キム・ソヒョン「妻の誘惑」の悪女が献身的な妻になった
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彼女は、劇中で献身的な妻、ジョンスク役を演じた。一つの家族を破壊したシン・エリとは正反対の人物で、名前通り淑やかで上品な女性だ。一度も声を上げることもない。成功した彫刻家である夫ジュング(パク・ヨンウ)が死を前に無気力な日常を送ると、彼に人生の希望を与えるため物心共に努力する。ジョンスクは夫に芸術的インスピレーションを与える女性(イ・ユヨン)と偶然出会い、彼女を訪れヌードモデルを提案する。
彫刻家と彼の妻、そしてヌードモデル。妙な緊張感が流れがちだが、「アトリエの春、昼下がりの裸婦」はそのような展開を破ることに注力する。生活と芸術に向けた二人の話が描かれるだけだ。ジョンスクの至高にして純粋な愛への答えはあまりにも遅く帰ってくるが、自分の感情を押さえてきたジョンスクはようやく自分の本音をあらわす。これを劇的に表現したキム・ソヒョンの演技は優れていたし、彼女は2014年、マドリード国際映画祭の外国語映画部門で最優秀主演女優賞を受賞した。
「この作品が意外だったという反応はインタビューで聞きました。初めてシナリオを見た時は、ジョンスクというキャラクターをうまく表現できるだろうという考えだけでした。地方ロケも面白いと思いました。実際に遠足に行ったような気分で撮影しました。休みの日には女性のスタッフたちと山に遊びに行ったりしました。女優なので演技への悩みはいつもあります。しかし、ジョンスクだから難しかったり、大変だったことはなかったです。日常的な人物はあまりしたことがないので違ったでしょうが、ジョンスクはそうでもなかったです」

ジョンスクが夜遅く土手の上を歩いていくシーンはかなり美しい。バレエをするようにくるくる回るキム・ソヒョンの優雅な動きが視線を引きつける。叙情的なシーンだが、実際のロケ地は非常に暑く、皆疲れていた。ただ、そのとき流れていたクラシック音楽が好きで、キム・ソヒョンはその感じのままに撮影した。「そのシーンを撮って制作者たちが自画自賛した」と言った彼女は「その背景とその照明ではきれいでないはずがなかった。私も得した」と笑った。
彼女はキョンサンデク(ユン・イェヒ)と一緒に泣いたシーンを一番記憶に残るシーンに挙げた。非常にたくさん泣いた。泣かなくても良いシーンでも泣いた。二人の涙にチョ監督は驚いた。状況に没入した状態で感情がごちゃごちゃになり、キム・ソヒョンは自身の後に置かれた棺を見てびっくりした。マスコミ試写会後の記者懇談会でも涙を見せた彼女だった。彼女は「恨みが多いからか…」と言葉を濁し、「そんな感情があって女優をしていると思う」と話した。
会話は自然に彼女が記者懇談会で泣いた理由の方に移った。MBCシットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「お母さんが何だって」(2012)についての話だった。当初120話で企画されたが、視聴率を理由にたった27話で放送終了となった悲劇的な作品だった。このような雰囲気を事前に感知したキム・ソヒョンは不安な気持ちで作品に投入された。劣悪なシットコムの制作環境は、予想をはるかに上回った。当時MBCバラエティ番組「ラジオスター-黄金漁場」に出演したキム・ソヒョンは番組の収録中に熟睡するほどだった。
その中でもキム・ソヒョンはシットコムの妙味と楽しさに気づいていった。そこまで奮闘したものの、2ヶ月で放送は終了となった。「廃止」という言葉が与える衝撃も大きかったが、キム・ソヒョンはこの事実を視聴者と共にニュースを見て知った。大先輩のナ・ムニさえ「こんなことは初めて」と言うほどだった。誰かを恨むことでもなかったが、彼女には傷として残った。「コミュニケーションがうまく取れたら、そこまではいかなかったと思う」と残念がっていた。

「運がよかったです。『弁護士の資格』は、キム・ミョンミンという俳優への好奇心が大きかったです。検査役をまともにやったことがないことも魅力的でした。しかし、後半になるほど時間に追われ、台本もぎりぎりなところで出ました。法律用語のためセリフがなかなか覚えられませんでした。演技しながらそれほどNGをたくさん出したことはありません。恥ずかしかったときも多かったです。ある程度気負わずにしようと思って、もっと良い反応が出たと思います」
生まれつき女優キム・ソヒョンの日常がふと気になった。何だか普段にも作品に没頭しているような彼女だった。
「まさか。日常はとても平凡です。休みの日にはテレビをつけてぼーっとしています。膝が出た服を着て気楽に横になっています。顔に吹き出物があればそれをどうすればいいか心配しますし」
率直でときには突飛な面もあるが、作品の中では自身を消して劇中のキャラクターになってしまうキム・ソヒョン。そうしながらも自身の底力と多様な姿を絶えず見せてくれる彼女だった。彼女は私たちに身近で慣れた存在でありながら、常に新しい女優だった。
記者 : キム・ユンジ、写真 : ソン・ヨンホ