミョンは彼に感化され、一緒に病院を脱出することになる。

映画「私の心臓を撃て」はチョン・ユジョン作家の同名小説を脚色した作品だ。原作小説の長所は生々しい臨場感と緊張感をあおる展開だ。しかし、映画は原作小説の長所をスクリーン上にそのまま再現することに成功できなかった。

映画の敗因は、スンミンとスミョンの関係だけに重点を置いたことにあると見られる。映画が二人の人物の関係を通じて自身の人生を生きようと奮闘する若者の話を描こうとした意図はうかがえる。しかし、二人の主人公の関係に集中する余り、精神病院に閉じ込められた色々な人に関する話が消え、原作小説の長所の中の一つだったリアリティも消えてしまった。

映画の演出も繊細さにかけており、過度に安定性だけを追求する傾向がある。このため劇の緊張感がはるかに緩んでしまった。作品の後半で二人の主人公が感じる脱出の快感が観客にまともに伝わってこない理由がまさにここにある。

映画に一番適合するように脚色されなかった台詞で俳優たちも苦労していた。特に、劇中で数回も名台詞をこなさなければならないスンミン役のイ・ミンギは言葉通り奮闘しているのが目に見えるほどだ。原作小説では読者に深い響きを与えた台詞が映画を見る観客にはよく伝わらなかったことは残念だ。

ムン・ジェヨン監督の「私の心臓を撃て」はより良い作品になれるはずだった。しかし、いくら原作小説が立派で俳優たちが魅力的だといっても、良い脚色なしに良い作品が生まれるのは難しいという事実をもう一度思い知らせる良き例になった。

記者 : ハ・サンミ