【ファンの世界】スターたちが輝く瞬間を愛情を込めて撮る人たち

10asia |

写真提供=チクドク

アイドルグループを主に担当する音楽記者の場合、取材現場でよく見る光景がある。写真記者よりも高級なカメラを持って、誰よりも鋭い目でスターの姿を捉える、いわゆる“チクドク”と言われる写真を熱心に撮るファンの群れだ。チクドクは“写真を撮るオタク”の略語で、スターがいる現場を探し回って高画質の写真や映像を撮るファンを指す。彼らはステージ、空港、撮影現場など、スターのいる場所なら時間や場所に関係なく、公開された場所はもちろん、接近するのが大変な場所まで追っかける熱狂的なファンだ。

アイドルばかり追っかけていると、情けない視線で見る人もいるが、チクドクはファンダム(特定ファンの集まり)の世界でとても重要な役割を果たしている。彼らは愛情を込めてスターたちが輝く瞬間を捉えるため、新たなファンが生じるきっかけを提供し、サポートやファンページの活動を通じてファンダムの組織力を固めることにも一役買う。今は立派なサブカルチャーの一つとして定着したチクドクについて、果たして私たちはどれほど知っているのだろうか。

実際にチクドクとして活動している2人の女性ファンとインタビューを行った。チクドクが明らかにする、本物のチクドクの世界を公開する。

※“チクドク”…「スターたちに密着して写真を撮るオタク」というファンを表す用語。
※記事に使用された写真は、インタビューを行ったファンが撮影した写真ではありません。インタビューに応じたファンの身辺保護のために仮名を使用しました。

―こんにちは。このようにお会いできて嬉しいです。まず、自己紹介をお願いします。

キム・チャルカク:今年、大学生になりました。もともと写真に関心が高かったので、高校生の時からファン活動を始めて自然に写真を少しずつ撮るようになりました。大学生になって一番やってみたいことの一つがチクドクとしての活動だったので、このように写真を撮るようになりました。現在、ホームページを運営しています。

スマイル・パク:私は幼い頃から少しずつ始めました。実は、私自身どうしてアイドルが好きなのかとアイドルのファンを批判する立場だったのですが、ある日、映像を見てアイドルのファンになり、その時から自分の足で見に行きたいと思いチクドクを始めるようになりました。

―2人とも高校生の時にチクドクを始めましたが、大学生になってからより活発な活動をしているように見えます。

キム・チャルカク:はい。高校生の時は空港やイベントに行きたくても時間を自由に活用できないので制約がありましたが、大学生になってからは時間を自由に使え、アルバイトをしながら時間の調整ができるのでいいです。

―家でテレビやインターネットを通じてスターを見ることができるのに、自分で直接写真を撮る理由は何ですか?

スマイル・パク:家にいるだけではそのスターは私のことを知らないし、私もそのスターのことを深く知ることができないからです。直接コミュニケーションを取りたいし、ファンとしてスターにもう少し近づきたいという気持ちがあります。私の存在をスターにアピールするのです。だから、スターが私のことを知ってくれるとすごく嬉しいです。

キム・チャルカク:従来のファンページに対する不満から始める場合もあります。ホームページのマスターやすでに有名なチクドクのうち、他のファンよりも自分たちが優位にいると考えている人が多いんです。今もそんな人が多いので、そんな態度を見てストレスを受けるよりも、自分でやった方がいいと思って始める人もいます。

―実はチクドクに対する先入観も多いです。自分の時間とお金を使ってスターばかり追っかけるという見方ですが。

キム・チャルカク:パスニ(芸能人に夢中な女性)とかオタクとか色々言われていますが、「あなたはこんなに他人がすごく好きになったことがありますか?」と人々に聞いてみたいです。すべての人間は“オタクのDNA”を持っていると思います。私は好きなスターの写真を撮るオタクですが、世の中にはマニキュアを集める人もいるし、植木鉢を育てることが趣味の人もいます。私はそんな多くの趣味の一つを楽しんでいるだけです。

―その通りです。「オタクを休むことはあっても、止めることはない」という言葉もあるじゃないですか。私たちは皆、何かのオタクです。でも、チクドクの場合、日常生活に支障があると思います。数日間徹夜してスターを待つ人もいるし、高価なカメラの装備を購入しなければならないですから。

キム・チャルカク:全く違います。チクドクの中には専門職に勤めている人が非常に多いです。大学生もいますが、弁護士など実際の職業を聞くと驚く場合が多いです。日常生活を諦めた人もいるかもしれませんが、私は違います。なぜなら、チクドクを続けるためにはお金を稼がなければならないからです。自分の生活を維持しなければなりません。ハハ。

スマイル・パク:考え方次第だと思います。一般人の友達と少し離れる傾向はあります。遊ぼうと連絡が来てもスターのスケジュールがあって行けなかったり、ファンサイン会の時にお金をたくさん使って友達と旅行に行くお金がない場合もあるからです。

―高価なカメラの装備はどのように工面していますか?

