Vol.1 ― 「その怪物」イ・ミンギ“死に対して鈍感になるために努力した”

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俳優イ・ミンギが完璧な殺人鬼になって帰ってきた。映画「その怪物」でイ・ミンギは世の中と断絶された怪物のような殺人鬼テス役を演じ、衝撃的な変身を図った。

映画「恋は命がけ」を演出した監督ファン・インホの次回作「その怪物」(監督ファン・インホ、配給:ロッテエンターテインメント)は、血も涙もない殺人鬼テスと、彼によってたった一人の妹を失ったボクスン(キム・ゴウン)の復讐に向けた追撃を描いたスリラー映画だ。イ・ミンギはこの映画で躊躇なく人を殺めるテス役を熱演した。

熱演という言葉通り、これまで数々のロマンチックコメディ作品に出演してきたイ・ミンギの変身は想像を絶するものだった。無表情な顔で微笑む姿はぞっとするほどである。

急激な変化であったが、「その怪物」への出演を決断することにそれほど時間はかからなかった。20代最後である俳優イ・ミンギには、変身したいという意欲があった。そんな時「その怪物」がイ・ミンギの前に現れ、イ・ミンギはそのチャンスを掴んだ。

「出演を決めることは簡単だったが、決定してから撮影に入るまでが大変だった。簡単に決めた理由は、ほかのジャンルに挑戦したかったからだ。前作で一緒に仕事をしたファン・インホ監督への信頼とユニークなシナリオを見てすぐに決断した」

しかし、出演決定後からが大変だった。183センチの長身であるイ・ミンギは、身長に比べて体重が軽かった。テスとして相応しい外見になるために、体重を増やしては減らすトレーニングを繰り返して筋肉をつける必要があった。

「長期間ではなく、短期間で体重を増やしてはまた減らすトレーニングを行った。体のリズムが全て崩れてしまい、コンディションも悪くなった。若干不眠症にも悩まされた。一方、精神的にはテスの神経質なことろが似ていたから大丈夫だった」

イ・ミンギはテスに合った体作りをしながらテスの感情を理解するために努力した。過酷なダイエットで人に会うことも自制し、日常生活でもテスの感情を理解するために最善を尽くした。

「日常生活でもテスのように考えた。口には出さなかったが、すべてのシチュエーションで心の中でテスの立場にたって考えていた。テスは何かが欠乏した人間だ。殺人という行為を介して自身の欠乏を満たそうとする。本やドラマをたくさん見て死や殺人に対して鈍感になるために努力した」

「その怪物」でテスは、色んなことが欠乏した人物として描かれている。人間というよりは森の中で一人で生きる怪物のような存在だ。単純な喜びや楽しみのための殺人ではなく、ただ欠乏していることによる殺人である。

「テスの立場で考えてみると、愛されたくて殺人する訳でもなく、楽しむために殺人する訳でもない。ただ他人の苦しみが分からないだけだ。表面的には兄のために殺人をしているように見えるが、そうではない。自身のためにしている。テスの殺人は世の中と疎通する方法に過ぎない」

写真=ロッテエンターテインメント
テスは冷酷な殺人鬼だが、その役を演じるイ・ミンギはテスに対し可愛そうだと感じた。役に対する愛情なしに演技することは難しいのが現実だ。イ・ミンギはテスを「孤独な怪物」と表現した。

「テスは殺人犯であることを除けば人間的な部分も持っている。世の中と離れて生きているが、どう考えても孤独な怪物だ。トラウマから殺人をするのではなく、生まれながらにそうだったのだ。それは障害であり欠乏だと考えられる。僕とテスが似ている部分?孤独で寂しいところだろうか。忙しくなるほどより孤独を感じるようだ」

イ・ミンギは「その怪物」と合わせてファン・インホ監督と2つの作品で共に仕事をした。「その怪物」に出演した理由としてファン・インホ監督に対する信頼を挙げるほど監督に満足している。今回の撮影も良い雰囲気で撮影を行うことができた。

「撮影は全てにおいて良かった。撮影中は監督とあまり話さない。特に話す必要がなかった。2つのシーンぐらい何度も撮り直したが、ファン監督は僕が表現するテスを見守り、お互いを信じていた。事前準備もたくさんした。シナリオ作業から準備していたのでスムーズに撮影を行うことができた」

記者 : イ・ウンジ、写真 : ユ・ジニョン