【ファンの世界】「BL、妄想、嫌がる人もいるけれど…」アイドルに対する幻想を具現化する“ファンフィクション”作家たち

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ファンフィクとはファンフィクション(Fan Fiction:二次創作)の略語で、大衆的に人気を博している作品を対象にしてファンが自分の意のままにひねり、再創作した作品や、好きな芸能人を主人公として登場させた小説のことをいう。韓国ではアイドルグループを対象にした小説がファンフィクの主流となっているが、グループのメンバー同士をカップルにしたBL(ボーイズラブ)のファンフィクも人気を集めている。

BLは、ややもすれば不快に感じることもある。好き嫌いがはっきりしている領域なので、インタビューに応じてくれたファンフィク作家も慎重に口を開いた。しかし、明らかなことは、ファンフィクはアイドル文化を豊かにさせる役割をしているということだ。イメージで生きているアイドルにとってファンフィクはアイドルに対する幻想を作り上げ、代理満足を提供する窓口となる。ファンフィクによりファンの思いはより強くなり、人気が高くなる場合もある。ファンフィク作家のインタビューから、ファンフィク文化の断面を垣間見た。

―初めてファンフィクに接したのはいつですか。

ファンフィク作家:小学校6年生の時に初めて接しました。ある歌手が好きで関連する作品を探して読んでいたのですが、後になって気づいたら同性愛のファンフィンクでした。

―ファンフィク文化は普通どのように形成されますか。

ファンフィク作家:ファンダム(特定ファンの集まり)が生まれれば、自然にファンフィクを書いたり、接するようになります。グループの人気が高まるほどその需要も高まります。グループ内で人気のあるメンバーたちを主軸にしたファンフィクがほとんどを占め、そのグループが何人なのか、奇数なのか偶数なのかも重要になってくることもあります。一般の人たちにグループの名前を知らせるメンバーもいれば、ファンダムの中で抜きん出た人気を得ているメンバーもいます。人気の高いメンバーたちがファンフィクにはよく登場しがちです。

―ファンフィクはファンダムの形成に大きな影響を与えているようですね。具体的にどのような役割をしていますか。

ファンフィク作家:ファンフィクの一番大きな機能は、ファンが登場するメンバーに抱いている幻想を表出できるということです。アイドルはファンタジーのような存在ですから。ファンフィクを通じてそのメンバーに幻想を抱き、自分の思うイメージに合わせて物語を作ることもできます。メンバーの実際の姿がその幻想と一致しなくても、「こんな姿もあるんだ」と思いながら、その姿をファンフィクに盛り込んだりもします。夢中にさせるのです。

―幻想を満たすことが主な機能ですね。

ファンフィク作家:書く人たちにとっても自分の幻想を満たすことが重要です。ファンフィクでファンダムが大きくなる場合もあります。また、ファンフィクにもトレンドがあって、スター作家によって全体的な流れが変わることもあります。作家が主人公をどう設定するのかによって、そのメンバーに対する幻想が多様な方面に作用します。

―ああ、ファンフィク界では作家の実力も重要ですね。

ファンフィク作家:はい。有名作家が人物をどのように設定するのかによってトレンドが変わることもあり、人気にも影響を与えています。有名作家がファンダムを乗り換えるケースもあります。でも、ファンフィクマニアたちは、文体を見ればすぐ分かります。以前はこのような人を“渡り鳥ファン”と非難していましたが、最近はアイドルグループも多く、ファンの移動が容易になっただけに作家たちの移動も自由になりした。

―アイドルグループが増えたことで生じるファンフィク文化の裏側もありそうですが。

ファンフィク作家:他のファンダムで人気があるファンフィクの主人公の名前だけを変えて無断で盗用している場合もあります。このような時は、そのメンバーのイメージとも合わないだけではなく、迷惑な創作物です。このような問題でファンダムの間で対立が生まれる時もたくさんあります。

―第1世代アイドル時代のファンフィク文化と、今のようにアイドルグループが多いファンフィク文化に違いはありますか。

ファンフィク作家:以前はファンフィクがそれほど栄えていない分野だったので、作品を書く人が少なかったのですが、今はファンダムの世界を経てきた方々がファンになる場合もあるので、“ファンフィク作家”に挑戦する人も増えました。読むだけではなく、自ら作品を書くということです。ファンフィクを連載するサイトで人気を得た作家もいれば、個人でサイトを運営して人気を得る作家もいます。最近は作家だけではなく、読む人も匿名性が保障されるので、非公開や匿名で運営されているサイトが多いです。