キム・チャルカク:ほとんどのチクドクが、カメラの本体は自分のものを使って、レンズはレンタルします。学生の場合、12時間で1万5000ウォン(約1500円)ぐらいでレンズのレンタルができます。忙しかったり、急いでいる時は自分が持っている基本型のレンズを使うこともあります。もちろん、お金持ちで自分で装備を購入する人もいます。

スマイル・パク:専門職に勤めているファンの場合、お金もたくさん稼ぐし、時間も自由に調整できます。

―チクドク間で神経戦が激しいと聞きました。

スマイル・パク:すごく激しいです。これは敏感な問題なので話すのが難しいです。実はチクドクの間でも序列があります。本当に有名なチクドクはスターがわざとその人のカメラを探してポーズを取ってくれる場合もあります。

―取材現場でチクドクを見ると、どのように知ってそこまで来たのかと不思議になることが多いです。情報はどこから得ていますか?

キム・チャルカク:チクドクたちが仲良くなると、情報を共有して一緒に現場に行きます。記者が知らない非公式スケジュールを知っていたり、まだ公開されていない音源を先に聞ける場合もあります。「君だけ聞いてね」のようなやり方で、知らずに広がっていくんです。でも、1人が一方的に情報を受け取ったりはしません。例えば、今回私がチクドクの友達から情報をもらったら、次は私が情報をあげてお互いが情報をやり取りする共生関係になります。その友達と好きな歌手が異なる場合は、私が行けなかったイベントの写真をくれることもあります。

スマイル・パク:全てのスケジュールに行く人もいます。また、不正を働いたり、お金を詐欺する人も多いです。

―“ヒョンタ(現実を自覚するタイム)”といって、突然懐疑心が生じる場合もあると聞きました。チクドクを止めたいと思ったことはないですか?

キム・チャルカク:インターネットではファンサービスが本当にいいように見えた歌手が、実際には特定のファンだけにファンサービスが良いということが分かった時に、ヒョンタが来ます。

スマイル・パク:たまに「私はどうしてこんなことをやっているんだろう?」と思う時があります。インターネットやテレビでは自分のスターがただハンサムでかっこよく見えて、会いたくなるだけなのに、現場に行って日常生活を見ると、たまにヒョンタが来ます。でも、今まで積み重ねてきたことがもったいないと思って続けます。もしスターが自分の顔を知っている場合は、頻繁に行かないと忘れられることもあるから、結局再び活動することになると思います。

―大きな規模のファンサイトを運営する人もいます。その場合、運営にたくさんの費用がかかると思いますが、収益を上げる人もいますか?

キム・チャルカク:規模が大きいファンサイトの運営者は、写真が多いためサポートを受けます。ある所属事務所の場合は、自ら撮った写真でフォトブックを作成して販売しても良いので、チクドクを職業にする人もいます。写真にもレベルがあって、A、B級はインターネットに掲載して、S級は保管しておいて活動が終わった後にフォトブックを出します。そのように作ったフォトブックは韓国のファンだけでなく、全世界のファンが購入するので、大企業の年給に近いお金を稼ぐ人もいます。そうやって稼いだお金でスターにプレゼントを買って自身の顔を知らせたり、もっと良い写真を撮ったりもします。

―フォトブックを販売できないチクドクの場合、お金はどうしていますか?

キム・チャルカク:スターの誕生日イベントを通じて、ファンから助けを求めます。スターの誕生日にサポートイベントを進行しますが、その時にファンからお金を集めてプレゼントを購入します。お金を振り込むファンには特典があって、1万ウォン(約千円)を振り込んだらステッカー、3万ウォン(約3千円)以上はステッカーやフォトカードなどがもらえます。ステッカーやフォトカードはすべて自分で製作します。特典をどんな風に構成するかもチクドクの能力です。ファンはより素敵な写真やより良い構成のファンサイトのイベントを選ぶからです。その他の収益事業は絶対やってはいけません。

スマイル・パク:プレゼントをあげることだけがサポートではないです。様々な寄付文化が存在しています。スターの森、スターの井戸のようなものもあるし、スターの名前で代わりに寄付することも多いです。最近流行ったアイス・バケツ・チャレンジの場合、スターが次の参加者にファンを指名してファンが寄付したこともあります。

―チクドクの間でも序列があると聞きました。有名になるためにはどうすればいいんですか?

キム・チャルカク:自分だけのスタイルが必要です。例えば、写真の補正が本当に独特だったり、自分だけのユニークな構図が必要です。正面写真を主に撮るチクドクがいれば、人物がサイドにいる角度を好むチクドクもいます。また、自身が有名になることが重要なわけではなく、スターとより近くなることが重要です。頻繁に現われたらスターが顔を覚えるようになるので、スターがその人に視線をくれて、その人だけが撮影できる写真が生まれるんです。そしたらフォロワーが増えて、好循環になります。その場合、他のファンから写真をもらう時もその人だけのリタッチング方法があるので、原本だけ交換します。

―コンサートでは写真撮影が禁止されているのに、それでもコンサートで撮った写真がたくさん掲載されます。

スマイル・パク:ショッピングバッグや小さな鞄に入れてこっそり撮る人もいるし、黒い服を着て写真を撮ったら見つかりにくいです。地面を這って撮る人もいます。お金のある人は全コンサートに参加します。その場合、毎日席が違うので、多様なアングルの写真が撮れます。

―色んなイベントに行くため、他のアイドルグループもたくさん見ることになります。その中で、成功しそうなアイドルが目に入ることもありますか?

