「さまよう刃」チョン・ジェヨン“痛快な復讐?そのような映画ではありません”

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※この記事には映画のストーリーに関する内容が含まれています。

映画「さまよう刃」チョン・ジェヨン「娘を守りきれなかった父の気持ちに集中」

忠武路(韓国の映画界)の代表的な俳優チョン・ジェヨン(44)が、韓国で4月に2本の映画で観客のもとを訪れる。10日に公開される映画「さまよう刃」と30日に公開される「王の涙-イ・サンの決断-」である。チョン・ジェヨンは「両方共観ていただけると本当に嬉しいですが、それができなければ1本だけでも必ず観ていただきたい」と人のいい笑顔を見せた。

「『さまよう刃』は、非常に苦労しましたし、とても意味のある作品です。『王の涙-イ・サンの決断-』は、ヒョンビンを始めとして非常に魅力的な俳優たちがたくさん出ますし、大作なので、それに相応しい楽しさがあります。2本とも、自分には息子のような作品です」


「復讐したい気持ちよりは、娘をなくした父の気持ちに集中」

「さまよう刃」は、韓国でも多くのファンを従える日本の作家、東野圭吾の同名小説が原作である。チョン・ジェヨンが演じるイ・サンヒョンは、性暴行された娘を失い、偶然出くわしたその加害者を殺し、被害者から加害者に一転する役柄である。娘の遺体の前で、そして高校生の暴行の加害者と出くわすシーンなど、様々な難しい感情を柔軟に演じた。

「『さまよう刃』は、『アジョシ』のウォンビンのように頭を丸刈りにして痛快に復讐する映画ではありません。ウォンビンは、お隣の女の子を助けようとそのように復讐したので、娘をなくした私は、とことん暴れなければなりませんでしたが、『さまよう刃』はそのような映画ではありません。色々と考えさせる映画です。静かなようで、リアリティを活かして物語に同化させています。実際に起こったことではないですが、観客は映画を見ながらリアルに感じると思います。それだけ、人物の心理描写のディテールを活かしました」

映画でイ・サンヒョンは、娘への暴行加害者の一人を偶発的に殺し、もう一人を追い続ける。長銃を手に酷寒の寒さの中で雪に埋もれた江原道(カンウォンド)隅々を探し、彼が泊まっているペンションを探そうとする。加害者に出くわし長銃の銃口を向けるイ・サンヒョン。しかしその中には、銃弾がなかった。誰かを殺そうとしていたわけではなかったのだ。

「加害者を殺すことが重要なわけではなかったようです。娘を失った父の気持ちは、そもそもそのようなことが始まらないことを願う、『私が迎えに行っていれば拐われなかっただろうに』という悔恨と悔いなどが複合された申し訳なさだと思います。『可哀想な私の娘を覚えていて欲しい』という気持ちの方がもっと重要かも知れないのです。父として罪責感が大きいので、申し訳ない気持ちで加害者を探しに行くんです」

チョン・ジェヨンは11歳と15歳の二人の息子がいる、父である。彼は子供に一番申し訳なかった時として、上の子に手をあげた時を回想した。

「下の子には手をあげなかったのですが、上の子には子供の頃少し手をあげました。私も親として初めてだったので、短気になってもどかしく、子供が嘘をついたりいうことを聞かなかったとき、少し体罰を加えました。今考えてみると、小学校低学年だったので、何も分かっていなかったと思います。体罰を受けたとして言うことを聞くわけでもないでしょうに。当時は自分も何も知らなかったので、言葉でうまく会話ができなかったみたいです」

時間が経ってみると、上の子は思春期になってもあまり反抗もしませんでしたし、下の子は上の子に比べて遥かに軽くて勉強もできないですが、上の子の時の経験があったので、下の子には全く手をあげなかったです。そのような面で、下の子はご利益にあやかったのではないかと思います(笑) とにかく、上の子には親として未熟だったので、申し訳ない面があります」

チョン・ジェヨンが学校時代に両親に申し訳ない記憶は何があるだろうか。チョン・ジェヨンは「母さんは何も知らないくせに!」と口答えした記憶を思い浮かべた。

「高校と大学の時、作品をやるという言い訳で10日間家に帰らなかったりしました。10日後に帰ったら、殴られましたね。子供の頃は、素っ裸にされて家から追い出された記憶もありますし。今振り返ってみると、殴られて正解だったと思います。ツケが回ってきたと思います。自分がそうだったので、息子たちは自分よりはマシだろうと思って期待しますが、子供にそのような期待をかけること自体が間違っている気がしてきました」


「イ・ソンミンは人間味のある人、ヒョンビンは私より大人らしい」

チョン・ジェヨンは、映画「さまよう刃」では刑事役を演じたイ・ソンミンと、「王の涙-イ・サンの決断-」では正祖(チョンジョ)役を演じるヒョンビンと主に共演した。二人共、共演は初めてである。

「(イ)ソンミン兄さんは、人間味のある人です。私と最も似ている人ですが、お酒は飲めません。それで、いつも監督も混じってお酒を飲んだりしますが、そこでソンミン兄さんはドリンクを飲みます。以前からそうだったので、そのような場にもよく合わせます。飲み会での仲裁をよくやる方で、最後まで世話を焼いてくれます。無頓着ながらも配慮深くて優しい、昔のお父さんのような人です。趣味もないし地味で、普通の家庭の父である点は私と似ていますが、ソンミン兄さんよりは私の方が口数が多いです(笑)

ヒョンビンは、私とは少し違うスタイルです。何と言えばいいでしょうか、もう大人になっていて、私よりも遥かに大人らしくて、落ち着いています。お喋りも好きですし。お酒は飲み過ぎると顔が赤くなって可愛いです。私はお酒を飲むと顔が黒ずむのですが(笑) 作品をするときも、辛い時も巍然としていますし、体を鍛える時も食べ物のコントロールをよくやりますし、そのような時はお酒も飲みません。ヒョンビンも、チョ・ジョンソクも皆根っからのいい人です。私は少し愚痴る方なのですが、ヒョンビンは黙々とやって、愚痴も言わずに、不平不満も言わない、本当に性格のいい俳優です」

チョン・ジェヨンのソウル芸術大学の同期には、シン・ドンヨプ、リュ・スンリョン、アン・ジェウクなどがいる。大学時代にも誰より一生懸命だった彼らは、もう放送界で、忠武路で自分の役割をきっちりと果たしている。また、まだスポットライトを当てられていないが、黙々と頑張っている人たちには、ロールモデルとして挙げられたりもする。

「後輩たちに、今くらいの情熱があれば、その情熱がなくならないように維持し、やってきた通り最善を尽くせと言いたいです。情熱が最も重要なので。その情熱がなくならないようにするのが一番重要だと思います。その情熱とは、他でもない“演技への愛”とも言えます。その愛がなくならないようにしなければなりません」

記者 : チョ・ギョンイ、写真 : イ・ジョンミン