―ファンフィクと言うと、BLや妄想に対して、良くない視線で見る人もいますが。

ファンフィク作家:嫌いな人は凄く嫌がりますね。日陰文化の中でも好き嫌いが分かれ、カップルの喧嘩もひどいです。ファンフィク自体が色んな文化を経てきたので、人々の視線も様々です。「どうして兄さんたちのイメージを壊すのか?」と言う人も多いです。だからファンフィクは“日陰文化”と呼ばれています。その通りです。だから、ファンフィクを嫌がるファンたちは最初からファンフィクを読まない場合が多いです。ファンフィクを読まなくてもファンとして活動する方法はたくさんありますからね。

―女性アイドルにもファンフィク文化はありますか?

ファンフィク作家:女性グループにもファンフィクがたくさんあります。中でも女性オタクが多く、ファンフィクを通じて“ガールクラッシュ”(同姓愛ではなく、女性が女性に憧れの気持ちを抱くこと)というファンタジーを表現しています。憧れの幻想を入れるのです。このような方法で人気が出た場合、メンバーたちの行動がネタとして使われます。それだけではなく、ファンたちとファンタジーを共に楽しむグループもあります。でも、ガールズグループでもボーイズグループでも、わざと“ファンフィクのネタ”を狙って行動すると、逆効果になる時もあります。これはファンたちが作る幻想ですから。

―ファンフィクが本として出版される場合もありますね。

ファンフィク作家:最近は需要よりも供給が多いので、面白い作品だけ人気があります。作品性も高くなりました。作品性がいいので主人公の名前を変えて出版社を通じて正式に出版される場合もあります。正式に出版されると、著作権は保障されますが、日陰文化なので盗作や色んな問題もたくさんあります。普通のルートがないので仕方ありません。

―ファンフィクが出版されているのを見ると、単純なファンの文章ではなく、作家のまた違った創作ルートでもありますね。

ファンフィク作家:第1世代アイドルの時のファンフィクは、作品性の低い作品が多かったのは事実です。需要は多かったけれど、供給がなかったので。最近はレベルも高くなり、書く人たちの実力も伸びました。第1世代アイドルが歳をとるにつれ、ファンたちも歳をとるので、成熟してクオリティも高くなるしかないのです。ジャンルも多様になりました。歴史的な題材を使ったあるファンフィクの場合、その作家が歴史的な題材について何ヶ月も勉強して歴史的な考証を経た上で、ファンフィクを書きます。そのファンフィクによってアイドルだけに関心を持っていた人たちが歴史にも関心を持つようになります。時代劇を見て、歴史に興味を持つようになったように。ファンフィクといえば、19禁だと思う人も多いですが、最近は別のジャンルも多く、レベル自体が高くなっています。

―あなたも進路を決める時にファンフィクから影響を受けましたか?

ファンフィク作家:はい。幼い時の経験で専攻科目を選択する時にたくさん影響を受けました。アイドルの一挙手一投足を追うファン活動が理解できない人々もいますが、tvN「応答せよ1997」のシウォンのようなケースもたくさんあります。(tvN「応答せよ1997」でシウォンは自分が書いたファンフィクで大学の特技入試に合格する。)

―ファンフィク文化を享受する者として、周りからの視線に悔しい思いをしたことはありますか?

ファンフィク作家:はい。ファンフィクを享受する人々は現実と幻想がまったく違うということを認知しています。幻想であることを認識した上で享受しています。本物の同性愛だと誤解しているわけではありません。そのようなファンがいても明確に現実と幻想の境界線を引いてファン活動をすることが必要です。

―最後に一言。

ファンフィク作家:ファンフィク文化はどうであれ、日陰の文化です。表に現れてはいけないのに、外部が干渉し始めると、より日陰に隠れてしまいます。そうなると、それを悪用する人が現れるかもしれません。このようにインタビューを受けることも慎重になります。ファンフィクを一度も見たことがない人はいますが、一度だけ見た人はいないというほど、中毒性の高い、魅力のある文化です。そのため、干渉するよりもお互いマイペースに続けることが重要です。

記者 : パク・スジョン、写真提供 : Mnet「EXO-902014」キャプチャー、翻訳 : チェ・ユンジョン