キム・チャルカク:態度を見て「あれだから人気がない」と思えるグループもいます。公開収録に行くと他の歌手のステージを見ることになりますが、同じ状況でも表情が明るい歌手もいれば、表情が悪い歌手もいます。

―その場合、好きな歌手が変わる人もいますか?

キム・チャルカク:はい、います。人気の高い歌手が好きでも、その歌手の性格があまりよくないと、他の歌手のファンになります。また、チクドクとして自身の立場が狭くなり、違う新人歌手のチクドクになる場合もあります。新人アイドルを早くから撮ると、先に自身の立場を固めることができるからです。最近は防弾少年団やGOT7の人気が高くなりました。

スマイル・パク:良さそうな新人を発見したら、今撮っているスターをすぐに整理して新人だけに集中する人もいます。スターの人気が高くなったら、違うスターのチクドクになるケースです。私は自分が好きな歌手のチクドクをやっていますが、そんな人たちは自身の立場のためにやっている人たちです。スターではなく、チクドク自体のためにチクドクをやっている人です。ファンではありません。

―最近私生ファン(サセンペン:私生活にまで付きまとうファン)という間違ったファン文化がありますが、それについてはどう思いますか?

キム・チャルカク:私生ファンは、ファン文化の偏見を作り出す人たちだと思います。チクドクと私生ファンは全く違います。私たちも空港にはよく行きますが、私生ファンは空港でスターを触ったり、迷惑をかけます。でも、私たちはカメラを持っているのでスターを触ることはないです。それなのに、私たちはカメラを持っていて目立つから、私たちの過ちだと決め付ける場合があったり、私生ファンとチクドクが同じだと思う人がいます。

スマイル・パク:チクドクの間でも偏見を作り出す人がいます。特典やサポートをする場合、お金の問題が絡むので悪い噂が生じる場合があります。サポート後、精算をしなかったり、お金を少しずつ下ろして自分がファンサイン会に応募することに使う人もいます。また、お金を持って逃げる人もいます。

キム・チャルカク:そうです。あるファンダムは400万ウォン(約40万円)を寄付することにしたのに、寄付したところに問い合わせたら10万ウォン(約1万円)だけ寄付したことが明らかになって問題になったこともありました。でも、ほとんどのファンダムが良い活動をしようと努力しています。

―チクドクとして活動しながら良かった点は何ですか?

キム・チャルカク:性格がとても活発になりました。もともとは人見知りが激しかったですが、同じスターのファンだから同質感を感じて先に話かけてみたり、神経戦を行うことも多くて、メンタルが強くなりました。また、悪い噂が流れる場合があるので、何事にも注意深くなりました。そして、写真を撮ったり補正することでクリエイティブさが育ったと思います。

―チクドクを通じて積み重ねた経験が職業や専攻に繋がる場合もありますか?

キム・チャルカク:はい、私はデザイン専攻です。カメラを触ることが趣味だからか、それが自然に専攻に繋がりました。チクドクの間には友達が記者だったり、他のエンターテインメント会社で働く人もいます。でも、私の考えでは、専攻や職業に繋がる場合もあるものの、趣味という志向がより強いと思います。先ほども話しましたが、本当に多様な職業のチクドクがいます。

―実際の話を聞いて、本当に多様なチクドク文化があることが分かりました。健全に活動する人も多いですし。チクドクを悪い視線で見る人々に一言お願いします。

キム・チャルカク:チクドクは写真で好きな気持ちを表現する人たちです。少数の人のせいで誤解や偏見があるのが悲しいです。本当に良心的にファンの活動を行っている人も多いということを分かってほしいです。一種のサブカルチャーとして受け入れてください。

スマイル・パク:私がアイドルが好きであるように、みんなきっと好きなものが一つずつあると思います。その気持ちと一緒だと思ってください。チクドクの写真を通じてファンになる人も多いです。それだけ愛情を込めてスターたちが輝く写真を撮っているからです。ファンダムの重要な部分の一つだと思ってください。

―最後にアイドルグループに望むことがあれば、一言お願いします。

キム・チャルカク:初心を失わないでください。ベテラングループの場合、初心を失ったように見える時があります。チクドクはそれにすぐ気づきます。昔は疲れても一生懸命頑張ったのに、最近は疲れたら少し気を抜くこともあるように思えます。また、自身が好むファンにだけ反応するのもファンが減る要因です。

スマイル・パク:そうです。それでは背中を向けるファンが増え続けるだけです。初心と態度は本当に重要です。失わないでください。

記者 : パク・スジョン、インタビュー : パク・スジョン、ソン・スビン、翻訳 : ナ・ウンジョン