「ハイヒールの男」コ・ギョンピョ“チャ・スンウォン先輩、無口でも温かくありがたかった”

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写真=ロッテエンターテインメント
映画「怖い話」以来1年ぶりに会った俳優コ・ギョンピョは見違えるほど真剣になった姿だった。これまでに悩みも考えも増えた様子だった。チャン・ジン監督のノワール映画「ハイヒールの男」(監督:チャン・ジン)でスクリーンに帰って来たコ・ギョンピョに会った。

韓国で4日に公開された「ハイヒールの男」は、完璧な男の条件をすべて揃えた強力係刑事のジウクが過去の傷によって自身の致命的な秘密である“女性性”を隠したまま生きていたところ、危険な取引を試み、事件に巻き込まれた物語を描く。映画「ガン&トークス」(2001)「小さな恋のステップ」(2004)「拍手するときに去れ」(2005)「グッドモーニング・プレジデント」(2009)のチャン・ジン監督がメガホンを取り、チャ・スンウォン、コ・ギョンピョ、オ・ジョンセ、イ・ソムが熱演した。

コ・ギョンピョは「ハイヒールの男」でジウク(チャ・スンウォン)を実の兄のように慕う末っ子の刑事ジヌ役を演じた。ありきたりになりがちなキャラクターだが、チャン監督特有のウィット感とコ・ギョンピョの特技である演技のようで演技のようではないウィット感が合わさり、決してありきたりではないキャラクターに生まれ変わった。

「チャン・ジン監督が『NOWHERE 情け容赦なし』(1999、監督:イ・ミョンセ)でチャン・ドンゴン先輩が演じた新米刑事のキャラクターを参考するようにと話しましたが、見ませんでした(笑) 見て下手に真似してしまうかもと思って。僕が映画を演出するときは他の映画を良く参考にする方ですが(彼は建国(コングク)大学映画学科に在学している)、演技をするときは他の作品を参考する方ではありません。僕が作ったキャラクターの中で妥当性のある演技をしなければならないと思います」

「ハイヒールの男」は韓国の商業映画としては異例的にトランスジェンダーをスクリーンに呼び込み、早くから話題を集めた。そしてその中心には女性性を隠して生きる男くさい人物ジウクを演じたチャ・スンウォンがいる。しっかりとした筋肉、広い肩とシャープなあごのライン、高い身長。完璧なビジュアルの彼が濃いアイメイクをして12cmのハイヒールの上に軽く乗る姿は映画前半には笑いを、後半では凄然さを与える。

「チャ・スンウォン先輩の女装ですか?僕も最初は笑いました。身体がものすごくいいのに、女装はまたあまりにもやりすぎで。しかし、後半の女装は僕が見てもカッコよくて、切ないところがありました。映画を良く見てみると、チャ・スンウォン先輩が指先一つまでもディテールを生かして女性性を表現しました。すごいことだと思います。訳もなくチャ・スンウォンじゃないですね」

彼は先輩たちの前では特に人見知りをする性格だそうだ。今回の作品を通して初めて共演したチャ・スンウォンの前でも一緒だった。彼は「20歳近く年が離れているから、難しいと思うしかないじゃないですか。それでもチャ・スンウォン先輩は隣で無心でありながらも優しく気にかけてくれました。無口でも温かいというか。すごくありがたかった」と打ち明けた。

彼は「ハイヒールの男」で正劇(シリアスで深みのある内容を扱った作品)と喜劇を行き来する抜群の演技でそうそうたる先輩俳優たちの間でも輝く存在感を見せ付けた。特に映画前半でカップラーメンをかきこみながらパク班長(キム・ウンス)に口答えするシーンはコ・ギョンピョの瞬発力とシーンに対する理解度が光を放ったシーンだ。

「観客の皆さんが特にそのラーメンのシーンを良く話してくれます。今も目にものもらいがあって苦労していますが、撮影当時はものもらいがひどくて手術を受けました。チャン・ジン監督がわざわざ殴られて目が腫れた設定にしてくれました。ラーメンは元々シナリオにはないものでしたが、当日現場に行ったら監督が『これ食べていて』とし、ただ食べただけです(笑)」

コ・ギョンピョを語るにおいてチャン・ジン監督を欠かすことは出来ない。一人で奮闘し、地面にヘディングしていた時代、今の所属事務所フィルムイッスダの代表であるチャン・ジン監督に出会い、彼が演出したtvN「SNL KOREA」を通して大衆に本格的に顔を知らせ始めた。彼はチャン・ジン監督について「僕がどんな位置にいても難しい人、しかし必ず必要な人」とした。

「チャン・ジン監督は僕を褒めるより、指摘をたくさんしてくれます。『演技しなさい』『俳優になりなさい』と言われるたび、僕はまだまだだなと思います。もちろん傷つくときもあります。まだ僕が演技の柱がないため、自慢することもなく、揺らがないようにとアドバイスしてくれるその気持ちを良く知っているため、いつも感謝しています。僕が発展するにおいてチャン監督の指摘とアドバイスは必ず必要です」

彼にとって映画の中のジヌのように誰かを盲目的に尊敬したことがあるのかと聞くと「父」という答えが帰って来た。最近は歌手キム・ジンホの「家族写真」を聞き、父への思いに涙がこみ上げたこともあったそうだ。

「社会に出たてで、お金を稼ぎながら独自的な人生を暮らしていると、一生を捧げて家族のためにすべてを諦めた父が改めてすごく見えました。仕事があまりにも大変で崩れたくなるときもあるし、一生俳優をやらなければならないと思うと漠然とする時がありますが、両親はそうやって生きてきたわけじゃないですか。レジャー生活もなく、個人の人生もなしのままです」

最近放送終了したtvNシットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)「ジャガイモ星2013QR3」を終え、1年ぶりの休息を持つようになった彼は、自身が演出する短編映画にすべての神経を集中しているそうだ。映画祭出品を目標に準備している彼は短編映画に先立ち7月末の映画「バトル・オーシャン/海上決戦」(監督:キム・ハンミン)と下半期「ワーキングガール」(監督:チョン・ボムシク)で再び観客のもとにやってくる。彼は二つの作品共に「普通ではない」とコメントした。作品ごとに次のステップに跳躍するために自分にムチを打つ彼が見せてくれるもう一つの顔に期待できる。

記者 : キム・スジョン、写真 : チョ・ソンジン